エプソン、プロセレクション最新モデル「PX-5V」の発表会


 エプソンは3日、プロ写真家・写真愛好家向けのA3ノビインクジェットプリンター「PX-5V」の発売を発表。都内で発表会を行なった。

 また、ビジネス向けのインクジェット複合機「PX-673F」と「PX-603F」をはじめ、モノクロ専用A4プリンター「PX-K100」、普及価格の複合機「PX-403A」を発表会で紹介した。本ページではPX-5Vにまつわる話題をとりあげる。

PX-5Vエプソン販売株式会社取締役販売推進本部長の中野修義氏

粒状性軽減のためドットサイズを小径化

 PX-5Vは、エプソンの民生向けインクジェットプリンターにおけるハイエンドモデル。PX-5600から最小ドットサイズを2pl(ピコリットル)に小径化するなど、高画質化を押し進めたという。

 価格はオープンプライス。店頭予想価格は8万円台後半の見込み。詳細は先に掲載した「エプソン、A3ノビ対応の顔料系インクジェットプリンター『PX-5V』」で確認されたい。

 エプソンではプロ写真家や写真愛好家向けの「プロセレクション」というラインナップを配置し、ハイアマチュア層の作品プリント熱に対応してきた。その元祖が2002年発売の「PM-4000PX」。初めてグレーインクを搭載した製品で、モノクロを含む高品位なプリント需要を掘り起こしたことで知られる。

 その後、K3インク採用の「PX-5500」(2005年発売)、現行機種の「PX-5600」へと流れるプロセレクションシリーズのメインストリームが確立した。今回エプソンが発表したPX-5Vはその直系となる。年間販売目標台数は1万2,000台。

PM-700Cがエプソンとして初めて写真画質を打ち出した製品になる。その後、PM-4000PXからプロセレクションシリーズがスタート

 画質面では、最小ドットサイズを2plに小径化したのがトピック。PX-5600でも粒状感が出るシチュエーションがあり、「さらなる高画質化には2pl化は必要だった」(セイコーエプソン株式会社IJP・LP企画設計部の五十嵐人志部長)とする。

 その上で、K3(VM)インクテクノロジーやカラー処理技術「LCCS」(Logical Color Conversion System)を引き続き採用する。K3(VM)インクと最小ドットサイズ2plで高彩度域の表現を充実させるため、LCCSに含まれるLUT(Look Up Table)も新規に設計しているという。

 また、フレームの剛性アップと用紙停止制御を最適化。紙送り精度の向上と安定化につながり、紙送りの負荷変動が低減したことで、フチ無し印刷における用紙端の画質が向上しているという。

 使い勝手の面でも手が加えられた。例えば今回から大容量インクカートリッジを投入。インク交換頻度が下がることで、煩わしさが低減する。また、フォトブラックインクとマットブラックインクを同時搭載して自動で切り替える仕組みをとりいれた。印刷速度は、A3(印刷モード:きれい)でPX-5600の235秒から195秒に短縮。約20%向上している。

要望の多かったインクカートリッジの大容量化を実現したフォトブラックとマットブラックの自動切替が可能に。同時に搭載できる

 近年のファインアート指向への高まりを受け、前面給紙トレイを設けたのも特徴。前面から専用トレイを引き出して用紙をセットする。従来の背面から給紙する方式と異なり、分厚いファインアート紙が扱いやすくなるという。用紙セット時のずれも少ない。

 なお、ファインアート紙の新製品についてアナウンスはなく、エプソンでは既存の「Velvet Fine Art paper」、「Ultra Smooth Fine Art Paper」、「画材用紙」をラインナップする。

ファインアート紙向けに前面給紙・排紙機構を装備前面の給紙トレイを引き出したところ
給紙トレイにファインアート紙を置く液晶ディスプレイにガイドが現れる
プリントまでの手順を表示従来通り背面からの給紙も行なえる

 前面にはプロセレクションモデル初の液晶モニターを搭載。サイズは2.5型。インク残量やインク交換の手順などを確認できる。本来、メディアスロットやスキャナーを搭載していないプロセレクションシリーズは、単体で使用できないため液晶モニターは装備されていない。しかし、今回からPictBridgeに対応したのと、インク交換などでの扱いやすさを考えて導入したという。

 操作ボタンも前面に集中配置。複合機のカラリオシリーズを思わせる操作性になった。無線LAN(IEEE 802.11b/g/n)もPX-5600になかった機能だ。

カラー液晶ディスプレイは2.5型。左右にボタンを並べた最新のカラリオを思わせるインターフェイスになった

「カメラを選ばない、カメラに選ばれる」

 エプソン販売株式会社取締役販売推進本部長の中野修義氏は、PX-5Vのプロモーションワードを「カメラを選ばない、カメラに選ばれる」と紹介した。エプソン製品が「投稿作品の7割で使われている」、「写真愛好家からプロ写真家まで、カメラメーカーを問わず支持をいただいている」との実績から。中でも「カメラを選ばない」というフレーズは、多分にライバルメーカーのキヤノンを意識したものと考えられる。

 具体的には、著名な6名の写真家が製品の魅力を伝える内容。大山行男氏、水谷章人氏、北島敬三氏、菅原一剛氏、今森光彦氏、飯塚達央氏といった、多彩な作品ジャンルが期待される顔ぶれとなっている。雑誌、Webなどでの情報発信を取り組む。

プロモーションワードは「カメラを選ばない、カメラに選ばれる」PX-5のプロモーションに起用する6人の写真家
エプソンプリンター使用者の使用カメラ。特定のメーカーの機種に強い訳ではなく、多くのメーカー品をフォローしているフォトコンテストへの応募の7割がエプソンプリンターという

 そのほか、既存のエプソンプロセレクションブログを起点としたプロモーションも継続する。そのうちエプソン製品を体験できるイベント「ニューフォトフォーラム」は、札幌(2月26日)、大阪(3月12日)、名古屋(3月26日)、東京(4月16日)、福岡(4月23日)の5カ所で開催する。恒例の「それいけ! 写真隊」やブロガー向けイベントも継続するという。

 2月9日に横浜パシフィコで開幕するカメラ・写真関連のイベント「CP+2011」にももちろん出品する。エプソンブースのメインとなる予定。

 なお、「A3ノビは大きすぎるとの声を反映したA4サイズまでのプロセレクション製品の実現性、あるいは半切対応など、逆に大型化の可能性は」との質問に対しては、「ニーズにより重さやサイズなどのラインナップを検討したい」と回答。大判プリンター製品で採用が進む内蔵キャリブレーターによるキャリブレーション機能については、「対応の予定はない」とした。

今年もニューフォトフォーラムを開催。札幌を皮切りに5カ所で実施する定番イベントとなった「それいけ! 写真隊」も継続
ブロガーイベントの例


(本誌:折本幸治)

2011/2/3 18:31