相栄電器「Photo ReColor」

~1枚のJPEGからHDR画像を作れるレタッチソフト

 HDR(ハイダイナミックレンジ)といえば、白トビや黒ツブレを低減し、見た目に近い写真に近づける手法。ものによっては現実を超えた印象深い表現になる場合もあり、特に海外でのHDR画像のファンは多い。

今回はPhoto ReColor 3D+を試用した

 今回、相栄電器が発売した「Photo ReColor」(フォトリカラー)は、1枚のJPEG画像からHDR画像を作成できる機能を持つフォトレタッチソフト。写真を選べば基本的にワンクリックでHDR画像を作ることができるなど、簡単な操作も売りになっている。価格は4,980円(ダウンロード版は3,980円)。

 3D変換機能が付いた上位版の「Photo ReColor 3D+」(5,980円、ダウンロード版は無し)とフィルタの数などを減らした機能限定版(HDR機能は搭載)の「Photo ReColor Light」(2,980円、ダウンロード版は1,980円)もラインナップしている。なお、Photo ReColor Lightはダウンロード版を3月18日にパッケージ版を4月8日にそれぞれ発売する。

 対応OSは、Windows XP/Vista/7。15日間試用できる体験版もダウンロードできるので試してみてほしい。

 基本的にフォトレタッチソフトなので、機能は非常に多岐に渡る。すべてをご紹介できないが、いくつかの特徴的な機能を見ていきたい。

ワンクリックでHDR画像ができる

 最近は本体でHDR画像を生成できるカメラもあるが、まだまだHDR画像を作るのは敷居が高い。というのも、一般的なデジタルカメラでHDR画像を作るには、撮影時に同一カットの写真を露出をずらして複数枚撮影しておき、パソコンで合成処理しなければならなかったからだ。特に複数枚の撮影には三脚が必要な点がネックとなり、手間がかかる上、動く被写体には対応できない。

 Photo ReColorでは、1枚の画像をHDR画像に変換するので撮影は通常通りで問題ない。そのため、今まで撮り貯めた写真もHDR画像に変換できるのがうれしい。また1度のシャッターで良いため、従来は難しかった動いている被写体にも対応できるのもメリットだ。

 では、Photo ReColorのHDR機能をさっそく試してみよう。

 変換は簡単だ。起動すると左側にフォルダツリーが現れるので、HDR画像にしたい写真を中央のサムネイルから見つけてダブルクリックする。画面上部に「HDR」のボタンが出るのでクリックするとダイアログウィンドウが開く。この状態で既にHDRの「ミドル」が設定されているので、後は「OK」をクリックすればできあがりだ。

起動すると「一覧」のセクションが表示される

 効果の強さを変えたい場合はライト、ミドル(デフォルト)、ヘビーから選択できる。さらに細かく設定したい場合は、カスタムを選ぶと写真の露出状態に合わせて効果を適用できる。また、効果の強度と彩度も任意に設定できる。

HDRのダイアログウィンドウ。左上の3つのボタンで簡単にHDR画像を作ることができる。プレビュー表示も充実していて1枚を左右や上下に分割して比較できるほか、2枚の同じ部分を比較することもできる。倍率も自在に変えられるカスタム設定では、写真の露出状態に合わせたHDR画像が作成できる。彩度を下げると自然な仕上がりになる

 手持ちの写真でいろいろと試してみたが、カスタムを使わずともライト、ミドル、ヘビーのプリセットのいずれかを選べば十分実用的だと感じた。ライトでは自然にダイナミックレンジを拡張する印象で、ヘビーになるといわゆる「ライトスムージング」を強くかけたような効果になりCG風の仕上がりになる。1枚のJPEGから作るため暗部がややノイズっぽくなるが、今回試した限りではさほど大きくプリントしなければ目立たないほどだ。

※サムネイルをクリックすると横800ピクセルにリサイズした画像を開きます。

※キャプションはHDRを作成した際のプリセットです。

元画像ライトミドルヘビー

 HDR画像に変換することで、露出がアンダーだったりコントラストの低い写真を救済するという見方もできる。天気の良くない日に撮った風景写真や逆光でアンダーになってしまった被写体などが見違えるようになる。こうした写真はトーンカーブなどで補正するのが本来のやり方だろうが、こうしてHDR機能を活用すると簡単に見栄えが良くなる。

 今回試してみたサンプルを以下に掲載した。順光の写真であってもHDR機能を使った方がより青空が青く、また木々も緑になる。また、影になってしまった部分を明るくする効果は高いようだ。

元画像ライト
元画像ライト
元画像ライト
元画像ライト
元画像ミドル
元画像ミドル
元画像ヘビー
元画像ヘビー
元画像ヘビー

 HDR画像を作成する専用ソフトは多くのパラメーターを設定可能で作画の自由度が高い反面、操作はやや煩雑になる。その点Photo ReColorは、通常と同じ撮影で手軽にHDR画像を作成できるのがポイントだろう。

3D写真も1枚の画像から作れる

 先述の通り、上位版のPhoto ReColor 3D+には3D変換機能が付いている。3D写真は一般的に視差のある2枚の写真から作るが、Photo ReColor 3D+は1枚の画像を3D画像に変換できる。方式は、赤青メガネで見る「アナグリフ」だ。

 この変換も簡単で、写真を選んでメニューから「2Dを3Dに変換」を選んで出てくるダイアログウィンドウで作成する。立体感の強度や彩度も調整できる。変換の処理は「引っ込む」と「奥行き方向に傾ける」から選択できる。

3Dへの変換ダイアログ。プレビューを見ながら強度や彩度などを調整できる「奥行き方向に傾ける」で作成したアナグリフ画像。写真の上部に行くほど奥まっ見える。つまり、“写真の上に行くほど空間的に奥である”という前提での3D化だ

 引っ込むと奥行き方向に傾けるはいずれも確かに立体には見える。ただ1枚の画像から変換するために、2枚の画像から変換した3D画像に比べるとどうしても立体のリアル感は低くなる点には注意したい。

Photo ReColor 3D+にのみ赤と青のセロファンが同梱されている。PDFのメガネフレームをプリントして赤青メガネが作れるようになっている

充実の補正機能

 続いて、フォトレタッチソフトとしてのPhoto ReColorを簡単に見てみたい。

 このソフトは、作業工程別に「一覧」、「補正」、「レタッチ」、「文字」というボタンで4つのセクションに分けている。基本的には左から順に処理を行なっていくワークフローなのだろう。

 一覧は画像を選択するためのサムネイルが並ぶウィンドウだ。Exif情報も参照できる。サムネイルをダブルクリックすると、補正セクションに移動する。

 ところで、一見似ている“補正”と“レタッチ”が別のセクションになっているのは、デジタルカメラユーザーにはありがたい仕様だ。というのも、おそらく写真を作品として仕上げる上で必要と思われる処理はほとんど補正セクションで賄えるようになっているためだ。

「補正」のセクション。写真の完成度をより高めるための補正やフィルターを適用できる補正セクションにはトーンカーブも装備。高度な調整が行なえる。よく使われる山形、谷型、S字、逆S字、ソラリゼーション、ポスタリゼーションといったカーブはあらかじめプリセットされている

 補正のセクションではスタンプ、覆い焼き、焼き込み、赤目補正といったツールのほか、トーンカーブ、カラーバランス、色温度、ノイズ軽減、手ブレ軽減、美肌フィルタなどのよく使う調整項目がまとめられている。さらに、ソフトフォーカス、モノクローム、露光間ズーム、クロスフィルター、ソラリゼーション。また、油絵、ちぎり絵、ステンドグラス、ペン画といったアート系のフィルターも補正セクションに含まれている。フィルタの種類は計115という。また、本格的なレタッチには必須のレイヤーやチャンネル別のマスク機能なども備わっている。

 レタッチのセクションは、いわゆるペイントソフトになっている。写真作品を作る上ではペイント機能はあまり出番がないかもしれないが、文字のセクションと合わせて年賀状を作ったりなどアイデア次第で活用できそうだ。こちらも、レイヤーとチャンネル別のマスクが利用できる。

「レタッチ」のセクション。いわゆるペイントソフト。レイヤーも使用できる「文字」のセクション。文字列を曲線に沿って配置したり陰をつけるといった装飾が可能

コストパフォーマンスは高い

 Photo ReColorは、新規にカンバスを作ることはできないなどデジタル写真の処理に特化したソフトだ。それだけに、各セクションに分けたユーザーインターフェースは写真加工に向いており使いやすい。

 フォトレタッチソフトとしてみても比較的低価格な方だと思うが、より色域の広いAdobe RGBやICCプロファイルの設定にも対応するなど基本的な部分もしっかりした作りだ。カラーおよびグレースケールを内部では16ビットで処理しているため、8ビット処理に比べて階調損失も抑えられる。レイヤーを使った合成など、プロ向けソフトの機能も含んでいる。

 HDR画像を試してみたかったユーザーにも好適だし、デジタルカメラの初心者がステップアップしてもそれに応えられる機能はほぼ揃っているように思う。レタッチソフトの購入を検討しているユーザーは、まず体験版で試してみてはいかがだろうか。




(本誌:武石修)

2011/3/17 12:07