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鶴巻育子さんに学ぶ「プリントすると写真がうまくなるって本当?」

絞り込みから用紙選び、そしてキーワードの大切さ キヤノン PIXUS PRO-100S セミナーレポート

第3回「プリントすると写真がうまくなるって本当?」セミナーの開催が決定しました。詳しくは記事の最後で!

応募者多数で好評だった「プリントすると写真がうまくなるって本当? with Canon PIXUS PRO-100S セミナー・体験会」の第2回目が、神保町のインプレスセミナールームにて、9月17日に開催された。今回の講師は写真家の鶴巻育子さん。鶴巻さんの豊富な経験を踏まえ、写真のセレクトからプリントまでを教えてもらおう、というのが今回のセミナーの主旨だ。

講師の写真家、鶴巻育子さん

前回に引き続き、参加者はキヤノンのインクジェットプリンター「PIXUS PRO-100S」を使い、実際にプリントを体験をしながら自身の作品を作成するプロセスを学んでいく。また、デジタルカメラのデータを扱うのに必須ともいえるPCには、マイクロソフト社のハイエンドノートPCである「Surface Book」が用意されていた。

気になった写真を30枚選んで2Lサイズにプリントする

今回のセミナーで“最初の一歩”となるのが、自身で撮影した写真のうち「気になった写真を30枚ほど選んで2Lサイズにプリントする」である。

ただ、今回のセミナーに限っては、あらかじめ参加者それぞれが選んだ30枚前後の写真を画像データとして送信してもらい、セミナー開催までにインプレスサイドで2Lサイズのプリントを準備しておくという体裁をとった。

たくさんの画像データを見直し、30枚前後の写真を選び出すという行為(目的や状況に応じて30枚以上でも以下でも、もちろん自分で決めて大丈夫だ)によって、自身が「何に心地よさを感じ」、「何に目を留め」、「何にシャッターを切った」のかが分かるようになる、と鶴巻さんは説明する。

大切なことは気に入った写真だけをピックアップするのでなく、何となく気になる写真も含めて選ぶことだ。自分が撮りたかったものが理解でき、写真の軸ができてくることを、鶴巻さんは「興味(写真)の方向性」と呼んでいるそうだ。

そして、その30枚前後を2Lサイズでプリントし、並べて観ることで、次のステップへと進むことができるのである。2Lサイズにプリントする理由は、30枚前後の写真を全体的に観るために、大きすぎず小さすぎないための、ベストなサイズであるからとのこと。

キーワードを立てて写真をグループ分け

写真を並べたところで、次は写真に「キーワード」を付ける。写真を「言語化してカテゴライズする」ということなのだが、これは文章で説明しても正直分かりにくいのではないかと思う。

そこで、鶴巻さんはご自身が用意した、写真展「Oh!Hawaii」に関連するプリントを参考にして、写真をキーワードによって言語化し、カテゴライズしていく例を見せてくれた。

キーワードといっても、難しく考える必要はない。なんとなくイメージが似ている写真どうしを同じグループにまとめたら、漠然としているイメージを簡単な名詞や形容詞に置き換えるだけでよい。その方がイメージに膨らみが生まれるため、セレクトの幅も広がるということである。

写真展「Oh!Hawaii」の写真をセレクトしていくうえで、鶴巻さんが付けたキーワードは、「クレイジー」、「ノスタルジー」、「ポップ」の3つ。

鶴巻さんはここから「ポップ」を写真展のテーマとし、内容を深めていきながら、他のキーワードの写真を組み入れたり外したりを繰り返してセレクトした。例えば「ノスタルジー」にカテゴライズされていた写真が、テーマの決定後、改めて「ポップ」に編入し直され、さらには写真展DMのメインになったという。

グループ分けとキーワード付けができたところで、自分が何に注目して写真を撮ったかを見つめ直し、テーマを選び出す。テーマを決めたら他のテーマから写真を組み替えるなどしてさらにテーマを補完する。

トーンに合わせてDPPで調整

一連の写真を選んだら、次は「キーワードに合わせてイメージを統一する」という作業に移る。具体的には、基準となる1枚に合わせて、他の写真のトーンを調整していくという作業だ。

写真のトーンを合わせるための調整項目は、主に「明暗」と「ホワイトバランス」、「トーンカーブ」の3つ。これらをSurface Bookにインストール済みのEOS向け現像ソフト「Digital Photo Professional」で調整していく。もちろん、必要なら他の調整項目を利用してもよい。

例えば、ホワイトバランスなどは「オート」で撮影することが多いかもしれないが、その場合、1枚1枚の写真にとっては最適であっても、今回のように同じテーマでまとめた一連の写真ではイメージがバラバラになってしまう。そこでホワイトバランスを変更したり微調整したりしてイメージを統一していくという訳だ。明るさやコントラストについても、撮影時の光線状態などで1枚1枚のイメージが異なりがちなので、同様にして統一する作業を進める。

このように画像調整によって「トーンを統一することで、さらにイメージを具現化することができます」と鶴巻さん。調整してもイメージが合わない写真、大幅な調整が必要な写真は、そもそもキーワードと合っていないとのこと。

用紙を選んで本プリント

いよいよA4サイズに本プリント、という前に、作品のイメージに合わせたプリント用紙を選ぶ。セミナー会場にはキヤノン純正の「光沢 プロ [プラチナグレード]」、「微粒面光沢 ラスター」、「プレミアムマット」が用意されていた。

「質感や階調を重視して重厚感を出したい時にはプラチナグレード、優しいフラットな雰囲気を演出したい時にはプレミアムマット、両方の長所を持ち合わせて光や空気感を表現したい時にはラスターがオススメ」とのことで、皆さん自身の作品に合わせ、鶴巻さんと相談しながら慎重に用紙選択をしていた。

プリントはPIXUS PRO-100S の付属ソフト「Print Studio Pro」で行う。フチ(余白)を入れて印刷することで視線が写真に誘導され、写真の存在感が増す。

PIXUS PRO-100Sは染料インクのプリンター。鮮やかな発色と印刷スピードが速いのが特徴だ。

ただ、いままで使ったことのない用紙を試してみたいという方もいて、そうした理由もせっかくの貴重な体験会という意味では十分にアリだ。

次の撮影へとつながる重要な作業

そして、今回のPIXUS PRO-100Sセミナー・体験会でハイライトとなるのが、本プリントが終わったあとの講評。

参加者は一連のテーマでまとめたA4プリントを卓上に並べ、プリントの具合からセレクトの着眼点、それらに伴う写真の並び順や不足部分などを、鶴巻さんや他の参加者とともに話し合う時間が設けられていた。

この過程を経験することによって、自身のイメージがより鮮明になるとともに、そのイメージをより確実にするために次に何を撮るべきかが分かるようになるのである。

撮りたいイメージが明確になることで、

必要な機材が明確になるので、結果的に撮影時の荷物を絞ることができる。

露出やホワイトバランスなどのカメラ設定に迷うことがなくなる。

画像調整など後処理の目標も明確になる。

といったメリットがある。

次に撮影地に赴いたときにはイメージを探す“眼”が生まれているため、撮影地に到着すると同時にワクワクするような高揚感を感じることができる。

このワクワクするような高揚感の体験こそが、今回のPIXUS PRO-100Sセミナー・体験会で鶴巻さんが伝えたかったことなのである。

プリントすると写真が上手くなる、そのわけは?

今回のセミナーでは気になる30枚ほどの写真を2Lサイズにプリントした上で、イメージごとにグループ分けし、そこからテーマを絞り込んでA4サイズのプリントを打ち出し、さらにテーマを掘り下げていくことで、作品へと昇華させていくという過程を学んだ。当然プリント枚数は膨大になる。

では、セレクトをする際に、大量にプリントをする必要性はどこにあるのだろうか、鶴巻さんに聞いてみた。

「もしPCでセレクト作業をしようとしても、画面上では写真を自分なりのイメージとして捉えることはできません。たくさんの写真の中から気になる写真を選び、組み換え作業を繰り返していくという感覚的な行為はプリントでしかできないことだと思います」

「私の場合は写真展の写真を選ぶ時には必ずプリントした写真で構成を考えますし、これはコンテストへの応募やフォトブックの作成などでも基本的には同じはずです。だから、大切な写真を選ぶときには必ずプリントをするようにしてください」

手間暇や費用を惜しんで敬遠してしまいがちなプリントであるが、苦労して撮りためた写真だからこそ、恒常的なプリント作業を惜しんではならないと気付かされる言葉であった。

参加者の声

犬塚和明さん

PIXUS PRO-100Sをもっていますので、普段からプリント自体は楽しんでいます。ただ、今回のように、写真に合わせてプリント用紙を変えるという体験は初めて。紙質による作品の可能性を感じました。いままでは1枚を仕上げるプリントに徹していたので、アドバイスをもらいながら一連の作品をセレクトしていくという作業が斬新でした。

斉藤弘昌さん

作品に対するセレクトのプロセスが、とても興味深くて面白かったです。PIXUS PRO-100を所有しているので自宅プリントの操作には慣れているつもりですが、鶴巻先生のアドバイスを参考にして10枚上の写真を選び出し、イメージを合わせた作品として出力するという体験ができ、最初から最後まで有意義な時間を過ごすことができました。

引地玲子さん

写真教室に通っているのでプリント自体はよくしています。でも、今回のセミナーのようなプロセスに沿ったプリントは初めて。今までに撮りためた写真から、気になる写真を30枚選んで参加しましたけど、そこから6枚を選んでプリントすることで自分のイメージがハッキリした気がします。早く次の撮影に行きたいです。

青木仁志さん

フルサイズのデジタル一眼レフカメラで写真を楽しんでいましたが、本格的な高画質プリンターでのプリントを体験したいと思い応募しました。PIXUS PRO-100Sのよさも体験できた上に、プリントを並べて観るという行為を体験できたおかげで、自分が本当に撮りたいものを鮮明に理解することができました。

中間宙さん

プリンターを所有しておらず、お店プリントに頼っていましたので、自分で出力するプリントが憧れでした。いままでPC上で写真を選んでいて、いまひとつ感覚的にはっきりしなかったことが、今回、プリントという形で直接的に感じることができ、写真を作品として捉えることができました。セミナーの雰囲気も優しくて安心できました。

告知

「プリントすると写真がうまくなるって本当? with Canon PIXUS PRO-100S セミナー・体験会」第3回が11月20日に開催されます。講師は第1回と同じく岡嶋和幸さんです。

開催日

11月20日(日)

開催時間

午前の部:10時30分〜13時
午後の部:14時30分〜17時

会場

インプレスセミナールーム(東京都千代田区神田神保町1-105神保町三井ビルディング23F)

募集人数

午前の部:10名
午後の部:10名

講師

岡嶋和幸さん

参加費

無料