デジカメアイテム丼

トランセンド「Wi-Fi SDカード」

続々登場する「無線LAN搭載SDカード」の新星

 トランセンドから、無線LAN内蔵のSDカード「Wi-Fi SDカード」が登場した。Eye-Fiを始め、無線LAN内蔵SDカードは何種類か登場しているが、Wi-Fi SDカードの特徴をチェックしてみよう。

 店頭での販売価格は、容量32GBの「TS32GWSDHC10」が7,980円前後、16GBの「TS16GWSDHC10」5,980円前後。

画像を直接スマートフォンに転送

 Wi-Fi SDカードは、メモリカードとしてはSDHC規格で容量は16GBと32GBの2種類があり、スピードクラスはClass 10。デジタル一眼レフの連写や動画撮影でも十分活用できるレベルだ。

外観は普通のSDHCメモリーカード

 そのメモリカードに、無線LAN機能を内蔵したのが今回の新製品。Eye-FiやFlashAirなど、ライバルとなる製品はいくつかあるが、その中で容量やスピードクラスといったスペックはトップクラスといっていいだろう。

 最近は、スマートフォンの普及にともなってカメラにも無線LANを内蔵する例が増えてきた。実質的にはスマートフォンによって無線LANチップの価格が下がったというのが一番の理由だが、無線LAN経由でスマートフォンと接続して、撮影した画像をSNSなどに投稿する、という使い方が求められてきた、というのも大きい。

 それでも、すべてのカメラに無線LANが内蔵されるようになったわけではなく、そうしたカメラ向けに、無線LAN内蔵SDカードが一定の支持を受けている。早くから取り組んで先行するEye-Fiに対して、さまざまなSDカードも出てきているが、後発のWi-Fi SDカードは、スマートフォン(もちろんタブレットも含む)との連携機能をさらに強化している。

 Wi-Fi SDカードには、大きく分けて2つの機能がある。1つはカードとスマートフォンをアドホックで接続してピア・ツー・ピアで画像データを送信する「ダイレクトシェアモード」と、モバイル無線LANルーターなどと接続し、画像をインターネットに送信する「インターネットモード」の2種類だ。いずれを利用する場合も、まずはiOSまたはAndroid用のアプリをそれぞれのマーケットからダウンロードしておく必要がある。

Wi-Fi SDカードアプリ。いずれもAndroid版だが、UIはiOS版も同じだ
初回起動時はセットアップを行なう。最初は、説明書記載のSSIDとパスワードでカードに接続しておく
まずはWi-Fi SDカードの無線LAN設定を行なう
「インターネットホットスポット」は、公衆無線LANやルーター、スマートフォンのテザリング時の設定を行なう

 ダイレクトシェアモードでは、カメラを起動すると、カード内の無線LANも起動し、無線LANアクセスポイント(AP)として待ち受け状態になる。スマートフォンの無線LAN設定からWi-Fi SDのSSIDを探して接続すれば準備完了だ。初期SSIDとパスワードは説明書に記載されているものを入力すればいい。

Wi-Fi SDカードの設定はID・パスワードを入力する。初期値は説明書に記載されている
設定画面。「接続モードの切り替え」から、ダイレクトシェアモードとインターネットモードの切り替えが可能
「Wi-Fiオプション」からは、カメラ起動時にダイレクトシェアモードとインターネットモードのどちらを起動するか、一定時間後に無線LANをオフにするかの設定が可能
インターネットモードの設定では、3つの接続設定を登録できる

 接続したら、アプリを起動する。アプリからは「閲覧」「Shoot & View」「設定」という3つの機能が利用できる。「閲覧」をタッチすると、カード内の画像がサムネイルで一覧表示される。サムネイルをタッチすれば、そのまま画像を確認できる。ただし、いったん画像をスマートフォン側にキャッシュするために、表示されるまでの待ち時間がある。状況が良ければ、2,020万画素のソニー「サイバーショットDSC-RX100」の画像は4〜5秒で表示される。

カードに接続して「閲覧」をタッチすると、カード内のフォルダが表示される。この場合は「/WIFISD/DCIM/200MSDCF」が画像フォルダ
サムネイルが一覧表示される

 画像読込はすぐ始まるわけではないので、読み込みが開始される前に左右のフリックをすれば次々画像送りができるようになっている。画像を表示する際に多少の待ち時間があるのはしょうがないだろう。画像を表示しただけだと、スマートフォン側に画像はダウンロードされておらず、実際に画像を活用するためにはダウンロードボタンを押して、カードからスマートフォンに画像を転送する必要がある。iOSの場合、「App Folderにダウンロード」「カメラロールにダウンロード」とダウンロードする場所を選ぶ必要がある。

左下にあるダウンロードボタンをタッチすると、画像をスマートフォンにダウンロードできる
ちなみにこちらはiPad miniでのUI。機能自体はAndroid版と変わらない

 Androidの場合は「WIFISD」フォルダに保存される。テストした「HTC J butterfly」や「MEDIAS TAB」の標準ギャラリーアプリだと、なぜか最初はこのフォルダを認識してくれなかったが、しばらくしたらいつのまにか認識されていた。このあたりはAndroidの動作の問題だろうが、例えば画像ビューワーアプリ「QuickPic」ではすぐにWIFISDフォルダは認識された。

Android標準のギャラリーアプリ(HTC J butterfly)。WIFISDフォルダに画像がダウンロードされる。また、「thumbフォルダ」も生成され、サムネイルがキャッシュされている

 アプリ自体に画像閲覧機能が搭載されており、ダウンロードされた画像はアプリ内で閲覧できる。ただし、機能は最小限で、拡大縮小や画像送りとダウンロードした画像の削除くらいしかできない。iOSアプリには、Facebookとメールでの共有機能も搭載しているが、カメラロールにダウンロードして、そのほかのアプリやOS標準機能を使った方が自由度が高い。

 Androidは、せっかくのOSの機能としてインテントがあり、さまざまなアプリに画像を転送できるのだが、アプリ側にそういった機能は搭載されていない。標準のギャラリーアプリなどを使うといいだろう。また、Androidアプリの画像閲覧機能は画像送りの動作がおかしいようで、この辺りは改善が必要だろう。

画像をダウンロードして表示したところ。左右フリックで前後の画像を確認できる
右下の「共有」アイコンをタッチすると、FacebookとEメールでの画像共有ができる

 続いて「Shoot & View」機能。これは、カードとスマートフォンをつないだ状態で撮影をすると、自動的にスマートフォン側に撮影した画像が表示される機能だ。リモートファインダーやリモート撮影のようなカメラの操作はできないが、撮影した画像がすぐにスマートフォンに表示され、擬似的なリモート撮影機能として動作する。特別な操作をしなくても、すぐにスマートフォン画面で確認できるのがメリットだ。

 この場合、キャッシュを転送しているだけなので、画像を利用するにはダウンロードボタンを押して、スマートフォンに画像をダウンロードする必要がある。その後は「閲覧」と同様に画像を利用すればいい。

カメラで撮影すると、自動的に画像の転送が始まり、その後画像が表示される

 連続して撮影すると、転送が終わる度に次の画像を取得するので、必要な画像があったらそこでダウンロードボタンを押す。さかのぼって必要な画像を利用したい場合は、「閲覧」に移動し、カード内の画像を見つけることになる。

 このダイレクトシェアモードは、周囲に利用できる無線LAN環境がない場合に活用できる。無線LAN同士でアドホック接続するため、外部への通信環境が不要だし、インターネットの回線状況に左右されずに画像をスマートフォンに転送できるのがメリットだ。

 要望としては、特にAndroidアプリは無線LANの設定をアプリから操作できるので、アプリを起動すると無線LANの接続先をWi-Fi SDカードに切り替え、アプリを終了すると設定を元に戻す、という機能があっても良かった。

 画像表示に関しても、最初はサムネイルだけ表示し、ダウンロードボタンを明示的に押して初めて高画質のファイルをダウンロードする、もしくは画像を表示したらそのままフル画像をダウンロードする、という設定も欲しい。キャッシュをダウンロードして画像表示し、それとは別にさらに画像をダウンロードしなければいけないという仕様は、もう一工夫欲しいところだ。

インターネット接続と画像転送の両立

 Wi-Fi SDカードのもう1つの機能が、「インターネットモード」。こちらはインターネット接続と画像転送の両方を実現したモードだ。

 Wi-Fi SDカード側に無線LANルーターの接続情報を登録しておくと、カメラ起動時にカードは無線LANクライアントとなり、そのルーターに接続する。その後、同じルーターに接続しているほかのスマートフォンから、カードにアクセスする、という仕組みだ。

前述の設定で無線LAN設定を登録しておけば、スマートフォンのテザリング機能を起動するとカードが接続され、画像の転送が可能になる。この状態でも、このスマートフォンはインターネット接続できる

 機能としては「閲覧」も「Shoot & View」も変わらず、「ダイレクトシェアモード」と全く同じ機能が利用できる。このモードの最大のメリットは、カードとスマートフォンが接続された状態でも、スマートフォンがインターネット接続できる、という点だ。仕組み的には、ルーターやテザリングをオンにしたスマートフォンを介してLAN内で画像を転送しているため、画像を転送するスマートフォンも、カードと同じルーターに接続しておく必要がある。例外的に、テザリングをオンにしたスマートフォンにカードを接続した場合は、そのスマートフォンに画像を転送できるし、そのスマートフォンも直接インターネット接続ができる。

 ダイレクトシェアモードだと、スマートフォンの無線LAN接続を占有するため、スマートフォンの携帯回線を使ったインターネット接続ができない。そのため、カードと接続した状態だとインターネットが使えず、例えば画像を受信してそのままSNSに投稿するといったことはできない。画像転送が終わったら、カメラの電源をオフにしてWi-Fi SDカードの無線LANを切るか、スマートフォンの無線LAN設定を切り替えなければならない。

 しかし、インターネットモードだと、スマートフォン側はルーター経由でインターネット接続できるため、カードからの画像転送とSNSへの投稿が同時にできる。画像転送からインターネット接続に切り替える際も設定変更が必要がないため、特にShoot & Viewを使えば、撮影→スマートフォンに表示→ダウンロード→SNSへ投稿という動作が流れるように行なえる。ここでもやはり「ダウンロードボタンを押す」という手間があるので、自動ダウンロードを設定でオンにする機能も欲しいところだ。

 これを利用するには無線LANルーターが必要だが、「Pocket WiFi」のようなポータブル無線LANルーターに加え、最近は各社のスマートフォンに「テザリング」機能が搭載されるようになっている。これを利用すれば、インターネットモードをどこでも使えるようになっている。この辺はEye-FiやFlashAirにはない機能だ。

 ダイレクトシェアモードとインターネットモードは、撮影の状況で使い分けると良さそう。インターネットモードは、スマートフォンがそのままインターネット接続できるので、撮影後にすぐ画像を投稿したり、クラウドにアップロードしたい場合に有利だ。例えばDropboxのカメラアップロードやau Cloudのような自動アップロード機能のあるサービスと連携できれば面白いだろう。試した限りは、どちらもWIFISDフォルダの画像を認識して自動転送はしてくれないようだった。また、テザリングをオンにしたり、ルーターに接続したり、という一手間が必要なので、これらを常時利用している場合や、1カ所にとどまって必要な設定をしてから撮影するといった場合なら使いやすい。

 ダイレクトシェアモードは、スマートフォンの無線LAN設定を切り替えるだけで転送できるので、画像を転送してすぐに投稿しない場合には便利。設定を切り替えるといっても、無線LANをオンにしておけば、他の無線LANに接続していなければ、スマートフォンが自動的に接続してくれるので手間はない。

まとめ

 無線LAN内蔵SDカードは、いくつも製品が登場してきている。特にiPadをはじめとしたタブレットの登場で、デジカメの画像を手軽に大画面で閲覧、編集、投稿といった作業ができるようになっているが、画像の転送に手間がかかるという課題があった。

 カメラに無線LANが内蔵されれば手間は減るが、無線LAN内蔵SDカードの場合、カードを差し替えるだけで、どのカメラでも同じ設定で利用できるというメリットもあり、Eye-Fiのクラウドサービスのような独自サービスも提供できるし、今回のWi-Fi SDカードのインターネットモードのように、独自の機能も盛り込みやすい。

 しかも、タブレットの普及と期を同じくして、携帯各社がテザリング機能を提供し、高速通信サービスのLTEが広がっている中、カメラとスマートフォン(タブレット)との連携がさらに使いやすくなっている。今回のWi-Fi SDカードは、画像転送とインターネット接続を両立した機能を実現しており、そうした意味で使い勝手のいい製品だ。

小山安博