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「カメラグランプリ2015」贈呈式が開催

対象はEOS 7D Mark II 受賞各社が開発こぼれ話を披露

大賞のキヤノン「EOS 7D Mark II」とレンズ賞を受賞した「EF 11-24mm F4L USM」

カメラ記者クラブは6月1日、「カメラグランプリ2015」の贈呈式を都内で開催した。

今年度は、審査委員が選ぶ「大賞」と、一般ユーザーがWeb上で投票して決定する「あなたが選ぶベストカメラ賞」の両方をキヤノン「EOS 7D Mark II」が受賞した。さらにレンズ賞として「EF11-24mm F4L USM」が受賞し、キヤノンがトリプル賞を獲得している。

詳しくは発表記事を参照されたい。

今回、「大賞」、「あなたが選ぶベストカメラ」、「レンズ賞」、「カメラ記者クラブ賞」を受賞した5製品。EOS 7D Mark IIは大賞とベストカメラのダブル受賞となる

カメラグランプリ2015実行委員長の福田祐一郎氏(CAPA副編集長)は挨拶の中で、大賞となったEOS 7D Mark IIについて「APS-Cフォーマットの特徴や優位性を再認識できる完成度の高いカメラ」と評価。「直近の4年は35mmフルサイズ機が連続で大賞を受賞していましたが、今年は4年ぶりにAPS-Cフォーマットのカメラを大賞に選出しました。スペックだけではなく、実際に手にして使ってみて、心地よく使える点が決め手になっています」とコメントした。

なお、EOS 7D Mark IIは、2位のオリンパス「OM-D E-M5 Mark II」と比べてほぼダブルスコアの大差をつけて受賞している。

「APS-Cサイズで最高峰のカメラをつくろう」――EOS 7D Mark II

EOS 7D Mark II(キヤノン)

「EOS 7D Mark IIのメインテーマは『APS-Cサイズで最高峰のカメラをつくろう』でした。今回、このような栄誉ある賞をいただいたのは、設計、生産技術、製造など開発に関わったすべての社員による成果です。結果として良いプロダクトができて、きちんと評価されたことは、我々にとって非常に励みになります。昨今、カメラマーケットの衰退が報じられていますが、私としてはまだまだ発展の余地があると考えています。業界全体で継続してイノベーションを起こし、挑戦し続ける限り、デジタルカメラの発展は継続するでしょう」(キヤノン株式会社イメージコミュニケーション事業本部長真栄田雅也氏)

「EOS 7D Mark IIの開発にあたっては、まずスペックは妥協しないと決めていました。2,020万画素のセンサーを搭載しながら10コマ/秒の連写ができるようにする。これが第一の目標でした。もう1つは『感覚性能』を重視しています。レリーズや操作感に関して、ハイアマの方々が使っていて気持ちいいと思えるようなものでなくてはいけません。フリッカーレス機能の開発も苦労しましたが、開発も大詰めで最後に残った問題は、10コマ/秒が出ないとか、AFが合わないとかではなく、オートストロボのメカが上手く機能しないというプリミティブなところでした。非常にバランスのシビアなメカニズムでできているカメラですし、そうした最後の部分を調整することで量産に結びつけることができたという経緯もありました」(キヤノン株式会社ICP第二事業部長戸倉剛氏)

これまでにない写真を撮ってほしい――EF 11-24mm F4L USM

EF 11-24mm F4L USM(キヤノン)

「このレンズは長い会社人生の中でも、とりわけ開発に苦労したレンズです。実は製品の企画当時、スペックで言えば11-24mm F4と12-24mm F2.8を大体同じコストで作れることがわかりまして、非常に悩んだ憶えがあります。決め手になったのは、我々の事業のコンセプトでした。我々は『顧客価値の創造』と呼んでいるのですが、お客様に新たな価値を提供して、その結果お客様の生活が豊かになればいいなというコンセプトに立ち返ると、(魚眼を除いて)世界最広角のレンズとして、これまでにない写真が撮れるレンズに仕上げた方がいいだろうという判断をしました」(キヤノン株式会社イメージコミュニケーション事業本部副事業本部長岡田正人氏)

「EF 11-24mm F4L USMは、広角端11mmスタートのズームレンズということで、使っている技術は世界初だらけという、挑戦しがいのある開発テーマでした。特に前玉に続く2枚目、3枚目は非常に曲率の大きいレンズで、結像性能を追求しつつゴーストなどが出ないようにしながら、ちゃんと量産できるようにすると言った具合に、いくつかの条件を同時に満たさなければならないことで、非常に難しいレンズです。見ての通り前方が大きく重い構成ですので、機構設計のメンバーも苦労していて、いかにスムーズにズームさせるかを考えながら、精度や耐久性も一定基準を満たさなければならなかった。開発チームはかつてないほど試行錯誤して、ようやくこの設計に辿り着いたという感じです。でもこのノウハウは次に活かせるかなとも考えています。使いこなすのが難しいレンズですが、このレンズならではの特徴が、表現や記録という写真の役割をさらに拡大できるのではないかと考えていて、今後どんな写真が出てくるのか期待しています」(キヤノン株式会社第一開発センター所長金田直也氏)

なお、EF 11-24mm F4L USMに関する解説は、3月に実施した技術説明会でも両氏が詳しく述べている。

「OM-D」は伝統的に挑戦するシリーズ――OM-D E-M5 Mark II

OM-D E-M5 Mark II(オリンパスイメージング)

「最近、市場分析を専門とする方とお話をする機会が多いのですが、よくカメラ事業は成長期から衰退期に入っている、と言われます。特に事業の衰退はイノベーションの衰退という意見もあって、改めて継続的にイノベーションを起こすことの重要性を強く感じています。オリンパスでは一貫して小型軽量かつ高画質のカメラを訴求しており、今回賞をいただいたOM-D E-M5 Mark IIには、防塵防滴性能に加えて動画記録時の手ブレ補正強化や4,000万画素のハイレゾショットを新搭載するなど、技術革新を加えています。来年はオリンパスの映像事業が始まって80周年の節目となる年。今後もオリンパスらしい技術開発を続けていけたらと考えています」(オリンパス株式会社映像事業ユニット長半田正道氏)

「初代のOM-D E-M5は、ミラーレスカメラに新しいレイヤーを加えようということで導入した機種です。Mark IIの開発にあたっては、どのような進化をさせるかについて社内でもかなり議論になりました。最終的には、初代がミラーレスカメラというカテゴリに対して新しい提案をした流れを汲んで、新しいチャレンジをする方向性で決まったのを憶えています。小型軽量という部分をキープしながら、手ブレ補正といった利便性の部分や、ハイレゾショットによる画質向上といった部分に注力して進化させました。開発には最初から最後まで苦労した製品ですので、こうした形でご支持・評価いただけたというのは本当に嬉しく思っています」(オリンパス株式会社映像商品開発1部1グループリーダー高瀬正美氏)

「カメラ+スマートフォン」はカメラ進化の一形態――LUMIX DMC-CM1

LUMIX DMC-CM1(パナソニック)

「写真の楽しみ方は時代とともに移り変わっていますが、昨今はSNSを通じて写真をシェアする楽しみ方が定着しています。その流れを作ったのはスマートフォンですが、写真愛好家の皆様からは、スマートフォンで撮った写真では満足できないという声もたくさんいただいておりました。CM1は、写真を撮った感動が醒めないうちにシェアすることをコンセプトに作ったカメラです。カメラと通信の融合は、カメラが進化していく中での一形態と捉えました。我々としては、CM1のようなコミュニケーションカメラというジャンルが育っていけばいいなと思います」(パナソニック株式会社AVCネットワークスイメージングネットワーク事業部イメージングプロダクツビジネスユニット長沢田宣明氏)

「CM1は遠目に見るとカメラなのかスマートフォンなのか判然としないし、世に出した後にどのような評価を受けるのか不安だったのですが、こういった形で賞をいただけて、今は我々のやってきた方向性が間違ってはいなかったのだと実感している次第です。CM1の開発は2年前にコンシューマ向けスマートフォン事業を休止して以来、カメラ開発とスマートフォン開発のチームが一緒になって取り組んできたプロジェクトです。初めは開発スタンスや仕事で使う言葉の意味合いなど何もかも違うところからスタートして、いろんなところで見解の相違が出て大変だったのですが、『新しいカメラを世の中に出して、お客様に評価してもらおう』という意志だけは共通していたので、次第に両者が互いを理解するよう動き、次第に1つのチームとして固まっていきました。パナソニックには違った文化や価値を掛け合わせることによって新しいイノベーションを起こす『Cross-Value Innovation』という言葉があるのですが、CM1はまさにその賜物なのではないかと考えています」(パナソニック株式会社AVCネットワークスイメージングネットワーク事業部技術総括山根洋介氏)

将来的にスチルカメラ以外の展開も――LYTRO ILLUM

LYTRO ILLUM(ライトロジャパン)

「今回の受賞は、ライトフィールドカメラに関する我々の長年の苦労や努力に対する評価であるとともに、デジタルイメージングが新しい時代に入ったことを告げる象徴的な出来事であると考えています。ライトフィールド技術の応用は、今回はカメラという製品に落とし込みましたが、今後はこの技術を用いて、カメラ以外の形で新たなクリエイティビティや生産性をお届けできることも楽しみにしています。また、新しいカテゴリのカメラを紹介することで、新たな顧客層が増えることも期待しています」(Lytro社CEO Jason Rosenthal氏のコメント。ライトロジャパン合同会社セールス&マーケティングマネージャー吉田英人氏による代読)

「ライトフィールド技術に関する研究は、1990年代にスタンフォード大学のコンピュータグラフィックス研究所で始まりました。当時学生として研究室に在籍していた創業者のRen Ngは、市販のカメラを分解して自分で作ったレンズを組み込んで組み上げ直すということを趣味でやっていたそうで、あるとき複数のマイクロレンズが並列的に並んだレンズアレイを使った立体写真の撮影方法を思いつきます。具体的にはセンサーの前にレンズアレイを配置する方法ですが、これがLytro誕生のきっかけです。Lytroでは絞りの変化やアオリ効果などをすべてソフトウェアで処理しており、今後はライトフィールドカメラで用いている光学レンズシステムや3D画像処理技術を、デジタルイメージング以外の分野、例えばAR(Augumented Reality)などといった方向に活かせたらと考えています」(吉田氏)

関根慎一