切り貼りデジカメ実験室

OLYMPUS STYLUS TG-2で「5円玉レンズ」に挑戦

指でつまんだ5円玉の真ん中に、丸い映像が浮かんでいるが、これが「5円玉レンズ」の描写だ。材料費はたったの5円! というより5円玉そのものをレンズの材料にしようという発想だ(笑)。カメラは強力なマクロモードを備えた「OLYMPUS STYLUS TG-2 Tough」を使用している。

5円玉と水滴でレンズをつくる

 前々回の記事「リコーGXR用『フレネルレンズユニット』を作る」では100円ショップで買った100円のレンズで写真を撮ったが、今回はそれを下回る“制作費5円”のレンズを紹介しよう。

 作り方はとっても簡単で、5円玉に水をちょろっと垂らすだけ。すると真ん中の穴に、表面張力によって水滴が溜まり「5円玉レンズ」が完成する。制作費の5円玉そのものがレンズ本体となるのだ。

 この5円玉レンズをデジカメのレンズ前にかざし、撮影する。つまり5円玉の穴に溜まった水滴を、コンバージョンレンズとして利用するのだ。5円玉レンズはマクロモードでなければピントが合わないが、穴そのものが直径5mmと小さいので、カメラもマクロに強い機種を選ぶ必要がある。

 そこで今回はOLYMPUS STYLUS TG-2 Toughを使ってみたのだが、このカメラの「スーパーマクロモード」は実に強力で、一眼レフ用マクロレンズを上回る高倍率撮影ができるのだ。さらにもともと防水仕様のTG-2だけに、もしレンズに水滴が付いてもただ拭き取るだけで済む。

 というわけで5円玉レンズそのものは水滴に過ぎないから、撮影するうちに落下したり乾燥して消えたりする。だから撮影の度に水を垂らして5円玉レンズを作る必要がある。そこで100円ショップで化粧水などを入れるためのミニボトルを買い、これに水を入れて一緒に持ち歩くことにした。

―注意―
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今回の撮影に使用した「5円玉レンズ」システム。カメラはTG-2をセレクト。水滴を使うから防水デジカメを選んだというより、このカメラのもう1つの特徴である強力なマクロモードを利用するのである。これに5円玉と、水を垂らすためのミニボトル(100円ショップで購入)を用意した。
5円玉の穴に水滴を垂らすと、表面張力によってご覧の通りのレンズができる。これで5円玉レンズが完成する。
5円玉レンズはご覧のように手でつまみ、TG-2のレンズ直前にかざしながら撮影する。カメラのモードダイヤルを「スーパーマクロ」に設定するとピントの合った写真が撮れる。

実写作品

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
OLYMPUS TG-2スーパーマクロモードの広角側で5円玉レンズを撮影するとこのように写る。指でつまんだ5円玉の真ん中に、家と電線が逆さに写っている。水滴が重力で歪み、映像も歪んで写っているが、表現としてなかなか面白い。レンズ周囲に稲穂の図案があしらわれて、まさに「ミノルタ」と言いたいところだが、残念ながらそのブランドはカメラ業界から無くなってしまった……。
次に撮影したのは、道路に書かれた「止まれ」の「ま」の字。5円玉レンズを下方に向けたことで水滴のかたちは安定し、魚眼レンズのような写りになった。
自宅近所で駐車場の「OUT」の文字を撮影。5円玉の背後にも同じ風景の一部がピンボケで写っている。
同じ場所で、TG-2をスーパーマクロモードのまま最望遠にして撮影するとこうなる。直径5mmの水滴を拡大撮影しているわけで、ここまで強力なマクロ機能を備えたデジカメはそう無いと言えるだろう。なお、見やすいように上下逆さまの加工のみ行なっている(以下同じ)。
近所の駅前通をスナップ撮影。この世の風景とは思えない幻想的な写真となった。
歩道橋から見下ろした風景。映像が周辺部で流れて、車の疾走感がよく出ていると言えるかも知れない(笑)。
新宿西口駅前での撮影。幻想的な写りのレンズだけに、ピント合わせはなかなか難しい。シャッター半押しでAFロックし、さらに5円玉レンズを前後させながらピントを合わせる。
同じく新宿西口での撮影。画面の中央にのみピントが合い、周辺部はピンボケで、下部では像が流れて人物の足が伸びている。何枚か撮るうちに水が蒸発するので描写も変わり、そのうちレンズそのものが消えてしまう。
人物撮影にもチャレンジしてみたが、どうせなら美人をと言うことで、個展開催中の写真家インベカヲリ★さんにモデルをお願いした。が、レンズの歪みでお顔も歪んでしまってシツレイしました……。
同じくインベカヲリ★さんの個展会場にて。右がインベさんご本人で、左がインベさんが撮影した展示中の写真作品。しかしレンズ描写がナニ過ぎて、女性が2人並んでいるようにしか見えない。

まとめ

 実は、この5円玉レンズは何かの本でグリコのオマケに、板に空いた小穴に水滴を垂らす方式の虫眼鏡があったのを見て(物資が少ない時代の簡単なオマケ)、それを5円玉に応用してみたのだった。

 それでこの「5円玉レンズ」は過去に「デジタル写真生活」(ニューズ出版、現在は休刊)や、「子供の科学」(誠文堂新光社)の連載で取りあげたことがあった。

 いずれの連載も「リコーGR DIGITAL」の広角マクロを使って、指でつまんだ5円玉の中に水滴写真が浮かぶ、と言う絵柄を撮ったのだが、単体で見て面白くとも同じシチュエーションの写真がズラリと並ぶと単調で飽きてしまう。

 しかし今回使用したTG-2は広角マクロはもちろん、望遠端でもレンズ前約1cmにピントが合う。そのおかげで水滴レンズそのものを拡大撮影することができ、バラエティーに富んだ作品を撮影することができた。

 5円玉レンズの水滴レンズによる写真は、何かプリミティブなものを感じるが、それはそもそも人間が「レンズ」というものをガラスで作るはるか以前から存在する、我々人間を含む動物の目そのものが「水を含んだ細胞によるレンズ」のせいもあるかも知れない。

 そう言えば、ネットのどこかの記事で読んだことがあるが、ケータイ用の極小カメラ用などに、液体を使ったレンズの研究もされているらしい。

 ローテクとハイテクとは、実はメビウスのように繋がって、そうして技術は発展してゆくのかも知れない。

糸崎公朗

1965年生まれ。東京造形大学卒業。美術家・写真家。「非人称芸術」というコンセプトのもと、独自の写真技法により作品制作する。主な受賞にキリンアートアワード1999優秀賞、2000年度コニカ ミノルタフォト・プレミオ大賞、第19回東川賞新人作家賞など。主な著作に「フォトモの街角」「東京昆虫デジワイド」(共にアートン)など。メインブログはhttp://kimioitosaki.hatenablog.com/ Twitterは@itozaki 「前衛実験NETART」所属。