むらいさちの、旅フォトエッセイ さち☆たび

vol.2 沖縄本島北部編|日本一早く咲く桜に出会う旅

終着点は重要じゃない。旅の途中でどれだけ楽しいことをやり遂げているかが大事なんだ。

スティーブ・ジョブズ(米国の実業家、アップル創業者 / 1955~2011)

みなさんこんにちは、写真家のむらいさちです。

今回の旅先は沖縄本島北部。日本一早い桜を求めて南下しました。

改めて、旅のルールを紹介しましょう。

1)旅の資金は4万円、あとは国内海外どこに行っても良し。余ったお金は貯蓄(編集部にて)。1年後、連載が続いており、貯蓄がたまっていたら特別編としてハワイ旅行をする!(笑)

2)カメラにはこだわらない。

3)人の好意には甘える(笑)、差し入れ・現地案内大歓迎です♪
(むらいさちのFacebookなどでリアルな旅の様子をリポートします。作品はここにてお見せします)

以上3つ。

まあ、B型むらいさちなので、マイペースにゆるっと進めさせていただきます。

ただ、旅先では感じたままをカメラで表現していければと思います。なので、被写体は僕好み。

さち☆たび in 沖縄、スタート1日目

僕は桜がとても大好きで、ここ数年全国の桜を撮り歩いています。前回の軽井沢編はとても寒いイメージがあったので、春を感じさせるようなものが撮りたいと思い始める。なら、全国で一番最初に咲く桜を撮りに行こうと思う。

しかし、旅の資金は4万円。普通に飛行機で行ってしまえば、運賃だけで足が出てしまう。そこで、今回は初めて乗る成田発のジェットスターに搭乗。なんと往復8,000円!! スカイマークなどの参入でだいぶ安くはなっていたが、なんとも気軽に沖縄に行ける時代になったものだ。

目指すは、沖縄北部の八重岳で咲いている「寒緋桜」。今回はバスを使って旅をしようと思っていたが、調べると平日は車がないとその場所に行けないということが判明し、急遽レンタカーを借りることに。当日予約だったからか、3日間借りて1万1,000円ほど。とても安くてびっくり。

レンタカーに乗り込み、一路車を北に走らせた。

約2時間ちょっとで、八重岳に到着。が、今年は開花が遅れているということで、全体的に見ても1~3部咲きといった感じだった……。ちょっとがっくり来たが、気を取り直して、その中でも咲いてる木を探して撮影に入った。今回の相棒との旅は2回目。少しは仲良くなれたのだろうか。

確かに……、まだ咲き始めという感じ。でも、ぽかぽかと暖かく春を感じることができた。

最初は曇り空だったが、徐々に天候は回復、時折青空が見えてきた。もちろんそのチャンスを逃すわけにはいかない。画面の中に写る春に心を躍らせた。

撮影に集中していると、あっという間に日が傾いて来た、桜もほぼ日陰になってしまい、今日の撮影は終了だ。せっかくだから、夕日を撮影しにいこう。僕が大好きな瀬底ビーチへと車を走らせる。

このビーチは本島の中でも、とても美しいビーチだ。対岸には伊江島と水納島を見ることができる。時間があれば、船で離島にも渡ってみたいものだ。

今日は名護のビジネスホテルにチェックイン。明日はまた桜を求めて、世界遺産にも登録されている今帰仁城に行くつもりだ。期待は出来ないが、少しでも咲いてくれていることを願おう。

2日目

が……、八重岳より開花が遅れているようだった……(汗)。

日本一早い桜を求めて来たのだが、さすがにがっくり……。でも、せっかくだから桜を撮影して帰ることに。

今回の旅もレンズは80mm一本しかなく、被写体にもかなりの制約が出てきてしまう。前回の旅でそれには慣れたので、被写体の選び方もスムーズになっていく。でも、広角も撮りたいな~という欲は消えない……(笑)。

今回は春を求めて沖縄に来たのだが、情報収集をしていると、なんとコスモス畑があるという情報を聞きつけた。桜じゃなくて秋桜? 季節感が無いのだが、ほんとにあるのならぜひ見てみたいと、名護から車を走らせ金武町の伊芸へ。

カーナビの指示に従い、駐車場に車を止めると、小さな看板が出ており、それが逆に不安になる(笑)。

住宅街を歩きつつ、途中大きなガジュマルのある公園を通過すると、突然広がった光景に歓声をあげた。

しかもエリアがとても広大。そして何より人が居ない……。地元の方が数名いるだけだった。この感動を写真に収めようとシャッターを切る指にも力が入る。

秋桜といえば、ちょっと肌寒いイメージがあるので、このポカポカした中での撮影はなんだか不思議だった。天気が曇りだったのが悔やまれる。
せっかく金武町まで来たので、街並みを歩こうと移動する。

金武町は米軍の基地がある関係で、街並みにはアメリカが交じり、とてもフォトジェニックなものが多く面白い。まずはボリューム満点なステーキプレートで腹ごしらえ。

ちなみに、タコライスの発祥はこの町です。

さて、お腹も一杯になったところで、街に散歩へ出る。今回の相棒は80mmレンズしかないので、正直風景には向いてないが、街を散歩して切り取るのには向いていると思った。カメラが被写体にフィットしてくると、俄然旅も楽しくなる。

いつもの自分を押し通すより、カメラやその状況に合わせて写真のテイストを変えたりするのも、写真の楽しさであったりする。いつもの自分とは違うかもしれないけど、その時の自分の気分を表してみる。

2日目も終わりに近づき、今夜の宿を探さないといけない。今回は沖縄に来てテンションが上がってしまい、お金のことをあまり考えていなかった。そこで、一度計算してみることに。 帰りの家までの交通費や、レンタカーのガソリンなどを残しておくと、残ったお金が3,000円しかないことにこの時気づく……(汗)。

やっぱり沖縄は遠いのだ……。

そこで、今まではリッチにビジネスホテルに泊まっていたが、そうもいかず安い宿を探す。

名護周辺で見つかったのが、なんと一泊1,500円のドミトリー。さっそく予約をして、泊まりに行くことに。ちなみにその時の部屋はこれです。

(この写真は別のデジタルカメラで撮影しています)

基本、どこでも寝られる人なので、これで十分。 全国から集まる人たちとお酒を飲みながらいろいろなことを語ったり、とても楽しい時間を過ごすことができた。旅はやっぱり楽しい。そんなメンバーと最後にぱちり。

最終日

いよいよ最終日。夕方の飛行機まで時間があるので、僕の好きな沖縄の古い町並みが残る備瀬に。朝は人も少なくて、住んでいる方の生活が垣間見えたりして、楽しいのだ。

行ってみると、集落の隣に大きなホテルが出来ていてびっくり……。
のんびりとフクギの並木道を散歩する。なんだかタイムトリップしたような気分になる。この並木のトンネルを抜けると、どこか違う世界に行ってしまうのではないか? そんな錯覚に陥る。その感覚が大好きだ。

さて、そろそろ空港に向かう時間になった。予算が無いので、高速などは使えないので下道で。途中どうしても寄りたい場所があった。20年来の友人夫婦に子供が産まれたと聞き、顔を見に行くことに。二人とも、沖縄の人ではなく、若いころに移住し、ダイビングショップを夫婦で経営して頑張っている。出会ったころはお互いダイビングショップのスタッフで、この道で頑張ろうと日々そんな話をしていた。

自分のことのように嬉しく、僕は何もできないけど、おめでとうの気持ちを込めてシャッターを一枚切らせてもらった。

「日本で一番早い桜を見たい」、という思いで始まった今回の旅。行く先々で人に会ったり、情報を得たりして、旅は自由に形を変えていった。お天気が悪かったのがなんとも残念だったが、それもまた旅なのだ。

仕事柄お天気とは密接な関係で生きている僕。時に胃に穴が開きそうな沖縄ロケも何度もこなした。海の写真は晴れているのが前提だからだ。最善を尽くしつつ、全てを受け入れるというのも、僕らの仕事では大切なことだと思う。

財布に残った残金250円を見つつ、今回の旅も終わりをつげた。次回はもっと節制しよう……。

今回のアイスコーナー

ブルーシールアイス

沖縄のアイスと言えば、ブルーシールアイス。行くと必ず行きます。お店はアメリカンなイメージでとてもお洒落。実はレストランもあって、レストランではアイス食べ放題セットなんかもあります。アイス好きにはたまりませんね(笑)。

今回の経費

航空機(成田~那覇):往復8,000円

電車:2,304円

レンタカー:1万1,600円

ガソリン代:2,400円

宿泊:1万500円

食費・その他雑費:4,946円

残金:250円(ハワイ貯金へ……)

現在の貯金:1万1,600円

今回の相棒

HASSELBLAD 500C/M (むらい所有物)+ デジタルバックCFV-50c(レンタル)

機材協力 HASSELBLAD

(2015/3/5)
むらいさち
沖縄でのダイビングインストラクターを経て写真の世界へ。広告写真家の助手後、ダイビングやリゾート雑誌を出版している出版社のカメラマンとして、日本を始め世界の海へ訪れる。その後独立。現在は広告や雑誌の撮影を中心に活動。海だけに限らず世界のありとあらゆる場所で「しあわせのとき」をテーマに撮影を続けており、一年の多くを取材先で過ごしている。著書は写真集「きせきのしま」(小学館)、「LinoLIno」「ALOHEART」(LifeDesignBooks)。共著「光と色の写真の教科書」(技術評論社)、「カメラ*好き1&2」(マイコミブック)。トラベルマガジン「LUKETH」参加。今年2月に写真家川野恭子(きょん♪)と共に、フォトライフマガジン「TORIPPLE」を創刊。muraisachi.com