大沼英樹写真展「それでも咲いていた 千年桜」(銀座ニコンサロン)


この作品は、誓いのもとに生まれた2011年の記憶すべき被災地の桜の記録である。
2011年3月11日午後2時46分。国内観測史上最大、マグニチュード9.0の巨大地震が東日本全域を襲った。現在も余震が毎日のように起きている。津波の直撃に襲われた沿岸部の町は、海と瓦礫以外に何もない地獄のような世界と化した。その恐ろしい光景にもかからず、生き残っていた桜の樹はしっかりと花を咲かせていた。たくさんの語らいと悦びがしみ込んだ桜は、火災で黒く焦げてもなお花をつけていた。
災害に見舞われてもなお来年も再来年も、そして何十年後も咲き続けようとする桜を、作者は探し歩いた。しかし、これまでの桜をめぐる旅で、今回のような悲しみと怖れ、そして怒りを覚える桜に出会ったことはなかった。そのなかで、「千年後どんな困難にあっても人々がそこから立ち上がることができるように、被災地の桜の記録を残そう」と誓った。
タイトルの「千年桜」は、これからさまざまに生死流転を繰り返していくだろう未来への、ひとつの希望として、この大震災に生き残り、耐え抜いた桜の命を、せめて千年は語り継いでほしいとの願いをこめて付けた。
人間の中に自然があるのではなく、自然の中で人間が生かされているということ、どんなに厳しい冬があっても、春は必ず巡ってくること、そして明けない夜はないことを感じずにはいられない。
深い傷を負いながらも必死に耐え、花を咲かせていた桜は、作者にとって確かな<希望>だった。被災地の現実からすればささやか過ぎるかもしれないが、作者はそのような<希望>のひとつとして観てもらいたいと願っている。カラー約40点。
(写真展情報より)

  • 名称:大沼英樹写真展「それでも咲いていた 千年桜」
  • 会場:銀座ニコンサロン
  • 住所:東京都中央区銀座7-10-1 STRATA GINZA(ストラータ ギンザ)1・2階
  • 開催日:2011年12月21日~2011年12月29日
  • 時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • 休館:会期中無休

(本誌:武石修)

2011/12/7 00:00