トピック
富士フイルム「GFX100S II」でポートレートを撮る
目を見張る解像感と階調の豊かさ それでいてレスポンスに問題なし
2025年2月25日 07:00
富士フイルムのミラーレスカメラ「FUJIFILM GFX100S II」は、有効約1億200万画素のイメージセンサーを搭載したラージフォーマット機だ。43.8×32.9mmという35mmフルサイズを超える面積にイメージセンサーに加え、最新の画像処理エンジン「X-Processor 5」や最大8段分のボディ内手ブレ補正機構、AI被写体検知AFなどを搭載。上位機種にもひけを取らないスペックも特徴の1つとなっている。
これまで旅客機、鉄道、風景の順にGFX100S IIの実力を各撮影ジャンルの写真家に試してもらった。今回はポートレートにおける「FUJIFILM GFX100S II」の使用感について、写真家・清田大介さんの意見をお聞きした。清田さんにはこの企画のため、GFX100S IIを試用してもらっている。
ロケ地はJR渋谷駅周辺。現像は基本的にAdobe Lightroom Classicで行なっており、一部の作品については富士フイルムのRAW FILE Converter EXも試した。
35mmフルサイズ機とさほどかわらない撮影フィール
——今回はスタジオでなく、街中での撮影となります。こういった場合、清田さんが重視するポイントは何でしょうか?
さっと撮影してすぐに移動できる取り回しのよさ、そして操作レスポンスの良さが重要と考えています。GFX100S IIはレスポンスが向上したとお聞きしていたので、今回のロケではそのあたりを意識して撮影に臨みました。
——そういえば、すでに前モデルの「GFX100S」を使われた経験があるとのことでした。GFX100S IIで最も大きく変わったと感じた部分はどこでしたか?
AF速度が圧倒的に違いますね。GFX100Sも良いカメラだとは思いますが、AFに関しては、自分が考える「気軽にスナップ」できるほどの速度は出ていませんでした。さらにGFX100S IIは瞳・顔認識の効きがよく、ストレスはまったく感じなかったです。操作のレスポンスについてももたついたりせず、いたって快適ですね。
——特に瞳認識について、実際の撮影でどのように活躍したのでしょうか?
電話ボックスで撮影したカットは今回の撮影で1番の衝撃だったかもしれません。強い光が横から差し込む難しい光で、汚れのあるガラスがモデルの前にあります。そんな悪条件の中AFが迷うことなく、きちんとモデルの顔、瞳を認識して食いついています。普段であれば絞ったうえでMFに切り替えるシーンです。あと、このような光線状態では色が転びやすいのですが、GFX100S IIではAWBでも完璧に近くて驚かされましたね。
——ラインアップ中では小型モデルに位置づけられるGFX100S IIですが、ラージフォーマット機ということで、レンズも含めて35mmフルサイズのシステムより少々大きめになります。撮影中の取り回しについてはいかがだったでしょうか。
それなりに存在感があるなとは思いましたが、思ったより重さが気にならず、快適に使えました。丸1日持ち歩いていたらまた感想も違うのでしょうが、感覚的には僕が普段使っているフルサイズミラーレスカメラと、ほとんど変わらなかったです。
——GFX100S IIにはグリップのラバーにBishamon-texという三ツ矢状のパターンを採用しています。今回実際に使ってみて、握りやすさや滑りにくさは実感できましたか?
グリップは正直そこまで気にしていませんでしたが、言われてみれば手にフィットしてズレないことで実際の重さよりも軽く感じたかもしれません。グリップを意識せず撮ることに集中できたという点では、十分効果があったと思います。見た目もちょっと斬新な感じですよね。
——GFX100S IIはフル画素で撮影するとアスペクト比が4:3になりますが、35mmフルサイズ機の3:2とで撮り方は変わりますか?
4:3は3:2より正方形に近いですよね。横位置で撮っているときはそれほど違いを感じないのですが、縦位置だと横に画面が広がる影響を強く感じます。広がった周囲の世界を入れ込めるという点で、すこし贅沢した気分ですね。
圧倒的な解像感と広ダイナミックレンジ
——GFX100S IIの特徴の1つに、1億画素を超える画素数があります。解像感はいかがでしたか?
モデルの肌の再現や服の質感には目をみはるものがありました。仕事でアパレルの写真を撮るときがありますが、服の素材感が出てほしいので、1億画素が効いてくると思います。A0くらいに大きく引き伸ばしてプリントしたい気持ちになりますね。
——アパレルの仕事というとWebサイトやカタログ、雑誌掲載などの用途が思い浮かびますが、トリミングはするのですか?
今回のロケでは特にしていませんが、トリミングすることを前提に撮影することは多いです。後でトリミングできるように引いて撮ってほしいというご依頼もかなりありますね。約1億画素もあれば、かなりトリミングの自由度は高いでしょう。
——ダイナミックレンジの広さもポートレートで重要かと思います。GFX100S IIの階調表現はいかがでしたか?
今回の撮影でも白とびや黒つぶれしそうな場面が結構あったのですが、現像してみると階調がしっかり残っていて驚きましたね。掲載している作品は現像後の写真ですが、撮影直後の撮って出しを確認しても、理想的なヒストグラムをしていました。ハイライトの粘りもそうですが、特にシャドー部に残る色の出方が気に入っています。総合的に見て、つぶれず、とばず、素直な色が出る印象です。コントラストの高いシーンで撮っているはずなのに、出てくる絵のグラデーションはなめらかに繋がっている……ラージフォーマットらしく余裕のある階調表現だと感じました。
素直な色再現とノイズの少ない高感度画質
——色再現についてはどうでしょう。
全体的に"大人"な色だなと思いました。僕が普段使っているフルサイズ機ではもう少しぱきっとした色が出がちなのですが、本機は自然で素直な色再現に感じます。下の写真に見られるような薄いピンクはデータにすると誇張されやすく難しい色なのですが、現実感のある落ち着いた色になっていますね。
——高感度撮影時の画質についてもお聞かせください。
今回はISO 3200まで上げました。等倍で見ると確かに粒状感はありますが、ディテールをしっかり描写していることもあって、フルサイズの粗さとは比べるべくもありません。これで1億画素なのだからすごいものです。色の転びもなく、自然な色の出方をしていますね。これくらい気軽に感度を上げてしまっていいんだ、という驚きがありました。それに、感度が上がると階調が狭くなるものですが、GFX100S IIでその形跡はありません。
——富士フイルムのカメラということで、フィルムシミュレーションもあります。使ってみましたか?
はい。掲載した作品はモデルのためにも軽いレタッチが前提で撮り、慣れているAdobe Lightroom Classicで現像しています。ですが、撮影中はJPEGでも同時記録をしていて、そちらでフィルムシミュレーションを楽しんでいました。中でも「ノスタルジックネガ」が、雰囲気あって気に入っています。
下の作品は富士フイルムの現像ソフト「RAW File Converter」を使い、「ノスタルジックネガ」を適用して現像したものです。何ともいえないノスタルジックな雰囲気が加わっているのではないでしょうか。
使いやすいズームレンズ。単焦点レンズのボケにも驚き
——今回携行されたのはどのレンズでしょう。
今回は「GF45-100mmF4 R LM OIS WR」と「GF110mmF2 R LM WR」を選びました。35mm判換算で36〜79mm相当となる「GF45-100mmF4 R LM OIS WR」の使い勝手が良く、こればかり使ってしまいました。画質も申し分なく、ズームレンズでこの品質ならまったく問題ありません。ポートレート撮影は瞬間が大事です。レンズを交換している暇があったらどんどん撮影してしまった方がいいとまで考えていますから、こういうズームレンズはありがたいですね。
——大きなボケもラージフォーマットの魅力の1つですよね。
ええ、例えばこの作品はF8まで絞っていますが、それでも背景がきれいにボケています。主役が引き立つ、ラージフォーマットならではの独特な立体感といえます。階調がよく出ていてお気に入りの1枚ですね。
ボケ味については下の写真もレンズのいいところが出ています。これは「GF45-100mmF4 R LM OIS WR」で撮影していますが、ほどよいボケ味で背景の要素が整理されて、バランスの良い画に仕上がったと思います。広角から望遠まで過不足なく画角をコントロールできて、屋外でのポートレートに向いているレンズだと思いました。
——単焦点レンズの「GF110mmF2 R LM WR」も使われていましたよね。
夕暮れ近くの時間帯、暗くなってから撮影したカットですね。絞り開放のF2で撮っています。背景の光源や横の金属ボックスがきれいにボケてモデルを引き立てることができました。大きいだけでなく、きれいなボケ味ですよね。これでイルミネーションや花を撮ったらどんな描写になるのか、想像が広がります。
まとめ:高レベルの出力画質。しかも撮影の速度感を損なわないレスポンスの良さ
——GFX100S IIをポートレートを撮るカメラとして見たときの評価はどのようなものでしょうか?
操作のレスポンスやAF速度の向上という2点においてだけでも、ラージフォーマットのカメラに抱いていた欠点が大幅に改善されています。当たり前のように思えますが、それだけで撮影できるシチュエーションも、撮影する量もずいぶん増えるのです。量が増えるということは歩留まりがよくなるということで、個人の作品づくりにおいても、仕事においても、それってすごく大事なことだと思います。
画質もさすがに35mmフルサイズ機とは次元が違うレベルで、レンズの出来の良さもそれを引き上げていますね。35mmフルサイズ機でポートレートを楽しんでいる方で、さらなる表現力を求めたい人にはお勧めしたいカメラだと思います。
モデル:まぷさん