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大沼英樹写真展「春の光をもとめて」

(新宿ニコンサロン)

本展は、2011年3月11日に発生した、東日本大震災に襲われながらも逞しく咲いた桜と、そこで出会った人たちの、春の記録である。

古来より日本人は桜に出会い、擬人化しては思いをよせ、生き方の基軸してきた。東北地方にも「種蒔き桜」と呼ばれ、御神木として農業に密接に関わって来た、樹齢千年の桜が現在も残っている。

2011年3月11日、突然大地震が東日本を襲った。作者が暮らす宮城県の沿岸部も巨大津波に襲われ、その光景は原爆を投下されたような荒野と化していた。

作者は桜の姿を追いかけるように、被災地に咲く桜を無我夢中で記録して歩いた。地獄のような中で桜は春を告げ、生命躍動の光を放っていた。中には作者が生まれる数百年以上も前から爛漫と咲き続け、その時代ごとに人々に愛でられてきたであろう桜もあった。何も語らない桜は、無言の証言者として、これからも咲き続けるだろう。

作者は、いつかまた桜の木の下に人が集い、心から笑える場所に甦るまで、この記録を続けようと誓った。それは、桜の寿命という時間軸と、作者が巡ったわずかな時間軸を結ぶ事で、けっして裕福というのではない、ささやかな幸福とは何かを自問しながらの永い道のりである。

震災を、希望や絆という気持ちだけで解決することはできないだろう。それでもこの記録がこれから生まれてくる、震災を知らない世代への道標として残せることを願い、2013年、3度目の春、作者は再び被災地へ向かった。カラー約40点。

(写真展情報より)

大沼英樹写真展「春の光をもとめて」

  • 会場:新宿ニコンサロン
  • 住所:東京都新宿区西新宿1-6-1 新宿エルタワー28階
  • 開催日:2013年7月9日(火)~2013年7月15日(月)
  • 時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • 休館:会期中無休

(本誌:武石修)