交換レンズレビュー
LUMIX G 25mm/F1.7 ASPH.
小型軽量低価格なのにシャープな描写の単焦点レンズ
Reported by 北村智史(2015/12/3 07:00)
35mmフルサイズに換算して50mm相当となるマイクロフォーサーズ用単焦点標準レンズ。パナソニックにはすでにライカブランドの「LEICA DG SUMMILUX 25mm F1.4 ASPH.」があるが、新登場のG 25mm F1.7は、開放F値を抑えて小型軽量化を達成。価格も税別7万円のDG SUMMILUX 25mm F1.4の約半分の税別3万7,000円と手ごろなのが魅力だ。組み合わせたいボディの色や好みに合わせて選べるよう、ブラックとシルバーの2色が用意されている。
デザインと操作性
サイズは最大径が60.8mm、マウント面から前縁までの長さが52mm。マウント基部から1段太くなる形状で、DMC-GX8のようなやや大柄なボディともバランスはいい。外装はプラスティック製のようで、今回試用したシルバーモデルはやや軽い雰囲気ではあるものの、それほど安っぽくは感じない。重さは125gで、手に持つと、見た目よりもずっと軽く感じられる。バッグに入れておいても、まったく苦にならない軽さだ。
光学系は、非球面レンズ×2枚とUHR(超高屈折率)レンズ×1枚を含む7群8枚構成。テッサータイプの前群に、リアコンバーターをくっつけたような、一般的な標準レンズとはずいぶん毛色の異なる設計を採用している。なお、手ブレ補正機構は内蔵されていない。
ピント合わせにはインナーフォーカス方式を採用。AF作動はきわめて速く、そして静かで、ほとんどのシーンでは迷うこともなく、非常に快適な撮影が楽しめた。
電子式のフォーカスリングは幅が約25mmある。大半のマイクロフォーサーズ用レンズと同じく、距離指標はない。回したときの感触は非常に軽いが、すかすかの安っぽいものではなく、気持ちよく操作できる。さっと大きく回したときと、ゆっくり回したときとでピントの移動量が変化する。シーンに合わせて素早い操作と繊細な操作を使い分けられる仕様だ。
レンズ前縁にはデコレーションリングが装着されており、これを取り外してレンズフード(どちらも鏡胴と同色のものが付属している)を装着する。これはDG SUMMILUX 15mm F1.7やG 42.5mm F1.7と共通の仕様だ。
遠景の描写は?
画面中心部は絞り開放から良好な画質が得られている。絞っていくにつれて徐々に解像力が向上していき、F4付近でもっともシャープになる。周辺部の画質も悪くなく、四隅だけは絞りを開けたときにアマさが見られるが、こちらもF4まで絞れば申し分のないレベルになってくれる。風景などに使う分には、F4からF5.6あたりの絞り値がベストといえる。
F5.6よりも絞ると、少しずつ回折現象の影響が目に付くようになる。F8付近までなら十分に実用的な画質と思えるが、F11からはアマさのほうが気になってしまう。作画上の理由でどうしても被写界深度を深くしたくないというのでなければ、それ以上絞り込むのは避けたほうがいいだろう。
周辺光量の低下は、絞り開放付近でもそれほど大きくはない。遠景であればF2.8で気になりにくくなるし、F4まで絞れば明るさのムラはほぼ解消される。倍率色収差はカメラ側に補正機能が装備されていることもあって、JPEG画像では確認できない。
歪曲収差は、RAW画像を補正なしの状態で見られる現像ソフトでチェックしたところ弱いタル型だが、ライブビュー映像もリアルタイムで電子的に補正されているので、実用上はまったく無視できる。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
※共通設定:DMC-GX8 / -0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 25mm
ボケ味は?
最短撮影距離は0.25m、最大撮影倍率は0.14倍(35mmフルサイズ換算では0.28倍相当となる)。遠景はシャープでも近接域では解像が悪くなるレンズは少なくないが、このG 25mm/F1.7 ASPH.は絞り開放でも素晴らしくシャープだ。
ただ、ボケ味についてはややクセがある印象で、特に近接域では、ちょっと不自然な感じのするボケになることがあった。こちらに掲載する作例ではまずまず良好なボケになってくれているので、シーンによって神経質な部分が見えたり見えなかったりするタイプなのかもしれない。
撮影距離2mほどで撮ったカットでは、パッと見は自然で柔らかなボケだが、ピクセル等倍では、前ボケがややざわざわしているような印象を受ける。ただし、あくまでピクセル等倍で見た場合の話であって、実用上はあまり気にしなくていいと思う。一方、後ボケは滑らかで好感が持てるボケ方をする。また、F4あたりまで絞ると、前ボケも神経質なところがなくなって、あつかいやすそうな描写になってくれる。
逆光耐性は?
画面内に太陽をフレーミングしたカットでは、光源から上下左右方向に紫色のフレアが生じているのが気になった。ただしこれは、カメラ側の問題(撮像センサーに起因するもののように思う)かもしれない。画面左側には、あまり派手ではないがゴーストも出ている。
画面の外(この作例では画面左側)に太陽があるケースでも、やはり紫色のフレアが目に付く。こちらの場合は、きちんとハレ切り(太陽光が直接前玉に当たらないように、手などで遮ること)をすれば軽減できる場合が多いので、あまり神経質にならなくていいと思う。
作品
建物や街並み、自然風景などをシャープに撮りたいならF4からF5.6のあいだの絞りがベスト。このカットもF4.5に絞って撮っている。画面サイズの小さなマイクロフォーサーズだけに被写界深度が深く、パンフォーカスに近い状態になっている。スナップ系の撮影にも使いやすいと思う。
最短撮影距離付近で絞り開放という条件。シャープさは申し分ないが、ボケ方が少し不自然なように感じてしまう。
こちらもそれなりに寄って撮ったカットだが、F2.8まで絞ったからか、ずっと素直なボケ方になってくれている。
1/160秒で撮れているが、コンパクトタイプのズームなら1/40秒がせいぜいというシーン。開放F値の明るさの分の強みだ。ただし、手ブレ補正機構がないので痛しかゆしではある。
まとめ
F1.7という明るさでありながら、小型軽量でお手ごろ価格を実現しているところは昨年2月発売のLUMIX G 42.5mm F1.7 ASPH.と共通で、コンパクトタイプのズームレンズでは味わえないボケ表現や暗いシーンへの対応力などが大きな魅力となっている。
このG 25mm F1.7は、ボケ味についてはやや好みが分かれるかもしれないが、絞り開放からシャープだし、サイズも十分に小さくて、わずか125gという軽さもあって、持ち歩きが苦にならないのもいい。
手ブレ補正がないのは泣きどころといえなくもないが、単焦点の標準レンズで手ブレ補正を内蔵しているものはないのだから、それを弱点というのも気の毒だろう。現状、OLYMPUS OM-D/PENシリーズは全機種に、パナソニックもDMC-GX7/GX8にはボディ内手ブレ補正機構が内蔵されているので、ご検討いただきたい。
また、スペックの近いオリンパスM.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8よりも、税込の実売価格で6,000円以上安いのも見逃せない。マイクロフォーサーズのユーザーならぜひとも注目するべき1本だ。