新製品レビュー
ソニーα7R II(外観・機能編)
裏面照射4,240万画素、手ブレ補正、4K…全部入りの高解像ミラーレス
Reported by 永山昌克(2015/8/20 11:00)
ソニーα7シリーズは、35mmフルサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラだ。2013~2014年にかけて第1世代として「α7」「α7R」「α7S」の3製品を発売した後、2014年末には第2世代のスタンダードモデル「α7 II」を投入。そして今回、第2世代の高解像モデルとして「α7R II」が登場した。
注目は、35mmフルサイズでは初となる裏面照射型のCMOSセンサーを採用したこと。裏面照射構造によって集光率を高め、有効4,240万画素という多画素にもかかわらず、いっそうの高感度化と低ノイズ化、広ダイナミックレンジを実現している。
さらに像面位相差センサーによるAFの高速化や、動体追従性の向上、5軸手ブレ補正の内蔵、ファインダーの高倍率化、4K動画への対応なども見どころだ。
発売は8月7日。掲載時の実勢価格は税別44万円前後。本稿では実写編に先駆けて、まずその外観と機能をお伝えしよう。
高級感と剛性が感じられるマグネシウムボディ
ボディは、昨年12月に発売された第2世代のスタンダードモデルα7 IIの基本デザインを踏襲する。天面中央に大きな台形のファインダーを配置した端正なスタイルだ。外装は、剛性を感じるマグネシウム合金素材。表面にシボ処理を施して、見た目の高級感と手触りを高めている。
ボディのサイズはα7 IIとほとんど同じだ。重量は26gアップし、バッテリーと記録メディアを含めて約625gとなった。シリーズ中では最も重く、メカがぎっしりと詰め込まれたような凝縮感と重量感がある。ただ、フルサイズの一眼レフと比べた場合には、これでもまだ比較的小型軽量といっていい。
広々とした視野の電子ビューファインダー(EVF)
ファインダーには、0.5型/約236万ドットの有機ELファインダーを搭載する。サイズとドット数の仕様はこれまでの製品と同じだが、接眼レンズに新しい光学系を採用。ファインダー倍率を0.71倍から0.78倍に向上させたほか、T*コーティングを施すことで、のぞいた際の映り込みを抑えている。確かに、十分な大きさと見やすさを実感できた。
液晶モニターは約122.1万ドットの3.0型ワイドTFTを装備する。こちらも見やすさは良好だ。明るい場所ではやや暗く感じるが、セットアップメニューから晴天屋外モードを選び、液晶の明るさを高めることも可能だ。
ファインダーと液晶モニターの切り換えについては、これまでと同じくアイセンサーによる自動、またはカスタム設定メニューの「FINDER/MONITOR」からの手動切り換えが選べる。アイセンサーの反応が敏感なため、液晶モニターでの撮影中に不用意に切り替わってしまう場合があることは相変わらずだが、後述するカスタマイズの強化によって「FINDER/MONITOR切換」をカスタムボタンに割り当て可能になった点はありがたい。
向上したAFスピードと動体追従性
機能面での進化の目玉といえるのは、位相差検出方式とコントラスト検出方式を併用する「ファストハイブリッドAF」を搭載したこと。撮像エリアの広範囲をカバーする399点の像面位相差AFセンサーを新搭載したほか、動体予測アルゴリズムの改良によって、AFの速度と追従性が高められている。
加えて、位相差AFだけでなく、新開発したイメージセンサーの採用とアルゴリズムの進化などによってコントラストAFのレスポンスも向上している。
試用では、位相差AF非搭載だったα7Rよりも高速化したことはもちろん、同じくファストハイブリッドAFを備えるα7 IIよりも快適になったAFスピードを確認できた。今回使ったのは、主に標準ズームレンズと標準単焦点レンズの2本だが、どちらのレンズでも撮影シーンの明るさを問わず、AFにストレスを覚えることはほぼなかった。これまでのα7シリーズのユーザーなら、使ってすぐに体感できるうれしい進化ポイントだ。
また、オプションのマウントアダプター「LA-EA3/LA-EA1」を介してAマウントレンズを装着した場合でも、399点の像面位相差AFセンサーによってスピーディなAF駆動が行える点は、Aマウントユーザーにとってありがたいだろう。
新開発の低振動シャッターを採用
AFの高速化と並んで、使い勝手を高める大きな改良といえるのは、ブレーキ機構を採用した新開発の低振動シャッターを搭載したこと。この低振動シャッターと、α7Rでは非搭載だった電子先幕シャッターを組み合わせることで、撮影時のシャッターショックが低減されたほか、これまでの不満だった大きめのシャッター音がやや静音化している。
シャッター音を完全に消したい場合には、電子シャッターによるサイレント撮影機能を使うことも可能だ。サイレント撮影では連写やストロボ発光ができない弱点はあるが、コンサート撮影などシャッター音を出したくないシーンで重宝する。
手ブレ補正については、イメージセンサーシフト式の5軸補正機構をα7 IIから継承する。補正の効果は、最高4.5段分。今回の試用では、単焦点レンズ「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」を使った場合、シャッター速度1/4秒で約9割、1/2秒で約5割のカットをぶらさずに撮影できた。十分な効果があるといっていい。
割り当て項目が増えたボタンカスタマイズ
操作面では、ボタンやダイヤルのカスタマイズがいっそう充実した点に注目したい。割り当てを変更できるのは、背面のコントロールホイールのほか、4つのカスタムボタン、中央ボタン、左右ボタンなど計12個。その数と位置はα7 IIと同じだが、割り当てられる機能は56項目から64項目に増えている。
増えた項目は、オートISOが働くシャッター速度を決める「ISO AUTO低速限界」や、夜空など暗所で液晶を見やすくする「ブライトモニタリング」、サイレント撮影、FINDER/MONITOR切換などだ。残念ながら、電子音のオン/オフや、ライブビュー表示設定効果のオン/オフ、APS-C撮影などを割り当てられない点はもの足りない。
使用頻度の高い機能を一覧表示して素早く設定できるファンクション(Fn)ボタンに関しても、割り当て可能な項目が増えている。
よく使うモードや数値の組み合わせを本体に最大2つ、メモリーカードに最大4つまで記憶させ、モードダイヤルから素早く呼び出せる「登録」機能はこれまでを継承する。記憶できるのは、絞り値やシャッター速度、撮影メニューの内容のみで、カスタム設定メニューやセットアップメニューの内容を登録できない点は不満だ。