切り貼りデジカメ実験室

オリンパスの“照準器カメラ”に「ピストルグリップ」を装着する

まさに“撃つ!”という感じに

24-1,200mm相当の50倍ズームを装備し、カメラとして世界で初めて「ドットサイト」(照準器)を搭載した「OLYMPUS STYLUS SP-100EE」に、ニコン製「ガングリップ」を装着。まるでSF映画に出てくるレーザーガンみたいで、思った以上にカッコ良くなった(笑)。機能的には、専用のリモートケーブルを改造することによって、グリップのトリガーでシャッター半押しとレリーズ操作を可能とした。文字通り銃のように構え、ドットサイトで狙いを定め、1,200mm相当の超望遠ズームで撃つ! と言ったスタイルだが、カメラの安定性も増して実用性はなかなかのものだ

“照準器”を装備したデジカメにピストルグリップを装着

 2月に開催されたカメラのイベント「CP+2014」は大雪で見に行くのもたいへんだったが、その中でぼくが釘付けになった新製品に「OLYMPUS STYLUS SP-100EE」があった。

 まず驚くのがレンズなのだが、広角24mm相当(ライカ判換算、以下略)から、望遠はなんと1,200mm相当までカバーする光学50倍ズームを搭載している。

 「コンパクトデジカメのズームもついにここまで来たか」と感慨深いものがあるが、1,200mmもの超望遠になると被写体をファインダー内に捉えるだけでも一苦労である。

 ところがさらに驚くことに、SP-100EEは被写体を捉えるための「ドットサイト」(照準器)を装備した世界初のカメラなのである。

 SP-100EE本体の専用レバーをスライドさせると、ストロボがパカっと開き、その基部に仕込まれたドットサイトがカシャッとセットされる。

 ドットサイトを覗くとその視野に赤点が見えるが、これを遠くの目標に重ね合わせてシャッターを切ると、1,200mm相当の望遠撮影でも素早く確実に被写体を捉えることができるのだ。これは実にSFチックなメカであって、しかも実用性が高く非常に良くできている! と、すっかり感心してしまったのだ。

 ドットサイトは照準用の光像をハーフミラーで折り返し、網膜に結像させる仕組みの光学照準器で、視野に照準の赤点が見えることからそう名付けらている。

 元々アサルトライフルなどの銃器に装着する「兵器」の一種で、その実用性はまさに折り紙付き。日本でもエアガンに装着するためのレプリカがショップで売られている。

 そして、この機能に目を付けた野鳥写真愛好家たちが、超望遠レンズでの撮影にエアガン用のドットサイトを利用する手法を編み出し、カメラに装着するアタッチメントもいろいろ売られるようになったのだ。

 これについて、CP+のオリンパスブースのスタッフに伺ったところ、本来初心者には使いこなしが難しい1,200mmもの超望遠ズームを、何とか簡単に使えるよう工夫できないかと考えたところ、野鳥愛好家が使っているドットサイトに思い当たったのが企画の始まりだったそうだ。

 しかし当初の試作品はドットサイト部が大きく不格好で、社内でもその実用性が疑問視する声があったそうだ。しかしそれにもめげず、いろいろと工夫を凝らした結果、現在の形に落ち着いたのだそうだ。

 この機構はまさに優れた技術とユニークなアイデアの融合であって、アーティストとして技術者にも大いに見習うべきものがあると、あらためて思った次第である。

 そこでリスペクトする気持ちを込めて、カッコいいSP-100EEをさらにカッコよくする、もっと言えば銃っぽいSP-100EEをもっと銃っぽくする“切り貼り”に、チャレンジすることにしたのだ。

―注意―
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SP-100EEは小型軽量ながら、24-1,200mm相当の50倍ズームを搭載している。1,200mmの超望遠レンズは、かつてはニコンからもキヤノンからも発売されていたが、現在では生産中止されている。その意味でもはや特殊レンズの領域で、その使いこなしはかなり難しい。が、それを“より簡単に”使いこなすための工夫がこのカメラには盛り込まれている
それがこの「ドットサイト」なのだが、専用レバーをスライドさせると、ストロボがパカっと開き、その基部に仕込まれたハーフミラーがカシャッと立ち上がる。そして照準用の光像(赤点)が投影されるのだ。これで狙いを定めると、1,200mm相当の超望遠撮影でも素早く被写体を捉えることができる。まるでSFアニメのメカのようなカッコ良さだが、どうせならもっとカッコ良くしてみよう! と、あるアイデアがひらめいたのだ(笑)
そこで登場するのがこのニコン「ピストルグリップ モデル2」である。フィルムカメラ時代のアクセサリーで、専用のリモートケーブル「MC-3A」を使ってモータードライブと接続すれば、グリップのトリガーでレリーズできる。主に重量級の望遠レンズと組み合わせ、安定性を得るために使われる。ニコンFの時代から存在しているが、後のF4の世代のカメラにまで使用できる。実はぼく自身、このアクセサリーを使ったことはなかったのだが、いつか何かに使えると思い中古で買っておいたのだ(笑)
次に用意したのは、オリンパス製リモートケーブル「RM-UC1」である。カメラ本体のUSBポートに接続する形式で、SP-100EEをはじめ、オリンパスのPENデジタルやOM-Dシリーズに共通して使うことができる。これを改造して、ニコン製ピストルグリップをSP-100EEで使えるようにする、というのが今回の作戦である
まず、ニコン製リモートケーブルMC-3Aのスイッチ部分を分解してみる。2枚の電極の接触によって、カメラのシャッターをレリーズさせるシンプルな構造だ
次にオリンパス製リモートケーブルRM-UC1のスイッチ部分を分解してみる。こちらは3枚の電極が、3芯コードにつながっていて、シャッターレリーズに加えて「半押し」にも対応している
ところがMC-3Aのスイッチをさらに分解してみると、電気接点が3枚あったのだ(2枚が重なって取り付けられていた)。つまり、このスイッチは本来「シャッター半押し」にも対応した設計であるにもかかわらず、何らかの理由でスペックダウンされていた、と考えられる
以上のことが判明し、改造の方針が決まったところで、RM-UC1のスイッチ部分とコードを切り離す。今回の改造はコードのみを使用し、スイッチはまた何かに使えるかもしれないので取っておくことにする
そしてRM-UC1の3芯コードを、MC-3Aの3枚の電極にそれぞれハンダ付けする
MC-3Aに、3芯コードにつないだ3枚の電極を組み込むと、このようになる。電極板はそれぞれ接触しないよう、微妙な曲げ加工を施している
スイッチの作動を確認するため、試しにピストルグリップにセットしてみる。ピストルグリップのトリガーを引くとスイッチが押され、2枚の電極が接触し「シャッター半押し」が作動する
さらにトリガーを引くと、3枚の電極が接触しシャッターがレリーズされる
スイッチ部分のカバーを元通り被せると、リモートケーブルの改造工作は終了だ。スイッチ側はニコン製ピストルグリップのソケットに、もう片方はオリンパス製カメラのUSBポートに装着する、ハイブリッドなリモートケーブルである
ニコン製ピストルグリップ本体は、三脚ネジ穴に取り付けるためメーカーを問わずあらゆるカメラに使用できる。取り付け方は、まずシューパーツを三脚穴にねじ込み、ここにピストルグリップをはめ込む仕組みになっている
ピストルグリップを装着したSP-100EEに、改造したリモートケーブルを装着すると、準備は完了である
ジャーン!! と構えると、こんなにかっこ良くなる(笑)。ドットサイトを立ち上げ、レンズを最望遠の1,200mm相当までズームしているが、まるでレーザービームでも発射しそうな出で立ちだ(笑)
まさに「撃つ!」という感じで気分も高揚するが、傍目にはちょっとアブナイかもしれない(笑)。しかし、このようにグリップを握り、ストラップをピンと張った状態で構えると、安定性も増してなかなか使い勝手が良い。ドットサイトはこのように目を離しても不思議とよく見えるし、この状態で背面液晶モニターと組み合わせると、より簡単に構図決定ができる。
ドットサイトを使って撮影している状況を、別のカメラで写してみた。赤い照準を遠くの目標に重ね合わせるだけで、1,200mm相当の超望遠撮影でも、実に簡単に被写体を捉えることができる。照準はご覧のように日中でも見えにくくなることはなく、実用性は思った以上に高い。

カメラの使用感

 先にも書いた通り、SP-100EEに搭載されたドットサイトは一見イロモノ的機能のようでありながら、実際に屋外で使用しても実用性が非常に高く、あらためて驚いてしまった。

 ドットサイトは元々銃の照準器なだけに、その実用性は伊達ではないということだ。そもそもわれわれが日常的に享受しているハイテクの多くは軍事技術の平和利用であり、ドットサイトも例外ではないと言えるだろう。

 一方、自分で改造し装着したピストルグリップも、単に見た目が面白いだけでなく、それなりに合理的で実用性がある。比較的軽いボディのSP-100EEに対し、ニコン製ピストルグリップはアルミ鋳造でそれなりの重量があり、カメラの安定に役立った。

 銃のように構えるスタイルも、カメラとしては新鮮ながらなかなか使い勝手が良い。もちろん、改造して装着したグリップは、トリガーでのシャッター操作しかできないから、SP-100EEの十字キーや電子ダイヤルの操作がスポイルされてしまうが、そこはまぁ仕方がない。

 しかし幸いにも、SP-100EEはレンズ左側にズームレバーや、AFロックおよびフォーカスリミット・ボタンを装備し、これらの操作に不便はない。

 その他SP-100EEの特徴については、デジカメWatchにも大浦タケシさんによる詳細なレポートがあるので、そちらをご覧になっていただきたい。

 最後に付け加えると、「このドットサイトをぜひレンズ交換式カメラにも搭載して欲しい」とオリンパスのスタッフに提言してみたのだが「交換レンズごとに光軸合わせをするのは非常に困難で、現状ではレンズ一体型のデジカメでしか実現できない」とのお返事をいただいた。しかし技術は確実に進歩するので、期待しすぎないで待つことにしようと思う。

実写作品

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
藤沢市の自宅近所の境川に、鳥の撮影に行ってみた。まず、SP-100EEの最広角24mm相当で全体を撮ると、こんな感じ
同じ場所からズームを1,200mm相当にまで拡大すると、コサギがいた! 川の端を歩きながらえさとなる魚を探している。真剣な姿がなかなかカワイイ
毛繕いをするアオサギ。日本で見られるサギの中で最も大型の部類だ
同じく毛繕いをするカルガモのメス。くちばしの先が隠れてしまっているが、他の写真を見ると黄色いのでマガモではなくカルガモであることがわかる
ウが水面から首だけを出しているが、カワウかウミウかは紛らわしくて、ぼくにはちょっと分からない。水中に潜って魚を捕るウは、体ごと水面に出して浮かせることはできない
河原をちょこまかと歩いていたハクセキレイ
河原にコイが寝ていて、傍らにハシブトガラスがいる、という不思議な光景……
左写真のコイに近付いて、SP-100EEの広角24mm相当で撮影。どういうわけか、このコイは生きていてえらが動いている。実は河の水門を閉めたため、一時的に水が引いていたのだ。この直後水門が開いて水が押し寄せ、このコイも一命を取り留めた
こちらはシーンモードの「スーパーマクロ」で撮影したオオバコの花。河川敷に咲いていたが、一見すると地味だがよく見ると面白い形をしている。SP-100EEのスーパーマクロは24mm相当で固定されるため、背景の雰囲気まで描写される「広角マクロ」となる
川沿いの湿地に咲いていたカワヂシャの花。花の形は同じ仲間のオオイヌノフグリそっくりだが、草丈が高く全体の印象はだいぶ異なる
ビロードコガネがアブラナの花をもりもり食べていた
ちょうど、落ちていた看板に描かれた手の部分に止まっていたキタテハ。182mm相当の望遠で撮影したが、SP-100EEのズームは焦点距離によって最短撮影距離が異なる。近距離でドットサイトは視差が生じてずれるが、見当としては役に立つ
河野近くの空き地にキジがいたので驚いてしまったが、以前住んでいた東京都国分寺市では全体に見ることのできない鳥だ。「ケーン!」という耳慣れない声でその存在に気付いたが、「キジも鳴かねば撃たれまいに」という言葉通り、1,200mm相当でシューティングした
雑木林でタイワンリスも発見したが、これも国分寺市にはいなかった動物で、「クックッ」という耳慣れない鳴き声でその存在に気付いた。近隣の鎌倉市で増えすぎて問題になっているらしいが、戦後に江ノ島動物園から逃げ出して広まった、という説がある

告知

 糸崎公朗氏が講師を務める「糸崎塾」が開講します。内容は「フォトモ」や「ツギラマ」などのワークショップや、「現象学と写真史」などの読書会です。

 日程は毎週土曜日。時間は10時〜12時と、13時〜14時の2コマ。会場は「一般社団法人 TOURI ASSOCIATION」(東京都新宿区新宿5-14-3 有恒ビル6F 竹林閣内)

糸崎公朗

1965年生まれ。東京造形大学卒業。美術家・写真家。主な受賞にキリンアートアワード1999優秀賞、2000年度コニカ フォト・プレミオ大賞、第19回東川賞新人作家賞など。主な著作に「フォトモの街角」「東京昆虫デジワイド」(共にアートン)など。毎週土曜日、新宿三丁目の竹林閣にて「糸崎公朗主宰:非人称芸術博士課程」の講師を務める。メインブログはhttp://kimioitosaki.hatenablog.com/ Twitterは@itozaki