ソニー「パーティーショットIPT-DS1」

“カメラマンいらず”の新発想アイテム

サイバーショットDSC-TX1を装着したパーティショット「IPT-DS1」

 裏面照射型CMOSセンサーを搭載したサイバーショットDSC-WX1とサイバーショットDSC-TX1で、秋冬商戦に攻勢をかけるソニーだが、忘れてはいけないのがパーティーショットことIPT-DS1だ。

 その機能をざっくり解説すると、デジタルカメラを取り付けると周囲にいる人物を自動で撮影、記録するというもの。何もしなくてもカメラの回転、またはチルト動作を延々と繰り返し、構図内に人物がいると判断すると撮影。カメラマンいらずとでもいうべき、すごいアイテムなのだ。

 対応するデジタルカメラは、DSC-WX1およびDSC-TX1。パッケージにはそれぞれに対応したプレートが同梱してある。今回はDSC-TX1を使用した。

 IPT-DS1本体に装着済みのベースにプレートを取り付けて電源を入れると、チルトアームが初期ポジションに移動し、スタンバイ状態になる。次にDSC-TX1の電源をオン。DSC-TX1とIPT-DS1を合体させると、自動撮影が始まる。

 この状態でIPT-DS1のMENUボタンを押すと、DSC-TX1の背面液晶モニターに、設定アイコンが現れる。設定項目は「回転角度」、「撮影頻度」、「フラッシュモード」の3つで、DSC-TX1の場合はタッチパネルで操作が可能だ。


ベースとプレート(DSC-TX1用)を装着した状態。向かって右にある端子がカメラとの通信を行なう
背面の端子部。映像出力、DC入力、電源スイッチが並ぶ単3電池2本を電源として使用。別売のACアダプターも利用できる。底面中央には三脚穴も
DSC-TX1の底面。左の端子がIPT-DS1と接合する取付けたところ。回転・チルトともにスムーズだ

 


以前掲載したIPT-DS1の動作ムービー

 回転角度は「無制限」、「180度」、「90度」から選択できる。撮影頻度は「高」、「標準」、「低」の3段階。フラッシュモードは「オート」または「発光禁止」を選べる。ただしDSC-WX1の場合、フラッシュモードはカメラ側から設定する必要がある。記録はJPEGのみ。動画やパノラマ撮影は行なわない。

IPT-DS1のMENUボタンを押すと、専用メニューを表示実験の様子。防滴仕様ではないので、飲食時には設置場所に注意したい

 今回、居酒屋で編集部員による擬似的なパーティーを行ってみたところ、暗い室内にも関わらず、結構シャープな顔写真が得られた。顔認識の精度の高さに加え、高感度に強い裏面照射型センサーの実力もあるのだろう。さらにズーム動作も細かく行なっている様子。常に顔が構図の中心にくる日の丸構図に限られていないのにも感心した。

 説明書によると、自動撮影のタイミングとしては「(最初に)良い構図になったとき」、「構図が大きく変わったとき」、「良い構図で笑顔のとき」と記されている。確かに撮影結果を見るとなかなか渋い構図のカットがいくつかあった(人物が動いたことによる偶然もあるかもしれないが)。

 もちろん、後から写真を見た編集部員からは、「オレだったらこうやって撮る」みたいな負け惜しみもいくつか出たが、その場にいた人は全員酔っていて、誰もが撮影どころではなかったことは忘れないでほしい。少なくとも写真に手ブレがまったく見られないのは、酔った人間にまねできないIPT-DS1の構造からくる利点だ。

 今回は回転角度「180度」、撮影頻度「高」、フラッシュモード「非発光」にして2時間ほど撮影させてみた(最後30分ほどはフラッシュモード「オート」)。その間、IPT-DS1は黙々と撮影を続け、出席者の性格までをも引き出した自然な表情の写真を計256枚残してくれた。たまに壁やビールジョッキを撮影して笑いをとるのも忘れないし、そうした静物写真がなかなか味わい深い出来だったりするのだ。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、DSC-TX1で撮影したリサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
日の丸構図にならないよう気を配っているらしい。ズーム操作も自動で行ない、画角を整えているようだ
ひたすらビールグラスにピントと露出をあわせていた時間帯も(左)。人物を撮った写真(右)より趣深い写真に思える

 電源は単3電池2本。動作時間は、アルカリ乾電池で約11時間、ニッケル水素充電池で約12時間となっている。夜を徹したパーティでも明け方まで大丈夫だ。また、別売のACアダプター「AC-LS5K」(3,675円)も利用できる。

 背面には映像出力(コンポジット)端子もあり、カメラが捉えている映像をテレビなどに映すことが可能。誰をどう狙われているかがわかるので、なかなか盛り上がると思う。動画が記録できないIPT-DS1だが、映像出力を使えばHDDレコーダーなどへの記録が可能だろう。なお、ACアダプターや映像ケーブルを装着しているときは、回転角度のうち「無制限」が選べなくなる。

 ちなみに最初は興味津々だった出席者たちも、1時間ほど経つとIPT-DS1の存在をほとんど忘れてしまっていた。動作音が静かなせいもあるが、その場にとけ込み空気を乱さないその撮影スタイルは、スナップの名手のようでもある。パーティはもちろん、小さな子どものいる家庭でも大活躍するだろう。撮影担当から開放され、子どもと一緒の写真をたくさん残せるのはうれしい。

 かつて、声に反応してシャッターが切れるコニカの「カンパイ!」というフィルムカメラがあり、国産カメラ史にその名を残しているのは有名なところだ。ソニーのパーティショットも末永く楽しまれる撮影アイテムとして、新たな歴史を築いてほしい。DSC-WX1、DSC-TX1以外の機種への展開も期待したい。



(本誌:折本幸治)

2009/8/28 00:00