キヤノンギャラリー、ハービー・山口写真展「1970年、二十歳の憧景」


 キヤノンギャラリーは、ハービー・山口写真展「1970年、二十歳の憧景」を24日から開催する。

(c)ハービー・山口

 本展は、タイトル「1970年、二十歳の憧憬」のもと、1969年から1973年にかけて、当時二十歳前後だった山口氏が撮影した未発表のモノクロ作品約70点を展示します。文化祭の生徒たち、近所のお祭り、学生運動、沖縄の米軍基地など、若き日の山口氏が生きる希望に導かれてシャッターを切った作品からは、見る者に温かな気持ちを呼び起こさせる写真を目指していた、氏の創作活動の原点が感じられます。(写真展情報より)

 この写真展に展示した写真は、1969年から1973年、僕が19歳から23歳にかけて撮影された、およそ40年前の未発表写真です。写真の専門学校には行っていなかった僕は、素人ながらに、写真家になりたいという意志だけは、誰にも負けないくらい強くこころに抱いていて、毎日写真を撮っていました。自分自身、そして写真を見た人が、ポジティブになれるような写真を撮りたいという思いが根底にありました。幼少より病弱だった僕は、写真によって生きる希望を探していたのだと思います。

 被写体となったのは、僕の憧れや、人間への共感、生きるエネルギー、そして、まだ見ぬ土地への好奇心でした。僕が20歳になった年のある日、公園でバレーボールをしている少女にカメラを向けました。彼女がある時、「あっ!」と声を上げました。ボールが僕にぶつかりそうになったのです。この時の彼女の、僕を心配そうに見守る表情がいまだに忘れられません。僕への優しさ、慈しみ、といった、およそ人間が持てる最も美しい光が、瞳の奥に輝いていたのです。その瞬間、僕は天からの啓示の様に、「そうだ、僕は世界中を旅して、今見た美しい瞳を撮り続けよう。」と誓いました。そんな経験を経ながら、学生運動、文化祭で訪れた学校の生徒たち、自宅近所のお祭り、沖縄の風景が僕の目の前を次々と通り過ぎて行きました。僕は、こころをときめかせ、シャッターを切り続けました。

 これらの写真は、プロの写真家になる前の僕の原点を示すものとして、興味が尽きません。沖縄の基地の様に、40年経っても日本がいまだに抱えている問題も、また、この40年間で、知らず知らずに我々が失ってしまった、「人を信じる、人間のこころ」というものが写っているように思います。23歳になった年の9月、僕は新たな被写体を求めロンドンに旅立ち、およそ10年後に帰国し現在に至ります。是非、40年前の、日々を感じて頂きたいと願っております。(作者メッセージより)

 展示作品は、すべてキヤノンの大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF」でプリントした。

  • 名称:ハービー・山口写真展「1970年、二十歳の憧景」
  • 会場:キヤノンギャラリーS
  • 住所:東京都港区港南2-16-6 キヤノンSタワー1階
  • 会期:2010年9月24日~2010年11月2日
  • 時間:10時~17時30分
  • 休館日:日、祝日
  • 入場料:無料

 なお、作家自身が作品を紹介しながら撮影時の秘話などを話す講演会も実施する。開催日は2010年10月2日。時間は13時30分~15時。会場はキヤノンホールS(キヤノンSタワー3階)。定員は先着300名。入場は無料。事前にWebサイトからの申込みが必要。申込み締切りは2010年9月30日。


(本誌:武石修)

2010/9/10 00:00