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オールドレンズユーザーにおすすめしたい「香港撮影地ガイド」

夜景だけが香港じゃない。知る人ぞ知る撮影スポットを紹介

α7 II / Zuiko Auto-W 28mm F2.8 / 6,000×4,000 / 2秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO400 / WB:オート / 28mm
ビクトリアピークから香港島の夜景を望む。展望スポットは柵があり、トラベル三脚では柵越えできない。中型以上の三脚がほしい。クランプで柵にカメラを固定する手もあるが、柵に寄りかかる人が多く、微ブレに注意が必要だ。

11月初旬、タートルバック社の「澤村徹と行く香港ワークショップ」に講師として参加した。香港でオールドレンズ撮影を楽しむことを目的とした撮影イベントだ。香港在住の現地スタッフと協力し、オールドレンズ撮影に向いている撮影スポットを選出。4月に下見を行った上での開催である。4日間にわたって様々な撮影ポイントを訪れたが、その中から特に面白かったポイントを紹介しよう。

香港らしさが凝縮された大繁華街、旺角(モンコック)

今回のワークショップでは、九龍側と香港島の北側を中心に撮り歩いた。九龍サイドで主に見て回ったのは、旺角(モンコック)と鯉魚門(レイユームン)だ。

オールドレンズ向きの被写体という点では、旺角はぜひとも押さえておきたい。ここはいわゆる下町で、年季の入ったビル、アパートメント、看板がそこかしこにある。

さらに露天、市場、ミニバスの停留所など、フォトジェニックな被写体に事欠かない。古い町並みをタクシーとミニバスが走り回り、香港らしい写真があらゆるところで撮れるだろう。地下鉄の旺角駅からぶらぶらと歩くだけで様々な被写体と出会えるため、予備知識なしで訪れても楽しめるはずだ。また、日中だけでなく、夜スナップもお薦めしたい。有名な女人街(衣料品の露天街)は夜遅くまで賑わっており、明るめのレンズで撮って歩くにはうってつけのロケーションである。

α7 II / Super Takumar 28mm F3.5 / 6,000×4,000 / 1/80秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 28mm
旺角にある二方向に看板が伸びたビル。CDジャケットの撮影で用いられたこともあるようで、それなりに知名度のあるスポットだ。タクシーやミニバスが通る瞬間を待ち、香港らしさを切り取る。
α7 II / Super Takumar 28mm F3.5 / 6,000×4,000 / 1/60秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 28mm
旺角のマーケットを歩く。アメ横と似た雰囲気だが、頭上の看板が香港らしさを醸し出している。肉の赤、野菜の緑など、鮮やかな色調が目を楽しませてくれる。
α7 II / Kistar 55mm F1.2 / 6,000×4,000 / 1/80秒 / F1.2 / +0.7EV / ISO100 / WB:オート / 55mm ミニバスの群れを旺角の歩道橋から俯瞰する。ミニバスは市民の足として定着し、便の数が非常に多い。

観光客で賑わう海鮮レストラン街、鯉魚門(レイユームン)が見せるもう一つの顔

鯉魚門(レイユームン)はグルメスポットだ。昔は渡し船を使わないと訪れることができなかったが、近年地下鉄の駅が近くにでき、アクセスしやすくなった。

海鮮レストランが軒を連ね、海上レストランジャンボと負けず劣らず有名なグルメスポットだ。そのような場所を何故オールドレンズワークショップで訪れるのか? それは海鮮レストラン街を抜けた先に、極上の撮影スポットが待ち構えているからだ。

レストラン街を抜けると燈台があり、そこから東に向かって歩いて行く。道が一気に細くなり、ひなびた漁村が現れる。

くすんだ白壁の家がそこかしこに建ち並び、寂れたサントリーニ島のようで面白い。さらに進むと、突如採石場跡に突き当たる。海沿いに石造りの建物が点在し、オールドレンズには恰好の被写体だ。

背後に目を転じると、地層剥き出しの崖が迫ってくる。香港在住数十年の現地スタッフをして「香港にこんなところがあるなんて知らなかった」と言う。ひなびた漁村、産業遺跡、さらには地層。まったく無関係の被写体が一堂に会しているのだから、鯉魚門が撮影スポットとしていかに優秀かが解るだろう。

Leica M Typ 240 / Ektar 47mm F2 / 5,976×3,992 / 1/1,000秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 47mm
鯉魚門の船溜まりは、年季の入った漁船が浮かんでいる。海鮮レストラン街として有名で、平日でもそれなりに観光客が訪れる。
α7 II / Quinon 50mm F2 / 6,000×4,000 / 1/1,250秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO100 / WB:オート / 50mm
海岸から漁村を望む。奥に見える漁村の中を通って突端の産業遺跡を目指す。
α7 II / Quinon 50mm F2 / 6,000×4,000 / 1/8,000秒 / F2 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 50mm
漁村の家屋は白っぽい壁のものが多い。かなり老朽化が進んでいるが、アンテナや電線がそこに確固たる生活があることを教えてくれる。
Leica M Typ 240 / Ektar 47mm F2 / 5,976×3,992 / 1/180秒 / F2 / -0.66EV / ISO200 / WB:オート / 47mm
通りから横道をのぞくと、お誂え向きの光と影が待ち構えている。路地裏好きにはたまらないシチュエーションだ。
α7 II / Quinon 50mm F2 / 6,000×4,000 / 1/4,000秒 / F2 / +0.7EV / ISO100 / WB:オート / 50mm
漁村を抜けた先にある採石場跡。無人の地かと思いきや、産業遺跡の突端に釣り人がいる。最果て感があるわりに、地元の人の間では知名度があるのかもしれない。
Leica M Typ 240 / Ektar 47mm F2 / 5,976×3,992 / 1/125秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 47mm 採石場跡の後ろ側は、剥き出しの地層が待ち構えている。香港まで来て地層を撮ることもなかろうが、一カ所でいろいろな被写体を楽しめるのがいい。
Leica M Typ 240 / Ektar 47mm F2 / 5,976×3,992 / 1/1,500秒 / F2 / +0.66EV / ISO200 / WB:オート / 47mm
鯉魚門は夕日スポットとしても人気がある。夕刻になると海岸は人であふれ、大型三脚で本格的に撮り始める人も少なくない。

2階建て路面電車の車窓から市場のカオスを撮る

香港島の北側は、東西にトラムが走っている。トラムとは二階建ての路面電車のことだ。日本でも路面電車は走っているが、二階建てのものは珍しい。

路面電車というとレトロな外観を想像しがちだろう。残念ながら、香港のトラムはその多くが全面にど派手な広告が印刷されている。そのため懐古調の写真は望めないが、古い町並みと派手なトラムのギャップを意識して撮影すると面白い写真が撮れるだろう。

今回のワークショップでは、上環(ションワン)、北角(ノースポイント)、太古(タイクー)をトラムで移動しながら撮影した。トラムからの光景、トラムが走る風景、どちらも写欲をそそる。

ただし、どの線に乗り、どこで乗り換え降りるのか。これは香港ビギナーの旅行者にはまったくお手上げだった。現地スタッフのアテンドなしにはトラムでの移動は難しかっただろう。また、トラムは線や時間帯によって車内がかなり混雑する。旅行者がひとりで乗り降りするにはハードルの高い交通機関と感じた。

北角の近くの市場があり、ここが恰好の撮影ポイントだ。市場の真ん中をトラムが走ってくる。しかし、買い物客は一向に避けようとしない。トラムの運転手も諦め顔で、トロトロと徐行しながら市場の端にある駅を目指す。市場、トラム、買い物客の混沌とした様子が、香港の生命力のようなものを感じさせる。そうしたカオスなさまも、香港の魅力のひとつと言えるだろう。

α7 II / Tessar 3cm F2.8 / 6,000×4,000 / 1/400秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 30mm
上環は2本の線の駅になっていて、たくさんのトラムをフレーム内に収めることができる。
α7 II / Biotar 75mm F1.5 / 6,000×4,000 / 1/6,400秒 / F1.5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 75mm トラムの二階の窓から先行するトラムを狙う。普段より高いところからの撮影が気分を高めてくれる。
α7 II / Biotar 75mm F1.5 / 6,000×4,000 / 1/800秒 / F1.5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 75mm
北角の市場をトラムの二階から俯瞰する。線路上にたくさんの買い物客がいて、トラムが進んでいってもまったく動じない。
α7 II / Biotar 75mm F1.5 / 6,000×4,000 / 1/2000秒 / F1.5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 75mm
トラムが迫ってきても、地元の人たちはお構いなしで線路を横切る。中望遠で抜くと楽しいシチュエーションだ。

結局はお気に入りのレンズで撮る写真が一番

香港をオールドレンズで撮る、これについて感じたことをまとめておこう。

今回、4月の下見で10本、11月の本番で10本、合計20本のレンズを香港に持ち込んだ。その内訳は、現行レンズ5本、オールドレンズ15本である。下見に行く前から撮影ポイントの情報を収集し、どこをどのオールドレンズで撮るか、自分なりにプラニングして撮影に挑んだ。オールドレンズは得手不得手があるため、被写体との相性が重要になるからだ。

熱帯の国だからコントラストと発色の強いツァイスかな。夜の露天はF1.2クラスの大口径レンズがほしい。下町の看板はあえて地味に写るレンズで撮ろう。とまあ、自分なりにいろいろと考えてレンズセレクトした。ところが撮影結果は、お気に入りのオールドレンズで撮ったカットが明らかに秀でて見えた。

つまりはこういうことだ。オールドレンズはそれぞれ個性があり、その個性に惚れて特定のオールドレンズを使用する。自分の求める表現にオールドレンズの描写が合致するからこそ、そのオールドレンズを愛用するわけだ。お気に入りのオールドレンズで目の前の被写体を切り取るだけで、求める写真(もしくはそれに近いもの)になる。この関係性は日本だろうと香港だろうと変わりない。好きなオールドレンズで撮る。これに勝るものはない。

むろん、被写体に応じてレンズの画角や明るさは選択が必要だ。ただ、こうした部分はサブレンズに任せよう。あくまでもメインレンズについては、お気に入りのオールドレンズでぐいぐい押し切ると良い結果に結びつく。せっかくの海外撮影だからとつい色々なレンズを持ち込んでしまうが、ことオールドレンズに関しては、お気に入りの相棒を常に携行したいところだ。