新製品レビュー

ソニーα7R II(外観・機能編)

裏面照射4,240万画素、手ブレ補正、4K…全部入りの高解像ミラーレス

ソニーα7シリーズは、35mmフルサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラだ。2013~2014年にかけて第1世代として「α7」「α7R」「α7S」の3製品を発売した後、2014年末には第2世代のスタンダードモデル「α7 II」を投入。そして今回、第2世代の高解像モデルとして「α7R II」が登場した。

α7R IIに標準ズーム「Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS」を装着

注目は、35mmフルサイズでは初となる裏面照射型のCMOSセンサーを採用したこと。裏面照射構造によって集光率を高め、有効4,240万画素という多画素にもかかわらず、いっそうの高感度化と低ノイズ化、広ダイナミックレンジを実現している。

さらに像面位相差センサーによるAFの高速化や、動体追従性の向上、5軸手ブレ補正の内蔵、ファインダーの高倍率化、4K動画への対応なども見どころだ。

発売は8月7日。掲載時の実勢価格は税別44万円前後。本稿では実写編に先駆けて、まずその外観と機能をお伝えしよう。

高級感と剛性が感じられるマグネシウムボディ

ボディは、昨年12月に発売された第2世代のスタンダードモデルα7 IIの基本デザインを踏襲する。天面中央に大きな台形のファインダーを配置した端正なスタイルだ。外装は、剛性を感じるマグネシウム合金素材。表面にシボ処理を施して、見た目の高級感と手触りを高めている。

ボディのサイズはα7 IIとほとんど同じだ。重量は26gアップし、バッテリーと記録メディアを含めて約625gとなった。シリーズ中では最も重く、メカがぎっしりと詰め込まれたような凝縮感と重量感がある。ただ、フルサイズの一眼レフと比べた場合には、これでもまだ比較的小型軽量といっていい。

水平と垂直を重視して、フラットな面が多用されたボディデザイン。グリップ部は大きく突き出ていて、しっくりと手になじむ。シャッターボタンの位置もちょうどいい
トップカバーとフロントカバー、内部フレームに加えてリアカバーにもマグネシウム合金を採用。防塵防滴に配慮し、主要なボタンやダイヤル類にはシーリング処理が施されている
ファインダー上部には、ISO標準ホットシューと互換性のあるマルチインターフェースシューを装備。モードダイヤルには、これまではなかったロック機構が備わっている
底面には、三脚穴やバッテリー室がある。オプションの縦位置グリップ「VG-C2EM」を装着することも可能だ
側面には、NFC機能のNマークやメモリーカードスロットを装備。これまで同様、Wi-Fi経由でスマホなどと連携できるほか、多彩なアプリによる機能拡張が行える
アイピースカップには、より薄型で付け心地が向上した新タイプの「FDA-EP16」が標準付属。接眼部には「T*コーティング」の印が刻まれている

広々とした視野の電子ビューファインダー(EVF)

ファインダーには、0.5型/約236万ドットの有機ELファインダーを搭載する。サイズとドット数の仕様はこれまでの製品と同じだが、接眼レンズに新しい光学系を採用。ファインダー倍率を0.71倍から0.78倍に向上させたほか、T*コーティングを施すことで、のぞいた際の映り込みを抑えている。確かに、十分な大きさと見やすさを実感できた。

ファインダー倍率は世界最大をうたう0.78倍。精細感も高く、細部のピントやボケの状態をしっかりと確認しながら撮影できる

液晶モニターは約122.1万ドットの3.0型ワイドTFTを装備する。こちらも見やすさは良好だ。明るい場所ではやや暗く感じるが、セットアップメニューから晴天屋外モードを選び、液晶の明るさを高めることも可能だ。

液晶モニターのチルト可動は、α7 IIと同じく上に約107度、下に約41度に対応。ローポジションやハイポジションでの撮影に役立つ

ファインダーと液晶モニターの切り換えについては、これまでと同じくアイセンサーによる自動、またはカスタム設定メニューの「FINDER/MONITOR」からの手動切り換えが選べる。アイセンサーの反応が敏感なため、液晶モニターでの撮影中に不用意に切り替わってしまう場合があることは相変わらずだが、後述するカスタマイズの強化によって「FINDER/MONITOR切換」をカスタムボタンに割り当て可能になった点はありがたい。

向上したAFスピードと動体追従性

機能面での進化の目玉といえるのは、位相差検出方式とコントラスト検出方式を併用する「ファストハイブリッドAF」を搭載したこと。撮像エリアの広範囲をカバーする399点の像面位相差AFセンサーを新搭載したほか、動体予測アルゴリズムの改良によって、AFの速度と追従性が高められている。

フォーカスエリアは、399点の位相差AFと25点のコントラストAFが機能するワイドのほか、ゾーン/中央/フレキシブルスポット/拡張フレキシブルスポット/ロックオンAFなどが選べる

加えて、位相差AFだけでなく、新開発したイメージセンサーの採用とアルゴリズムの進化などによってコントラストAFのレスポンスも向上している。

試用では、位相差AF非搭載だったα7Rよりも高速化したことはもちろん、同じくファストハイブリッドAFを備えるα7 IIよりも快適になったAFスピードを確認できた。今回使ったのは、主に標準ズームレンズと標準単焦点レンズの2本だが、どちらのレンズでも撮影シーンの明るさを問わず、AFにストレスを覚えることはほぼなかった。これまでのα7シリーズのユーザーなら、使ってすぐに体感できるうれしい進化ポイントだ。

また、オプションのマウントアダプター「LA-EA3/LA-EA1」を介してAマウントレンズを装着した場合でも、399点の像面位相差AFセンサーによってスピーディなAF駆動が行える点は、Aマウントユーザーにとってありがたいだろう。

撮影設定メニューでは、フォーカスモードやフォーカスエリアのほか、動画撮影時のAF駆動速度とAF追従感度をそれぞれ2段階から選べる

新開発の低振動シャッターを採用

AFの高速化と並んで、使い勝手を高める大きな改良といえるのは、ブレーキ機構を採用した新開発の低振動シャッターを搭載したこと。この低振動シャッターと、α7Rでは非搭載だった電子先幕シャッターを組み合わせることで、撮影時のシャッターショックが低減されたほか、これまでの不満だった大きめのシャッター音がやや静音化している。

シャッター音を完全に消したい場合には、電子シャッターによるサイレント撮影機能を使うことも可能だ。サイレント撮影では連写やストロボ発光ができない弱点はあるが、コンサート撮影などシャッター音を出したくないシーンで重宝する。

サイレント撮影はカスタム設定メニューから選べるほか、カスタムボタンに割り当てることも可能だ

手ブレ補正については、イメージセンサーシフト式の5軸補正機構をα7 IIから継承する。補正の効果は、最高4.5段分。今回の試用では、単焦点レンズ「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」を使った場合、シャッター速度1/4秒で約9割、1/2秒で約5割のカットをぶらさずに撮影できた。十分な効果があるといっていい。

一般的なレンズ内補正が採用する角度ブレ(ピッチ/ヨー)の補正に、シフトブレ(X軸/Y軸)と回転ブレ(ロール)の補正を加えた5軸手ブレ補正機構を内蔵。装着する全レンズで機能する

割り当て項目が増えたボタンカスタマイズ

操作面では、ボタンやダイヤルのカスタマイズがいっそう充実した点に注目したい。割り当てを変更できるのは、背面のコントロールホイールのほか、4つのカスタムボタン、中央ボタン、左右ボタンなど計12個。その数と位置はα7 IIと同じだが、割り当てられる機能は56項目から64項目に増えている。

増えた項目は、オートISOが働くシャッター速度を決める「ISO AUTO低速限界」や、夜空など暗所で液晶を見やすくする「ブライトモニタリング」、サイレント撮影、FINDER/MONITOR切換などだ。残念ながら、電子音のオン/オフや、ライブビュー表示設定効果のオン/オフ、APS-C撮影などを割り当てられない点はもの足りない。

カスタムキーの設定画面。最初は少々手間取るが、ここを自分の使い方に応じてきっちりと設定しておくことがを操作感を高めるポイントだ

使用頻度の高い機能を一覧表示して素早く設定できるファンクション(Fn)ボタンに関しても、割り当て可能な項目が増えている。

よく使うモードや数値の組み合わせを本体に最大2つ、メモリーカードに最大4つまで記憶させ、モードダイヤルから素早く呼び出せる「登録」機能はこれまでを継承する。記憶できるのは、絞り値やシャッター速度、撮影メニューの内容のみで、カスタム設定メニューやセットアップメニューの内容を登録できない点は不満だ。

モードダイヤルではオートからマニュアルまで8モードを選択でき、「1」および「2」の位置にセットした場合は、前もって登録した撮影モードを素早く呼び出せる
連写は最高で約5コマ/秒、動画は最大で4K記録に対応。4Kのファイル記録方式はXAVC S。カメラ内で連続して最長29分までの4K動画撮影ができる
側面のカバー内にはマイク端子、ヘッドフォン端子、マルチ/マイクロUSB端子、HDMIマイクロ端子を装備。USB給電や、外部モニターで映像を確認できるHDMI同時出力に対応する
記録メディアには、SDXC/SDHC/SDメモリーカード、およびメモリースティックPROデュオなどが使える
バッテリーはリチウムイオン充電池「NP-FW50」。撮影可能枚数はファインダー使用で約290枚、液晶モニター使用で約340枚となる

多用途に活躍する高機能と高機動力が魅力

トータルとしては、幅広い用途に対応可能な内容の濃いカメラに仕上がっていると感じた。操作の細かい部分に個人的な改善要望点は多々あるが、センサー性能と撮影機能、レスポンス、手触りといった基本部分での満足感は高い。

40万円を超える実売価格は手ごろとはいえないが、業務として撮影を行うユーザーや高級な趣味として楽しみたい人なら、価格に見合った価値を感じるだろう。

次回は、実写編として作例を交えたインプレッションをお届けする。

標準レンズ「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」を装着

永山昌克