ニコンD600のためのSDメモリーカード選び

Reported by 本誌:武石修

 2012年下半期におけるデジタルカメラの大きなトレンドといえば、35mmフルサイズセンサーを搭載したデジタルカメラが一気に充実するということだろう。フォトキナ2012に合わせて発表されたフルサイズ機の中でいち早く発売されたのは、ニコンの「D600」。これまでフルサイズ機が欲しくてもなかなか価格面で手が届かなかった向きには朗報と言える。

D600。発売は9月27日。ボディのみの実勢価格は21万8,000円前後

 フルサイズ機はの魅力はなんと言っても、高画素でありながらも余裕のあるピクセルピッチなどに由来する高い画質といえる。現在のデジタル一眼レフカメラは撮って出しのJPEG画像でも十分な画質だが、RAWで撮影し現像で追い込めば1ランクやそれ以上の仕上がりを期待できることは、経験からご存じの方も多いことと思う。

 ただRAW撮影のデメリットとして、ファイルサイズが巨大になるためJPEGに比べて十分な連写性能を発揮できない場合がある。これはメモリーカードにデータを書き込むのが、連写速度に追いつかない時だ。D600は有効約2,426万画素で、RAWファイルは1枚で30MB前後にもなる(ロスレス圧縮RAW、14bit)。

 ところで、これまで高速転送が重視されるカメラにはどちらかといえばCFが採用されてきた経緯あるが、D600はSDメモリーカードを採用している。そこで今回は、最新のSDメモリーカードでどれくらい連写できるのかを探ってみた。

D600はSDメモリーカードのダブルスロット。2枚のカードを入れて使用できる

 デジタルカメラはメモリーカードに書き込む前に、一時的に画像データを貯めておく「バッファメモリー」と呼ばれる高速メモリーを内蔵している。D600の場合は先のRAW形式で連写した場合、バッファーメモリーがいっぱいになる約15枚までは公称スペックの5.5コマ/秒でシャッターを切れるが、その後の連写速度はメモリーカードの書き込み速度に依存する。

 これはCFにも言えることだが、ある程度連続した時間に連写でより多くのショットを撮りたい場合、できるだけ書き込みが高速なメモリーカードを用意する必要があるということになる。

書込み速度をチェック

 早速、D600を使用してメモリーカードの書き込みテストを行なってみた。D600はSDXC/SDHC/SDメモリーカードに対応するダブルスロットを備えている。高速バス転送規格の「UHS-I」にも対応している。

 今回は主にUHS-I対応カードと従来品の速度差も見るため、サンディスク製のSDHCメモリーカード3種類を用意した。テストの条件は以下の通り。

今回テストに使用したメモリーカード。左からExtreme Pro SDHC UHS-Iカード(95MB/秒)タイプ、同45MB/秒タイプ、Ultra II SDHCカード
  • カメラ内のバッファをすべて開放した状態で、RAWで連写し、レリーズ回数を調べた。途中でバッファがフルになってもシャッターボタンを押し続けている。
  • フォーカスはマニュアル。レンズは装着せず、ボディキャップを装着した。
  • 露出はマニュアルモードで、シャッタースピードは1/2,000秒に固定。
  • Exifに記録された撮影時間をもとに、撮影開始から30秒間のレリーズ回数をチェックしている。
  • Exifには0秒以下の記録がないため、1秒間の誤差を考えて5回計測し、その平均枚数を小数点第1位まで掲載した。

 結果は以下の通り。

名称UHS-I対応公称書込み速度レリーズ回数
Extreme Pro SDHC UHS-Iカード最高90MB/秒74.6回
Extreme Pro SDHC UHS-Iカード最高45MB/秒59.0回
Ultra II SDHCカード最高15MB/秒28.2回

 UHS-Iに対応したExtreme Proが、UHS-I非対応カードに比べて大きくリードした。一方、同じExtreme Proの95MB/秒(書込みは最高90MB/秒)タイプと45MB/秒タイプでは、思ったほど大きな差にはならず、95MB/秒タイプは45MB/秒タイプの25%増しという結果。とはいえ、1回でも多くシャッターを切りたいなら95MB/秒を選ぶのも手だ。

 今回試したD600でRAWの連写を重視するなら、サンディスクでいえばExtreme ProまたはExtremeの45MB/秒タイプ以上を選択したいところだ。もちろん高速なカードなら、パソコンへの転送が速いというメリットもある。

高速転送を重視するなら、“U”と“1”を組み合わせたUHS-Iアイコンのあるカードを選びたい。今後発売が予定されているフルサイズ機のキヤノン「EOS 6D」、ソニー「α99」もUHS-Iに対応している

 またデジタルカメラのファイルサイズは高画素化に伴って肥大化しているので、できるだけ大きな容量のカードを選びたい。ファイルサイズが30MBだと32GBのカードでも撮影できるのは1,000枚強。連写を多用すると、1度の撮影でこのくらい撮ってしまう人は多いのではないだろうか。

 ちなみに、Extermeシリーズには最高容量の128GB(実売3万4,800円前後。45MB/秒、UHS-I対応)SDXCカードがある。これは一見高価に感じるが、Extremeの16GB(45MB/秒、UHS-I対応)が実売3,880円前後なので、容量当たりの単価では実は割安だったりするのだ。

サンディスクとしては最大容量となる128GBのSDXCメモリーカード

 しかし128GBのカードまでは行かずとも、D600はダブルスロットなので例えば“64GB×2枚”や“32GB×2枚”といった運用もお薦めだ。というのも、バックアップとして2枚のカードに同一内容を書き込んだり、RAWとJPEGを別のカードに記録するといった機能が活用できるからだ。もちろん順次記録にすればこの場合、計128GBになり大量のRAWデータが記録できる。

D600のカード記録方式の設定メニュー

 D600をはじめ最新フルサイズ機の購入を検討しているユーザーは、カメラの性能を発揮させるためにもメモリーカード選びに注意してみて欲しい。また古めの低速、低容量のカードを使用しているユーザーは、新しいカメラに合わせてメモリーカードのリプレイスも検討してみては如何だろうか?

(協力:サンディスク)







本誌:武石修

2012/10/12 12:50