交換レンズレビュー
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR
小形軽量と高い描写力を両立
Reported by上田晃司(2015/4/9 08:00)
解像力の高い望遠レンズとして評価の高い「Ai AF-S Nikkor 300mm f/4D IF-ED」が14年ぶりにリニューアルされ、気になっている方も多いだろう。
今回の「AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR」は望遠レンズとは思えないほど軽量でコンパクト化されている。軽量化に大きく貢献しているのがニッコールレンズ初となるPF(Phase Fresnel=位相フレネル)レンズの採用だ。
通常の屈折レンズの場合、波長の長い光は屈折しにくいため遠くに焦点を結ぶが、PFレンズでは波長の長い光ほど手前に焦点を結ぶという。その結果、屈折レンズとPFレンズを組み合わせることで強力な色収差補正が行え、レンズ全長の短縮化に加え軽量化にも成功している。
今回はニコンD810と組み合わせて撮影を行ったので、本レンズの実力を見ていきたいと思う。
デザインと操作性
デザインは従来のレンズから大きく変更され、近年発売されているニッコールレンズに類するデザインを採用している。望遠レンズとは思えないほどコンパクトな鏡筒は約89mm(最大径)×147.5mm(全長)で、質量は755gとなっている。
従来のレンズと比べると全長で75mm、最大径約1mmの短縮、質量約545gの軽減を実現している。標準ズームのAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDとほとんど変わらない機動力を実現しているので、スポーツや風景、乗り物などはもちろん、ポートレートやスナップ撮影などでも気軽に使えるだろう。全長が短くなり、カメラバッグに縦に収納しやすい点も評価できる。
また、本レンズには従来モデルにはなかったVR機構を搭載しており、最大で4.5段分という補正効果を得られる。VRのモードの1つとして、SPORTモードも搭載。動きが激しい被写体に対して高速連写撮影を行う際に、センタリングを行わないことでファインダー像の連続性を重視したモードだ。実際に飛んでいる鳥などを撮影したが、連写時も像が安定し、ずれることがないためとても撮影しやすい印象だった。
AFには超音波モーターSWMを採用しており静粛性に優れ、スナップや近接で動体を撮ってもストレスなく撮影に集中できた。フォーカスリングもしっかりとトルク感がありMF時でもしっかりとピント合わせが行える。AF時に素早くマニュアルでピント調整ができるフルタイムマニュアル機能や、不用意にMFに切り替わらないようにするA/Mスイッチも搭載している。
また従来レンズはメカ連動方式絞りを採用していたが、本レンズでは電磁絞り機構を搭載している。そのためテレコンバーターと組み合わせた場合でも高精度な絞り制御が可能という。
レンズにはゴーストやフレアの低減に定評のあるナノクリスタルコートを採用。さらにレンズには埃、水滴、油、泥などが付着しにくいフッ素コートを採用している点も注目したい。
遠景の描写は?
描写力はレンズ中央から周辺まで全くと言っていいほど不満がない。D810の高画素にも耐えており、遠くで釣りをしている人の竿まで解像している。特にF8とF11はシャープさが際立つ。画像周辺は大きな乱れもなくしっかりと結像しており、マンションのベランダ柵などもしっかりと解像している。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
ボケ味は?
ボケ味は少し硬いイメージではあるが、開放F4とはいえ超望遠ならではの大きなボケを堪能できる。特に近接域のボケ感は素直で綺麗な印象。少し被写体から離れるとやや硬めになる。
絞りは円形絞りを採用しているが、シーンによってはは少しぎこちない丸ボケになることがあるので,
光源などの配置には配慮した方がよいかもしれない。
逆光耐性は?
ナノクリスタルコートを採用しているため、光源が画面外にある場合はフレアやゴーストなどは確認できない印象でコントラストも高い。画面内に太陽を入れた画像では少し光源の周りにPFフレアが確認できる。
また、夜の街を撮影した画像を見てみると信号機の光りの周りにリング状の色つきのPFフレアが写っているのがわかる。Capture NX-DのPFフレアコントロール機能を使うことで軽減できるとのことなので、気になる方は試してみよう。
作品
最短撮影距離は1.4mで最大撮影倍率は1:4.1倍となっている。おみくじを最短撮影距離で撮影したが、適度な大きさで捉えることができた。絞り開放ではあるが、おみくじの紙の質感までしっかり表現できてきる。
展望台から飛んでいた鳶を撮影した。VRをスポーツモードにして撮影することで連写撮影時でもストレスなく撮影できた。翼の質感までしっかりと表現できている。
太陽に照らされた葉が綺麗だったので撮影した。葉の繊維までシャープに表現できた。
花壇に植えてある花を撮影した。望遠のボケの効果は絶大で、まるで花畑で撮影したようだ。前ボケ、後ボケも自然で綺麗だ。
日向ぼっこしていた猫を撮影。毛の1本1本まで非常にシャープに描写しているのがわかる。ピント位置のシャープな部分からアウトフォーカスにかけても自然なボケ感を得られている。
まとめ
超望遠レンズとは思えないほどコンパクトで軽量な本レンズのお陰で機動力のある撮影が行えた。“望遠レンズ=重くて大きい”というイメージは良い意味で覆えされた。このサイズであれば、気軽に旅などにも持っていくことができそうだ。
軽量、コンパクトとは言え描写力は高く、ナノクリスタルコートやフッ素コートなど上位レンズに相応しいスペックに仕上がっている。望遠レンズに欲しいVR機構も搭載し、ストレスなく撮影できる点も本レンズの魅力だろう。