染料系インクを用いたG820に比べると、シャドウ部の濃度がより高く描かれ、ハイライトも抑えめで全体的な彩度、コントラスト感も高い。ドレスの青やソファ、ワインの赤も的確で、G820よりもこのあたりの色域表現で再現域が広い事が伺える。
ただ、シャドウを暗く強調する傾向のトーンカーブには強いクセがある。高濃度の表現が得意な機種だけに階調が失われているわけではないが、暗部を強調した絵作りがこの写真でより強調され、顔の右半分の立体感が多少損なわれた。ただ、暗部での色ノリは良く、顔料系の特徴は出ている。
オートフォトファイン! 6(APF6)の影響はG820よりも少なく立体感もあるが、撮影意図の反映という意味では不満が残るのはG820と同じ。G820とG920のAPF6は、それぞれ同じ処理が施されているはずだが、その結果は全く異なるものになった。機能の特性上、どちらかの絵作りに合わせてAPF6を開発したものと思われるが、一連の処理結果を見る限りG920の方が、より自然な雰囲気に仕上がるようだ。
階調性や表現の滑らかさに関しても、拡大するとG820に比べやや粗め部分があるものの、問題のないレベルに達している。顔料だから粒状性が高い、といったイメージを払拭するデキだ。
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基本的な絵の傾向はG820と同じで、空、葉、オレンジの屋根にAPF6の補正効果が現れる。しかし、コントラストが低めだったG820とは異なり、パリッとした高コントラストで、立体感のある仕上がりになる。薄味になりがちだったG900に比べ、より濃度感の高い見栄えの良い絵になったのは改善点だが、シャドウ部が強調され過ぎる新たな問題は感じる。
なお、この画像でも階調表現の滑らかさでは問題は見られず、1年分の進化は体感できる。空色の部分は、染料系フォトプリンタでも粒状性が出やすい部分だが、顔料系の本機でも問題は感じない。
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