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カシオQV-10は“カメラ付きテレビ”として開発された!

未来の理想カメラとは? 発売20周年トークイベントが開催

対談のメンバー。左から麻倉怜士氏、末高弘之氏、中山仁氏

カシオ計算機は7月22日、「世界初の液晶モニター付きデジタルカメラ『QV-10』発売20周年記念イベント」を開催した。

会場ではデジタルメディア評論家の麻倉怜士氏を進行役に、QV-10の開発者である末高弘之氏(現OPCOM Japan代表取締役社長)とカシオ計算機執行役員の中山仁氏による対談が行われた。

QV-10は、液晶モニターを搭載した世界初のデジタルカメラ。1995年3月に発売され、年間20万台を売るヒット製品となった。パソコンの普及に合わせてコンシューマーのデジタルカメラ市場を開拓したデジタルカメラの歴史に残るモデルだ。

QV-10

試作品は熱く重いから「熱子」と「重子」

発売当時を知る麻倉氏は、「QV-10を感激して使っていた。どこに持って行っても注目され、コミュニケーションに大いに役立った。ワーナースタジオにDVDの取材に行ったときに俳優が集まる食堂でQV-10を見せたら、凄い反応だった。俳優から撮ってくれと言ってきた。あり得ないことが色々起きるマジックカメラだった」と振り返った。

続いて末高氏が、カシオのデジタルカメラ開発の歴史を説明した。

QV-10以前には、「VS-101」(1987年発売)というフロッピーディスクに画像をアナログ記録するカメラを開発。「フィルムがいらず、フィルムの消費を気にしなくていい。テレビですぐに見られる。モデムで画像を転送できるというコンセプトだった」(末高氏)。

VS-101

ところが大きさがビデオカメラほども有り、コンセプトを説明しても理解が得られず、セールスは失敗した。当時のカシオでは、これでデジタルカメラの事業は畳もうかという雰囲気だったそうだが、コンセプトを信じてデジタルの技術を投入した。

次に試作品として「DC-90」(1991年)が作られた。社内で「熱子」、「重子」と呼ばれたものだ。「作って見たら、熱いし重い。特に熱いのが問題でファンを入れたところ、ファインダーを入れることはできなくなった。今度はファインダーが無いのも問題と言うことで、液晶モニターを外付けすることにした」(末高氏)。

DC-90

そうして試用したところ、液晶モニターですぐに見られるのが面白いということに気がついたという。そこで、液晶モニター一体型カメラの必要性を認識したとのこと。これがQV-10に繋がる。

DC-90に液晶モニターを付けたところ

失敗してもデジタルの可能性を確信

しかし社内では、VS-101の失敗からデジタルカメラの製品化は難しい状況だった。そこで、当時ポケット液晶テレビなどの企画を立案していた中山氏が液晶テレビにカメラを付ける企画を提案。「カメラは1度失敗しているので、会社には“カメラ付きテレビ”として認知してもらった」(中山氏)。

こちらは「RS-20」というカメラ付きのテレビ。発売はされなかった

当時の企画書を見ると、現在スマートフォンで実現している機能が多く含まれている。「20年前に今のスマホのようなことをやりたかった」(中山氏)。

麻倉氏の「QV-10の価格が6万5,000円。これは高い気もするが」との問いに中山氏は、「結果的にテレビチューナーは取ったが、パソコンの画像取り込みの周辺機器としては、当時立体スキャナーが10万円以上していた。液晶モニター付きでこれは安いと思う」と答えた。

QV-10の回転機構確認モック
QV-10のスケルトンモデル
QV-10にはFDドライブも用意されていた
カメラ付きテレビの企画書

「企画書の中に“自撮り”はあったのかとよく訊かれるが、なかった。それは考えも及ばなかったが、今スマホでできることはほとんど含まれている」(中山氏)。

当時は、事故の証拠写真など様々な用途を考えた

「メーカーが100考えれば、ユーザーが1,000通り実行する。ユーザーを触発して、メーカーもまた触発され、いい意味のコミュニケーションになる」(麻倉氏)

また麻倉氏はQV-10成功の要因を「最初から革新的では無くても、執念があった。失敗があってもこの道はデジタルだと信じて進んだこと。そして、単にアナログをデジタルに置き換えるだけでは無く、デジタルならではのことをした。ファインダーの回転もアナログではできないこと。さらに、追い込まれているときでも、テレビとして開発を進めるという頓知が良かった」とした。

対談の様子

デジタルならではの“薄型ボディ”で巻き返す

1995年から2000年にかけて続々と他社もデジタルカメラ参入を果たす。多くのメーカーが銀塩カメラの画質を目指す中、カシオはそこまでの画質は必要ないという考えで進めていたところ、販売に苦戦する。

このままではまずいということで、研究開発部門を強化。客観的に検証して開発方針を見直した。そこで誕生したのが世界最薄のカードサイズを謳う初代EXILIMの「EXILIM EX-S1」(2002年発売)だ。

EXILIM EX-S1

「フィルムカメラにはできない形状を考えた。常に身につけられるという新しいコンセプトで訴求した。まさに今のスマホ。これを発展させて薄型ズームレンズを搭載したEXILIM EX-Z3(2003年発売)を発売したところ世界中で大ヒットした。液晶モニターを当時では大型の2型にしたのが良かった」(中山氏)。

EXILIM EX-Z3
EXILIM EX-Z40(2004年発売)。従来比2.5倍の電池寿命を実現。「基板が小さくなって他社が小型化に向かう中、空いたスペースに大きな電池を積んだ」(中山氏)
EXILIM EX-ZR1000(2006年発売)。業界初の1,000万画素モデル。「当時800万画素で十分と言われていたが、敢えて1,000万画素にしてヒットさせた」(中山氏)
EXILIM EX-F1(2008年発売)。60枚/秒のハイスピード撮影に対応。「昔からハイスピード撮影はやりたかった。やるなら早いほうが良いだろうと商品化した」(中山氏)
EXILIM EX-TR100(2011年発売)。フリースタイルカメラとして中国で大ヒット。現行品は10万円以上の価格で販売されている
EXILIM EX-FR10(2014年発売)。カメラ部とコントローラー部が分離できることで話題になった
EXILIM EX-ZR3000。7月31日に発売する新モデル。Bluetoothでスマートフォンと常時接続して画像の転送などができるオートトランスファー機能を搭載する
EXILIM EX-ZR60。こちらは8月28日発売の新モデル。EX-ZR3000と同じくオートトランスファー機能を搭載

カシオの考える理想のカメラとは?

麻倉氏の「なぜこういう発想を出すことができるのか?」という質問には、「デジタルによって全く新しい価値を創造する。これは社是。無いものをやるというのがカシオの社風。これを一番に、開発をしている」とした。

カシオが考えるデジタルカメラ像

中山氏はカシオの考えるカメラの将来について「メカレス」と説明した。

「シャッターを押すという行為を無くし、静止画と動画を区別せずに撮影しておいて後から、いかようにも好きな写真が得られるのが理想。それもカメラが自動的にコマを選ぶ。光学メーカーの得意なもの(レンズやセンサー)からは離れていこうと考えている。そこは勝負するところでは無いと考える。一方、画素数競争は続いていく。1億画素必要と言っているが、デジタルズームを考えると画素はあればあるほどよい。超高画素で見えてくるものがある。そういうカメラをいずれやりたい」と語った。

麻倉氏は、カメラメーカーの中でもカシオは特別と説明した

麻倉氏は、「本当の意味のデジタルカメラはカシオだけ。他のメーカーのは“デジタル化カメラ”。デバイスに対してデジタル技術を入れるのでは無く、デジタル技術に合わせてデバイスを決める。他では考えられないこと。QV-10の企画書は業界の行方を先取りしたものだ。1993年当時に“経験の共有化”などを挙げているのが、今のSNS時代を先取りしている。写真文化の中からでは無く、カメラメーカーでは無いアウトサイダーならではの他と違った発想ができたこと」をカシオの躍進の理由とした。

イベントが行われたカシオ計算機本社