写真展

寺門豪写真展「部屋と写真」

(新宿ニコンサロン)

今回展示する写真は2012年初頭からおよそ1年の間に撮影したものである。当時私は戦前に建てられた木造の家に妻と暮らしており、二階の一室をスタジオ代わりに撮影していた。

窓辺に垂らした白い布を背景に、テーブルの上に被写体となるものを配置する。シンプルな構成の白黒写真を作るのだが、頭の中のイメージを元に撮影を行い、プリントを見ながら手を加えて撮り直す、ということを繰り返した。

一方で、制作が進むにつれ意識にのぼってきたのは、選んだものだけでなく、カメラの背後にある選ばれなかったものも撮影できないかということだった。そうして、ぼんやりした部屋の様子やメモ書きの文字も写真に収めた。単純化すれば、白黒で作品にしたかった世界を表現し、カラーでは足元の現実を写すという対比を考えたのだった。

11月に入った頃、家主から家の取り壊しを言い渡された。その頃私は写真における存在、について明確に捉えたいと思うようになっていた。例えば、写真はふつう現実に存在するものを写すわけだが、写真の中の被写体と目の前にあるそれとは別ものだということだ。現実はうつろい、写真はとどまる。現れ方は違うが、どちらにも確かな存在が、ある。

今年の春に私たちは引越しをした。7月、旧居を訪れてみると解体工事の最中だった。わずか1年前のことではあるが、ここに写された眺めは文字通り写真の中の存在となった。たったそれだけのことではあるが。 (寺門 豪)

(写真展情報より)

  • 新宿ニコンサロン(ニコンプラザ新宿)
  • 住所:東京都新宿区西新宿1-6-1 新宿エルタワー28階
  • 会期:2013年8月27日(火)~2013年9月2日(月)
  • 時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • 休館:会期中無休

(本誌:武石修)