動物園の撮り方

"動物園っぽさ”をなくすには?

人工物をなるべく入れない工夫を伝授

ナマケモノがかぎ爪を引っかけて渡るロープを入れて撮ってしまうとどうしても自然な感じがでません。そこで思い切ってロープはカットして、長い前足を強調するフレーミングをしてみました。ニコンD7100/AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR/300mm(450mm相当)/プログラムオート(F5.6、1/200秒、+0.3EV)/ISO320/WB:オート/埼玉県こども動物自然公園

人工物をなるべく入れない工夫をして撮ってみましょう

“動物園で撮ったとは思えない動物写真”とは、言い換えれば“自然の中で生き生きと生息しているような動物写真”ということになるでしょう。そのためには動物園にはつきものの人工物をどう処理するかが大きなポイントになります。

人間の目というのは都合よくできていて、自分の見たいものだけを見ています。例えば、群衆の中でも自分の好きな人は一瞬にして見付られますよね。それと同じように動物園ではお目当ての動物しか見ていないので、周りにあるいろいろなものが目に入っていても“見えていない”のです。

ところがカメラは違います。ファインダーに入っているものはすべて写し撮ってしまい、あとで写真を見て「あーこれさえ写っていなければなぁ」と残念がることになります。「どこで撮ったの?!」と思わせるような写真を動物園で撮るには、人工物をなるべく写さないこと、これが大きなポイントなのです。

こんなところにも人工物が!
動物園では個体識別のためにペンギンの翼にバンドをしたり、マーラの耳にタグを付けたりしていることがあります。これらも角度を変えてなるべく写らないようにしてみましょう
餌カゴ
キリンの背の高さに餌カゴを作り、彼らがしゃがみ込まずに楽に餌が食べられるようにしています
寝小屋
寝小屋への出入り口は、動物の大きさに合わせて作られています。目立たない作りのものもあります

動物が逃げないための柵や、ほかの動物と分ける柵、材質も木製や鉄製など太い物から細いものまでいろいろあります
遊具
動物たちが退屈しないように、その動物の生態や行動に合わせて遊び道具が作られています
コンクリート
動物舎やほかの動物と隔てる壁、放飼場などにコンクリートが使われています
雰囲気とマッチした人工物ならOKです
近年は展示施設を作るのに擬木や擬岩の技術が発達し、目を凝らしてみても本物としか思えないものが登場しています。よく見るのがチンパンジーの放飼場に作られた蟻塚でしょう。枝を使ってシロアリ釣りをする行動を見せるためですが、これらは動物と一緒に写っていても違和感は感じられません

これらの人工物を写真に入れ込まないようにするためのテクニックを次でご紹介します。

テクニック1:背景に人工物が入らない位置に自分が動く
数m動いただけでも雰囲気は変わります
この場合は右に動いて解消!

動物が動くのを待つのではなく、まずは自分で動いてみましょう。単純に左右に数m動くだけで人工物が写らなくなることもあります。

ここではキリンの後ろに白い建物が写っていたので、右に動いて撮影しました。少し動くだけでもこのように背景から消えるのです。

テクニック2:思い切ってアップで狙う
顔をアップで切り取って後ろの人工物をカットしましょう
頭の上の小枝がちょっと気になりますね

テクニック1で紹介したように、自分が動いても人工物が消えないときは、近付いて撮るか思い切って望遠レンズを使って顔だけを狙ってみましょう。

テクニック3:絞りを開けて背景をぼかす
背景をぼかせば人工物の存在感が薄れます
左:F5.6、右:F2.8。背景に人工物があるときには、望遠レンズで絞りを開放絞りにして背景をぼかすという方法もあります。このテクニックは動物とその人工物の距離が近すぎるときには不可能ですが、少し距離がある場合には有効です
テクニック4:マイナス補正して背景の人工物が見えないようにする
動物より背景が暗い場合に限ります
左は補正無し、右は-0.7EV補正。背景が動物よりも暗いとき、そのまま撮ると見た目より明るく写ってしまい、背景が人工物の場合は、より目立ってしまいます。露出をマイナス補正することで、背景が暗く落ちて人工物が目立たなくなることがあります

じゃまな檻や金網を消して撮ってみましょう

動物たちの多くは檻や金網で囲まれた中にいます。普通に撮ると動物の前にそれらが写り込んでしまって「これさえなければなぁ」とがっかりした経験がある人も少なくないはず。実はこの檻や網を消すことができるのです。

檻や金網の中で動物を飼うのは動物園の宿命です。しかし写真を撮る側からすれば正直じゃまな存在ですね。実はその檻や金網を消す方法があるのです。

やり方は簡単。まずは望遠レンズを使うこと。第1章で望遠レンズは背景や前景をぼかして、プロっぽい写真が撮れるといいましたが、その特性を利用するのです。次に絞り値を開放にすること。そして、3つ目はなるべく檻や金網に近づいて撮ること。こうすることで手前の檻や金網は極端にぼけて見えなくなってしまうのです。

ただし檻や金網には危険のない範囲で近づくようにしましょう。もちろん人止め柵を乗り越えての撮影は絶対に禁止ですよ。

今からこの金網を消してみせましょう
望遠+開放絞りで檻や金網を消すことができます
1:金網の前に立つ
金網の前に立って動物がどこにいるかを確認する。金網のすぐ近くにいる場合は消せないので動くまで待とう
2:レンズを望遠側にする
ズームレンズだったら、ファインダーをのぞいて動物に合わせて、できるだけ望遠側にズームをします
3:絞りを開放にする
絞り値の数字(F値)を一番小さい数字にする。そうすることで大きなボケが得られます
4:危険のない範囲でレンズを金網にできるだけ近づけて、動物にピントを合わせてシャッターを切る
あくまでも危険のない範囲で身を乗り出して撮るようにしよう
消えました!
ニコンD4/AF-SNIKKOR 70-200mmf/2.8G ED VR II/155mm/絞り優先オート(F2.8、1/1,000秒、±0EV)/ISO400/WB:オート/多摩動物公園

この方法ですべての檻や金網が消えるというわけではありません。動物の展示方法によって状況がそれぞれ違うからです。それを次でくわしく説明しましょう。

檻や金網を消すには4つの条件が必要です
4つの条件がそろっていても消えない場合もあります

動物園の檻や金網にはさまざまな種類があります。太い細いはもちろん、粗い網、細かい網、ステンレスで光り輝くもの、ピアノ線で黒く塗られたものなど。

その中でも下の写真のように、特に太くて頑丈な檻と、網目の細かい金網は左ページで紹介した4つの条件がそろっていても完全に消えないときがあります。

太くて頑丈な檻はレンズを隙間から入れてみよう!
レンズの位置によっては消えることもある

太くて頑丈な檻の場合、レンズを近づける位置によっては運良く消える場合があります。それには上の図のように檻と檻の間にレンズの口径を合わせることがポイントになります。

この場合でもステンレスのように白っぽい檻だったり、太陽の光が強く当たっていると、どうしても写真全体がぼーっと煙ったようになってしまいます。ただし、このような檻には危険な動物が飼われていることが多いのでくれぐれも注意して撮影するようにしましょう。

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この記事は、インプレス刊の書籍「世界一わかりやすいデジタル一眼レフカメラと写真の教科書 動物園&水族館の撮り方編」から抜粋しています。

「世界一わかりやすいデジタル一眼レフカメラと写真の教科書 動物園&水族館の撮り方編」(DVD付き。著:内山晟、イラスト:ゆきぴゅー、監修:ニコンカレッジ。インプレス刊、税別2,000円)

動物園や水族館の人工物といえば、ガラスの映り込みもやっかいですよね。書籍では、ガラスの映り込みを消す方法についても触れています。その他たくさんのテクニックが満載です!

(内山晟)