小林幹幸の “フィルデジ” トーク
フィルム写真をInstagramに!その魅力を現役ファッションモデルに聞いてみました
2017年10月3日 07:00
“フィルデジ”とは、フィルムで得られたアナログ画像をデジタルにして活用すること。アナログ独特の魅力が、SNSなどデジタルの世界に広がります。
前回は、“フィルデジ”の命名者、写真家・小林幹幸さんによる作品集をお届けしました。今回は、“フィルデジ”を活用しているモデルのモーガン茉愛羅(まあら)さんに、小林さんがインタビューします。アナログカメラとの出会いから、“フィルデジ”の魅力までたっぷり語ってもらいました。(編集部)
“フィルデジ”ギャラリーの撮影・文およびインタビューの聞き手=小林幹幸
モーガン茉愛羅さん
1997年生まれ。イギリスと日本のハーフ。2014年にモデルデビュー以後、世代・ジャンルを問わず幅広いファッション誌などでモデルを務める一方で、ドラマやCMなどにも出演。今年は舞台にも初挑戦するなど活躍の場を広げている。
主な出演:
ファッション誌「LARME」「sweet」
CM「ユニバーサルスタジオジャパン」「メルカリ」
舞台「足跡姫〜時代錯誤冬幽霊」
公式アカウント:
Twitter:https://twitter.com/malapadayo
Instagram:https://www.instagram.com/malaciel/
LINE BLOG:https://lineblog.me/morganmala/
“フィルデジ”ギャラリー in 代官山 北村写真機店
今回取材させていただいたのはモーガン茉愛羅さん。日本生まれの20歳。コマーシャルの撮影の時とは打って変わって大人から子供の表情をクルクル変えて見せてくれました。イメージは地下鉄のザジ!(笑)
取材にお邪魔した代官山 北村写真機店で、ウィンドウ越しの茉愛羅さん。
本日のスタイリングはオーバーオールでストリートカジュアルを意識して。コバヤシの本日のカメラも中判のペンタックス67、くっきり写りすぎないようにガラス窓を使っています。
代官山 北村写真機店のラインナップの中からライカを選ぶ茉愛羅さん。そのドキドキ感をペンタックス67の標準レンズ105mmで写し止めます。
フィルデジで利用するときも、35mmカメラで粒子を楽しむ、あるいは中判カメラでレンズの遠近感を楽しむといった、2つの方法がある気がします。
憧れのカメラ、ライカMPを覗き込む、茉愛羅さん。
フィルム描写の良さはちょっとしたブレやボケも表現になってしまうこと。一瞬の表情の変わっていく瞬間を写します。
デジタルだとなんだか全てが写りすぎてしまう気がするんですね。
フィルムの良さのひとつ。そこにいる存在感や温度、湿度みたいなものまで写ってくること。
外はもうすぐ雨かな?なんて表情を狙いました。
ガラスのウインドウ越しから幻想的な雰囲気を写し込みます。
わざと反射をさせるようにレンズをガラスから離して。ガラスの反射にカメラが見えなかったのか結果、自然な表情が撮影できました。
インタビュー:なぜフィルムカメラなの? なぜ“フィルデジ”なの?
モデル友達の間で人気!のフィルムカメラ
小林:“フィルデジ”という言葉を流行らせようと思っていて、そこでインスタ世代のモーガン茉愛羅さんに、“フィルデジ”のことを聞いてみたいのです。
今、「写ルンです」のブームが来ていているけど、それで撮った写真を雑誌の誌面が載っているのを見たとき、「このデータどうしているの?」と聞いたことがあります。すると「データをそのまま載せてます」とのこと。データってインデックスプリントのこと? って聞くと、そうだって言うんですね。で、自分でも試してみたら、これが雑誌の見開きでも十分でした。
「フィルム」なんていうのは、デジタル化の波の中で闇に葬られる存在ですけど、皆で声を上げることで、フィルムカメラが売れるようにり、フィルム自体が売れるようになる。そうすれば、フィルムはなくらなくて済む。そんな気持ちで“フィルデジ”って言い始めたんです。
最近、女性にフィルムユーザーが多いってことは知っていましたが、まさかモデルさんが使っているとは思いませんでした。
茉愛羅:私の周りでは、1つフィルム(カメラ)を持っているというのが主流ですね。何処かに行く時には、写真を撮るということは大事なことなので、フィルムはちゃんと持ってきたかって確認します。
小林:どういう方たちですか?
茉愛羅:モデルの友達ですね。モデルって写る仕事なので、例えば一緒に旅行に行くと、旅先ではお互いが被写体となって作品のひとつになります。モデルの仕事にはカメラの存在は欠かせないものなので、だからこそ、私生活でも欠かせない。写真が楽しくて仕方がないですね。
小林:デジカメではなくて、フィルムカメラなんですね。
茉愛羅:そうですね。フィルムって、どこかノスタルジックな感じで、思い出を思い出のままでもう一度見ることができるというか、リアリティがないところが逆に好きですね。あと、好きなフィルムで撮ってて、けど撮っている最中は見ることができない。現像したいと思っても、仕事が入ってその日は出すことができない。現像に出せるのが3日後……。早く見たいのに見ることができない。現像し終わっても、今度はPCじゃないと写真が見られない。全てが面倒なんですけど、面倒なのが凄く楽しい。
私達みたいなデジタル世代からすると、アナログが新しい。新鮮なんです。
小林:モデルの友達でフィルムを使っていらっしゃる方は何人くらいいますか?
茉愛羅:もう、たくさん居ますよ。フィルムカメラを持ってます。
小林:どんな機種ですか?
茉愛羅:周りで人気なのは、CONTAX T2ですね。カラーも、ちょっと尖りたい子は、ゴールドじゃなくて、チタンブラックを選んでます。
どんなフィルムカメラが好き?
小林:フィルムカメラを手にした経緯を教えてください。
茉愛羅:切っ掛けは、知り合いが引っ越すという理由でカメラを整理してて、良かったらどう? ってプレゼントでいただきました。それが一眼レフカメラのミノルタX-700で、それが一昨年(2015年)の11月の話ですね。
それまでも、買おうとは思っていたんです。けど何が良いのかわからないし、高いし。
小林:そこから(フィルムカメラの)PENを使うようになった切っ掛けはなんだったのでしょう。
茉愛羅:確か、近所のおばあちゃんがやってるリサイクルショップみたいな「何でも屋さん」で友達が吊されているカメラを見つけたんです。それがオリンパスPEN EE2で、500円だったんです。私は500円だし動かないのでは? といったんですけど、友達は大丈夫って……。友達が写真を撮ったらキレイに撮れてる。しかも、72枚(36枚撮りフィルム)も撮れる。それを見たら、すごくPENが欲しくなっちゃって。ハーフの存在もそれで初めて知ったんですけど、倍も撮れていいの? って。もう、一目惚れでしたね。
小林:ハーフは粒子が出ますが、それがまた良い感じですよね。
茉愛羅:そうなんです。キレイすぎないというか。ある意味幻想的に見える。絵本ぽいというか、そういう感じが好きですね。
小林:フィルムにもこだわりがありますか?
茉愛羅:そうなんですよ。AGFAPHOTO VISTA 200とか、チョット贅沢したい時はKodak Portra 400とか。でも、Portraを使う時は一眼レフカメラで撮りたい時ですね。
小林:一眼レフカメラはいまもX-700を使ってますか?
茉愛羅:使ってますね。ただ、レンズのピントが甘くなってきて、それでキレイに撮れないから、新しいのを探している最中です。カールツァイスのレンズが付いたものが欲しいのですが、手頃なものがないか探してます。
フォロワーを増やすには?
小林:ところで、Instagramのフォロワーは何人くらいなのでしょうか。
茉愛羅:7万8,000人くらいですね。
小林:すごい! フォロワーを増やすコツを教えてもらえますか?
茉愛羅:自分的には何も意識はしていなくて、新しい情報とかセンスとかを出すようにはしています。あと、毎日アップロードしていると、インスタ側が“フォローする人を見つけよう”という機能で紹介してくれることがあって、そこから投稿している写真のテイストが好きかもってフォローしてくれるみたいです。
良い写真を投稿する。フォロワーの増加はその積み重ねだと思います。投稿することで、発見だったり、自分の好きな感じの再確認だったりができて、投稿すればするほど自分がわかりやすくなってきますし。
あと、最近だと中国の方のフォロワーが増えていて、中国のSNS「Weibo」に私のファンページみたいなのがあるようで、そこには10万人の登録があるみたいです。私のインスタよりも多いんです。そんな感じで、海外、特にアジア圏のフォロワーが増えてますね。
小林:フィルムの写真をアップしたことに反響はありますか?
茉愛羅:やっぱりありますね。「#malafilms」というタグを付けてアップしているので、タグから投稿した写真をまとめて見ることができます。「#malafilms」の写真が好きと言ってくれる人がいて、嬉しいですね。
あと、インスタ以外にTwitterにもフィルム写真をツイートしてます。今までは身近な写真が多かったのですが、身近な中でも作品ぽいものをコンセプトを決めて撮るというのも面白そうですね。あと、例えば写真が好きな子2〜3人で作品を作って、リアルな展示なんかにも興味があります。
小林:いつもモデルになってくれる人はいます?
茉愛羅:特定ではないですけど、3〜4人はいますね。仲良くしている子の表情を撮りたいなって。やっぱり、近いからこそ引き出せる良い表情ってあると思うので。
小林:フォロワーからフィルムカメラ仲間ができたりしますか?
茉愛羅:モデル仲間とか、兄(クロウド・モーガン)ですね。兄は風景を撮るのが上手いですよ。私が写っている写真が投稿されていることもあります。
小林:現像はどこに出していますか?
茉愛羅:現像は渋谷のキタムラに出してます。通常の現像にプラス料金でスマホに転送してくれるサービスがあって、凄く活用してます。もちろん、フィルムは残していて、何年、何十年と残るものなので、例えば10年後とかに、今まで撮ってきたフィルムを一気に現像に出してみたいですね。
昔のフィルムから、当時は気づけなかった良さを感じることができたら良いですね。
インタビューを終えて
茉愛羅さんを紹介されたのは広告の現場で。「茉愛羅さんはフィルカメラが趣味だから話が合いそうですね」なんて紹介されて、2人とも同じカメラのユーザーなので話が合い、あれよと言う間にこの企画が決まりました。
フィルムカメラの前の茉愛羅さんは仕事のデジタルカメラの前の茉愛羅さんとは少し違う、人間性そのものが出るような輝き方をしていたとおもいます。
さすが本職のファッションモデルさんなのでInstagramの使い方を聞いた時にはびっくりしました。フィルムで撮っていることで多くの皆さんと繋がっていくって素敵だと思います。
フィルムのデジタル化はまだ見ぬ人をつなげたり多くの可能性を持っていると思います。“フィルデジ”という言葉が浸透することにより、中古カメラ屋さん、現像所が勢いを取り戻し、茉愛羅さんのような新しい才能を持った人が次々に出てくれたら嬉しいですね。
今後は”フィルデジ”をテーマにしたショートムービーなど作って良さを伝えられたらいいなと思います。