キヤノン、EOS初のバリアングル液晶モニター搭載機「EOS 60D」

~カメラ内RAW現像にも対応

EOS 60D

 キヤノンは、バリアングル液晶モニター搭載のデジタル一眼レフカメラ「EOS 60D」を9月下旬に発売する。価格はオープンプライス。店頭予想価格はボディのみで13万円前後の見込み。

 2種類のレンズキットも用意する。いずれもオープンプライス。「EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS」を同梱するレンズキットが14万円前後、「EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS」を同梱するレンズキットが17万円前後の見込み。ダブルズームキットはラインナップしない。


EF-S 18-55mm F3.5-5.6 ISを装着したEOS 60DEF-S 18-135mm F3.5-5.6 ISを装着したEOS 60D

 2008年9月に発売した「EOS 50D」の後継機。EOSシリーズとして初めてバリアングル式の液晶モニターを搭載した。液晶モニターは104万ドットの3型ワイド。最大1,920×1,080ピクセルのフルHD動画記録に対応し、撮像素子には有効1,800万画素のCMOSセンサーを採用するなど、2月発売のエントリー向けデジタル一眼レフカメラ「EOS Kiss X4」との共通点が見られる一方、光学ファインダーの視野率をEOS 50Dの約95%から約96%に向上するなどのスペックアップも図っている。

バリアングル式液晶モニターを搭載
背面向かって左方向に可動する手に持ったところ
液晶モニターを裏返したところ

 本体上面の操作ボタンは、1ボタン1ファンクションに変更。上面操作ボタンでの設定可能項目が減少した代わりに、EOS Kiss X4にも装備していた「クイック設定ボタン」を本体背面に新設した。

 また、バリアングル式液晶モニターの搭載に伴い、背面のボタンレイアウトを一新した。マルチコントローラーとサブ電子ダイヤルは、両者を同軸上に配置した「マルチサブ電子ダイヤル」として再構成。指の動きを少なくすることで操作感を向上したほか、バッテリーグリップを装着して縦に構えた場合に、マルチコントローラーに指が届きにくくなるケースの解消を図るもの。モードダイヤルにはダイヤルロックを備えた。

上面操作ボタンは1ボタンに1機能を割り当てるマルチサブ電子ダイヤル
モードダイヤルにはダイヤルロックを備えたロゴのすぐそばに内蔵マイクを配置
側面にはスピーカーやHDMI端子を有するメモリーカードスロット。SDXCに対応する

 機能面では、カメラ内RAW現像機能をキヤノン製デジタル一眼レフカメラとして初めて搭載する。設定可能な項目は、明るさ調整、ホワイトバランス、ピクチャースタイル、オートライティングオプティマイザ、高感度撮影時のノイズ低減、JPEG記録画質、色空間、周辺光量補正、歪曲補正、色収差補正。このほか、画像のリサイズも行なえるようになった。

 撮影者のイメージに合わせたカメラ設定を行なう「表現セレクト機能」も新機能。カメラの標準設定で撮影した画像がイメージと異なっているが、カメラをどう設定するべきかわからない場合に利用できるアシスト機能という位置付け。

 得られる画像の方針を指定する「雰囲気を選んで撮影する」と、シーンに合わせてホワイトバランスを設定できる「明かりや状況に合わせて撮影する」の2項目からなり、いずれもライブビュー撮影時に効果を確認しながら撮影できる。

 「雰囲気を選んで撮影する」は、コントラストや露出補正といった撮影設定パラメータのプリセットに相当する。選べる“雰囲気”は、「標準設定」、「くっきり鮮やかに」、「ふんわりやわらかく」、「暖かくやさしく」、「しっとりと深みのある」、「ほの暗くひっそりと」、「明るく」、「暗く」、「モノクローム」の9種類。それぞれ「弱め」、「標準」、「強め」の3段階で適用強度を設定可能。

 「明かりや状況に合わせて撮影する」では、「標準設定」、「日なた」、「日かげ」、「くもり」、「電球」、「蛍光灯」、「夕焼け」の7種類から選択できる。

 なお表現セレクト機能は、クリエイティブ全自動(CA)と応用撮影ゾーン(ポートレート、風景、クローズアップ、スポーツ、夜景ポートレート)以外の撮影モードでは使用できない。

EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USMを装着したEOS 60DEF-S 60mm F2.8 マクロ USMを装着したEOS 60D

 このほか、ワイヤレス制御対応のストロボを制御できるトランスミッターを内蔵。カメラ単体でクリップオンストロボなどによる多灯撮影を制御可能になった。また、液晶モニター、ファインダー内、上面表示パネルに電子水準器を表示可能になった。左右±9度までの傾きを表示できる。

 さらに、ライブビュー撮影時専用の機能として、「マルチアスペクト」を新搭載した。選択できるアスペクト比は、標準設定の3:2に4:3、16:9、1:1を加えた4種類。ライブビュー画面には、選択したアスペクト比のトリミング線を表示する。

 カメラ内エフェクト機能としては、「アートフィルター」を新搭載。撮影画像に対して「ソフトフォーカス」、「ラフモノクロ」、「トイカメラ風」、「ジオラマ風」のエフェクトを施せる。撮影後にアートフィルターを変更することも可能(M-RAW、S-RAWを除く)。

スピードライト430EX IIを装着したEF-S 18-55mm F3.5-5.6 ISレンズキットスピードライト270EXを装着したEF-S 18-135mm F3.5-5.6 ISレンズキット

 撮像素子のセンサーサイズはAPS-C相当(22.3×14.9mm)。最大記録解像度は5,184×3,456ピクセル。感度はISO100~6400、拡張設定でISO12800までの増感が可能。センサークリーニング機能も備える。映像エンジンは「DIGIC4」。記録解像度には、従来のL(5,184×3,456ピクセル)、M(3,456×2,304ピクセル)、S(2,592×1,728ピクセル)に加え、新たにS2(1,920×1,280ピクセル)、S3(720×480ピクセル)を追加。S2とS3の用途として、Web用画像を想定するとしている。

 動画機能「EOSムービー」には新機能として「ウィンドカット」機能を搭載。風の影響を受ける屋外で撮影する際に、風の「ボコボコ」という音の影響を低減できるとしている。そのほかの仕様はEOS Kiss X4とほぼ同等。記録解像度とフレームレートは1,920×1,080ピクセル(30p/25p/24p)、1,280×720ピクセル(60p/50p)、640×480ピクセル(60p/50p)。記録形式はMOV(H.264)。音声は内蔵のモノラルマイクおよび外部ステレオマイク端子から録音可能。録音レベルは調整可能。

 HDMIミニ出力端子を備える。センサー中央部の640×480ピクセルのみを記録し、約7倍の望遠効果を得ることができる「動画クロップ」も引き続き利用できる。

 光学ファインダーは視野率約96%、倍率約0.95倍、アイポイント約22mmのペンタプリズム式。中央F2.8対応の全点クロス9点AFセンサーを備える。フォーカシングスクリーンは交換式。シャッター速度は1/8,000~30秒。

 内蔵ストロボのガイドナンバーは約13(ISO100・m)。連続撮影コマ数は約5.3コマ/秒。EOS 50Dは約6.3コマ/秒だった。

 記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカードに対応。無線LANメモリーカード「Eye-Fi」にも対応する。

 電源はリチウムイオン充電池「LP-E6」。2009年10月発売の「EOS 7D」と共用できる。CIPA準拠の撮影枚数はファインダー使用時で約1,100枚、ライブビュー使用時で約320枚。本体サイズは144.5×105.8×78.6mm。重量は約675g(本体のみ)、約755g(撮影時)。

 オプションとして、バッテリーグリップ「BG-E9」を用意する。EOS 50Dなどで使用できた「BG-E2N」よりも幅を薄くして、ホールディング性の向上を図ったとしている。

バッテリーグリップ「BG-E9」BG-E9を装着したEF-S 18-55mm F3.5-5.6 ISレンズキット
BG-E9を装着したEF-S 18-135mm F3.5-5.6 ISレンズキット

各種パーツ類

CMOSセンサーペンタプリズム
AFセンサーAFユニット
シャッターユニットセルフセンサークリーニングユニット
 
主な仕様の比較
 EOS 60DEOS 50DEOS Kiss X4EOS 7D
発売時期2010年8月2008年9月2010年2月2009年10月
店頭価格(発売時、ボディのみ)13万円前後15万円前後9万円前後19万円前後
撮像素子タイプCMOS
サイズAPS-Cサイズ相当(22.3×14.9mm)
有効画素数1,800万1,510万1,800万
最高感度通常設定ISO6400ISO3200ISO6400
拡張設定ISO12800
映像エンジンDIGIC4DIGIC4×2
ダスト対策センサークリーニング
ライブビュー
EOSムービー最大解像度1,920×1,080×1,920×1,080
フレームレート
(最大解像度時)
30p/25p/24p×30p/25p/24p
ファインダーペンタ部ペンタプリズムペンタミラーペンタプリズム
視野率約96%約95%約100%
倍率約0.95倍約0.87倍約1.0倍
アイポイント約22mm約19mm約22mm
位相差AF測距点9点19点
シャッター最高速度1/8,000秒1/4,000秒1/8,000秒
ストロボ
同調速度
1/250秒以下1/200秒以下1/250秒以下
連続撮影速度約5.3コマ/秒約6.3コマ/秒約3.7コマ/秒約8コマ/秒
液晶モニターサイズ3型ワイド3型3型ワイド3型
ドット数約104万画素約92万画素約104万画素約92万画素
バリアングル×
記録メディアSDXC/SDHC/SDCFSDXC/SDHC/SDCF
内蔵ストロボ(ISO100)GN13GN12
HDMI端子
外部マイク端子×
電源LP-E6BP-511ALP-E8LP-E6
撮影可能枚数
(CIPA準拠、ファインダー時)
約1,100枚約640枚約440枚約800枚
本体サイズ144.5mm145.5mm128.8mm148.2mm
奥行78.6mm73.5mm75.3mm73.5mm
高さ105.8mm107.8mm97.5mm110.7mm
重量(本体のみ)約675g約730g約475g約820g

【2010年8月27日】本文中の「アイポイント約19mmのペンタプリズム式」との誤記を「アイポイント約22mmのペンタプリズム式」に修正しました。

【2010年8月28日】主な仕様の表で、EOS 7Dの撮影可能枚数を「約640枚」と記載しておりましたが正しくは「約800枚」です。

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2010/8/26 13:00