ベルボン「Twin1 R4N」

とにかく多機能なワイヤレスリモコン

Twin R4Nに含まれるリモコンユニット

 D3X、D3、D300、D200といったニコンの上級機に、10ピンターミナルと呼ばれるアクセサリー用の端子があることは良く知られている。そこでお世話になるアイテムといえば、「MC-36」や「MC-30」といったリモートコードが思い浮かぶ。微妙なブレを抑えるために、風景撮影などで多用している人も多いはずだ。

 ただしMC-36、MC-30ともワイヤードのリモコンであり、場合によってはケーブルが邪魔に感じるケースも結構ある。もちろんニコンにもワイヤレスのリモコン「ML-L3」が存在するが、D90、D5000、COOLPIX P6000などが対応機種。赤外線受光部がないミドルクラス以上の機種では使えないのだ。

 今回紹介する「Twin1 R4N」は、10ピンターミナル搭載機種に対応したワイヤレス赤外線リモコン。製造は韓国のセキュライン社で、6月よりベルボンが国内で扱うようになった。価格は9,250円。

 対応機種は、D3、D2、D1、D700、D300、D200。富士フイルムのFinePix S5 Pro、FinePix S3 Proでも使用できる。

 パッケージの主な構成要素は、リモコン(送信機)と受信機。リモコンの電源は23A型電池で、受信機はカメラから電力を受ける。豆電球のような受信機を10ピンターミナルにねじ込み、カメラの電源をオンにすると、準備は完了となる。

左から受信機とリモコンリモコンの電源は23A型電池
受信機のカメラ接合部。10ピンターミナルにネジ留めできるD300の10ピンターミナル(2つ並んだ端子のうち下側)
受信機は突出しており、状況によっては横や上からの受信もたやすいD300に装着したところ。収納時や移動時に少し気を使う

 動作モードは3種類。受信機との通信を行なう「プライベートモード」が基本だ。リモコンのシャッターボタンを半押しするとカメラのAFとAEが動作。そのまま押し込むとレリーズが行なわれる。また、リモコンのシャッターボタンを押してから2秒後にレリーズが始まる遅延シャッターも選べる。記念撮影など、リモコンを押している姿を写したくない場合に使える機能だ。また、バルブシャッターも可能なので、花火撮影にも利用できる。

 「ユニバーサルモード」にすると、赤外線受光部を備えたカメラ(D90やD5000など)のリモコンになる。つまり、R4Nのリモコンひとつで、クラスを超えた様々なニコンのデジタル一眼レフカメラが制御できるのだ。サブ機としてエントリー機を撮影地に持ち込んでいる人なら、リモコンが1つですむのはありがたいだろう。

 最後のモードは「ミニライト」とセキュラインが呼んでいるもの。リモコンのシャッターボタンを押すと、リモコン上部に埋め込まれた白色LEDが点灯する。シャッターボタン半押しで弱く光り、押し込むと強く光るという凝り具合だが、夜景の撮影中、手元を照らしてカメラの操作部を確認する程度の明るさと思えば良い。以上の3モードの切り換えは、リモコン底部のスライドスイッチで行なう。

動作モードは背面のスライドスイッチで切り替えるケーブルも付属。ワイヤードでも利用できる
リモコンの使用例。手になじむ形状だ

 赤外線通信と聞くと、カメラの正面からしか操作できないイメージがある。しかし実際に使ってみると、受信部が突き出ているためか、状況によってはカメラの後ろ・横・上からもレリーズが可能だった。そのため、個人的にはケーブル付きの純正リモコンよりも扱いやすく感じたのは収穫だった。

 なお、R4Nのリモコンに付属のケーブルを差し込むことで、ワイヤードリモコンに早変わりする。確実なレリーズを求めたい一世一代のシャッターチャンスのときは、こちらを選ぶのかもしれない。

 作動距離は公称で最大100m。日中の明るい太陽の下で実験してみると、20m前後で反応しなくなったが、それでも驚異的な距離といえるだろう。

 今回はワイヤレスリモコンの利便性を確かめるため、セルフポートレートを中心とした作例にチャレンジしてみた。

 まずはカメラから15mほど離れて、高倍率ズームの望遠端(270mm)で自分を撮影する例。事前にマニュアルフォーカスでピントを合わせておき、撮影位置についてから遅延シャッターを使ってレリーズした。リモコンによる一般的な記念撮影で、ここまで望遠効果を出せる例は珍しいと思う。

 実はこの距離だとカメラから立ち位置までダッシュすれば、10秒セルフタイマーでも撮影は可能だ。ただしタイミングはぎりぎり。R4Nなら走る必要も無いし、納得いくまで何度もレリーズできる。両者を試してみたが、炎天下だとその差は大きかった。

カメラから離れてのポートレート撮影に挑戦。10秒セルフタイマーでは少々きつい距離だ270mm相当で撮影。何度かトライして撮れた1枚(800×531ピクセルにリサイズ)。D300 / AF 18-270mm F3.5-6.3 Di II VC LD Aspherical [IF] Macro / F8 / 1/400秒 / 0EV / ISO200 / 270mm

 次は一脚につけたカメラを上に掲げ、背景と一緒に自分をフレームに収める例だ。レンズは対角魚眼レンズを使用した。これもセルフタイマーを使うことが多いパターンだが、リモコンならカメラを掲げたまま、納得いくまで何度もレリーズできる。バリアングル液晶モニターを採用する機種なら、さらにフレーミングが楽だったかもしれない。ケーブル付きのリモコンでもできないことはないが、ワイヤレスだとケーブルの取り回しに悩むこと無く、腕力の無い撮影者でも思いのほか簡単に撮影できた。

一脚を伸ばして自分を中心に撮影。重いD300を支えつつの撮影なので、ワイヤレスでの操作が重宝した対角魚眼レンズを使い、海を大きく入れてみた(800×531ピクセルにリサイズ)。D300 / 10mm F2.8 EX DC Fisheye HSM / F16 / 1/200秒 / ISO200 / -0.3EV / 10mm
一脚を使って頭上から撮ると、展望台からの眺めもこの通り(800×531ピクセルにリサイズ)。D300 / 10mm F2.8 EX DC Fisheye HSM / F8 / 1/250秒 / ISO200 / 0EV / 10mm

 最後はネコと戯れる自分を撮るという例。屋外でネコを撮影していると、人なつっこいネコが撮影者にすり寄ってくることが結構ある。そうなるとたいていのレンズでは撮影が続行不能になる。レンズに猫が近すぎるため、ネコと遊んでやるしかないのだ。そんなとき、ミニ三脚に載せたカメラの前にネコを誘導し、遊びながらR4Nでレリーズするというアイデアを試してみた。逆に、人が来ると逃げるネコのテリトリーにカメラを設置し、離れた場所からレリーズするのも手だ。むしろそれこそワイヤレスレリーズアイテムの正当な使い方なのだろう。

ネコと遊びながら、離れたカメラのシャッターを切る。ネコが近くても撮影できるが、フレーミングが難しかった(800×531ピクセルにリサイズ)。D300 / AF 18-270mm F3.5-6.3 Di II VC LD Aspherical [IF] Macro / F4.2 / 1/400秒 / ISO200 / 0EV / 270mm

 このようにR4Nを使うと、誰かに撮ってもらわないと難しい写真が一人で撮れるようになる。まあ今回のようなお遊び的な撮影はともかく、普通のレリーズアイテムとしても充分に使えるので、ニコン中級機以上のユーザーで、ケーブルを煩わしく感じている方には強くおすすめしたい。

  なおベルボンからは、キヤノン、ニコン、ペンタックスの赤外線搭載モデルに対応した「Twin1 R3-UT」も発売中。こちらはR4Nから10ピンターミナル用の受信機を同梱しないパッケージで、 リモコンとケーブルが主な内容物。ワイヤレス、またはケーブルレリーズを使い分けることができる。ユニバーサルケーブル付属の「R3-UT」と、ニコン用ケーブル付属の「R3-UTN」(ともに4,830円)が発売中だ。



(本誌:折本幸治)

2009/7/1 12:05