デジカメアイテム丼

iPhoneでクリップオンストロボを発光?

意外と便利なワイヤレスコントローラー「TRIC-100」

ここ数年でスマートフォンは爆発的に普及した。そのおかげで多くの人々が日常の多くの光景をスマートフォンに内蔵されたカメラで撮影するようになった。いつでも手元にあり、素早く簡単に撮影ができるうえ画質も良い。もうカメラとして見ても高い完成度を持っているといえるだろう。

しかしスマートフォンのカメラは暗いところに弱いというウィークポイントがある。小型で薄い筐体に組み込むために撮像素子を大きくすることが難しく、そのため高感度撮影では比較的ノイズが乗りやすい。

また明るさを補うための補助光としてLEDライトを搭載してはいるが光量も少なく、また色の再現性はとても低い。

それだけにスマートフォンカメラでもストロボが使えればいいのにと思ったことのある人は少なくないはずだ。そんな望みに応えるべく登場した製品がある。スマートフォンカメラのシャッターにシンクロさせて外部ストロボを発光させることができる「無線シンクロコントローラーTRIC-100」である。

本体はすっきりした形状で小型

TRIC-100は、一般的なクリップオンタイプのストロボなどをスマートフォンカメラのシャッターと同調させて撮影を可能にしてしまうこれまでにない製品だ。直販サイトでのみ販売中で、販売価格は税込5,900円。

記事執筆時点で対応するスマートフォンはiPhoneのみ(iPhone 5s, 6, 6 Plus,または第6世代のiPod touch いずれもiOS8以降のもの)ではあるが、電波式で外部ストロボをコントロールできる製品と聞くと、最近流行りのラジオコントロールストロボを彷彿とさせる。しかも一般的なシュー形状でX同調接点を持つクリップオンストロボならば、既存のほとんどのストロボがコントロール可能だという。ガジェット好きにはたまらない話だ。

形状および大きさはデジタル一眼カメラで使用するワイヤレスストロボコントローラーに似通っている(スタンドは付属しない)。

バッテリーは単4型電池2本を使用。

底面および側面。 側面に電源スイッチ、外部ストロボとのシンクロターミナル端子が配置されている。またクリップオンストロボと同様の形状をしている脚には、三脚ネジ穴も用意されている。

TRIC-100のシンクロターミナルにシンクロケーブルを接続することで、クリップオンタイプ以外のストロボでもシンクロ発光させることができる。つまりスマートフォンのカメラで大型ストロボを使用したライティング撮影も可能ということだ。

専用アプリは2種類。有料版はカメラ機能が充実

TRIC-100を使用してスマートフォンで撮影を行うには、専用カメラアプリ「TricCam」(有料)または「TricCam Lite」(無料)が必要だ。App StoreからiPhoneにダウンロードしインストールを行う。

iPhoneとTRIC-100のリンクはBluetoothで行われる。クリップオンストロボはTRIC-100のシューに接続しスイッチをONにしマニュアル発光モードにセットする。

TRIC-100のスイッチをONにしたうえで、iPhoneのBluetooth設定をONにし「TricCam」および「TricCam Lite」を立ち上げる。リンクが確立されるとTRIC-100のLEDが点滅から点灯へと変わる。リンクされないときは画面右下の同期ボタンをタップしてリンクを行う。

基本的な撮影方法はiPhoneのカメラアプリと共通している。iPhoneを被写体に向け画面に表示し、画面下部に表示されている円形のシャッターボタンをタップするとシャッター音と共に撮影が行われる。撮影された画像はiPhoneのカメラロールに保存される。

有料版のTricCamは、最大4台のTRIC-100を同時にシンクロすることができる。無料版のTricCam Liteは1台のみ。

「TricCam」および「TricCam Lite」では以下のパラメーターをスライダーで設定できる。また、スライダー表示部分を上下にスワイプすると、各パラメーターのスライダーに切り替えることができる。ただし無料のTricCamでは機能が制限されるため、設定できるのはISO感度のみとなる。

ISO感度
シャッタースピード(TricCamのみ)
ホワイトバランス(TricCamのみ)
マニュアルフォーカス(TricCamのみ)

デジタルカメラのときのと同じ効果が

それでは実際にTRIC-100とTricCamを使用してストロボ撮影を行ってみる。

今回TRIC-100と組み合わせたストロボは、「ニッシンデジタルi40」キヤノン用とフォーサーズ用の2台。それぞれをTRIC-100のホットシューに取り付けて電源を入れる。

i40はTTLオート調光に対応したストロボだが、TRIC-100との組み合わせではTTLオート調光は使用できない。したがって発光モードはマニュアルモードに合わせる。

まずはi40を取り付けたTRIC-100 2台を使って室内で小物をライティング。i40の光量はマニュアルで個別に調整する。

撮影画像。部屋の窓から入る光のみで、iPhone標準のカメラアプリで撮影。逆光で被写体が影になっている。

TRIC-100 + i40 2台を使って2灯ライティングしTricCamで撮影。被写体の左前からと右奥から光を当て明るくした。ホワイトバランスは5500Kに設定。iPhoneでストロボライティング撮影ができるのは新鮮だ。

同じライティングでTricCamのホワイトバランス設定を7500Kに設定して撮影。標準の5500Kに比べアンバー色になっているのがわかる。

TricCamのマニュアルフォーカスでは黄色枠内を拡大してピント合わせをすることもできる。

次に屋外で人物撮影を行った。スマートフォンでの撮影時に失敗の多い逆光撮影を想定して、TRIC-100の効果を見てみる。

カフェのテラス席にて撮影。背景が明るく人物が逆光となり顔が暗くなってしまった。

TRIC-100 + i40 を人物のテーブルの上に置いてTricCamにてシンクロ撮影。フロントライティングによって人物を明るく撮影することができた。

実際の撮影状況。小型のストロボとの組みわせなら見た目もあまり大げさにならずに済む。このようなシンプルな組み合わせでも効果的なストロボライティング撮影ができてしまう。

日光が射さない暗い階段で人物を撮影。人物も暗く、また日陰なので青っぽい写真となった。

TRIC-100 + i40のストロボ光を人物の左上方からあててライティングした。レンガの壁にストロボ光による影が流れているのがわかる。また自然光に近い色温度を持つストロボ光なので色の再現性が良いのがわかる。

スマートフォンでもストロボが使える!

今回、実際にTRIC-100を使用してiPhoneで撮影を行ったわけだが、スマートフォンでストロボ撮影ができるのは意外なほど楽しいものであった。

日頃からスマートフォンで撮影してその写真をSNSにて公開するということを行っているなかで、時折「スマホ撮影でもストロボが使えれば」と思うシーンに出会うこともよくある。もちろんデジタル一眼カメラで撮影して、それをスマートフォンに転送するという方法もあるにはあるが、あえてスマホとTRIC-100+小型クリップオンストロボのみで作品撮影を行うというのも面白い試みだろう。

ただ、この製品はアプリも含めて開発されたばかりのものであるためか、まだアプリの不安定さが目立つ。私の使用しているiPhoneの環境ではアプリがクラッシュしてしまうことが何度かあった。

またiPhoneカメラの構造上、シャッタースピードは1/30秒以下でなければストロボ光と同調しない。更に時折1/30秒以下でも同調がうまくいかないケースもあった。まだまだ熟成が必要な製品ではあるが、発想は面白いので今後に期待する意味でも、誰よりもいち早く手に入れて遊び倒すのがオススメだ。

モデル:近藤真美

礒村浩一

(いそむらこういち)1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校(現 東京ビジュアルアーツ)卒。女性ポートレートから風景、建築、舞台、商品など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーおよび撮影ツアーの講師を担当。デジタルカメラに関する書籍やWeb誌にも数多く寄稿している。近著「オリンパスOM-Dの撮り方教室 OM-Dで写真表現と仲良くなる」(朝日新聞出版社)、「マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド」(玄光社)など。 2015年9月よりデジタルハリウッド「カメラの学校」講師。Webサイトはisopy.jp Twitter ID:k_isopy