USB3.0カードリーダーの実力を試す
デジタルカメラの撮影画像をパソコンに転送する際は、USBカードリーダーを用いるのが一般的な方法のひとつだ。現在、もっとも手に入れやすいUSBカードリーダーの規格はUSB2.0だが、2011年1月頃から、上位規格であるUSB3.0に対応したカードリーダーが発売され始めている。
USBカードリーダーにおいて、USB2.0と3.0の決定的な違いは、転送速度だ。USB2.0では規格上480Mbps(約60MB/秒)までの転送に対応しているが、USB3.0では5Gbps(約500MB/秒)の転送に対応する。
今回紹介するエレコム「MR3-A001」、バッファローコクヨサプライ「BSCRA51U3」、ロアス「CRW-37M51」は、すべてUSB3.0に対応したUSBカードリーダーだ。いずれもUDMAやUHS-Iに対応しており、特にBSCRA51U3に関しては、規格上133MB/秒の転送が可能なUDMA mode6への対応を製品情報に明記している。
上段左からエレコム「MR3-A001」、バッファローコクヨサプライ「BSCRA51U3」、ロアス「CRW-37M51」 |
USB3.0のカードリーダーは、RAW撮影や連写を多用するデジタルカメラユーザーにとって、待望の製品といえる。なぜなら、2009年頃よりUSB2.0の最大転送速度を超える“90MB/秒”などを標榜する記録メディアが登場していた一方、その速度を活かせるUSBカードリーダーが2011年まで一般ユーザー向けには存在していなかったからだ。
もちろん、ExpressCard型アダプターなどを使って高速転送を行なうことは従来より可能だったが、あまり一般的ではなかった。
今回は、USB3.0カードリーダー3機種と、USB2.0カードリーダー2機種の速度比較を行なう。USB2.0のカードリーダーは、バッファローコクヨサプライ「BSCRA38U2」とパナソニック「BN-SDCLP3」。このうちBN-SDCLP3はUHS-Iに対応している。また、計測に使用したSDカードでは、「Extreme Pro」がUHS-I対応モデルとなっている。
デジタルカメラユーザーとしての関心事は、USB3.0と2.0の間で、実測値としての転送速度にどの程度差が出るのか、また、USB2.0同士であっても、UHS-Iへの対応と非対応で、速度に差が出るのかというあたりだろうか。
■テスト条件
- 「CrystalDiskMark Ver.3.0.1」の連続書き込みと連続読み出し(Sequential)で5回ずつ計測。
- テスト環境は、Windows 7 Professional、Core i5、メモリ4GB、SATA350GBのノートパソコン。
- いずれのカードリーダーもUSB3.0ポートに接続して計測している。
- BN-SDCLP3はSDカード専用カードリーダーのため、SDカードのみ計測した。
下図はUSB3.0カードリーダー3機種と、USB2.0カードリーダー2機種の転送速度を実測し、規格ごとに読み出し速度の平均値をグラフ化したもの。
・CFの平均読み出し速度(MB/秒)
製品名 | 容量 | 発売元 | 区分 | UDMA | USB3.0 | USB2.0 |
Professional 400x | 32GB | レキサー | CF | ○ | 85.95 | 29.14 |
Professional 600x | 32GB | レキサー | CF | ○ | 84.21 | 35.08 |
TS8GCF600 | 8GB | トランセンド | CF | ○ | 72.72 | 34.84 |
Extreme Pro | 32GB | サンディスク | CF | ○ | 63.02 | 35.24 |
Extreme | 32GB | サンディスク | CF | ○ | 47.09 | 28.63 |
・SDHCメモリーカードの平均読み出し速度(MB/秒)
製品名 | 容量 | 発売元 | 区分 | SDスピードクラス | UHSスピードクラス | USB3.0 | USB2.0 |
Extreme Pro | 16GB | サンディスク | SDHC | Class10 | Class1 | 42.77 | 28.50 |
Extreme | 16GB | サンディスク | SDHC | Class10 | - | 23.28 | 21.16 |
Professional SDHC 133x | 8GB | レキサー | SDHC | Class6 | - | 23.16 | 21.15 |
■まとめ
期待通り、どの記録メディアでも、USB3.0カードリーダーの方が読み出し、書き込み速度ともにUSB2.0カードリーダーの1.5~2倍以上高速な計測結果となった。
今回の計測には、サンディスク、レキサー、トランセンドの記録メディアを用いた。いずれも以前より高速モデルとして発売されている製品だが、USB3.0カードリーダーとUSB2.0カードリーダーの計測結果では、大きな差が現れている。
USB2.0カードリーダー同士の計測結果に目を向けると、Extreme Proに関しては、BN-SDCLP3の方が高速な転送速度を記録している。USB2.0でも、UHS-I対応機器を組み合わせて使う意味はありそうだ。
日頃、いわゆる高速記録メディアからデータをパソコンへ転送するときに感じていた不満は、インターフェースやカードリーダーの制限により、期待したほどの速度で使えないという点だった。正直、「別にこのくらいの速さなら、もっと安く売っている下位モデルでいいのでは」と思うこともあるだろう。
しかし今年に入り、USB3.0に対応したカードリーダーが登場したことで、とりわけ高速を謳う記録メディアに関しては、速度の上限がいわば“解放”されたといってよい。
また、3月9日には、ルネサスより従来比40%高速化したというUSB3.0ホストコントローラーが発表され、サンプル出荷を開始している。このコントローラーを搭載した製品の発売はまだ先になると思うが、USBが高速化すれば、撮影画像を扱うワークフローに、また新しい流れが生まれるかもしれない。今後も新製品の動向には注目していきたい。
参考までに、カードリーダーごとの個別の計測値を以下に掲載する。
●エレコム「MR3-A001」
MR3-A001(ホワイト) |
1月下旬発売。価格は7,035円。エレコムのラインナップ中、唯一のUSB3.0カードリーダーとなる。
・CFの平均読み出し速度(MB/秒)
・SDHCメモリーカードの平均読み出し速度(MB/秒)
●バッファローコクヨサプライ「BSCRA51U3」
BSCRA51U3(ホワイト) |
2月下旬発売。価格は4,546円。今回紹介する3機種中、唯一UDMA mode6への対応を明言している。SDXCメモリーカードやMMCなどを使用できるUSB3.0対応小型モデル「BSCRSDXU3」も発売済み。
・CFの平均読み出し速度(MB/秒)
・SDHCメモリーカードの平均読み出し速度(MB/秒)
●ロアス「CRW-37M51」
CRW-37M51(ホワイト) |
1月26日発売。価格は3,990円。ロアス初のUSB3.0対応カードリーダーとなる。
・CFの平均読み出し速度(MB/秒)
・SDHCメモリーカードの平均読み出し速度(MB/秒)
●バッファローコクヨサプライ「BSCRA38U2」(USB2.0)
BSCRA38U2(シルバー) |
・CFの平均読み出し速度(MB/秒)
・SDHCメモリーカードの平均読み出し速度(MB/秒)
●パナソニック「BN-SDCLP3」(USB2.0)
BN-SDCLP3 |
・SDHCメモリーカードの平均読み出し速度(MB/秒)
2011/3/25 14:31