写真展

展覧会「ヴォルフガング・ティルマンス Your Body is Yours」

(国立国際美術館)

Sendeschluss / End of Broadcast IV, 2014
Wolfgang Tillmans / Courtesy of Wako Works of Art, Tokyo(参考図版)

国立国際美術館では、ドイツ出身の写真家ヴォルフガング・ティルマンス(1968 - )の西日本では初となる大規模な個展を開催いたします。

ヴォルフガング・ティルマンスは、ドイツに生まれ、現在はベルリンとロンドンを拠点に国際的に活躍している写真家です。彼を取り巻く日常的な光景をとらえた写真で1990年代初頭から注目を集め、雑誌『i-D』や『Interview』への掲載でもよく知られるようになります。ティルマンスが撮影対象とした特徴的なモチーフは、街頭の若者や身近な友人たちのポートレ ート、またセクシュアリティーやジェンダーといった今日的なテーマへの問いかけなどが知られ、私的な部分と社会的な要素が混在したものが見受けられました。以来、そのときどきの時代の精神を写真によってつかみ取ろうとするティルマンスの姿勢は、不変のものとして常に見いだすことができます。

また、「新しいイメージをつくり出すためには、どのようにメディアを使えばいいのか?」(『Wolfgang Tillmans』美術出版社より)と問い続ける彼の作品には、プリントされたメディアを折り曲げたりねじったりすることで作られたものや、暗室で生み出された抽象イメージもあります。

一方で、強いインスタレーション性をもった展示手法をとることでも知られており、展示空間を強く意識し、異なるサイズの写真を、額装を施さずにまるでイメージが泳ぐがごとく自由に展示する斬新なインスタレーションは、大きな衝撃を与えました。

近年、写真集『Neue Welt』(新しい世界)を発表したティルマンスは、世界各地で発生している事象や、世界を旅する途中に彼の視線の先がとらえた場面を、イメージの群として露にし、政治経済の問題や技術の進歩という、この地球上で繰り広げられているさまざまな出来事に対する自身の見解を示すことを試み、新たな展開を見せました。

こうして、2000年には現代美術界で重要な賞の一つ、イギリスのターナー賞を受賞し、本年には偉大な業績を上げた写真家に贈られるハッセルブラッド国際写真賞の受賞も決定するなど、ティルマンスは現代写真表現のフロントランナーとして多大な影響を与え続けています。

本展は、日本の美術館では2004年に東京オペラシティ アートギャラリーで開催されて以来、11年ぶりとなる待望の個展で、当館のみの開催です。当館のためにティルマンス自身がデザインした展示空間において、日本初公開となる多数の写真作品や、昨年ヴェネチア・ビエン ナーレ国際建築展で発表され大きな反響をよんだ2台のプロジェクションによる《Book for Architects》といった映像インスタレーションからは、同時代性を意識しながらティルマンスが見つめる、私たちが生きるこの社会の真の姿が浮かび上がることでしょう。

(開催趣旨より)

paper drop Prinzessinnenstrasse, a, 2014
Wolfgang Tillmans / Courtesy of Wako Works of Art, Tokyo(参考図版)
astro crusto, a, 2012
Wolfgang Tillmans / Courtesy of Wako Works of Art, Tokyo(参考図版)
young man, Jeddah, b, 2012
Wolfgang Tillmans / Courtesy of Wako Works of Art, Tokyo(参考図版)
Outer Ear, 2012
Wolfgang Tillmans / Courtesy of Wako Works of Art, Tokyo(参考図版)

会場・スケジュールなど

・会場:国立国際美術館
・住所:大阪府大阪市北区中之島4-2-55
・会期:2015年7月25日土曜日〜2015年9月23日水曜日・祝日
・時間:10時〜17時(金曜日は19時まで)※入場は閉館の30分前まで
・休館:月曜日(ただし9月21日祝日は開館)
・観覧料:個人(一般900円、大学生500円)、団体(一般600円、大学生250円)※団体は20名以上、高校生以下18歳未満、心身に障害のある方とその付添者1名無料

アーティスト・トーク

・日時:7月25日土曜日14時より
・講師:ヴォルフガング・ティルマンス(出品作家)
・会場:国立国際美術館地下1階講堂
・参加費:無料
・定員:100名(当日10時から整理券を配布)
・その他:逐次通訳有

ギャラリートーク

・日時:8月2日日曜日、9月13日日曜日14時より
・講師:植松由佳(国立国際美術館 主任研究員)
・会場:国立国際美術館 地下2階展示室
・参加費:無料(要観覧券)
・その他:当日13時30分から先着90名に聴講用ワイヤレス受信機の貸し出しあり

作者プロフィール

1980年代後半より写真の発表を開始。1988年ハンブルクのカフェGnosaで初個展開催。その後、雑誌『i-D』などへの寄稿も行い、90年代には当時のユースカルチャーを象徴する存在になる。90年代と2000年代のほとんどの時期はロンドンを拠点に活動。2000年にはターナー賞を受賞し、以後、世界を代表する写真家の一人として勢力的に活動を続けている。本年には、偉大な業績を上げた写真家に贈られるハッセルブラッド国際写真賞の受賞も決まっている。


国際展への参加も多く、近年でも第53回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展(2009年)、第14回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展(2014年)、第8回ベルリン・ビエンナーレ(2014年)、マニフェスタ 10(2014年)に出品している。また、ストックホルム近代美術館(スウェーデン)、クンストハレ・チューリッヒ(スイス)、K21 デュッセルドルフ(ドイツ)、サーペンタイン・ギャラリー(イギリス)など、個展開催も多数。

日本では、2004年に東京オペラシティ アートギャラリーで美術館での初個展を開催。この他、東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、横浜美術館、金沢21世紀美術館、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館でのグループ展などに出品している。

(本誌:折本幸治)