写真展

入江泰吉写真展「大和路郷愁」

(JCIIフォトサロン)

©入江泰吉 古都遠望1957年頃

大阪を拠点に活動していた写真家・入江泰吉(1905-1992)は、40歳の時に空襲で経営していた写真店と自宅を失い、故郷の奈良へ戻りました。戦災ですべてを失った傷心の入江を救ったのは、昔と変わらない大和路の風景でした。戦後のめざましい経済成長とともに変わってゆく町並みを目の当たりにしながらも、慣れ親しんだ光景を写真に残そうと、仏像、風景、伝統行事、万葉の花など、86歳で亡くなるまで奈良大和路の風物を撮り続け、数多くの作品を発表してきました。

本展では入江作品の中から、生前ほとんど発表されることのなかったスナップ写真を中心に、昭和20年代から30年代の奈良大和路の風景や、当時の暮らしぶりを写した作品をご覧いただきます。

幻想的な霧の中に佇む大仏殿、穏やかな山並みに囲まれた田園、道端で遊ぶ子供たちの姿など、大和の歴史が織りなす景観と日々のさりげない生活の光景が細やかに写しとめられています。自身の心象風景を求めてとらえられた作品からは入江の故郷に対する愛情が感じられ、同時に、日本の原風景が写し出された貴重な記録として誰にとっても懐かしい光景ばかりです。

入江は作品と著作権を奈良市に寄贈し、これを機に1992年4月に奈良市写真美術館(現・入江泰記念奈良市写真美術館)が開館、2015年3月には水門町の自宅が「入江泰旧居」として開館するなど、功績が広く讃えられています。本展は、入江泰記念奈良市写真美術館のご協力により開催の運びとなりました。

JCIIフォトサロン:入江泰吉作品展「大和路郷愁」

会場・スケジュールなど

  • ・会場:JCIIフォトサロン
  • ・住所:東京都千代田区一番町25番地JCIIビル
  • ・会期:2016年6月28日(火)〜7月31日(日)
  • ・時間:10時〜17時
  • ・休館:月曜日
  • ・入場:無料

作者プロフィール

1905(明治38)年、奈良県奈良市に生まれる。長兄より譲り受けたカメラで写真をはじめる。1931(昭和6)年、大阪に写真店「光藝社」を開く。1940(昭和15)年、世界移動写真展で「春の文楽」が一等賞を受賞、文楽の写真家として活躍。1945(昭和20)年3月、大阪大空襲で自宅と店舗を焼失、奈良へ引き揚げる。同年11月17日、疎開先から戻る東大寺法華堂四天王像を目撃、アメリカに接収されるとの噂を聞き、写真に記録することを決意。以来、奈良大和路の仏像、風景、伝統行事の撮影に専念。晩年には「万葉の花」を手がけるなど約半世紀にわたって奈良大和路を撮り続けた。『大和路』『古色大和路』『萬葉大和路』『花大和』『佛像大和路』など、大和の美をとらえた写真集は多数にのぼる。1992(平成4)年1月16日、86歳で逝去。同年4月、入江泰の全作品を収蔵した奈良市写真美術館(現・入江泰記念奈良市写真美術館)が開館。2015(平成27)年3月、水門町の自宅が「入江泰旧居」として開館。