写真展

伊藤昌世写真展「A Map of Memories」

(ニコンサロン)

ある時期から作者は墓地へと足を運ぶ機会が増えた。墓守のためである。墓前に花や線香を立てながらあたりを眺めると、真新しい花や少ししおれた花、すっかり枯れて色の変わった花などが人々の来訪の跡を感じさせている。墓園を歩きながらこれらを眺めていると、作者は「いつくしむ」という大和言葉を思い出す。ここでは皆、そんな気持ちをどこかに携えながら記憶の中の故人と共に過ごすのだ。

ひとつひとつの魂は波頭に舞う飛沫のようなものだと僧侶が言う。飛沫は波に落ちてうねりとなり、また飛沫となって舞っては落ちる。この波が日本人の心の記憶であるのなら、そこに脈打つ共通感覚を見つめてみたいと作者は思う。それは現代社会が私たちに、否応なく突きつけてくる問いへの手がかりのような気がするからだ。

新宿ニコンサロン 2016年9月 - 写真展 - ニコンサロン

会場・スケジュールなど

  • ・会場:新宿ニコンサロン
  • ・住所:東京都新宿区西新宿1-6-1新宿エルタワー28階
  • ・会期:2016年9月6日(火)~9月19日(月)
  • ・時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • ・休館:会期中無休
  • ・入場:無料

作者プロフィール

1959年三重県生まれ。武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。写真展に、78年「面接ポートレイト」(武蔵野美術大学)、80年「標準温度」(同学)、91年「同心円東京」(ガーディアン・ガーデン/渋谷)、「幸福論」(07年Place M、08年銀座ニコンサロン、10年Place M、他)がある。11年「Taylor Wessing Photographic Portrait Prize 2011展」(National Portrait Gallery/ロンドン)に選出。 写真集に08年「幸福論2006-2008」(ItoDesign)、13年「標準温度」(冬青社)がある。