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【CES/PMA】インタビュー:ミラーレスの「今」と「これから」【富士フイルム編】

〜高級指向のレンズ交換式カメラ「FUJIFILM X-Pro1」について訊く

 2011年に、富士フイルムから発売が予告されていたレンズ交換式カメラが、米ラスベガスで開催中の2012 International CES(今年はカメラ製造者向けトレードショウのPMAも併催)で発表された。

国内未発表のFUJIFILM X-Pro1

 商品の詳細については発表内容を参照していただきたいが、本稿では新製品の商品企画を担当した富士フイルム電子映像事業部商品部担当課長の河原洋氏に、ポイントとなる特徴や今後の展開について話を伺った(インタビュアー:本田雅一)


要望の強かったX100のブラックモデルを限定1万台

 今回のCESで富士フイルムが発表したカメラは、大きくは2つある。ひとつはFUJIFILM X100の限定モデル、もうひとつが新しいレンズ交換式カメラのFUJIFILM X-Pro1だ。まずは簡単にX100ブラックモデルの背景について話を訊いた。

 なお、FUJIFILM X100ブラックモデルは全世界で1万台だけの限定モデルで、シリアル番号を割り振ったカード(製造番号は通常モデルと同じ)、黒外装に内張に赤を採用した革ケースなどをセットで販売する。

(記事掲載後に日本でも正式発表。1月11日から予約受付開始で、発売は2月18日。価格は16万円前後の見込み)

FUJIFILM X100限定ブラックモデルの発売を予告する海外向けページ。“Only 10,000 sets available worldwide”とある

――X100は発売前からブラックモデルの要望をよく耳にしていました。黒モデル投入のタイミングが遅かった理由、限定モデルとした意図はなんでしょう?

「マグネシウムダイキャストのボディは、梨地のメタリック塗装でスチールのように仕上げているだけならば、キレイに仕上げることができます。しかし、ブラック塗装は半光沢の仕上げとなるため、表面の細かな気泡が表面から判別できてしまう。最初の試作段階では歩留まりがゼロ(すなわち、どこかに必ず気泡ができていた)でした」

「そこからさまざまな工夫を経て、きれいなブラック塗装仕上げを実現できるまでに時間がかかりました。その後、歩留まりも上がってきたのですが、定番モデルとして用意することが難しく限定商品となりました」

――1万台という限定数は少な過ぎるのでは?

「他の方からも、全世界でそれくらいの数ではあっという間に売り切れるとの意見をいただきましたが、発表当初は震災の影響を受けたものの、当初計画を上回るペースで販売できました。トータルでの販売数は全世界で10万台くらいです。こうした背景から、1万台との数字にさせていただいています」

「また、今回はレンズ交換式カメラのX-Pro1も用意しています。一部のお客様はX-Pro1に興味を持っていただけるとの自信を持っています。


“レンズ性能を引き出すため”に設計されたXマウント

――そのX-Pro1ですが、昨年より富士フイルムから、ミラーレスタイプのレンズ交換式カメラが登場すると噂されていました。Xマウントと名付けられた新マウントは、どのようなフォーマットにすることを意図したのでしょう?

「X-Pro1の特徴は、なんといっても画質です。製品予告時にも案内していたように、ライカ判フルサイズのイメージセンサーを採用する一眼レフカメラに対しても、画質の面で優位に立つ。そのためにレンズ性能を100%引き出すこと。これがXマウントの設計思想です」

2012 International CESの開幕前日に行なわれたプレスカンファレンスで公開された試作機

――具体的にはどういった部分に、その設計思想が反映されているのでしょう?

「画質を決めるのはバックフォーカス(レンズ後端とイメージセンサー面の距離)です。レンズ交換式カメラでは、この部分が長くなる分、固定式レンズに比べて不利になります。特に広角レンズについては顕著で、サイズも大きくなります」

「そこでAPS-Cサイズのセンサーに対し、フランジバックを17.7mmと短くした上で、マウント面から奥に7.5mm、レンズ後端が入り込むメカ設計としています。バックフォーカスはレンズごとに異なりますが、広角レンズのXF 18mm F2 Rの場合で11mmの設計です。これにより、レンズ設計の自由度も上がり、隅々まで高い解像度を実現しています」

――同時発表のXRレンズは、XF 18mm F2 R以外に、XF 35mm F1.4 R、XF 60mm F2.4 R Macroの3本構成ですが、レンズをセット販売としたモデルは用意されないのでしょうか?

「キットレンズは作りません。我々は画角がライカ判の53mm相当となる35mmを標準レンズと捉えていますが、何が標準と捉えるかはユーザー次第ですから、敢えてレンズキットのモデルは作りませんでした。しかし、金属鏡筒、金属グリップの質感高い仕上げの明るい単焦点レンズとして、十分に買い求めやすい価格も実現しました」

同時発表のレンズは3本。左からXF 18mm F2 R、XF 35mm F1.4 R、XF 60mm F2.4 R

――全レンズの絞り環が1/3EVステップという部分に拘りを感じますが、ステップが多すぎて操作しづらくはないでしょうか?

「CESに持ち込んでいるレンズは試作のもので、まだ明確な違いは感じられないかもしれません。しかし、1EV単位でクリック感が変化するよう設計していますから、製品版を触っていただければ、“慣れればひと絞り単位の調整を感じながらブラインドでも操作できるな”と感じてもらえると思います」

――今後のレンズラインナップ拡充スケジュールについて教えてください。

「ズームレンズを含む6本を、今後2年かけて増やしていきます。まずは画質を重視して単焦点レンズを用意しましたが、ズームレンズが欲しいというお客様もいらっしゃいますから、標準ズームと望遠系のズームレンズを用意します。あとは単焦点レンズですが、広角レンズを中心に増やす予定ですが、まだスペックが変更になる可能性もありますので、詳細は控えさせてください」

――Xマウントの仕様をレンズメーカーなどにライセンスする意思はありますか?

「今のところ、マウントのオープン化は予定していません」

――他社マウントへの変換アダプタは用意していますか?

「はい、Mマウントのレンズを使えるようアダプターを発売します」


ローパスフィルタ不要のX-Trans CMOSをX-Pro1で初採用

 富士フイルムのブースには、X-Pro1で撮影された巨大なプリントが置かれているが、その画質は確かに素晴らしいものだった。ライカ判フルサイズセンサーの一眼レフカメラに匹敵するとの話だが、細かなテクスチャの描写はナチュラルで、むしろフルサイズセンサーのカメラを凌駕している。

 柔らかな風合いや空気感と、キリッと引き締まった輪郭の両方を明確に描き分け、その間の表現もフラットで恣意的な強調が見られない。空間周波数が高域までフラットに伸びきっている。そんな印象だ。

 この点はもちろん、新設計のマウントとレンズが寄与している部分も大きいのだろう。しかし、X-Pro1の画質をもっとも特徴付けているのは、X-Trans CMOSだ。

――1,600万画素のAPS-CサイズのCMOSセンサーは、ローパスフィルターが装着されていないとのこと。ベイヤー配列では、偽色やモアレを防ぐため、高域成分を光学フィルターで落としてから、仕上げ時に持ち上げる処理を行いますよね。過去にもローパスフィルター不要のレンズがありましたが、誤処理で色がおかしくなることが多く実用性は低かった。新センサーは、なぜローパスフィルターが不要になるのでしょう?

「新開発のX-Trans CMOSは、ベイヤー配列とは異なるカラーフィルター配列を採用しており、この配列方法が高画質の決め手になっています。空間周波数の高い成分を鈍らせないため、ベイヤー配列のフルサイズセンサーよりも高解像度にできます」

「具体的には従来は2×2画素をひとつの単位として、各画素のカラーフィルターを規則的に配置。2×2画素での色情報の演算を行なっていたのに対し、6×6画素単位でのカラーフィルター配置になっています。このため、カラーフィルター配置の規則的周期が長くなり、モアレの発生を抑制。偽色が発生しにくくなったことで、ローパスフィルタを取り除くことができました」

X-Trans CMOSのカラーフィルター配列

――光学的な周波数特性の上限を下げるかわりに、カラーフィルタ配置を工夫することで同様の効果を狙ったということでしょうか?

「結果的にはそうですが、元々はフィルムにはなぜ偽色がないのか? という疑問からスタートしています。フィルム感光剤の分子はランダムにフィルム上に並んでいます。ならば、画素上のカラーフィルターも周期性を下げることで偽色を避けられるのではないか? となり、約3年をかけて実用化に漕ぎ着けました」

――2×2と6×6では、色情報を確定させるための演算で9倍もの画素数を参照しなければならなくなりますよね?

「はい、そのために専用のEXRプロセッサProというプロセッサを開発しています。その成果は、とにかく理屈で考えるのではなく、結果としての映像を見て欲しいですね。静物を撮影して畳3畳分の大きさでプリントし、きちんと像しているというデモをお見せしていますが、みなさん驚かれると思います。サンプル画像もインターネットで公開していますから、とにかく見てください。サンプル画像には、一切の説明が不要というくらいの力を感じていただけると思います」

――高感度時にも、面積の広いフルサイズセンサーに対して解像度の優位性はあるのでしょうか?

「感度設定範囲は標準でISO200〜6400、拡張設定でISO100〜25600です。この数字だけを見ると、APS-CサイズのCMOSセンサーとしては、一般的な数値に感じるかも知れません。しかし実際の映像を見ていただくとわかるのですが、S/N比がよく、高感度時の解像度低下も緩やかです。高感度時でも、フイルムライクな発色を維持できます。


ファインダー倍率の自動切り替えを実現

――X100で採用したハイブリッド・ビュー・ファインダーが、ハイブリッド・マルチビュー・ファインダーと名前を変えました。これはどのように動作するのでしょう?

「ハイブリッド・ビュー・ファインダーに、ファインダー倍率を変更するレンズを挿抜するメカを組み込んだものです。これにより、光学ファインダー時の倍率が、18mmレンズ用の0.37倍と35mmレンズ用の0.6倍で切り替わり、レンズを変更してもファインダーのフレームガイドの表示位置は変わりません。ただし、60mmレンズ装着時は0.6倍のまま、フレームガイドが真ん中に小さく表示されます」

「望遠時にはEVFモードにしてフレーミングしてもらう方が使いやすいでしょう。なお、倍率は手動でも変更可能で、EVFとOVF(光学ビューファインダー)を切り替えるレバーを2秒以上、倒したままにすると切り替わり、フレームガイドの位置も変わります」

ハイブリッド・マルチビュー・ファインダーを搭載。写真の装着レンズ、XF 35mm F1.4 Rをの場合は0.6倍のファインダー倍率になる

――構造図を見ると、EVF用イメージセンサーの位置が変更になっていますが、倍率変更以外の機能に変わりはないのでしょうか?

「X100ではファインダーの横にセンサーを配置していましたが、これを下に動かしています。ファインダー倍率変更用のレンズを待避する場所も必要ですし、この方式ではセンサーの短辺が奥行き方向となるため、薄型化にも寄与しています」

「カタログをパッと見ただけではわかりにくいのですが、このファインダーには、デジタルカメラならではの新しい機能も組み込んでいます。それは多重露光撮影を、前の撮影結果を確認しながら行なえることです。OVF時、撮影済みの映像を半透明に重ねて表示することで、撮影イメージとOVFの像の両方を確認しながら多重露光撮影を行なえます」


Sシリーズの“PRONEGA”モードが復活

――一眼レフカメラのFinePix S5 ProなどにあったPRONEGAモード(スタジオポートレートモード)が復活しました。

「今回は最高の画質を目指し、フルサイズセンサー機を凌駕する解像度を実現したことで、プロの写真館でも使っていただける画質を実現できました。PRONEGA StandardとPRONEGA Hiという2つのモードを用意しています。前者がスタジオライティングを前提に豊かな階調表現を実現したモード、後者はフラットなライティングでも立体感が引き出せるコントラスト高めのモードです」

「また、FUJIFILM X100で好評だったフィルムシミュレーションのブラケット撮影ですが、今回、モードが増加したことで好みの3枚が選べるようになっています。FinePix S5 Proなどで評判の良かった映像モードが、より高品位な映像で楽しめます。

「このほか、背面モニターで代表的な設定値をタイル状に表示し、カーソルで動かしてダイヤルでダイレクトに設定値を変更するなど、新しい操作性も盛り込んでいます」

設定を一覧表示して、ダイレクトにパラメータ設定できる新UIを導入 多重露光を重ね合わせ表示で実現。ファインダー内ではOVFの中に撮影済み映像がオーバーレイされる

富士フイルムの考える“デジタル化”によるレンズ交換式カメラのイノベーション

――富士フイルムではX-Pro1を“レンズ交換式プレミアムカメラ”と呼んでいますが、市場の中でのどのような立ち位置を狙っているのでしょう。ミラーレス機というと、これまではコンパクト性を重視した製品が中心でした。

「今までのミラーレス機は、簡単操作、小型・軽量、そして安価な初級者向けという位置付けの製品が多かったと思います。“富士フイルムもミラーレス機を出すのか”と、今回の新製品を見て感じる方もいるかもしれませんが、我々はこの製品を他社とは全く違う視点、違うコンセプトで開発しました」

「画質面でいえば、FUJIFILM X-Pro1は明らかにフラッグシップモデルです。手軽さを重視してきた、今までのミラーレス機とは違うカテゴリだと我々は考えています」

――他のミラーレス機は、フルデジタル化で新たなサイズのセンサーを採用する際、小型・軽量化が容易になる利点や、将来のセンサー性能向上を見込んでイメージセンサーも小さくすることが多いのですが、富士フイルムは今回のイノベーションを高画質化のチャンスと捉えたということでしょうか?

「その通りです。デジタル化の機会に、新たにどんなことができるのか。今の時代に富士フイルムが提供できる価値を積み重ね、今回のマウント規格、レンズ、カメラボディが生まれています」

――日本での価格はどのくらいになりますか?

「日本での価格はまだ未定です。しかし、ボディ単体でおよそ15万円程度になるでしょう。オプションにはグリップや、X-Pro1に似合うストロボなども用意しています」

――X-Trans CMOSの技術は、あらゆるカメラに対して応用できる可能性があると思います。今後、他製品への展開は?

「X-Pro1はフラッグシップ機で、それ故に今回のイメージセンサーと新しい映像処理プロセッサを採用できたという背景があります。しかし、あらゆるカメラの画質を上げることが可能な技術だと思いますから、ボリュームゾーンの製品にも採用することは考えています。また、Xマウントを採用するカメラボディに関しても、さまざまなユーザー像が考えられますから、将来はいくつかのバリエーションを用意したいですね」



(本田雅一)

2012/1/10 18:02