メーカー直撃インタビュー:伊達淳一の技術のフカボリ!

ソニーα7R II

裏面照射&高性能AF 注ぎ込まれた最新技術詳報

ソニーα7R II
発売日:2015年8月7日 実勢価格:47万4,000円前後(ボディ単体)
イメージセンサー:35mmフルサイズ裏面照射型 有効約4,240万画素CMOSセンサー/AF:ファストハイブリッドAF(位相差検出方式399点/コントラスト検出方式25点)/ISO感度:100〜25600(ISO 50〜102400まで拡張)/EVF:0.5型 約236万ドット 約0.78倍/背面液晶モニター:3型TFT約123万ドット/シャッター速度:1/8,000〜30秒、バルブ/連続撮影速度:最高約5コマ/秒/電子先幕シャッター:対応/サイレント撮影:対応/手ブレ補正機構:イメージセンサーシフト方式5軸補正/大きさ:約126.9(W)×95.7(H)×60.3(D)mm/重さ:約625g

α7シリーズのフラッグシップモデル。高解像度、高感度、スピードの3つの要素をすべて満たすべく、世界初フルサイズの裏面照射型約4,240万画素CMOSセンサーを採用。

5軸のボディ内手ブレ補正、5コマ/秒の高速連写とそれを支えるファストハイブリッドAF、電子先幕シャッター、サイレントシャッター、ボディ内4K動画記録など、これまでα7シリーズで培われてきた技術をほぼ全部注ぎ込んだ渾身のカメラだ。

また、SSM/SAMタイプのAマウントレンズにLA-EA3を組み合わせれば、実用的なレスポンスでファストハイブリッドAFが効くようになり、Aマウントユーザーにとっても注目の1台に仕上がっている。

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本インタビューは「デジタルカメラマガジン2015年10月号」(9月20日発売、インプレス刊)に掲載されたものに、誌面の都合で掲載できなかった内容を加筆して収録したものです。(聞き手:伊達淳一、本文中敬称略)

高解像度、高感度、スピードの3要素を満たすのがα7R IIの使命

――α7R IIのコンセプト、および、α、α7シリーズにおけるα7R IIのポジショニングとは?

岩附:2013年のα7Rの発売以降、ここの部分を改善してほしい、こういった方向性でもっとがんばってほしいなど、さまざまなご意見やご要望をいただきました。そうした声に応え、着実に改善を図れるように努めていきたいというモチベーションと、やはりα7シリーズとして妥協のないフラッグシップモデルを世に送り出したい、という開発としての思いが強くありました。

α7Rという機種名は“Resolution”の頭文字を冠したモデルですので、α7R IIも、解像度の高さを追求した商品を出したいと考えておりました。ただ、高解像度だけを追いかけてバランスを失うような商品ではなくて「解像度」「スピード」「高感度」そして昨今、動画を撮られるプロの方が多いので「動画」を加えたこれら4つの要素を高い次元で実現するために、我々の持っている技術を惜しみなく注ぎ込み、妥協のない商品を目指しました。

初代のα7Rと比べ、基本性能で劣るような部分はまったくありませんし、これまでα7シリーズで培ってきた技術や機能も貪欲に採り入れているのが特徴です。

(左から)
花田祐治氏
ソニー株式会社 デジタルイメージング事業本部商品設計部門 プラットフォーム設計3部

陰山和実氏
ソニー株式会社 デジタルイメージング事業本部商品設計部門 システム設計部

町谷康文氏
ソニー株式会社 デジタルイメージング事業本部 商品設計部門 設計1部

水上暁史氏
ソニー株式会社 デジタルイメージング事業本部 デジタルイメージングアプリケーション設計部門 プラットフォーム3部

岩附豊氏
ソニー株式会社 デジタルイメージング事業本部 商品企画部門 商品企画2部

――4,240万画素という画素数を選んだのはどういう経緯からですか? ソニーならもっと高解像度のイメージセンサーを選択することもできたと思いますが、4K動画の処理など何か4,240万画素という画素数が有利な部分があったのでしょうか?

陰山:より高画素にすることで解像性能を追求したいのは確かなのですが、高感度やスピードを犠牲にするわけにはいきませんので、やはりバランスの良さが大切だと思います。従来のα7Rよりも高感度や高速化を達成しつつ、どこまで画素数を増やせるのかを検討した結果、最もバランスが良い画素数が4,240万画素となります。

――個人的には、無理に画素数を追求しなかったのは大歓迎です。それにAPS-Cフォーマットで18メガピクセルという画素数も、それほどレンズに厳しくなくて済みますし、画質的にも多すぎず少なすぎず、実に扱いやすい画素数だと思います。ところで、初代α7Rは、フルサイズの高解像度モデルとしては価格が手ごろなのが魅力だったのですが、α7R IIは実売40万円強と、かなりお高くなってしまったのが残念です。

岩附:結果的に、決して安くはない価格となってしまいましたが、α7Rを出した後の我々の技術の進化を見せたいということで、すべての面で従来モデルを上回る性能を実現するために、最新の技術を採り入れた結果ですので、価格に見合う価値をご提供できると信じています。

なお、初代α7Rも今後も引き続き販売していきますので、お客さまに広い選択肢をご提示できるようなラインアップになれば、と思っています。

――いわゆる後継機ではなく、解像重視の上位モデルという位置付けというわけですね。ところで、αのフラッグシップモデルは、ミノルタ時代の製品も含め、型番に「9」という数字が使われてきましたが、なぜ、α9(仮)という上位型番ではないのでしょうか? α7Sと同様、標準でバッテリーが2個付属していますが、より大容量のバッテリーを採用した上位型番の機種という方向性もあったのでは? と思うのですが……。

岩附:α7シリーズは、小型で軽量で、なおかつ性能で妥協しない、というのがコンセプトで、そのシリーズの中でのフラッグシップモデルを出したい、と当初から考えていました。


裏面照射型CMOSセンサーの製造技術が進歩

――僕がα7Rの後継機に期待していたのは、電子先幕シャッターと像面位相差AFの採用、そして、α7 IIのボディ内手ブレ補正の搭載でした。α7 IIやα7Rの価格設定から考えると、実売30万円前後を想定していたのですが、予想よりも10万円以上も高く、慌ててクレジットカードの分割払いの枠を引き上げてもらいました(笑)。初代α7Rやα7 IIに比べ、ここまで価格が高くなってしまった要因は、やはり裏面照射型CMOSイメージセンサーが占めているのでしょうか?

岩附:そうですね。裏面照射型CMOSイメージセンサーは決して安くはありませんので、1つの要因にはなっています。

裏面照射CMOSイメージセンサーの仕組み
表面照射型は、フォトダイオードより上に配線層を配置する構造であるため、やや斜めから入射する光もフォトダイオードに届くようにするために配線層を太く自由に配置することができないが、裏面照射型は配線層はフォトダイオードの下にあり、より複雑な回路も形成可能。また、マイクロレンズのすぐ下にフォトダイオードがあるので斜めからの光にも強い

――以前うかがった話では、裏面照射型CMOSイメージセンサーは、小サイズほど有効という話で、大サイズの裏面照射型CMOSイメージセンサーを製造するのは非常に難しいということだったので、α7R IIの発表前に、裏面照射型CMOSイメージセンサー搭載という噂が流れてきたときには、絶対フェイク(偽情報)だと思ったほどです。そもそも裏面照射型CMOSイメージセンサーをなぜα7R IIに採用したのでしょうか?

陰山:先ほどの説明にありましたように、α7R IIを開発するにあたって、α7シリーズならではの小型・軽量ボディを踏襲しつつ、高解像度、高感度、スピードの3つの要素をすべて満たす、というのが目標でした。36メガピクセルのα7Rよりも高解像度を追求したい。

一方で、高感度や連写スピードなどの性能は落としたくない。いや、むしろα7Rよりも性能を向上したいと考えました。しかし、今までの表面型センサーで高画素化を図ると、画素ピッチに対して配線部が占める割合が大きくなり、開口部が狭くなるので、どうしても感度が犠牲になってしまいます。

感度を落とさないように配線を細くして開口部を広くするという手段もありますが、そうすると今度は読み出しスピードが犠牲になってしまい、連写スピードやAFも遅くなってしまいます。その点、裏面照射型センサーは、画素(フォトダイオード)の裏面に配線部があるので、表面型センサーよりも開口部が広く、より複雑な配線も可能なので、画素数を増やすと同時に、感度もスピードも追求できるのが特徴です。

岩附:2009年に裏面照射型センサーを搭載したハンディカムとサイバーショットを発売しましたが、そのときに「αには裏面照射型センサーを採用しないの?」という質問に対し、確かに「小型センサーに適した技術構造です」というように回答させていただきました。

当時説明することができた技術の前提に大幅な進歩があり、フルサイズという大判センサーでも裏面照射型センサーを作ることができるようになりました。まだまだ難しい技術なので、裏面照射の構造を採ったことで、製造コストが高くなるのは否めませんが、基本性能を一切妥協なく高めたい、といったところからすべてが始まっています。


――すごくベーシックな質問なのですが、表面照射型センサーと裏面照射型センサーの作り方ってどのように違うのでしょうか? カタログなどの模式図を見れば、表面照射型センサーと裏面照射型センサーの構造的な違いはよく分かりますし、素人でも裏面照射型センサーの方が光を効率的に受け止めるには理にかなった構造だと思います。ただ、裏面照射型センサーの製造がなぜ難しいのかがよく分かりません。

花田:表面照射型センサーは、シリコン基板の上にいろいろな不純物を分布させて、フォトダイオードや配線層を順々に構成していきます。これに対して、裏面照射型CMOSイメージセンサーでは、シリコンウエハーの面を極めて精度良く均一に削る行程が必要で、精度や平面性の担保が、イメージセンサーが大きくなればなるほど難しくなります。

2009年の時点では1/2.3型クラスのセンサーしか裏面照射型で作れませんでしたが、その後、製造技術の進歩により、1/1.7型、1型、そして今回のフルサイズと、より大サイズでも裏面照射型CMOSイメージセンサーを作ることができるようになりました。

――Cyber-shot RX100の1型まで裏面照射型センサーができるようになったのは知っていましたが、いきなりAPS-Cを飛ばしてフルサイズの裏面照射型センサーが登場したので驚きました。ところで、裏面照射型センサーのメリットは、感度以外に何があるのでしょうか?

陰山:フォトダイオードがオンチップマイクロレンズに近い位置にあり、斜めから入射する光もしっかり受け止められるので、画面周辺での入射光の角度が大きくなるレンズでも周辺光量を確保しやすく、カラーフェリア(色カブリ)が起きにくくなるというメリットがあります。

カラーフェリア:広義では色かぶりのことを表す。今回のインタビュー中では、バックフォーカスが極端に短いオールドレンズを使用した際に、画面周辺部の斜入射光が蹴られてしまう影響で、マゼンタなどに色かぶりしてしまう現象を指す

もう1つは、裏面照射型ですと配線層がフォトダイオードの下にありますので、配線の自由度が高く、配線の数を増やしたり、より複雑な回路を形成することが可能です。

今回のα7R IIは、42メガピクセルで5コマ/秒の高速連写や4K動画に対応させるため、裏面照射型のメリットを生かし、配線の数を増やすと同時に、さらに伝送速度の速いCu(銅)配線を採用することで、センサーからの読み出しスピードを約3.5倍に高速化しています。センサーからの読み出しスピードが高速化したことで、ファストハイブリッドAFもより高速になっています。

――銅配線だとなぜ伝送速度が速くなるのですか?

陰山:アルミ配線に比べ、銅配線の電気抵抗が小さいので、同じ太さならより速く信号を伝達することができるためです。

――逆に裏面照射型CMOSイメージセンサーのデメリットはありますか?

陰山:特に思いつきませんね。

シャープネスやノイズリダクションを最適化

――裏面照射型CMOSイメージセンサーは高感度になってもノイズが急激に増えないのは確かですが、低感度から中庸感度でやや粉っぽいというか、微小なノイズが浮くような気がします。決して、画質を損なうようなノイズではないのですが、α7R IIも似たような傾向を感じます。

花田:画質設計というか、信号処理全体を含めた画作りとしてそのような印象を持たれたのかもしれませんが、今回のα7R IIに関しては、センサーの撮像特性の観点からも従来のα7Rの同等以上の感度特性を実現しておりますので、低感度や中庸感度の画質が劣るということはありません。

――画素数が増えてセンサーの特性も向上しているということですが、シャープネスやノイズリダクションなど画作りのチューニングは変わっているのでしょうか?

花田:2013年にα7Rを発売してから「R」というコンセプトに対する商品に対する市場のお客さまからのさまざまな声をいただいており、そういった声を踏まえた上で、α7R IIのセンサーの特性を最大限に生かせるように、シャープネスやノイズリダクションを最適化しています。

――α7Rとα7R IIのISO 6400の描写を比較してみましたが、従来のα7Rは、ザラザラ感は少ないものの、ノイズが斑にぼけていて、細部の描写もつぶれ気味になります。これに対して、α7R IIはノイズの粒がハッキリしているものの、粒が細かく整っていて筋ムラもなく、細部の解像もα7Rよりも良好でした。

花田:「R」にふさわしい解像感、精細感を演出するために、特に、中・高感度では、粒状感、質感といったところをうまく残すようなチューニングにしています。

――ノイズの粒が細かくそろっていて、色ノイズも少ないというのは、やはりセンサーの特性が良いからですか?

花田:ランダム性の高いノイズというのは、もともとセンサーが持っているポテンシャルで決まってくることが多いと思います。α7R IIが高感度でもノイズの粒が整っていて色ムラも少ないのは、それだけα7R IIの裏面照射型CMOSイメージセンサーのパフォーマンスが高いということです。

――そのほかに、画質面でこだわっている部分はありますか?

花田:静止画だけでなく動画も高解像にこだわっています。α7シリーズでは初となる4K動画本体内記録を実現していますが、この4Kに対しても「R」のメッセージが伝わるように、スーパー35mm(APS-C)時には全画素読み出しを行っていて、15メガピクセルの情報を4Kの8メガピクセルに凝縮することで、解像感を高めながらノイズの粒を小さくして、最終的には高解像、低ノイズの4K動画が得られるようにチューニングしています。

――α7R IIで4K動画の本体内記録ができるようになったわけですが、僕はまだ4K動画を鑑賞できる環境が整っていないので、フルサイズとスーパー35mm時の4K動画の画質差がよく分かっていないのですが、4K動画撮影時にフルサイズを選択すると解像感が落ちるんですか?

花田:フルサイズ、スーパー35mmそれぞれの読み出し方に応じて最適な画質が得られるようにチューニングしています。ただ、我々としては解像感の「R」のメッセージが一番伝わるのは“スーパー35mmの4K”と考えており、もっと広角で撮影したいというニーズに対し“フルサイズの4K”をご用意しています。

――高感度の4K撮影はどちらが強いんですか?

花田:同じシチュエーション、同じ条件で撮影した場合には、先ほどご説明したように15メガピクセルの全画素読み出しを4Kの8メガピクセルにギュッと凝縮する過程でノイズの粒も小さくなりますので、スーパー35mmで撮影した方がノイズ感はより少なくなります。


ブレーキ機構を1から見直した低振動のシャッターユニット

――外観的にはα7 IIとα7R IIのボディはほとんど同じに見えますが、α7 IIとα7R IIのボディでメカ的に異なっている部分はありますか?

町谷:基本的なデザインや構造はα7 IIと同じです。ただ、大きく変わった部分として、リアキャビ(背面カバー)が、α7 IIは強化エンジニアリングプラスチックなのに対し、α7R IIはマグネシウム合金を採用しています。

もともとフロントキャビ、トップキャビ、内部キャビの3つにマグネシウム合金を採用していたのですが、α7R IIではリアキャビもマグネシウム合金とすることで、ほぼボディ全面がマグネシウム合金で囲われているという、非常にボディ剛性の高い構造となっていると同時に、4K動画撮影時を考慮し、放熱性も高めています。

マグネシウム合金を採用
α7 IIでは背面カバーにエンジニアプラスチック素材を採用しているが、α7R IIでは高い剛性感と放熱性を考慮し、フロント、トップ、内部、背面カバーすべてがマグネシウム合金になっている

また、細かな改良ですが、モードダイヤルにロック機構を設け、不用意に撮影モードが変わってしまわないように配慮しました。レリーズボタンもより精度の高い部品を使用し、シャッターボタンを押したときの感触を改善し、ぐらつき感も抑えています。

ファインダーの見えにもこだわり、両面非球面レンズを含む4枚レンズ構成の新規アイピース光学系を採用することで、0.78倍という世界最大のファインダー倍率を実現しています。

改良されたアイピース(左α7R II、右α7 II)
ファインダーの高倍率化により、アイカップ形状もα7 IIよりも目当てのゴム部分が薄くなり、目にしっかり密着できるように改良されている

このアイピース部分には、ZEISS T*コーティングを施すことで、のぞいた際の映り込みが非常に少ないのも特徴です。カメラがより高解像になったことで、ファインダーで被写体をじっくり見ながら撮影することも多くなることを考え、より広視野角で見やすいファインダーに仕上げました。

T*コーティング:カールツァイス独自のマルチコーティングの名称で、交換レンズでも採用される技術。フィルム時代からフレアやゴーストが出にくく、高コントラストな描写が得られることで定評が高い。ただ、コーティングの素材や形状といった詳細は不明だ

――ファインダーは確かに広くて見やすくなりましたね。ただ、メガネをかけていると、しっかりファインダーに目を押し当てないと周辺部がけられてしまうこともあるので、できたら、ハイアイポイント的にライブビュー画面を小さくし、ライブビュー画面外に情報表示を追い出した表示モードを追加してほしいと思います。ファインダー倍率以外に、表示画質については何か改良を行っていますか?

町谷:OLED(有機ELパネル)の画素数はα7 IIと同じですが、画作りに関しては多少チューニングを変えています。より自然といいますか、成果物である撮った画像と同じような印象を受けるライブビュー表示に変更しています。

OLED(有機ELパネル):バックライトが必要な液晶パネルはどうしても黒の締まりが悪くなりがちだが、OLEDは自発光するので、黒を完全な黒として再現可能で、液晶よりも高コントラストな表示が行えるのが特徴だ

――高画素化に対してブレ対策は何か行っていますか?

町谷:ミラーレスカメラは最大の振動源であるミラーがありませんので、その点では一眼レフに対して有利です。ただ、それでもメカシャッターによる振動の影響は存在しますので、より低振動のシャッターユニットを新規開発しました。

シャッターの羽根や、シャッターがぶつかったときの衝撃を吸収するブレーキ機構を一から見直すことで、シャッターの振動や動作音を抑え、それに伴って耐久性も約50万回まで向上しました。

低振動のシャッターユニット
シャッター羽根の素材を軽量化することで、シャッター幕の運動エネルギーを減らし、シャッターショックを和らげると同時に、シャッターの耐久性も約50万回に向上している

――シャッター羽根を軽量化したりとか?

町谷:いろいろ変更点がありますが、シャッター羽根の材質をより軽量で強度のあるものに変え、シャッター羽根が止まる際にまずダンパーで運動エネルギーを殺してからそっと受け止めるような構造に改良しています。

――振動対策といえば、サイレントシャッターも有効ですね。電子シャッターでシャッター音がしないので、至近距離でネコなどのペットを撮影しても嫌な顔をされることが少ないし、音楽会などシャッター音がはばかられる撮影にも威力を発揮しますが、惜しむらくは、α7R IIのサイレントシャッターは連写が効きませんよね? 同じくサイレントシャッターを搭載しているα7Sにはそういった制約はありませんし、α7R IIでもAEブラケットは可能ですよね? なぜ、α7R IIのサイレントシャッターは連写が設定できない仕様になっているのでしょうか?

花田:技術的に難しいというよりは、α7R IIにサイレントシャッターを搭載してこのタイミングでお届けするというところを優先して商品化を進めてきました。サイレントシャッターに対するお客さまの声を聞きながら、今後の参考にさせていただきたいと考えています。

――サイレントシャッターのデメリットの1つとして、動体を撮影したときのローリングシャッター歪みがありますが、α7R IIは裏面照射型CMOSイメージセンサーの採用で読み出しも高速化していますよね? α7Sと比べ、ローリングシャッター歪みは少なくなっていますか?

陰山:α7Sも読み出しスピードが速い機種ですので、ローリングシャッター歪みの度合いを比較するのがすごく難しいですね。α7R IIは画素数が非常に多くなっていますが、センサーの読み出しスピードを高速化していますので、多くのシーンでは実用上問題ない程度の歪みに収まると思います。

ローリングシャッター歪み:すべてのデータを時間的に同時に読み出すのが“ グローバルシャッター”。これに対し、ローリングシャッターは、画面の端から順次データを読み出していくので、画面の上と下では時間差が生じ、これが歪みとなって現れる現象

――α7 IIと同様、5軸ボディ内手ブレ補正も搭載していますが、画素数が大幅に増えたことで、何か改良を行っていますか?

町谷:基本的な手ブレ補正ユニットの構造はα7 IIと同じですが、α7R IIは42メガピクセルと高画素化しているので、より高精度の手ブレ補正制御が必要となり、今回、手ブレ補正のアルゴリズムを一新しています。手ブレ補正をチューニングするパラメータを従来の約7倍近くに増やしまして、それを徹底的にチューニングしていきました。

――ブレを検出するセンサーや手ブレ補正を制御するマイコンの性能はパワーアップしていないのですか?

町谷:手ブレ補正アルゴリズムの進化に加え、補正に必要なジャイロセンサーからの信号をより正確に得られるように電気回路にも工夫を加えております。

――流し撮りや三脚撮影にも対応していますか?

町谷:流し撮りも考慮した手ブレ補正になっています。三脚撮影時は手ブレ補正オフをおすすめします。

――4K動画撮影では放熱対策が重要となりますが、ボディ内手ブレ補正を採用したことで、センサーからの熱を逃がす導線的に不利にならなかったのでしょうか?

町谷:確かにボディ内手ブレ補正を採用することで、イメージセンサーを宙に浮かせた構造になるので、放熱を考えると技術的にハードルは上がりました。しかし、イメージセンサーも画像処理エンジンも自社で開発していますので、お互いの開発部隊が協調して4K動画撮影時の消費電力を抑えることに努め、それにより発熱量も少なくなりました。

また、イメージセンサーから発せられた熱が全体にうまく拡散するような構造を採っています。これに関しては、カメラ内部を数値シミュレーションで定量化しまして、どういう構造にすれば効率的に熱を逃がせるか、を徹底的に追い込んで、4K動画の本体内記録を実現しました。


AFアルゴリズムの改良で精度アップ

――α7 IIと比べ、ファストハイブリッドAFの性能自体、どのような進化を遂げているのでしょうか?

水上:像面位相差AFのカバー範囲が画面全体の26%から45%に広がり、像面位相差AFセンサーの数も117点から399点と大幅に増えています。これにより、像面位相差AFで被写体をとらえやすくなっています。また、ファストハイブリッドAFで、最終的にコントラストAFでピントを追い込むシーケンスにおいても、アルゴリズムの改良で高速化が図られています。

α7R IIのAFエリア
像面位相差AFのカバー範囲が画面全体の26%から45%に広がり、像面位相差AFセンサーの数も117点から399点と大幅に増加。フルサイズ機としては驚くほどのワイドエリアAFだ

――これだけ像面位相差AFセンサーが増えても、最終的にはコントラストAFで追い込む必要があるのですか?

水上:撮影シーンや状況によっては像面位相差AFだけで最終合焦まで持っていくケースもありますが、AF方式の選択はカメラ内で自動的に最適制御されていますので、お客さまが設定を選択できるようにはなっておりません。

――α7R IIのカスタム設定メニューに[AF-S時の優先設定]、[AF-C時の優先設定]という項目があり、それぞれ[フォーカス優先/レリーズ優先/バランス重視]という選択肢がありますが、この設定は、像面位相差AF、コントラストAFをどう使うかには関係ないんですか?

水上:メニューとは直接関係ないですね。[レリーズ優先]は、ピントは合わせられる範囲で合わせ、コマ速を最優先した設定です。これに対して[フォーカス優先]は、確実にピントを合わせたとカメラが判断するまでシャッターが切れませんので、被写体の動きや速度によって、連写時のコマ速が速くなったり遅くなったりします。[バランス重視]は、両者のちょうど中間の設定です。

――α6000は“4Dフォーカス”を謳っていますが、α7R IIのファストハイブリッドAFは“4Dフォーカス”とは呼べないのでしょうか?

水上:画面のほぼ全域をカバーする広範囲のAFエリア、被写体を瞬時にとらえるAFスピード、精度の高いAF追従性という点では、4Dフォーカスの要素を満たしているといえますが、α6000は連続撮影速度が約11コマ/秒と非常に高速で、動く被写体を連続的にとらえられるのに対し、α7R IIは約5コマ/秒ですので、高速連写で瞬間をとらえるというイメージとはちょっと違うのではないか、という思いがあります。

4Dフォーカス:縦横前後の3次元の被写体の動き+動体予測予測駆動の4軸のオートフォーカスシステム。画面全体をカバーするワイドエリアAF、高速なAFスピード、精度の高い動体追従性、高速な連写といった要素を満たす必要がある

町谷:α7R IIを発表したときに“4Dフォーカス”と謳っても良いのでは? というご意見もいただきましたが、確かにα7Rやα7 IIに比べて大きくAF性能は向上していますが、我々としてはもっと高い目標を目指しているということで、4Dフォーカスとは謳っていません。

――それは楽しみです。α7R IIで驚いたのは、SSM/SAM搭載のAマウントレンズ+マウントアダプターLA-EA3で像面位相差AFができるようになったことです。しかも、α99やα77 IIほどではないものの、実用的なAFスピードでピントを合わせることができます。α6000やα7 IIのインタビュー時に、LA-EA3でAマウントレンズを像面位相差AFで使えるようにできないか? という質問をした際には、技術的には可能ではあるが、実現には難しい部分があるという話でした。そこから何が変わったことで、Aマウントレンズでの像面位相差AFが可能になったのでしょうか?

陰山:お客さまからの要望も多く、我々もなんとか実現できないか検討を重ね、いろいろなハードルを超えていってようやく実現できました。

――何か特定のデバイスに大きく依存しているわけではないのですね? 例えば、裏面照射型CMOSイメージセンサーの高速性がなければ実現できないのか、それとも一般的なデバイスでも制御で実現できるのでしょうか? なぜこういった質問をするのかというと、もっと下のクラスのαにも、Aマウントレンズを像面位相差AFで駆動できるようになる可能性があるのか否かを知りたいからです。

水上:制御がEマウントレンズとAマウントレンズはかなり違っていて、また、α6000の開発時点ではまだまだ我々のノウハウも蓄積されていませんでした。どれか1つの要素でAマウントレンズ+LA-EA3で像面位相差AFを実現できたわけではありませんが、一度α7R IIで実現できていますので、これから先の機種についてもできるだけ対応していきたいと考えています。

――表面照射型のセンサーでも実現可能?

水上:実現できるように努力していきたいと思っています。

マウントアダプターとAF追従について

――最近、フルサイズのAマウントレンズが次々とII型にリニューアルされていますね。II型は、ナノARコーティング採用、レンズ処理LSI(マイコン)の高速化でAF速度と精度が向上し、動体追尾性能が約4倍に高速化、防塵・防滴に配慮した設計といった特徴がありますが、LA-EA3使用時のα7R IIの像面位相差AFにも最適化されているのでしょうか?

水上:α7R IIボディ側では、特にレンズ個別の最適化動作はさせておりません。システムとして成立する範囲で高速化を図り、加えて、II型ではレンズの処理が高速化されていますので、I型よりも高速、高精度なAFが期待できると思います。

――ところで、Aマウントレンズ+LA-EA3では、どこまでAF-C連写性能があるのでしょうか? 連写HでもAFが追従するのでしょうか?

水上:AF-Cが追従するのは連写Lのときです。

――連写Hでも、被写体の動きがそれほど速くないときには、ある程度はAFが追従するような気がするんですけど……。

水上:連写H時は1コマ目でピントは固定される仕様です。

――なるほど。連写H時は、2〜3連写したらシャッターボタンを押し直して、再測距してまた2〜3連写という使い方にします。ただ、超望遠ズームや大口径レンズのように大ボケするレンズだと、大ボケ状態ではある程度手動でピントを合わせてからでないと像面位相差AFが被写体を追従しに行かないことが多いのが課題ですね。最終的には、マウントアダプターLA-EA4の専用位相差AFと像面位相差AFがα99のAF-Dのように協調動作してくれるのが1つの理想型だと思いますが、技術的に可能性はありそうですか?

水上:将来的な話についてはお答えしづらいのですが、LA-EA4のように専用の位相差AFモジュールを搭載しているマウントアダプターと、AFセンサーを搭載していないLA-EA3では制御の仕方が違っており、LA-EA4の位相差センサーとボディ側の像面位相差センサーを協調動作させるというのは、現時点では技術的に難しいと考えています。

タイプの異なる2つのマウントアダプター
LA-EA3(左)は電子接点の伝達機構のみで、ピント合わせはα7R IIの像面位相差AFセンサーで行う。一方、LA-EA4(右)はトランスルーセントミラーと専用の15点位相差AFセンサーでピント合わせを行う

――Aマウントレンズでα7R IIの像面位相差AFを利用するにはLA-EA3が必要ですが、これまでは、Aマウントレンズをα7シリーズで使う場合、専用位相差AFセンサーとAFカプラーによるレンズ駆動が可能なLA-EA4を選択する人がほとんどだったと思います。LA-EA4の専用位相差AFと像面位相差AFの協調動作は難しくても、LA-EA4の専用位相差AFセンサーを無視して、α7R IIの像面位相差AFが利用できる設定ができるようになれば、新たにマウントアダプターを買い足すムダも省けますし、SSM/SAM以外のAFレンズもAFカプラーで駆動できるので、もっとAマウントレンズを有効活用できると思うのですが、これも難しいのでしょうか?

水上:それにつきましてもLA-EA3とLA-EA4とでは、同じマウントアダプターでも制御が違いますので、難度は高いです。

陰山:2機種のAFシステムを開発するのと同じですので……。

――では、もう少し難度を下げたお願いです(笑)。α99やα77 IIには、“AFレンジコントロール”という機能が搭載されていますよね。ボディ側から設定できるフォーカスリミッター機能で、望遠レンズやマクロレンズなどでフォーカス駆動を行う範囲を撮影者が限定することで、レンズのムダな動きを抑えられ、大ボケ状態も回避しやすくなります。以前にもお願いしたのですが、これなら技術的に十分実現可能ではないでしょうか?

水上:LA-EA3とAマウントレンズの組み合わせでのAFレンジコントロールの搭載についてはこれまで検討したことがなく、技術的にできるとはいいにくいです。

――ぜひ前向きに検討してください、よろしくお願いします。それと、最近タッチパネルを採用したαがほとんどなくなりましたが、ライブビューや動画撮影時のフォーカス位置選択/変更にはタッチ操作が非常に便利なので、これからの機種にぜひ採用を検討してほしいと思います。

 ◇           ◇

【実写ミニレビュー】解像力が高くレンズの描写力をしっかり引き出してくれるカメラ

従来のα7Rで不満だったのは、α7で実現していた電子先幕シャッターと像面位相差AFに非対応だったこと。そのため、レリーズタイムラグが長く、AFスピードもあまり速いとは言えなかった。それだけに、α7Rの後継モデルの登場を待ち焦がれていた。

個人的な予想(期待)としては、α7 IIのボディをベースに5軸ボディ内手ブレ補正機構と、α7Rで非対応だった電子先幕シャッターと像面位相差AFが搭載されれば、それで十分と考えていたのだが、蓋を開けてみれば、想像を遙かに超える高いスペックと価格で、特に価格は予想していたよりもかなり高かった。正直、α7R IIを購入するべきか否か、かなり悩みに悩んでしまった。

ソニー α7R II/70-400mm F4-5.6 G SSM II/330mm/シャッター優先AE(F5.6、1/2,000秒、-0.7EV)/ISO 400/WB:太陽光

結果、購入することにしたのだが、決め手はAマウントレンズでもファストハイブリッドAFが効くことだ。Aマウントの70-400mm F4.5-5.6 G SSM IIの描写に惚れ込み、このレンズを購入したのだが、待てど暮らせど、このレンズの性能を引き出せるAマウントボディが登場しない。α7 IIにボディ内手ブレ補正が搭載され、手ブレ補正の恩恵は享受できるようになったものの、LA-EA4の15点AFではAFエリアが狭すぎるし、精度面でも不満が残る。

しかし、α7R IIなら、LA-EA3を使えば、399点の像面位相差AFを併用したファストハイブリッドAFが効くし、想像していたよりもAFレスポンス、追従性能も高い。400mmという超望遠でも、ピントの精度が極めて高く、このレンズ本来の描写性能を簡単に引き出してくれるのだ。おまけに、社外品の電子接点付きEFレンズアダプターでも、十分ファストハイブリッドAFの効果が得られ、EOSの高解像度ボディとしても流用可能だ。ある意味、EOSユーザーこそ注目すべき1台ではないだろうか?

伊達淳一

(だてじゅんいち):1962年広島県生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒。写真誌などでカメラマンとして活動する一方、専門知識を活かしてライターとしても活躍。黎明期からデジカメに強く、カメラマンよりライター業が多くなる。