写真展

道原裕写真展「夜鐘 −やしょう−」

(Roonee 247 photography)

夜間、電灯に照らされる植物を撮影した。建物と道路との間の、フイリヤブランやサツキ、シマトネリコなどの草や灌木を配置する地帯である。

植え込みに埋もれるように照明装置が設備してある。

暗くなっていると点灯する仕組みらしい。

葉は、昼夜絶え間なく光を浴びる。そのような環境が地表に出現したのは、地球の歴史からすると、極最近に違いない。何らかの必要があって考案された一個であるにしても、夜に浮かぶ枝葉の姿は不思議だ。草木の生態に影響しないのかと心配になる。

本来ならば自然の懐に育まれるべきところを無理に居場所を与えられた、と考えると切なさを伴った違和感を覚える。

人の世界に暮らす自分自身を重ねるなら、同情に通じる親近感を抱く。とにもかくにも生きよ、と諭されているようでもある。

無論、照明は電力によるものだ。撮影地は東京の身近な場所だが、長くこの地域で電気を消費する生活を続け、その上で3.11を経験した者としては、話が電力に及ぶ限り、たとえ撮影時、撮影地点で使用されていたエネルギーが原子力に由来していなかったとしても、どうしても意識に福島が上る。眼を伏せて通ることのできぬ主題である。

タイトルは“夜鐘”とした。

鐘の音は、初め硬く重く鋭い。次第にうねりを帯び、ほころび、ほぐれ、ほどけていく。

作品を制作、構成する過程で大切にした心象である。2015年9月から12月にかけて撮影した。

カラープリント約20点。

(展示情報より)

会場・スケジュールなど

  • ・会場:Roonee 247 photography
  • ・住所:東京都新宿区四谷4-11みすずビル1階
  • ・会期:2016年7月19日(火)~7月24日(日)
  • ・時間:12時~19時(最終日16時まで)
  • ・休館:月曜日
  • ・入場:無料