新製品レビュー
ニコンD5200
正常進化したバリアングル液晶モデル
(2012/12/20 00:25)
2012年は35mm判フルサイズ(ニコンでいうFXフォーマット)のデジタル一眼レフカメラが何かと話題だ。カメラ誌などを見ていても、APS-Cサイズ(DXフォーマット)はこの先無くなってしまうのではないかと思えるほどの勢いである。しかし、エントリーモデルや一部のミドルクラスのデジタル一眼レフは、コストやボディサイズなどから今後もAPS-Cサイズであることに変わりはないことだろう。
そのような2012年の末に登場したのが、DXフォーマットを採用するニコンD5200である。今回のレビューでは、先代のD5100からブラッシュアップされたところを中心に見ていくことにする。
発売は12月15日。大手量販店での実勢価格はボディ単体が8万9,800円前後、AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VRの付属するレンズキットが9万9,800円前後、さらにAF-S DX NIKKOR 55-300mm F4.5-5.6 G ED VRの加わるダブルズームキットが13万4,800円前後となる。
完成度の高い2,410万画素センサーを新採用
主要デバイスの多くがブラッシュアップされたD5200だが、注目は何といってもデジタル一眼レフの要、イメージセンサーの変更だろう。D5100の有効1,620万画素から一気に2,410万画素にアップ。同じDXフォーマットのD7000も1,620万画素なので、D5200は上位モデルのスペックを上回ることになる。推測だが、2013年に登場の期待されるD7000後継モデルの画素数は、D5200と同じか、それ以上であることがこのことから確定したと考えてよいと思われる。
このイメージセンサーは画素数などからおそらくソニーα77と同じものだろう。以前カメラ誌でそのα77のレビューを行なったときには解像感の高さに驚かされたものだが、その印象はD5200でも同様で、階調再現性なども含め完成度の高いイメージセンサーのように思える。ただし、この解像度を余すことなく描写に活かしたければ、使用するレンズの選択に気を払う必要があることはいうまでもない。
画像処理エンジンはD4やD800/D800Eと同じ「EXPEED 3」をDXフォーマットとしては初めて搭載。高速の画像処理により、画素数が大幅に増加したにも関わらずコマ速はD5100の4コマ/秒から5コマ/秒へとアップ。シャッターのキレはたいへんよく、このクラスにありがちな“もたもた”したような印象はない。
さらに、画素ピッチが小さくなったにも関わらず、最高感度は従来と同じISO6400を実現。拡張機能で最高ISO25600相当までの設定も可能としている。実際、高感度設定時のノイズレベルは作例を見る限りこれまで通り上々といってよく、通常感度内であれば解像感の低下や色のにじみのようなものも少ない。
安心感のあるAFシステムを搭載
AFとシーン認識をD7000と同じとしたのもトピックだ。AFシステムは撮影領域を広くカバーする39点のマルチCAM4800DX AFセンサーモジュールで、従来の11点を大きく凌ぐ。アイピースをのぞくと相変わらずファインダー像(倍率0.78倍)は小さいものの、表示は上位モデルと同じであることに驚かされる。もちろんこの表示は透過液晶を使ったものだ。
さらに、コンティニュアスAF時に有効なダイナミックAFもこれまでの11点から、9点/21点/39点からの選択が可能になり、スポーツをはじめとする動体撮影ではより使い勝手が向上している。21点のダイナミックAFを使い競馬を撮影してみたのだが、選んだフォーカスポイントから被写体が外れてしまった場合でも、その結果はまったく問題ないものであった。また、安心感から被写体の動きに集中でき、撮影は非常に楽であったことも報告しておこう。
2016分割RGBセンサーを搭載するシーン認識機能は、AFや露出、WBなどより高い精度で制御を行なう。特に色情報をもとに被写体を追尾する3D-トラッキングは従来の420分割RGBセンサーとくらべ精度が飛躍的に向上。さらに小さな被写体の検出もできるようになり、信頼性も高くなった。
可動式モニターやグラフィカルなUIも特徴
ボディのシェイプやボタン類のレイアウトは、D5100から変更が少ない。大きな違いとしては、動画用のマイクがステレオとなりペンタ部上部に備わったことと、トップカバー上部の撮影モードダイヤル近くにレリーズモードボタンが備わったことぐらいだ。
バリアングル液晶モニターは継承しており、ニコンの現行デジタル一眼レフとしては唯一となる。横位置撮影時のみならず縦位置撮影でも有効であるほか、カメラを持ち運ぶときなどには液晶側を内側にして折り畳んでおけば、液晶面のダメージを防ぐこともできるので何かと便利だ。なお、ボディカラーはブラックとレッド、そして今回試用したブロンズから選べる。
撮影に関する設定情報を一同に表示するインフォ画面は新しいデザインとなった。D5100で「グラフィックデザイン」と呼んでいたものをベースに、シャッタースピード、絞り値、ISO感度それぞれを3つのサークルのなかに表示する。シャッタースピードとISO感度のサークルは設定値に応じて外周が回転し、絞り値は絞り羽根が開いたり閉じたりするので見ていて楽しい。表示する文字が適度に大きく見やすいのもよい。従来と同様となるが、画質やWBなど撮影に関する設定をこの画面から変更できるのも、このカメラを使いやすいと感じる部分だ。
前述しているように、フォーカスポイントの多点化に伴いファインダーには透過液晶を採用する。これに伴い、ファインダー内に格子線を表示できるようになったほか、画面内左下にバッテリー警告表示、ピクチャーコントロールを「モノクロ」に設定したときの白黒マーク、カードなしマークが表示されるようになった。ただし、ミラーレス機のように撮影情報などの文字やアイコンで肝心の被写体が見にくくなるようなことはない。注意を促さなければならない場合のみ表示を行ない、それも控えめなものなので、被写体の見えに影響することはほとんどないといえる。
スペシャルエフェクトモードは従来と同様、セレクトカラー/カラースケッチ/ミニチュア効果/ナイトビジョン/シルエット/ハイキー/ローキーを搭載。多彩な仕上がりが楽しめる。また、多重露光やHDR(ハイダイナミックレンジ)撮影の搭載もD5100同様としており、こちらも様々な撮影シーンや被写体に対応する。ちなみにHDRには、新たに「より強め」が搭載され、これまで以上により明暗比を抑えた描写を得ることもできるようになった。詳細についてはスペシャルエフェクト同様、作例を見ていただければと思う。
トレンドの機能も充実
別売のワイヤレスモバイルアダプター「WU-1a」をD5200に装着すれば、スマートフォンやタブレット端末との連携が可能なのもうれしい部分。無線LAN経由でスマホと接続し、ライブビュー画像を確認しながらのリモート撮影を可能とするほか、撮影した画像をワイヤレスで転送することもできる。
D5200で撮影した画像はスマホの内蔵カメラで撮影したものより当然高品質であるうえ、超広角から超望遠の撮影までを可能とするので、ブログやFacebookなどでライバルに差を付けることも容易だ。WU-1aの大手量販店価格は4,370円前後と比較的手頃なものだが、今後を見据えるなら、最初から内蔵していてもよかったようにも思える。
動画機能としては1,920×1,080/60iのフルHDに対応。AFモードを常時AFサーボ(AF-F)に、AFエリアモードをターゲット追尾AFに設定しておくと、動き回る被写体にも追従してピントを合わせ続けられる。子どもやペットの撮影などでは、一般的なムービーカムとさほど変わらない使い勝手で撮影が楽しめそうだ。また、前述のとおり内蔵マイクでもステレオ記録ができるようになったことも本機の特徴だろう。
本機を使っていて気になる部分と言えば、ファインダー像が小さく感じられることぐらい。エントリークラスのカメラとして考えれば完成度は高いといってよいだろう。しかも同じDXフォーマットの上位モデルD7000よりもイメージセンサーなど秀でた部分もあり、これからデジタル一眼レフを手にするユーザーのみならず、ベテランユーザーも末永く使えそうなカメラである。
今回のレビューではキットの標準ズームレンズと組み合わせて使用したが、本機の持つポテンシャル考えると、よりグレードの高いレンズを奢りたくなるところでもある。