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当面はペンシリーズに注力も、フォーサーズは継続

〜オリンパスSLR商品企画部長の杉田幸彦氏に訊く

 フォトキナ2010の際にドイツ・ケルンでは話を伺うことができなかったオリンパスイメージング SLR商品企画部長の杉田幸彦氏に話を伺った。同氏はレンズ交換式カメラ全体の商品企画の責任者を務めている。

 ペンシリーズの大ヒット以来、同社には常に“フォーサーズ事業は縮小し、マイクロフォーサーズに特化した戦略を採るのではないか”との疑問が投げかけられてきた。しかし、同氏は改めて両規格に優先順位を付けているわけではないと強調し、フォーサーズ対応機の事業継続、新規製品開発をインタビューの中で話した。その一方で、“今、この時点”においてマイクロフォーサーズに傾注している理由についても語った。(インタビュアー:本田雅一)

オリンパスイメージング SLR商品企画部長の杉田幸彦氏

ZUIKO DIGITALレンズの性能を100%発揮する「E-5」

――フォトキナ2010におけるオリンパスブースを見て、一番驚いたのはデジタル一眼レフカメラを置いたコーナーが、あまりにも小さいことでした。新製品として「E-5」を発表した直後にもかかわらず、ブース内の扱いは小さく、一方でマイクロフォーサーズのペンシリーズが強烈に訴求されていました。

 ペンシリーズは日本で成功を収めているほか、香港、台湾、韓国などアジア地区で大きな存在感を持つようになってきました。しかし、北米や欧州といった地域では、日本に比べまだミラーレスのシステムそのものが、あまり認知されていません。オリンパスの一眼レフカメラは、すでに広く認知されていますから、フォトキナではペンを中心に技術と商品の紹介に徹し、その面白さを知ってもらおうという意図でブースを構成しています。E-5に関しては発表済みでしたから、知っている方はブースの中に自ら来て製品を確認してらっしゃいました。

オリンパスのフラッグシップデジタル一眼レフカメラ「E-5」(10月29日発売)

――あれだけ展示内容や面積に差があると、軸足がマイクロフォーサーズに移ったように感じる方もいたのでは? 一眼レフカメラシステムにはミラーレスシステムにはない良さがあるとはいえ、2つのシステムを整備していくのは難しい面もあります。

 ご存じのように、どちらのシステムにも長所と短所があります。実はフォトキナのタイミングで“フォーサーズ用レンズを今後は開発しない”という誤った情報が出たこともあり、誤解された方も多いようです。これは記事の翻訳ミスで間違いが掲載され、それを情報源に世界中に広まるという経緯で伝わりました。しかし、元のインタビュー記事ではそのようなことは言っていません。

 むしろ、開発に苦労したE-5を提供できるようになったことで、やっとハイグレード、スーパーハイグレードクラスのZUIKOレンズが持つ性能を活かせるようになり、社内の意気は上がっています。

フォトキナ2010のオリンパスブース(左)。ペンシリーズに比べて、E-5の展示スペースは大きくなかった(右)

――E-5に関しては発表当初、スペック表から“今までとあまり変わっていないじゃないか”という厳しい声もありました。しかし、発売後は大変に好評のようです。表面的なスペックの変化が少ないことへの不安はありませんでしたか?

 確かにネガティブな反応は感じました。しかし、サンプル画像が出始めたことで、我々がやりたかった事が少しずつわかって頂けるようになったと思います。

 E-5を開発する上での一番のテーマは、お客様が購入してくださった超高性能のレンズを活かす技術を盛り込むということです。単純に数値としてのスペックを上げるのではなく、レンズの性能を活かすためにどうするか。ユーザーの方々が体感する性能を引き上げるために、何をするのが一番良いのか。単純に画素数を増やすだけでも解像度は上がりますが、同時に別の何かを失う事になります。

 E-5ではセンサーの出力画素がいくつというスペックではなく、どのような絵が出るのか、実際の撮影結果で勝負しました。フラッグシップモデルを購入してくださるユーザーならば、数字よりも絵の良さを取っていただけるだろうという自信もありました。撮影した写真を見れば、一目瞭然で違うということがすぐに体感できますから、その点ではあまり心配はしていませんでした。

――簡単に言えばローパスフィルターによる高域成分の除去を最小限に抑え、モアレや偽色の発生は演算精度とアルゴリズムで解決することで、従来のベイヤー配列センサーにはなかった高解像度を得たということだと思いますが、過去にはローパスフィルターなしのカメラもありました。

 そこはバランス良く、画素情報をギリギリまで引き出しながら、モアレや偽色の発生を抑え、従来機並に安定した描写が行なえるよう配慮してありますから安心してください。新しい画像処理エンジンを用いることで、安定した色を出力できています。

E-5は、撮像素子直前にあるローパスフィルター(左)のパワーを弱めることで解像力を上げた「ファインディテール処理」を初搭載。モアレなどに関しては、新開発の画像処理エンジン「TruePic V+」(右)で軽減する仕組み

――画像処理エンジンが高性能化することで、従来よりも複雑なノイズ処理が行なえるようになり、ディテールの喪失を最小限に抑えながらノイズも抑えるのが当たり前になってきました。今後もプロセッサの進化は続くでしょうが、そのLSI処理能力の急速な向上を、モアレや偽色発生の低下に割り振ったともいえるのでしょうか。

 画像処理エンジンが進歩しているなら、その処理能力の“活かし方”も色々ですよね。画素数を追いかけるのではなく、まずは画素を100%活かせる映像を引き出すこと。画素数的には十分な数になってきていますから、1ピクセルあたりの質を高めれば、むやみに画素数を増やすことなく画質を上げられます。

 また、これによって2003年以降、すなわちZUIKO DIGITAL発売以来、はじめてレンズ性能を高いレベルで引き出せるようになったと自負しています。当時、ZUIKO DIGITALの仕様を決めるにあたって、将来、技術が向上することで、どこまで光学解像度が必要になるかを予測しながらレンズ設計をしていましたが、E-5によってやっとカメラがレンズ性能に追いつけるようになったと思います。

スーパーハイグレードシリーズの1つ「ZUIKO DIGITAL ED 14-35mm F2 SWD」(2008年3月発売)

――E-5で盛り込んだ新しい画像処理のアルゴリズムは、どのぐらい時間をかけて作ってきたのでしょう?

 具体的には申し上げられませんが、かなり長い間、実用化するために研究開発を行なってきました。姿勢としては、レンズの性能にボディをできる限り追いつかせることが目標で、それはE-5で達成できたと考えています。ただし、もうこの先がないというわけではありませんよ。まだボディ側の画質向上も続けていきますが、レンズの違いを実感していただけるレベルにまで達することができたという事です。

当面はペンシリーズに注力

――デジタル一眼レフカメラのエントリークラス製品は今年、アップデートがありませんでしたよね? 新レンズもマイクロフォーサーズばかりという印象があります。エントリークラスのデジタル一眼レフカメラは計画していないのでしょうか?

 フォーサーズは一通りのレンズが揃っていますから、現状、足りないレンズ焦点域もあるマイクロフォーサーズの充実に力を入れていることは事実です。またペンは写真を楽しんでもらうための入り口です。自分が撮りたい被写体を探し、表現する事を楽しむ使い方を学ぶ入り口として力を入れています。フォーサーズのエントリークラス製品や新規レンズを作らないのではなく、まずは現状、マイクロフォーサーズの整備に時間と人を割いているということで、落ち着けばフォーサーズとマイクロフォーサーズのバランスを取っていきます。

同社エントリーおよび中級クラスのフォーサーズ機では、「E-620」(2009年3月発売)以降のアップデートは今のところ無い

――E-5が登場した事で、ミドルクラスの“E-50”を期待する方もいるのでは?

 E-3、E-30クラスのお客様にはE-5がフィットするでしょうし、E-400、E-500クラスの価格帯にはペンがあります。ペンはまだ駆け出しの製品で、開発の進行に応じてどんどん進化させることができます。まずはペンの可能性を追求するために、短期的には開発資源をペンに集中させてください。フォーサーズ機についても色々検討はしております。

――つまりエントリークラスのレンズ交換式カメラに関しては、マイクロフォーサーズの枠組みの中で商品のバリエーションや性能、機能を強化していくということでしょうか?

 レフレックスミラーを省略したことにより、カメラ設計の自由度は飛躍的に向上しましたが、性能、機能、スタイルなど、あらゆる面で、すべてのアイディアを盛り込みきるまでには至っていません。やれることは一通りやり切ったと思えるところまでは、ペンという製品を研ぎ澄ましていきたいと考えています。

 レンズ交換式カメラの販売台数は、実は1980年からあまり変わっていません。年に1,000万台の市場です。コンパクトカメラはデジタル化で飛躍的に数が増えましたが、レンズ交換式カメラはそうなっていません。あるいは、一眼レフカメラというアプローチだけでは、これ以上に市場を拡大できないのかもしれません。今の一眼レフカメラの中心購買層は40歳前後で、もっと若い層には届いていません。いい写真を撮影するために、大きさや重さを我慢する必要のないカメラという切り口で、この壁を切り崩していけるのではないかと考えています。

オリンパスは11月16日に、ペンシリーズの最新モデル「E-PL1s」を発表した。発売は12月4日

――一部メーカーは、ミラーレス型のレンズ交換式カメラが欧州でも売れ始めていると話していましたが、オリンパスの認識はいかがでしょう。

 日本に比べ、まだ立ち上がっていないという認識です。現時点では何とも言えませんが、フォトキナの時点ではまだ認知不足で、これからお客様に長所を訴求していかなければならない段階だと感じました。アジアのように35%前後までミラーレス機の比率が上がるまでには、まだ一工夫が必要でしょう。とはいえ一部の地域、たとえばイギリスなどでは動きが出始めています。北米に関してはまだ動きはありませんが、何かひとつきっかけがあれば、一気に立ち上がってくるでしょう。ワールドワイドで、このスタイルのレンズ交換式カメラが売れ始めた時のために、ペンという商品をさらに磨き込んでいきます。

レンズ交換式カメラの新スタイルを提案

――現在、オリンパスはオーソドックスなスタイルのマイクロフォーサーズ機のみをラインナップしていますが、レイアウトの自由度を活かせばもっと新しい製品も作れそうですよね。そうしたアイディアはあるのでしょうか。

 まだ表向きには言えませんが、システム拡張の提案の一種として、従来の一眼レフカメラなどとは違ったレンズ交換式カメラのスタイルを提案できると考えています。楽しみにしておいてください。

――E-5に導入した高解像化の技術は新しい世代の映像処理LSIがあれば、どんなカメラにも盛り込めると思うのですが、マイクロフォーサーズ、あるいはコンパクトデジタルカメラに対して導入する計画はありますか?

 デジタル処理の技術ですから、もちろん、マイクロフォーサーズでも利用できます。LSIのコストや消費電力といった問題もありますから、次なのか、さらに次の世代なのか、製品の価格やサイズなどによっても異なると思いますが、将来は入れていくことができるでしょう。下位モデルでも使えるタイミングになれば、惜しみなく入れていきます。

――冒頭、フォーサーズレンズを今後は新規開発しないという報道は誤訳だという話がありましたが、しばらくはペンシリーズ向けにレンズ拡充が続くと考えて良いのでしょうか?

 フォーサーズレンズは、すでに23本が揃っています。一方、ペンシリーズ向けには6本しかありませんから、これからもっと多くのレンズを提供していかなければなりません。当面はマイクロフォーサーズ規格のレンズに力を入れさせてください。

マイクロフォーサーズ用最新レンズ「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II」も11月16日に発表。112gと軽量化を実現した。12月4日発売



(本田雅一)

2010/11/25 00:00