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写真愛好家向けのBTOパソコンが登場 その使い勝手は?
マウスコンピューターMDV For Photo
Reported by 礒村浩一(2015/5/15 07:00)
マウスコンピューターから発売されている「MDV For Photo」シリーズは、写真愛好家向けのマシンとして構成されたハイスペックなパソコンだ。高画素の写真データを大量に処理する必要があるハイアマチュアやプロ写真家の要求に応えるべく企画され組み立てられている。
今回は実際に撮影画像の処理を通して「MDV For Photo」の実力を体感してみた。
価格や仕様はこちらの記事で
豊富なインターフェースを用意
今回使用したマウスコンピューターMDV For Photoシリーズ「MDV-QX7000S-DP」は、6コア/3.30GHzのインテルCore i7-5820Kプロセッサーを搭載したミニタワー型モデルだ。
メモリは64GB、ストレージには480GBのSSDと3TBのHDDを搭載。OSはWindows 8.1 Pro Update 64ビット。起動DISCを高速での読み出し・書き込みが可能なSSDに割り当ていることで、システムの高速化を図っている。内蔵HDDはデータ保存用ストレージという位置づけだ。
前面に各インターフェースを搭載。USB3.0ポートも3つあるので、デジタルカメラや外付けHDDなどとのUSB接続に便利。
背面にはUSB3.0x8、USB2.0x2、ディスプレイ端子はDVI-I×1、DisplayPort×2。
ミニタワーPCケースの採用により内部の拡張性は高い。グラフィック・アクセラレーターはNVIDIA Quadro K2200を搭載。
USB3.0接続カードリーダー(M2スロット×1、SD/ MMCスロット×1、microSDスロット×1、CF/MDスロット×1、MSスロット×1)がPC筐体に組み込まれている。
HDDを簡単に抜き差しすることができる3.5インチHDD用リムーバブルベイが用意されている。大量のデータを保存する必要がある写真愛好家にとって、データのストレージへの保存は大きな課題である。PCケースを開ける事無くHDDを差し替えることができるので、HDDをリムーバブルストレージとして便利に使用することができる。ただしHDDの抜き差しはPCをシャットダウンさせ電源をOFFにした状態で行う必要があるので注意。セキュリティーキー付き。
画像セレクトもRAW現像も快適な処理が可能
MDV-QX7000S-DPには画像管理&RAW現像ソフトである「Adobe Lightroom 5」がプレインストールされている。画像を読みこみ、カタログとして保存することで多くの画像を管理することができるソフトだ。また対応デジタルカメラであれば、異なるメーカーのデジタルカメラであってもRAWデータの現像が可能な点から、写真愛好家やプロ写真家の多くが使用しているソフトである。
今回は実際にLightroom 5に写真を読み込み、普段筆者が仕事の写真セレクトおよびRAW現像を行うプロセスと同じ状況をMDV-QX7000S-DPでも再現することで、そのパフォーマンスを体感することにした。
使用する画像は先日撮影したモトクロスバイクレースの写真。激しく跳び走り回るレーサーを捉える為に連写撮影を多用したため、撮影画像枚数は実に3,358枚。総データサイズにして58.03GBという大量のRAWデータだ。これをメモリーカードからLightroom 5にて読み込み内蔵HDDにコピーすると同時にカタログとしても保存した。なおカタログサイズは最小としてある。
セレクト作業ではすべての画像を1枚ずつプレビュー画面に表示させて確認する。この際にはキーボードの矢印キーで表示画像を次々と送って行くのだが、表示の遅いPCだと画像が表示されるまでに数秒間待たされてしまうこともある。このMDV-QX7000S-DPでは時折1秒弱の読み込み時間が発生するも、ほとんどの画像においては待たされることもなくスムーズに表示された。
筆者の画像セレクトスタイルはプレビューに表示された画像に、ほぼ反射的にショートカットキーでカラーラベルを付与していくというものである。そのためこのセレクト作業がスムーズに進まないと大きなストレスとなってしまうのだ。
Lightroom 5に読み込んだ画像を1枚ずつ確認して、使用する画像にはレッドラベルを付与する。この画面ではレッドラベルを付与した画像366枚のみをフィルターで選別し表示させている。
さらに画像によっては等倍表示とし、ピントや細かい箇所の確認を行う必要がある。その際でも画像表示のスクロールなどをスムーズに行うことができた。これら一連の作業にはおよそ1時間30分ほどかかったのだが、3,358枚の画像をチェックしたことを考えればかなり早い方だと言える。
セレクトした画像のうち調整が必要な画像は現像モジュール画面にてRAW現像パラメーターを調整する。能力の高いPCではパラメーターの変更にも即座にプレビュー画像が反応するので素早い調整が可能だ。
現像パラメーターの調整が済んだら、次にセレクトした336枚を一気にRAW現像してJPEG画像に書き出す。保存先には内蔵HDD内のオリジナルRAW画像と同じフォルダー内に新しいフォルダーを作成した。
RAWデータからの現像は[ファイル]-[書き出し]で保存先を指定。ファイル形式などを選び[書き出し]を行う。RAW現像の進捗状況は画面左上のプログレスバーで確認することができる。
RAW現像にかかった時間は13分03秒。参考までに同じ画像データを普段筆者が使用しているMacPro2013(3.5GHz 6-Core Intel Xeon E5プロセッサ、メモリ16GB、SSD)のLightroom 5でRAW現像してみたところ13分54秒かかった。純粋な比較にはならないが、MDV-QX7000S-DPはかなり速い処理が可能だと言えるだろう。
カラーマッチングを重視したセット構成も
MDV For Photoシリーズは、ハードウェアカラーマネージメント対応のEIZOディスプレイ「CX241-CNX(専用ディスプレイ遮光フードCH7付属)」と、キヤノンの顔料インク対応プリンター「PIXUS PRO-10S」、色評価用蛍光灯スタンド「Z-208-EIZO」とのセット販売も用意されている。
EIZO CX241-CNXはAdobe RGB色域99%に対応したハードウェアキャリブレーション対応ディスプレイ。セットとしてマウスコンピューターより出荷される段階でPC本体とのカラーマッチングを行っているとのことだ。
キヤノンプリンター「PRO-10S」とのカラーマッチングも出荷時に行われる。CX241-CNXとPRO-10Sとの組み合わせで、キヤノンの純正写真用紙光沢ゴールドでのプリントマッチングをもとにしたプリンタープロファイルがPCに組み込まれている。
さらに色評価用蛍光灯スタンド「Z-208-EIZO」を活用することで、色評価用蛍光灯を使用することでプリントを適切な光源下で評価することが可能だ。
Lightroom 5でカラーマッチングされたプリントを行うには適した用紙設定とプリンタープロファイル選択が必要だ。プリントモジュール画面からプリンター設定画面を表示しPRO-10Sのプロパティ画面で写真印刷、用紙の種類、印刷品質を設定する。
プリンタープロファイルを使用してプリントする場合は、PRO-10Sのプロパティ画面にて[色/濃度]はマニュアル調整を選択のうえ、設定でマッチング[なし]にしておく。
Lightroom 5のプリントモジュール画面のプリントジョブパネル[カラーマネージメント]にて写真用紙光沢ゴールド用のPRO-10Sプロファイルを選択する。これによって出荷時に組み込まれたプリンタープロファイルを適用したプリントが可能となる。
EIZO CX241-CNXにはモニターキャリブレーション用のセンサーも付属されており、ユーザー自身でもキャリブレーションすることができる。出荷時にキャリブレーションを行っていても、ディスプレイは使用経過時間によっても発色が変化していくので、定期的なキャリブレーションは必要だ。ただディスプレイとプリンターのカラーマッチングは付属のセンサーのみでは不可能なので、出荷時にカラーマッチングが行われているということは、到着後すぐにプリント制作を進めることができるという利点がある。
さらに有料のオプショナルサービスとはなるが、PC、ディスプレイ、プリンターの設置とともに設置環境に合わせたカラーマッチングサービスも用意されている。PCのセッティングやカラーマッチング作業に不安があるという方でも安心して導入することができる。
このようにMDV For Photoシリーズは写真愛好家が必要とするマシンスペックとカラーマッチング環境を最短の時間で手にすることが出来る構成として用意されている製品である。
今後デジタルカメラがさらに高解像度となり、処理すべきデータ量が増えていくであろうことを考えると、このような写真の処理に特化したPCのニーズは益々増えていくに違いない。
またカラーマッチングに対する意識を向上させる為にもこのような製品およびサービスの存在意義は大きい。新たなPCの導入を考えている写真愛好家にとって、このMDV For Photoシリーズは十分検討に値するマシンといえるだろう。
モトクロスレース取材協力:第9回 ジャパン ベテランズ モトクロス チャンピオンシップス (ウエストポイント)