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ダブルスロットが“SD+microSD”?…ニコン Z fで使うmicroSDメモリーカードの「活用TIPS」4選

ProGrade DigitalのUHS-II対応製品を試す

ニコンからヘリテージデザインのミラーレスカメラ「Z f」が登場した。これまでもニコンから発売された「Df」「Z fc」など同系統の製品はどれも人気が高いが、「Z f」は35mmフルサイズのミラーレスカメラということで待ちわびていた人も多かったのだろう。実際、大手家電量販店の納期は4月下旬納期と案内されており、その人気ぶりが伺える。

ニコンZ f。装着レンズはNIKKOR Z 40mm f/2(SE)

そんな「Z f」だが、採用メモリーカードに関しても話題を提供してくれた。というのも、UHS-II対応のSDメモリーカードに加え、microSDメモリーカードという珍しい組み合わせのダブルスロットになっているのだ。「ダブルスロットが欲しい」というプロやハイアマチュアの声に応えると同時に、マニュアルフィルムカメラ善とした薄いボディデザインを実現するための工夫なのだろう。

ただ多くのスチールカメラユーザーにとって、microSDメモリーカードは馴染みのない製品。手持ちのストックはなく、新たに買い足すも不安はあるだろう。ということで「Z f」をSDメモリーカードのシングルスロット機として使っても事足りるかもしれないが、せっかくならダブルスロットを活用したい。

そこで、使いやすいmicroSDメモリーカードおよび「Z f」のダブルスロットでの活用法を考えてみたい。

ちなみに、microSDメモリーカードを出し入れするためにはバッテリーを取り出す必要がある

なお、「Z f」のダブルスロットで利用できる設定は以下の通り。

  • 順次記録
  • バックアップ記録
  • RAW+JPEG分割記録
  • JPEG+JPEG分割記録
  • カード間コピー可能

このうち「JPEG+JPEG分割記録」は、サイズの異なるJPEGを別カードに記録するモードだ。

副スロットの機能の選択メニュー

「Z f」の注意点として、「同時記録」に設定すると書き込み速度は遅いほうのカードに依存するという点は憶えておきたい。基本的には市場のmicroSDメモリーカードよりSDメモリーカードの方が速いため、「同時記録」だとmicroSDメモリーカードの記録速度に引きずられるわけだ。

TIPSその①:もしものための「順次記録」用として

先述した通り、「同時記録」にするとmicroSDメモリーカードがSDメモリーカードの速度を下げてしまう。撮影中の使い方としては基本的に「順次記録」になるわけだ。

だが考えてみてほしい。現在CFexpressカードを採用するスチルカメラの多くが「CFexpress+UHS-II SD」のダブルスロットだ。この組み合わせで「同時記録」にすると、CFexpressカードの高速な書き込み速度をSDメモリーカードが邪魔してしまう。「Z f」の場合もこれと同じと割り切るしかないだろう。

Z fのダブルスロット記録設定。microSDメモリーカードスロットは「副スロット」になる

しかし「同時記録」が遅くなるからといって、microSDメモリーカードスロットを空けておくのはもったいない。高速連写で大量の画像を一気に記録するような撮影でなければ「同時記録」でも問題は感じないし、何よりも並行してバックアップが作られる安心感は大きい。たとえ遅い方のカードに影響されるとはいえ、この感覚は「CFexpress+UHS-II SDメモリーカード」のダブルスロット機を使うユーザーにはわかってもらえると思う。(ちょっと悲しいが)高速連写を必要とする撮影の時のみ「同時記録」を外すなど対処すれば良いだろう。

「同時記録」ではなく、「順次記録」にしておくのも現実的な選択といえる。ポートレート撮影など大量のカット数を切れ目なく撮影するようなケースの場合、メモリーカードの残量がなくなり撮影が中断する可能性があるが、「順次記録」にしておけばそれもなくなる。書き込み速度が変わることで撮影のテンポも変化するかもしれないが、カードを入れ替えることで失うシャッターチャンスの可能性よりは少ない。「メモリーカードの残り容量があったなら……」という失望を少なくできるだろう。

TIPSその②:動画記録専用カードに

ワークフローは人それぞれだが、静止画と動画でメモリーカードが分かれていると後からPCへの取り込みや管理がしやすいという面はある。

静止画撮影メニューで主スロットを「SDカード」に設定し、動画撮影メニューの動画記録先を「microSD」にすると振り分けの設定ができる。

動画の記録先を選べる

microSDスロットにProGrade Digitalの「microSDXC UHS-II V60 GOLD 256GB」を入れて最高ビットレートとなる4K 60p、10bit記録で動画を撮影したが30分以上撮影できたので、撮影時における転送速度の面で問題は無いようだった。

TIPSその③:PCへの転送を見据えてUHS-IIを導入

TIPSその②でテストに使ったのがProGradeの製品。ProGradeの製品はカメラメーカーが検証に使うなど、性能と信頼性の高さもあり知名度も上がっている。

microSDXC UHS-II V60 GOLD 256GB(下)。同梱のSDカードアダプター(上)
いずれもUHS-II対応なので端子は2列になっている

「Z f」のSDカードスロットはUHS-II対応だが、microSDメモリーカードスロットはUHS-I対応に留まっている。

となると、UHS-IIに対応したmicroSDメモリーカードは無意味と思われるかもしれない。というよりアクションカメラなどmicroSDメモリーカードに対応する機器は、UHS-I規格にしか対応していないが一般的だ。

だが、さにあらず。確かにカメラ側ではカード本来の速度は発揮できないものの、PC接続ではUHS-IIによる高速転送が可能になる。

ProGrade DigitalにはSDメモリーカードとmicroSDメモリーカードの両方のスロットを搭載したカードリーダー「ダブルスロットカードリーダー(PGM0.5)」がある。これはUHS-IIに対応しており、PCのベンチマークソフトで試したところ、用意したmicroSD 256GBメモリーカードは230MB/秒以上の読み込み速度が出た。

ダブルスロットカードリーダー(PGM0.5)
CrystalDiskMarkによる計測結果
Blackmagic Disk Speed Testによる計測結果

TIPSその④:SDアダプターでSDカードスロットでも

今回試用したProGrede DigitalのmicroSDメモリーカードには、SDアダプターが同梱されていた。microSDメモリーカードを装着することで、SDカードスロットに挿入して使えるようにするアダプターだ。もちろん「Z f」のSDカードスロットでも問題なく使えた。

このアダプターはUHS-II対応品なので、「Z f」のUHS-II SDカードスロットに挿入すれば、カード本来の速度が出ると思われる。

例えば「シングルスロットで良い撮影にはSDアダプターでUHS-IIの恩恵にあずかる」といった使い分けができそうだ。

SDカードアダプターの使用例

参考までにSDアダプターを介してmicroSD 256GBメモリーカードを同じカードリーダーのSDカードスロットに装着して計測した結果が以下となる。SDアダプター無しの時と近い数値が出ている。

CrystalDiskMarkによる計測結果
Blackmagic Disk Speed Testによる計測結果

まとめ

「Z f」を一般的なダブルスロットカメラとして見てしまうと、どうしてもやや使いづらい面を感じてしまう。スタイリングを優先させた設計だと思うので、「本来シングルスロットで登場するところに、おまけでmicroSDメモリーカードスロットも付けてくれた」くらいに考えるのが良さそうだ。

とはいえ、「順次記録」をはじめ、「バックアップ記録」「RAW+JPEG分割記録」などではSDメモリーカードの足を引っ張らずに利用できる。SDメモリーカードの容量不足対策や、速度低下はある程度の我慢の上、安全性重視で同時書込する運用法もありえる。

microSDメモリーカードはUHS-Iであれば比較的安価に購入でき、もちろんそうした製品を利用するのも良いのだが、TIPSその②で見たように、UHS-IIタイプを用意しておくとPC転送時のストレスは少ない。「Z f」を購入したらmicroSDメモリーカードにも気を配ってみると、写真ライフがもっと快適になるだろう。

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。