気になる(国産カメラメーカーブランド以外の)現像ソフトレビュー

国産現像ソフトの雄 SILKYPIX Developer Studio Pro 7を試してみる

かゆいところに手が届く細やかさ

カメラメーカー以外の著名現像ソフトを試用する本連載も3回目を数える。今回は国内の汎用現像ソフトとして歴史のあるSILKYPIXのうち、最上位ソフトのSILKYPIX Developer Studio Pro 7を紹介したい。

SILKYPIX Developer Studio Pro 7(以下、SILKYPIX)は、市川ソフトラボラトリーが開発、販売している純国産RAW現像ソフトで、機能を限定したかたちでカメラに同梱されていたり、純正ソフトにSILKYPIXのエンジンが採用されていたりなど、カメラメーカーとの関係が深い。

カタログに読み込む必要のないブラウザータイプのソフトで、WindowsとMacに対応する。現行バージョンはパッケージ版とダウンロード版があり、価格はそれぞれ税別3万1,500円、2万6,000円となっている。

なお、バリエーションとして、機能を抑えたスタンダードモデルとなるSILKYPIX Developer Studio 7、JPEG画像のみに特化したSILKYPIX Jpeg Photography 7、水中撮影専用のSILKYPIX Marine Photography Pro 4.0も用意されている。

試用環境

Mac mini(Late 2014)
CPU:2.6GHz Intel Core i5
メモリ:16GB(1600MHz DDR3)
ストレージ:1TB Fusion Drive(内蔵)、4TB HDD(外部・画像保管用、USB 3.0接続)

基本操作

起動してウィンドウが開くまでに6秒ほどかかり、選択しているフォルダー内の画像のサムネイルが順次表示される。カタログに読み込む必要がないので手間はかからない。

SILKYPIXの「サムネイル表示」画面。左側の「フォルダツリー」でフォルダーを選択するとそのフォルダー内の画像が表示される。この画面でも画像の調整は可能だ。

「サムネイル表示」から1枚だけを大きく表示する「プレビュー表示」に切り替えてから表示される画像が高精細になるのにずいぶん時間がかかる。ニコンD810やキヤノンEOS 5Ds R、ソニーα7R IIといった多画素機の画像だと20秒以上かかったりする。

1枚を大きく表示する「プレビュー表示」画面。開いてから高精細な表示に切り替わるまでの待ち時間が長いのが気になった。

これは、完全な「本現像結果」をプレビューする仕様だからで、一度表示されれば次からは早くなるが、終了して起動しなおしてみるとキャッシュが消去されてしまうため、また
画面の任意の部分をダブルクリックすると、その場所を中心にピクセル等倍表示になり、再度ダブルクリックすると全画面表示に切り替わる。

おもしろいのは、全画面表示で低解像度状態でも、ピクセル等倍にすると、表示している部分だけ素早く高精細表示に変わるところ(表示する画素数が少なければ短時間で処理できるので、高速化のためにそういう仕様にしているのだろう)。そのあたりを飲み込んで使うぶんには、「1:1プレビュー」が作成されるのを待たなくてはならないLightroomよりも快適に感じられる。

各種ツールのパネルは、初期設定ではフローティング・ウィンドウになっているが、個人的には、よく使うものは画面右側のコントロール・ボックスに入れておいたほうがいいように思う(本ページ冒頭のスクリーンショットを参照)。

ただし、マウスのホイールを回すとマウスポインターが重なっているパラメーターが変化する仕様なので、気をつけていないとコントロール・ボックスをスクロールするときにパラメーターがぐちゃぐちゃになってしまって泣きを見る。なので、調整が終わったらパネルはたたんでおくのがおすすめだ。

画像の調整は表示モードによらずに行なえ、「サムネイル表示」で複数の画像を選択した状態で操作を行なうことで、まとめて調整することもできる。ブツ撮りやスタジオポートレートなどでは便利に使えるだろう。

調整の操作は、さまざまなパラメーターのスライダーをマウスでドラッグすることで行なうが、スライダーを動かすたびに、プレビューの画質が大きく変化する(解像度の低い「簡易現像結果」になる)ため、歪曲収差の補正などの操作では特にストレスを感じた。

画像の調整データは、調整した画像ファイルが保存されているフォルダー内に「SILKYPIX_DS」という名称のフォルダーが作成され、その中に対象画像の調整データのファイルが保存されるようになっている。そのため、不用意に画像のファイル名を変更すると、未調整の状態にもどってしまうので注意が必要だ。

作例

解像力

シャープのモードは「ナチュラルシャープ」「ノーマル」「ピュアディテール」「アンシャープマスク」の4種類あり、初期設定は「ナチュラルシャープ」となっている。これは従来のノーマルシャープよりもギャギーが少なく、しかもボケ部分のノイズが強調される減少を抑えられる「ボケ味保護」機能も備えたすぐれものだ。

「シャープ」は「ナチュラルシャープ」「ノーマルシャープ」「ピュアディテール」「アンシャープマスク」の4種類が選べる。

初期設定値(輪郭強調:30、偽輪郭抑制:15、ボケ味保護:0)での現像結果は、Lightroomよりもややシャープ感が高めで、同時記録のJPEG画像に近い仕上がりとなった。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)EOS 80D / EF50mm F1.8 STM / 1/40秒 / F5.6 / ISO 100 / 50mm
SILKYPIXで無調整で現像

歪曲、周辺光量

レンズプロファイル等はないので、歪曲収差と周辺光量の補正は手動で行なうことになる。

この作例では「歪曲率」は「-4.2」に設定したが、調整中の画面の再描画が遅いため、細かい調整はやりづらい。周辺光量は「適用率」の範囲が「-50」から「200」までしかなく、めいっぱいに上げても均一な明るさになってくれない。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)EOS 80D / EF50mm F1.8 STM / 1/40秒 / F5.6 / ISO 100 / 50mm
SILKYPIXで「歪曲率」を「-4.2」、「シェーディング(周辺光量)」を「200」に設定して現像(色収差も補正している)。

色収差

倍率色収差の補正も自動機能はなく、400%程度に拡大した状態でにじんだ色の部分をスポイトでクリックする必要がある。といっても、手間自体はたいしたことはないし、結果も申し分ない。なお、調整値は「R適用率」が「7.0」、「B適用率」が「6.0」だった。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)E-P5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 / 1/2,500秒 / F4 / ISO 400 / 9mm
SILKYPIXで「倍率色収差」の「R適用率」を「7.0」、「B適用率」を「6.0」に設定して現像。

発色

同時記録のJPEG画像と比べると、青とオレンジの濃さが大きく違う。また、肌色も明るめに再現される。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)D610 / SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM / 1秒 / F22 / ISO 100 / 150mm / ピクチャーコントロール:スタンダード
SILKYPIXで無調整で現像。

高感度ノイズ低減

「ノイズリダクション」は画像の状況に応じて「偽色抑制」と「ノイズ除去」の数値が自動的に変化する仕様で、この画像(ISO6400で撮影している)ではそれぞれ「71」と「72」に設定された。ここでは「ノイズ除去」の数値のみ変化させたものを掲載する。

「ノイズ除去」が「0」でも、ノイズの粒状感が抑えられていて印象はいい。「25」や「50」ではLightroomと大きな差はないように思える。「75」「100」まで上げると塗り絵感が出てくるが、ノイズをつぶしきっていないぶんLightroomよりはディテールがある。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)EOS 80D / EF-S55-250mm F4-5.6 IS STM / 1/100秒 / F5.6 / ISO 6400 / 220mm
SILKYPIXで「ノイズ除去」を「0」で現像
SILKYPIXで「ノイズ除去」を「25」で現像
SILKYPIXで「ノイズ除去」を「50」で現像
SILKYPIXで「ノイズ除去」を初期値の「72」で現像
SILKYPIXで「ノイズ除去」を「75」で現像
SILKYPIXで「ノイズ除去」を「100」で現像

ハイライト・シャドウ補正

白飛びを軽減する機能としては「ハイライトコントローラ」の「明部補償」もあるが、これぐらいの露出オーバーだと効果はまったくない。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)EOS 80D / EF-S55-250mm F4-5.6 IS STM / 1/80秒 / F8 / ISO 100 / 250mm
SILKYPIXで「HDR」を「100」に設定して現像

「HDR」または「覆い焼き・焼き込み」を最大値の「100」まで上げるとそれなりにハイライトもシャドウもトーンは出てくるが、効果としては今ひとつという印象だ。

SILKYPIXで「覆い焼き・焼き込み」を「100」に設定して現像。

もっとも、これは本来はシャドウを捨ててハイライトを飛ばさない露出で撮るべきシーンだからこういう結果になったのであって、階調のなくなっている部分は前回掲載したLightroomよりも狭く、階調のある部分とのつながりもいい。

ホワイトバランス

ホワイトバランスはプリセットの光源の種類が豊富で、オートモードも「Auto(絶対)」と「Auto(自然)」の2種類がある。

「Auto(絶対)」は白熱灯などの色味を完全に補正するタイプで、Lightroomの「自動」と似た仕上がりになる(「色温度」は「2742」、「色偏差」は「5」になった)。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)LUMIX GH4 / LEICA DG SUMMILUX 15mm F1.7 ASPH. / 1/15秒 / F2.5 / ISO 800 / 15mm
SILKYPIXで無調整で現像
SILKYPIXでホワイトバランスを「Auto(絶対)」に設定して現像

一方、「Auto(自然)」は、白熱灯の色かぶりを抑えつつ、温かみを残した仕上がりとなる(「色温度」は「3263」、「色偏差」は「4」になった)。

SILKYPIXでホワイトバランスを「Auto(自然)」に設定して現像

特徴的な機能

★の数でお気に入りの度合いをしめす「レーティング」、青/緑/赤のタグをつけられる「ユーザーマーク」といったセレクト作業を補助する機能を備えている。画像の位置情報を表示したり編集することや、「タイトル」「キャプション」を付加することなども可能だが、撮影場所やテキスト情報から画像を検索したりといった管理関連の機能はない。

基本的な発色を選ぶ「カラー・テイスト」で、さまざまな特性を選べるほか、パナソニックのフォトスタイルや富士フイルムのフィルムシミュレーションをエミュレートすることもできる。

部分的な補正が行なえる「段階補正フィルタ」や「円形補正フィルタ」、パースペクティブを補正する「デジタルシフト」などもある。人物の肌を美しく演出できる「美肌効果」もおもしろい。

楕円形の範囲の内側だけ補正できる「円形補正フィルタ」を装備。
グラデーションで補正できる「段階補正フィルタ」もある。

細かい機能が多いのが興味深い点だ。たとえば、ホワイトバランスをわずかに変えたいときに使う「ホワイトバランス微調整」や、ハイライト部分の色味を微妙に調整できる「ハイライトコントローラ」など、「ほんのちょっと」へのこだわりが強く感じられる。

ホワイトバランス微調整時の画面。設定したホワイトバランスをほんのちょっぴり変化させたいときに使用する。こういう細かい機能があれこれあるのが特徴だ。

機能対応表

DxO OpticsPro 11 ELITELightroom CCSILKYPIX Developer Studio Pro 7
バージョン11.1.02015.6.1/6.6.17.0.6.0
販売形態パッケージ/ダウンロードパッケージ/サブスクリプションパッケージ/ダウンロード
税別価格14,900円/19,900円(税込み)16,000円/月額980円より31,500円/26,000円
対応OSMac/WinMac/WinMac/Win
閲覧時表示モード画像ブラウザ/設定タブグリッド/ルーペ/比較/選別/人物サムネイル/プレビュー
レーティング
カラーラベル5色3色
フラグ処理可能/非処理採用/除外現像予約/コピー・移動予約/削除予約
顔認識個人認識可
キーワード
場所位置情報から場所情報を表示可
マップ表示
タイトル/キャプション
JPEG画像の調整
カメラプロファイル(仕上がり)オリンパス、キヤノン、ソニー、ニコン、フジフイルム、ペンタックスに対応(例外あり)パナソニック、フジフイルム
調整内容のコピー/ペースト
調整内容の保存新規プリセットユーザープリセットパラメーターの保存
ホワイトバランス/オート自動Auto(絶対)/Auto(自然)
ホワイトバランス/プリセット6種6種16種
ホワイトバランス/スライダー色温度/色相色温度/色かぶり補正色温度/色偏差/暗部調整/ミックス光補正
ホワイトバランス/クリック
ホワイトバランス/肌色指定
露出補正±4、0.01ステップ±5、0.01ステップ±8、0.01ステップ
コントラスト調整
白飛び軽減ハイライト/DxO Smart Lightingハイライト/白レベルHDR/焼き込み/HDR-焼き込み
黒つぶれ軽減シャドウ/DxO Smart Lightingシャドウ/黒レベルHDR/覆い焼き/HDR-覆い焼き
部分的な階調補正ハイライト/中間トーン/シャドウ/ブラックハイライト/シャドウ/白レベル/黒レベルなし
明瞭度
彩度自然な彩度/彩度彩度/自然な彩度彩度
トーンカーブ
個別色補正色相/彩度/明度(6色)HSL/カラー(8色)ファインカラーコントローラ(8色)
シャープの種類アンシャープマスクシャープナチュラルシャープ/ノーマルシャープ/ピュアディテール/アンシャープマスク
シャープのパラメーター強さ/半径/しきい値/エッジオフセット適用量/半径/ディテール/マスク輪郭強調/偽輪郭抑制/ボケ味保護
ノイズ軽減のパラメーター輝度ノイズ輝度/ディテール/コントラスト/カラー/ディテール(カラー)/滑らかさ偽色抑制/フリンジ除去/ノイズ整列/ノイズ除去/モアレ軽減
レンズプロファイル対応
歪曲収差補正DxO光学モジュールによる自動プロファイル補正による自動手動
周辺光量補正DxO光学モジュールによる自動プロファイル補正による自動手動
色収差補正自動クリック
フリンジ軽減パープルフリンジ紫/緑(クリックによる指定可)フリンジ除去
パースペクティブ補正−(プラグインが必要)
ヴィネット効果
粒子効果−(プラグインが必要)
かすみの除去
操作の取り消し/やり直し
調整履歴ヒストリー/スナップショット編集履歴/現像パラメータを一時登録
仮想コピー
外部エディター連携
切り抜き(トリミング)
アスペクト比変更
ダスト修正ダスト除去スタンプ/修復ブラシスポッティング
赤目軽減
部分補正機能段階フィルター/円形フィルター/補正ブラシ段階補正フィルタ/円形補正フィルタ
現像プリセット
調整前後の比較

おもな非対応機種

新機種への対応はかなり早いほうで、中級機やエントリーモデルについてはLightroomよりも早い印象だ。

原稿執筆時点では、富士フイルムX-T2(これはLightroomのほうが早かった)、ペンタックスK-70のほか、シグマのsd Quattro、SD1 Merrill、SD1が非対応となっている。

まとめ

機能限定版やエンジンだけをカメラメーカーにも提供しているだけあって、RAW現像の機能は充実している。

パネル上でのマウスのホイール操作でスクロールではなく、パラメーターが変化してしまうのには面食らったし、高精細表示に切り替わるまでの待ち時間が長いのは不満だが、ハイライトの描写や、繊細なシャープ処理ができる「ナチュラルシャープ」などは魅力的だ。

また、「ホワイトバランス微調整」や「ハイライトコントローラ」といったツールのおかげで、細かい部分にこだわれるのも特徴であり、SILKYPIXを選ぶ理由になると思う。

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら