オールドデジカメの凱旋

ペンタックスK10D(2006年)

 この「オールドデジカメの凱旋」で取り上げるカメラを探すとき、そのタイプによって、ボクは無意識のうちに選択基準を変えていることに気づいた。コンパクトデジカメの場合、その製品のユニークさや特殊性に着目することが多い。一方、レンズ交換式の一眼レフやミラーレスの場合は、シリーズ内での立ち位置(?)の見極めや、現在での実用度などを考えながら選ぶことが多いように思う。

 今回の「ペンタックスK10D」も、シリーズ内での位置付け(グレード、オールドさ)や、登場した時のインパクトや評価などを思い出したりイメージしながら選んだ。……でも、「おい、K10Dをオールドデジカメに入れちゃうのか!」と、自分自身でもつっこんじゃったよ。そう、ボクの中ではこのK10Dは「さほど古くないモデル」というイメージがあったから。でも、あらためて考えてみると、発売から6年以上も経ってるんだよねぇ~。

 そんなペンタックスK10Dを、都内の中古カメラ店で見つけて購入した。発売時の価格はボディのみで12万円前後だったが、今回見つけたブツ(中古並品)は、標準ズーム「DA 18-55mm F3.5-5.6 AL」とセットで1万6,500円というお手頃価格だった。

 「ペンタックスK10D」(2006年11月30日発売)は多機能さや操作性の良さをウリにしたAPS-Cデジタル一眼レフであり、*istDシリーズの後継にあたるKシリーズの初期モデル。そのKシリーズ第1弾の「K100D」はエントリークラスの製品だったが、K10Dは比較的安価な製品ながら、仕様や各種機能は立派なミドルクラス。先に発売されたK100Dに搭載されたボディ内手ブレ補正機構SR(シェイクリダクション)の補正効果を高め、このSR機構の駆動系を利用したセンサーダストの除去機構DR(ダストリムーバル)も備えた。

 ああ、このDRもインパクトが強かったね。ええ、そのホコリ除去の効果だけでなく、作動させた際の「ゴトゴトッ!」と手に伝わってくる振動もね(笑)。また、ボディ全体の72カ所をシーリングしたという防塵・防滴構造なども、とても魅力的に感じられた。

 そして、K100Dも含め歴代モデルには有効610万画素CCDが採用されていたが、K10Dでは大幅に高画素化された有効1,020万画素CCDが採用されている。画像処理エンジンは、高速・高画質処理を追及した新エンジン、PRIME(プライム)。露出制御方式は、プログラムAE、シャッター優先AE、絞り優先AE、マニュアル露出。この基本4モードに加え、感度優先AE(Sv)とシャッター&絞り優先AE(TAv)の2モードが新設された。

 「感度優先AE」は設定したISO感度に応じてシャッターと絞りが自動調整されるモードで、反対に「シャッター&絞り優先AE」は設定したシャッターと絞りに応じてISO感度が自動調整されるモードである。あと、プログラムAE時に前後のダイヤル操作だけでシャッター優先AEや絞り優先AEに切り換えられる「ハイパープログラム」や、マニュアル露出時にグリーンボタンで適正露出値に自動調整される「ハイパーマニュアル」も採用。こういったペンタックス伝統(フィルム一眼レフのZシリーズにあった)の優秀な機能もしっかり継承されている。

カスタムファンクション(Cカスタムメニュー)では、各露出モードにおける前後ダイヤルの機能割り当てが設定できる。このあたりのきめ細かさにも“ペンタックスらしさ”が感じられる。

 なお、デジタル一眼レフでのハイパープログラムとハイパーマニュアルの搭載は、*istDシリーズの初代モデル「*istD」以来となる。シャッター速度は、1/4,000秒~30秒(無段階。マニュアル時は1/3EVまたは1/2EVステップ)。露出補正は±3EVまで(1/3EVまたは1/2EVステップ)。ISO感度は、ISO100~1600(1/3EVまたは1/2EVステップ)。連写能力は、約3コマ/秒(JPEG 10M、画質★★★でカード容量いっぱいまで。RAWは9コマまで)。

 ファインダーは、ペンタプリズム式で視野率95%・倍率0.95倍。液晶モニターは2.5型・約21万ドット。記録媒体はSDHC/SDメモリーカード。記録フォーマットは、RAW(PEF、DNG)とJPEGで、RAWとJPEGの同時記録も可能。ボディの大きさと重さは、141.5×101×70mm(幅×高さ×奥行き)、710g(本体のみ。電池とカード込みだと790g)。

記録メディアはSDHC/SDメモリーカード。背面の「カードカバー開放レバー」が上級機の雰囲気を醸す。このレバーもK-5にはない。
バッテリーは「D-LI50」。フル充電時の撮影可能枚数は一般撮影で「約500枚」だが、内蔵ストロボを使用しなければ、かなりの枚数が撮影できると今回の撮影で実感した。
グリップの反対側の側面の端子カバー内には、3つの端子(ケーブルスイッチ端子、USB/VIDEO端子、DC入力端子)がある。当然、端子カバーの部分にもシーリング(防塵・防滴仕様)が施されている。

 さしたる根拠がある訳ではないが、ボクの中には「デジタルカメラの賞味期限は発売から5年間くらいまで」という勝手な思い込みがある。メーカーやカメラのカテゴリーによっても差はあるけど、実際に使っていて機能や仕様の古さが気にならないのは、このくらいまでになるかなぁ。2008年3月発売の後継モデル「K20D」はギリギリセーフか!?

 事実、K20DにはK10Dにない「ライブビュー」「カスタムイメージ」「ダストアラート」といった、今となっては外せない機能が搭載されているのだ。ああ、そうか。K10Dは“非ライブビューモデル”なのよね(しみじみ)。

 そんなK10Dだが、発表&発売時の盛り上がりは今でも印象に残っている。当初は2006年10月下旬に発売する予定だったが、予想を大幅に超える人気ぶり(予約状況)により、11月30日に延期されたりしてね。自分でも「欲しいナァ」と思いながら、なかなか買えない状況が続いていた。まあ、ボクの場合は“資金的にメドが立たなかった”という理由の方が大きかったけど(苦笑)。

 結局、ボクがK10Dを買った(買えた)のは、発売から1年くらい経ってから。それも新品じゃなく中古品を。当時の中古相場(美品や良品)は8万円台くらいだったけど、6万円台の出物を見つけたので思わず買ってしまった。

 今回、久しぶりにK10Dを手にして改めて感心したのは、ボディのホールド感の良さと、各操作パーツのバランスの良さ、である。少し大柄で重めのカメラだが、グリップ部の大きさや形状が適度で、背面側の親指が当たる部分の出っ張り(というか反り返り)具合も絶妙。そのため、手にした際に“何とも言えない安心感”が得られるのだ。

 そして、背面部の各操作パーツに関しても、ホールド時の要になる親指の置き場を十分に確保しつつ、見た目も機能的にも、とてもバランスが取れている。液晶モニター部と親指を置く部分との段差を利用して(?)露出補正ボタンやAFボタンが配置されているので、ファインダーを覗いた状態でボタンを探り当てるのも比較的容易である(両ボタンの間の段差をボタンと間違いそうにもなるけど)。

 また、後継モデルのK-7や現行のK-5シリーズでは省略された「Fnボタン」もしっかり装備している! 個人的にこのボタンの存在はかなり重要だと思っていて、K-5シリーズを物足りなく感じてしまうほどだ(まあ、コントロールパネルで設定しろ、という意見もあるだろうが)。

測距点切替ダイヤルの下、手ブレ補正スイッチの横(左側)にある「Fnボタン」を押すと、液晶モニター上に4つのファンクションメニューが表示される。そして、十字キーの操作によって、4つの機能を選択して設定する。割り当ては上:ドライブモード、下:ストロボモード、左:ホワイトバランス、右:ISO感度。

 ちなみに、2006年の11月中旬、ボクは発売前の「ペンタックスK10D」と交換レンズ数本を持って奈良・大和路の旅に出かけた。写真雑誌の新製品レポートの取材のためだ。

 奈良は、ボクが好んで出かけるの場所のひとつだが、なかでも飛鳥(明日香村)は10代の終わりから定期的に通っている“大切なライフワークの地”である。いつ訪れても変わらない穏やかな農村風景が、田舎育ちのボクの眼と心にしみるのである。取材の初日、夕方近くになって近鉄吉野線の飛鳥駅に到着し、黄昏色に染まる集落や田園風景などを撮影……今こうやってK10Dを手にすると、自然とその時の情景が目に浮かんでくる。そんな“懐かしい旅の情景”が思い返せるカメラと再会して、何だか幸せな気分になった。

K10Dボディと一緒に購入した「DA 18-55mm F3.5-5.6 AL」は、2004年に「*istDS」と同時に発売された標準ズーム。K10Dでもこの標準ズームを組み合わせたレンズキットが発売されたが、ボディとのマッチングや描写を考えると、初代のデジタル一眼レフ「*istD」の時期に発売された「DA 16-45mm F4 ED AL」の方が良さそう。
こちらは、そのDA 16-45mm F4 ED ALとの組み合わせin奈良(2006年11月中旬の取材時)。

 これは2006年11月中旬の取材で撮影した、飛鳥の素朴な風景。今回、そのRAWデータを「SILKYPIX Developer Studio Pro5」で現像してみた。ああ、久しぶりに行きたいなぁ、飛鳥……。

K10D / DA 16-45mm F4 ED AL / 約3.4MB / 3,872×2,592 / 1/80秒 / F11 / -1EV / ISO100 / 36mm
K10D / DA 16-45mm F4 ED AL / 約3.1MB / 3,872×2,592 / 1/3秒 / F4 / -0.3EV / ISO400 / 16mm

実写サンプル

  • ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

・ISO感度
 最低感度のISO100に比べると、1段上のISO200は日陰部分などに少し粗さが見られるようだが、まだ実用範囲内。ISO400になるとその粗さが目立ってくるため、画質を優先する風景撮影などでは避けたいところ。ISO800以上になると、日陰部分だけでなく明るい部分にも色ノイズが目立ってくるので、撮影ジャンルに関わらず積極的に使う気にはなれない。色再現や階調再現に関しては、最高感度(ISO1600)まで良好。

ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600

・カメラ内RAW現像
 AWB(オートホワイトバランス)で青空バックに日陰の白梅を撮影したら、思いのほか青くて寒々しい色調になってしまった。しかも、露出もアンダーだし……。ということで、カメラ内RAW現像を行なう。モニター画面の変化を見ながらホワイトバランスを「昼光色蛍光灯」に設定し、増減感を「+2」に設定。あと、コントラストも「-2」に設定。そして、JPEG(10M・画質★★★)保存した。

撮影時の同時記録JPEG
カメラ内でRAW現像したJPEG画像
RAWモードの撮影画像は、カメラ内でRAW展開(現像)してJPEG保存できる。今ではよくある機能のひとつだが、当時はかなり画期的な機能に思えた。まあ、WB微調整ができなかったり、全体的に動作が緩慢だったりと、現在の基準からすると少し古さも感じるけどね。

・画像仕上

撮影メニューの表示(一部)。選択肢が「ナチュラル」と「鮮やか」の2種類だけ……というあたりに古さを感じる。ちなみに、K10Dでは「ナチュラル」が初期設定となる(現在のモデルなどは「鮮やか」が初期設定)。
ナチュラル
鮮やか

・DA 18-55mm F3.5-5.6 ALの画角変化

18mm(27.5mm相当)
55mm(84.5mm相当)

・作例

K10D / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約2.4MB / 3,872×2,592 / 1/160秒 / F11 / -0.7EV / ISO100 / 18mm
K10D / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約3.4MB / 3,872×2,592 / 1/50秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / 33mm
K10D / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約1.5MB / 2,592×3,872 / 1/500秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO100 / 18mm
K10D / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約3.5MB / 2,592×3,872 / 1/80秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / 18mm
K10D / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約2.2MB / 2,592×3,872 / 1/160秒 / F11 / 0EV / ISO100 / 23mm
K10D / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約3.1MB / 3,872×2,592 / 1/15秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 26mm
K10D / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約2.9MB / 2,592×3,872 / 1/125秒 / F5.6 / +1EV / ISO100 / 55mm
K10D / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約2.2MB / 3,872×2,592 / 1/50秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / 21mm
K10D / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約2.1MB / 3,872×2,592 / 1/500秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / 55mm
K10D / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL / 約2.7MB / 3,872×2,592 / 1/200秒 / F11 / 0EV / ISO100 / 18mm

吉森信哉