写真展
第17回三木淳受賞特典 阿部祐己写真展「霧のあと」
(ニコンサロン)
2016年10月17日 17:00
幼少の頃から足繁く通った霧ヶ峰は、名前の由来どおり、しばしば濃い霧に包まれる。草原の中で視界が霧に覆われると境目が消え、どこまでも先へ続いているかのような錯覚を覚えた。
春になると、山には火が放たれる。火入れは人為的に形成された草原の維持に一役買ってきた。ある年、風に煽られた炎が防火帯を越え、山へ燃え広がる山火事騒ぎがあった。数ヶ月後、草原は元の緑に姿を変えたが、焼け焦げた白樺の森は数年後に切り落とされ、姿を消した。
かつて山では山岳信仰が盛んだったという。秋に草原に残る社跡で行われる神事は800年前に武士たちが行っていた狩猟祭の名残でもある。人々の山への畏敬の念が 今に伝わる一方で、草原には本来の役目を終えた建築群が一つ、二つと増えている。 そのまま放置された無人の建造物は、現代の活動を後世に伝える新たな遺跡のようにも思えた。
山を覆う霧は一瞬の出来事だ。出ては消え、全てを覆うように見えてもどこかへと消える霧。人間の活動も同じだろうか。古い史跡も、現代の建物跡も、山の表面に作られた一過性の存在に過ぎない。
山の持つ長い時間軸の中で、霧の先には、はじまりはなく、終わりもない。
あとに残る、あるいは埋れていく霧のあとを探し、私は道を辿っている。 (阿部祐己)
カラー50点。
会場・スケジュールなど
- ・会場:銀座ニコンサロン
- ・住所:東京都中央区銀座7-10-1STRATA GINZA(ストラータ ギンザ)1・2階
- ・会期:2016年10月26日(水)~11月8日(火)
- ・時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
- ・休館:会期中無休
- ・入場:無料
- ・会場:大阪ニコンサロン
- ・住所:大阪市北区梅田2-2-2ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階
- ・会期:2016年12月1日(木)~12月7日(水)
- ・時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
- ・休館:会期中無休
- ・入場:無料
フォトセミナー
日時:11月1日(火)18時30分~20時
場所;銀座ニコンサロン
※入場無料、予約不要。
作者プロフィール
1984年生まれ。2011年日本写真芸術専門学校卒業。写真展(個展)に、14年「新しき家」(Juna21新宿ニコンサロン、Juna21大阪ニコンサロン)がある。主なグループ展に、11年・12年「写真新世紀」(東京展:東京都写真美術館、仙台展:せんだいメディアテーク)、13年「キヤノンフォトグラファーズセッションファイナリスト展」(品川オープンギャラリー)、14年「三菱商事アートゲートプログラム展」(GYRE/表参道)、同年「BIRTH展」(CANSON Gallery Seoul/韓国ソウル市)、15年「Jeonju International PHOTO FESTIVAL」招待作家 (全州郷校/韓国全州市)がある。受賞歴に、11年・12年写真新世紀佳作入選、14年三菱商事アートゲートプログラム入選、15年第17回三木淳賞がある。13年キヤノンフォトグラファーズセッションに参加。