【新製品レビュー】OLYMPUS Tough TG-1
オリンパスから発売される「OLYMPUS Tough TG-1」は同社のコンパクトデジタルカメラのなかでも防水、耐ショック性を重視したToughシリーズの製品だ。このToughシリーズはアウトドアでの使用を想定したモデルで、オリンパスのコンパクトデジタルカメラのラインナップのなかでも特徴ある根強い人気のシリーズとなっている。
■カメラの基本性能も確実にUP
「OLYMPUS Tough TG-1」(以下TG-1)の最大の特徴は、防塵、防水、耐寒、耐ショックと、とにかくタフなカメラであるということだ。これまでにもμシリーズやToughシリーズの歴代モデルにおいてタフモデルを発売してきた同社の得意とする分野でもある。
これまでToughシリーズにはTG-8**、TG-6**、TG-3**の三つのラインナップが存在していたが、このTG-1はToughシリーズ最上位のフラグシップモデルに位置する。それまでの最上位モデルだったTG-820とそのタフさを比較すると、JIS/IEC保護等級6級(IP6X)相当の防塵性能、-10℃までの耐寒性能、2.0mからの落下にも耐える耐ショック性能や100kgfの耐荷重性能などはTG-820と同等だが、防水性能については水深12mまでと更なる深度まで耐えられるようになった(TG-820は水深10mまで)。
しかしそのTG-1の外観は意外なほどおとなしいデザインとなっている。TG-8**系のデザインが代々いかにも「タフだろっ」というデザインだったことを考えると、少し“すまし顔”のようにも見えてしまうデザインだ。
35mm判換算で25mm~100mmの光学式4倍ズームレンズ。ワイド単が25mm相当なので広い風景なども撮影することができる。また広角端においては開放F値2.0と非常に明るい。レンズを保護する可動式バリアはないが、撥水コートされた硬質ガラスによりレンズは保護されている |
TG-1のカットモデル。屈曲光学系ながら、配置の工夫でレンズ開口部をボディ中央に持ってきている(編集部撮影) |
TG-1においても、これまでのToughシリーズ同様に屈曲光学系となるレンズ構成を採用している。これにより撮影時のズーム操作等によるレンズ鏡筒の伸縮は起きない。レンズ焦点距離域は、これまでのモデルと比べ、広角域にシフトされた4.5-18mm(35mm判換算25-100mm相当)となり、レンズの広角端では開放F値2、望遠側でもF4.9という比較的明るいレンズが搭載されている。これにより光量の少ない場所での撮影でも感度を抑えたノイズの少ない画像を得ることが可能だ。
搭載されている撮像素子は有効1,200万画素の1/2.3型裏面照射型CMOSセンサー。設定できるISO感度は100~6400までの1EV刻み、およびAUTO/高感度AUTOとなる。画像処理エンジンには同社のノンレフレックス(ミラーレス)カメラ「OM-D E-M5」にも採用されている「TruePic VI」を採用。これらの組み合わせによる「iHS」テクノロジーを搭載したことで、高感度撮影時の画質やAF合焦までの速度、起動時間、連写性能などが向上しているという。
バッテリーは新型の「LI-90B」を採用。容量は1270mAh。TG-8**系やTG-6**系などで採用されているLI-50Bの容量が925mAhなので、電池容量がアップされているのがわかる。無線LAN搭載SDカードのEye-Fiにも対応しているためWi-Fi接続やスマートフォンへのダイレクト転送が可能な環境であれば、メモリーカードを抜き出すために濡れたTG-1の蓋を開けるといったリスクを避けることもできる。
■A-GPS対応で衛星捕捉時間を大幅短縮
タフさが自慢のTG-1にはもうひとつ大きな特徴がある。GPSユニットの搭載だ。ToughシリーズにはこれまでもGPSユニットを搭載したモデルが存在していた。2011年モデルのTG-810にもGPSユニットが搭載されており、私も使用している。普段使いの撮影に加えフィールドでの撮影地情報を記録するにはとても便利な機能だ。しかしその後継機であるTG-820ではGPS機能が非搭載となっていたので、とても残念に思っていたところだ。
TG-810(上) |
TG-1に搭載されたGPSユニットは、地球の衛星軌道上を周回しているGPS(グローバルポジショニングシステム)衛星からの電波信号を受け取ることで、現在地の位置情報を知ることができるものだ。
現在約30個のGPS衛星から信号が発信されている。このうち日本で受信できる衛星数は6から10個程度となる。ただし受信地の地形や周囲の高い建物などによって電波が遮られることがあるので、実際には常時信号を受けられる衛星数はこれより少なくなる。原理的には最低4つの衛星から信号を受け取れば位置情報を算出することができる。
TG-1でも同様に4つの衛星からの信号を得ることで現在地を割り出すことができる。その情報を基に撮影した場所の位置情報を緯度経度の情報として撮影画像のExifに記録できるようになっている。
TG-1のGPS機能にはアシストGPS(A-GPS)が搭載されている。あらかじめGPS衛星の軌道情報をパソコン経由でTG-1に取り込んでおき、それを基にGPS衛星を探索するスピードを早めるというものだ。実際にTG-1の電源OFF状態から電源をONにして(コールドスタート)GPS衛星を捕捉するまでの時間を従来機TG-810と比較してみると、あきらかにTG-1の方が早くGPS衛星を捉えることができた。
実は私がTG-810を使用するにあたっての一番の不満が、このGPS衛星を補足するまでの時間の長さだった。状況によっては捕捉に5~10分もかかってしまうこともある。その点、TG-1ではほんの数秒で衛星を補足することができるようになったのが大きな改善点だ。
TG-1にはGPSロガー機能も利用できる。一定時間の間隔で得た位置情報を記録しておき、その点をつなぐことで移動軌跡を記録する機能だ。記録情報はログファイルとして保存され、これをもとにGoogle Earthなどの対応ソフトの地図上に軌跡を表示させることができる。これにより、TG-1を持った人物がどこを通過したのかが判る。
TG-1が電源OFFの状態でも十字ボタンのinfoを押すことで電子コンパスを起動させられる。位置情報は最後に測位した場所のものを表示する |
■iHSテクノロジーの採用で画質が大幅向上
ショックに強く水中でも使用できるタフボディにGPS機能と、まさしくアクティブなデジタルギアとしての魅力が満載のTG-1だが、画質も大きく向上している。
私が使用しているTG-810もタフなデジタルギアとしてはかなり満足度が高い製品なのだが、撮影した画像はけっして満足できる画質ではなかった。このToughシリーズのように屈曲光学系を採用しているカメラは、その構造の特性から画質にはあまり期待できないものが多かった。しかし今回TG-1で撮影した画像を見ると、細部の解像感が大きく向上しており、さらに画像のエッジ部の処理も自然な仕上がりとなっている。これは前述した明るいレンズとその構成の最適化、高い能力の画像処理エンジン、そして裏面照射型CMOSセンサーの組み合わせによる同社の「iHS」テクノロジーによってもたらされた成果だろう。
ほぼ同条件にて撮影したTG-1(左)とTG-810(右)の画像を比較。近景の草から遠景の船やビルまでTG-1の方が解像力が高い。エッジの処理も自然になっているのがわかる |
■シリーズ初のコンバージョンレンズ対応
TG-1には専用のコンバージョンレンズが2種類用意されている。焦点距離を望遠側に1.7倍伸ばすことができるテレコンバーター「TCON-T01」と、焦点距離0.74倍のフィッシュアイコンバーター「FCON-T01」だ。いずれも防水仕様で、水中でも使用・着脱が可能。レンズ内には窒素ガスが充填されており、レンズ内外の温度差によるくもりの発生を抑えたという。
コンバージョンレンズはTG-1のレンズリングを外して装着する。なお、コンバージョンレンズは別売のコンバージョンアダプター「CLA-T01」を介してとりつける |
テレコンバーター 「TCON-T01」を装着 | フィッシュアイコンバーター「FCON-T01」を装着 |
■まとめ
TG-1にはさまざまな撮影シチュエーションに合わせた撮影ができる撮影モードと、デジタルエフェクトを楽しめるマジックフィルターが用意されている。これらのモードを活かして撮影することで、写真をさらに自在に楽しむことができる。タフなボディは撮影する環境を選ばず、どのようなシーンでもしっかりと被写体を捉えることができる。高画質&高機能に加え、これまでにない新たな領域を写し出してくれるのではないかと期待したくなるカメラだ。
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・ISO感度
すべてのISO感度において色ノイズは少ない。高感度においてもノイズを抑え込んでいる印象。ただISO800を超えるとノイズ除去処理によりディテールが緩くなってくるようだ。ただし全体にはノイズ処理とディテール保持のバランスもよく、極端な大伸ばしをするのでなければ十分な画質だといえる
ISO100 | ISO200 |
ISO400 | ISO800 |
ISO1600 | ISO3200 |
ISO6400 |
・超解像ズーム
TG-1に搭載された超解像ズームを使用してみた。一般的にデジタル処理によるズームは画質の劣化が激しいのだが、超解像ズームでは画像を拡大する際に最適化を行なっているようで、比較的劣化は少ないようだ。あともう少し被写体を大きく撮りたい、といったシーンで有効な機能だろう。
望遠端18mm(100mm相当) | 望遠端18mm+デジタルズーム(200mm相当) |
・コンバージョンレンズ
TCON-T01を装着して撮影。倍率1.7倍なので170mm相当の画角となる | FCON-T01を装着して撮影。倍率0.74倍なので18.5mm相当の魚眼レンズとなる |
・マジックフィルター
・シーンモード
シーンモード:ローライト / F2.8 / 1/40秒 / 0EV / ISO500 / WB:オート / 7.3mm(40mm相当) | シーンモード:料理 / F4.2 / 1/80秒 / 0EV / ISO640 / WB:オート / 13.5mm(74mm相当) |
シーンモード:夕日 / F3.6 / 1/40秒 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 11.0mm(61mm相当) |
・逆光補正
Pモード / F2.8 / 1/320秒 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 4.5mm(25mm相当) | HDR逆光補正 / F2.8 / 1/320秒 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 4.5mm(25mm相当) |
・作例
2012/6/4 00:00