気になる(国産カメラメーカーブランド以外の)現像ソフトレビュー
国産現像ソフトの雄 SILKYPIX Developer Studio Pro 7を試してみる
かゆいところに手が届く細やかさ
2016年8月16日 11:00
カメラメーカー以外の著名現像ソフトを試用する本連載も3回目を数える。今回は国内の汎用現像ソフトとして歴史のあるSILKYPIXのうち、最上位ソフトのSILKYPIX Developer Studio Pro 7を紹介したい。
SILKYPIX Developer Studio Pro 7(以下、SILKYPIX)は、市川ソフトラボラトリーが開発、販売している純国産RAW現像ソフトで、機能を限定したかたちでカメラに同梱されていたり、純正ソフトにSILKYPIXのエンジンが採用されていたりなど、カメラメーカーとの関係が深い。
カタログに読み込む必要のないブラウザータイプのソフトで、WindowsとMacに対応する。現行バージョンはパッケージ版とダウンロード版があり、価格はそれぞれ税別3万1,500円、2万6,000円となっている。
なお、バリエーションとして、機能を抑えたスタンダードモデルとなるSILKYPIX Developer Studio 7、JPEG画像のみに特化したSILKYPIX Jpeg Photography 7、水中撮影専用のSILKYPIX Marine Photography Pro 4.0も用意されている。
試用環境
Mac mini(Late 2014)
CPU:2.6GHz Intel Core i5
メモリ:16GB(1600MHz DDR3)
ストレージ:1TB Fusion Drive(内蔵)、4TB HDD(外部・画像保管用、USB 3.0接続)
基本操作
起動してウィンドウが開くまでに6秒ほどかかり、選択しているフォルダー内の画像のサムネイルが順次表示される。カタログに読み込む必要がないので手間はかからない。
「サムネイル表示」から1枚だけを大きく表示する「プレビュー表示」に切り替えてから表示される画像が高精細になるのにずいぶん時間がかかる。ニコンD810やキヤノンEOS 5Ds R、ソニーα7R IIといった多画素機の画像だと20秒以上かかったりする。
これは、完全な「本現像結果」をプレビューする仕様だからで、一度表示されれば次からは早くなるが、終了して起動しなおしてみるとキャッシュが消去されてしまうため、また
画面の任意の部分をダブルクリックすると、その場所を中心にピクセル等倍表示になり、再度ダブルクリックすると全画面表示に切り替わる。
おもしろいのは、全画面表示で低解像度状態でも、ピクセル等倍にすると、表示している部分だけ素早く高精細表示に変わるところ(表示する画素数が少なければ短時間で処理できるので、高速化のためにそういう仕様にしているのだろう)。そのあたりを飲み込んで使うぶんには、「1:1プレビュー」が作成されるのを待たなくてはならないLightroomよりも快適に感じられる。
各種ツールのパネルは、初期設定ではフローティング・ウィンドウになっているが、個人的には、よく使うものは画面右側のコントロール・ボックスに入れておいたほうがいいように思う(本ページ冒頭のスクリーンショットを参照)。
ただし、マウスのホイールを回すとマウスポインターが重なっているパラメーターが変化する仕様なので、気をつけていないとコントロール・ボックスをスクロールするときにパラメーターがぐちゃぐちゃになってしまって泣きを見る。なので、調整が終わったらパネルはたたんでおくのがおすすめだ。
画像の調整は表示モードによらずに行なえ、「サムネイル表示」で複数の画像を選択した状態で操作を行なうことで、まとめて調整することもできる。ブツ撮りやスタジオポートレートなどでは便利に使えるだろう。
調整の操作は、さまざまなパラメーターのスライダーをマウスでドラッグすることで行なうが、スライダーを動かすたびに、プレビューの画質が大きく変化する(解像度の低い「簡易現像結果」になる)ため、歪曲収差の補正などの操作では特にストレスを感じた。
画像の調整データは、調整した画像ファイルが保存されているフォルダー内に「SILKYPIX_DS」という名称のフォルダーが作成され、その中に対象画像の調整データのファイルが保存されるようになっている。そのため、不用意に画像のファイル名を変更すると、未調整の状態にもどってしまうので注意が必要だ。
作例
解像力
シャープのモードは「ナチュラルシャープ」「ノーマル」「ピュアディテール」「アンシャープマスク」の4種類あり、初期設定は「ナチュラルシャープ」となっている。これは従来のノーマルシャープよりもギャギーが少なく、しかもボケ部分のノイズが強調される減少を抑えられる「ボケ味保護」機能も備えたすぐれものだ。
初期設定値(輪郭強調:30、偽輪郭抑制:15、ボケ味保護:0)での現像結果は、Lightroomよりもややシャープ感が高めで、同時記録のJPEG画像に近い仕上がりとなった。
歪曲、周辺光量
レンズプロファイル等はないので、歪曲収差と周辺光量の補正は手動で行なうことになる。
この作例では「歪曲率」は「-4.2」に設定したが、調整中の画面の再描画が遅いため、細かい調整はやりづらい。周辺光量は「適用率」の範囲が「-50」から「200」までしかなく、めいっぱいに上げても均一な明るさになってくれない。
色収差
倍率色収差の補正も自動機能はなく、400%程度に拡大した状態でにじんだ色の部分をスポイトでクリックする必要がある。といっても、手間自体はたいしたことはないし、結果も申し分ない。なお、調整値は「R適用率」が「7.0」、「B適用率」が「6.0」だった。
高感度ノイズ低減
「ノイズリダクション」は画像の状況に応じて「偽色抑制」と「ノイズ除去」の数値が自動的に変化する仕様で、この画像(ISO6400で撮影している)ではそれぞれ「71」と「72」に設定された。ここでは「ノイズ除去」の数値のみ変化させたものを掲載する。
「ノイズ除去」が「0」でも、ノイズの粒状感が抑えられていて印象はいい。「25」や「50」ではLightroomと大きな差はないように思える。「75」「100」まで上げると塗り絵感が出てくるが、ノイズをつぶしきっていないぶんLightroomよりはディテールがある。
ハイライト・シャドウ補正
白飛びを軽減する機能としては「ハイライトコントローラ」の「明部補償」もあるが、これぐらいの露出オーバーだと効果はまったくない。
「HDR」または「覆い焼き・焼き込み」を最大値の「100」まで上げるとそれなりにハイライトもシャドウもトーンは出てくるが、効果としては今ひとつという印象だ。
もっとも、これは本来はシャドウを捨ててハイライトを飛ばさない露出で撮るべきシーンだからこういう結果になったのであって、階調のなくなっている部分は前回掲載したLightroomよりも狭く、階調のある部分とのつながりもいい。
特徴的な機能
★の数でお気に入りの度合いをしめす「レーティング」、青/緑/赤のタグをつけられる「ユーザーマーク」といったセレクト作業を補助する機能を備えている。画像の位置情報を表示したり編集することや、「タイトル」「キャプション」を付加することなども可能だが、撮影場所やテキスト情報から画像を検索したりといった管理関連の機能はない。
基本的な発色を選ぶ「カラー・テイスト」で、さまざまな特性を選べるほか、パナソニックのフォトスタイルや富士フイルムのフィルムシミュレーションをエミュレートすることもできる。
部分的な補正が行なえる「段階補正フィルタ」や「円形補正フィルタ」、パースペクティブを補正する「デジタルシフト」などもある。人物の肌を美しく演出できる「美肌効果」もおもしろい。
細かい機能が多いのが興味深い点だ。たとえば、ホワイトバランスをわずかに変えたいときに使う「ホワイトバランス微調整」や、ハイライト部分の色味を微妙に調整できる「ハイライトコントローラ」など、「ほんのちょっと」へのこだわりが強く感じられる。
機能対応表
DxO OpticsPro 11 ELITE | Lightroom CC | SILKYPIX Developer Studio Pro 7 | |
バージョン | 11.1.0 | 2015.6.1/6.6.1 | 7.0.6.0 |
販売形態 | パッケージ/ダウンロード | パッケージ/サブスクリプション | パッケージ/ダウンロード |
税別価格 | 14,900円/19,900円(税込み) | 16,000円/月額980円より | 31,500円/26,000円 |
対応OS | Mac/Win | Mac/Win | Mac/Win |
閲覧時表示モード | 画像ブラウザ/設定タブ | グリッド/ルーペ/比較/選別/人物 | サムネイル/プレビュー |
レーティング | ● | ● | ● |
カラーラベル | − | 5色 | 3色 |
フラグ | 処理可能/非処理 | 採用/除外 | 現像予約/コピー・移動予約/削除予約 |
顔認識 | − | 個人認識可 | − |
キーワード | − | ● | − |
場所 | − | 位置情報から場所情報を表示可 | − |
マップ表示 | − | ● | − |
タイトル/キャプション | − | ● | ● |
JPEG画像の調整 | ● | ● | ● |
カメラプロファイル(仕上がり) | − | オリンパス、キヤノン、ソニー、ニコン、フジフイルム、ペンタックスに対応(例外あり) | パナソニック、フジフイルム |
調整内容のコピー/ペースト | ● | ● | ● |
調整内容の保存 | 新規プリセット | ユーザープリセット | パラメーターの保存 |
ホワイトバランス/オート | − | 自動 | Auto(絶対)/Auto(自然) |
ホワイトバランス/プリセット | 6種 | 6種 | 16種 |
ホワイトバランス/スライダー | 色温度/色相 | 色温度/色かぶり補正 | 色温度/色偏差/暗部調整/ミックス光補正 |
ホワイトバランス/クリック | ● | ● | ● |
ホワイトバランス/肌色指定 | − | − | ● |
露出補正 | ±4、0.01ステップ | ±5、0.01ステップ | ±8、0.01ステップ |
コントラスト調整 | ● | ● | ● |
白飛び軽減 | ハイライト/DxO Smart Lighting | ハイライト/白レベル | HDR/焼き込み/HDR-焼き込み |
黒つぶれ軽減 | シャドウ/DxO Smart Lighting | シャドウ/黒レベル | HDR/覆い焼き/HDR-覆い焼き |
部分的な階調補正 | ハイライト/中間トーン/シャドウ/ブラック | ハイライト/シャドウ/白レベル/黒レベル | なし |
明瞭度 | ● | ● | − |
彩度 | 自然な彩度/彩度 | 彩度/自然な彩度 | 彩度 |
トーンカーブ | ● | ● | ● |
個別色補正 | 色相/彩度/明度(6色) | HSL/カラー(8色) | ファインカラーコントローラ(8色) |
シャープの種類 | アンシャープマスク | シャープ | ナチュラルシャープ/ノーマルシャープ/ピュアディテール/アンシャープマスク |
シャープのパラメーター | 強さ/半径/しきい値/エッジオフセット | 適用量/半径/ディテール/マスク | 輪郭強調/偽輪郭抑制/ボケ味保護 |
ノイズ軽減のパラメーター | 輝度ノイズ | 輝度/ディテール/コントラスト/カラー/ディテール(カラー)/滑らかさ | 偽色抑制/フリンジ除去/ノイズ整列/ノイズ除去/モアレ軽減 |
レンズプロファイル対応 | ● | ● | − |
歪曲収差補正 | DxO光学モジュールによる自動 | プロファイル補正による自動 | 手動 |
周辺光量補正 | DxO光学モジュールによる自動 | プロファイル補正による自動 | 手動 |
色収差補正 | 自動 | ● | クリック |
フリンジ軽減 | パープルフリンジ | 紫/緑(クリックによる指定可) | フリンジ除去 |
パースペクティブ補正 | −(プラグインが必要) | ● | ● |
ヴィネット効果 | − | ● | − |
粒子効果 | −(プラグインが必要) | ● | ● |
かすみの除去 | ● | ● | − |
操作の取り消し/やり直し | ● | ● | ● |
調整履歴 | − | ヒストリー/スナップショット | 編集履歴/現像パラメータを一時登録 |
仮想コピー | ● | ● | − |
外部エディター連携 | ● | ● | − |
切り抜き(トリミング) | ● | ● | ● |
アスペクト比変更 | ● | ● | ● |
ダスト修正 | ダスト除去 | スタンプ/修復ブラシ | スポッティング |
赤目軽減 | ● | ● | ● |
部分補正機能 | − | 段階フィルター/円形フィルター/補正ブラシ | 段階補正フィルタ/円形補正フィルタ |
現像プリセット | ● | ● | ● |
調整前後の比較 | ● | ● | ● |
おもな非対応機種
新機種への対応はかなり早いほうで、中級機やエントリーモデルについてはLightroomよりも早い印象だ。
原稿執筆時点では、富士フイルムX-T2(これはLightroomのほうが早かった)、ペンタックスK-70のほか、シグマのsd Quattro、SD1 Merrill、SD1が非対応となっている。
まとめ
機能限定版やエンジンだけをカメラメーカーにも提供しているだけあって、RAW現像の機能は充実している。
パネル上でのマウスのホイール操作でスクロールではなく、パラメーターが変化してしまうのには面食らったし、高精細表示に切り替わるまでの待ち時間が長いのは不満だが、ハイライトの描写や、繊細なシャープ処理ができる「ナチュラルシャープ」などは魅力的だ。
また、「ホワイトバランス微調整」や「ハイライトコントローラ」といったツールのおかげで、細かい部分にこだわれるのも特徴であり、SILKYPIXを選ぶ理由になると思う。