“カラーマネジメント”というと敷居の高いイメージがあるが、いまでは簡単に取り組めるようになった。今回は、キャリブレーションシステムの老舗であるエックスライトの「ColorMunki Display」(カラーモンキーディスプレイ)をレポートしたい。
ColorMunki Display |
■ノートパソコンでも正しい色で
ColorMunki Displayは、プロ向けの「i1 Display Pro」に比べて、主にソフトウェア面で機能を抑えて価格を引き下げた製品。プロ写真家やデザイナーをターゲットにしているが、デジタルカメラで写真を楽しんでいるアマチュアにも利用できる。実勢価格は1万8,800円と、ディスプレイキャリブレーションシステムとしては比較的安価である。
測色器を使ったキャリブレーションというと、「高価なディスプレイを持っていなければ意味がないのでは?」と思いがちだ。だが、比較的安価なディスプレイやでもキャリブレーションを行なうと効果は一目瞭然。それまで不自然だった人物の肌色などが、自然に表示されるようになる。もちろん、ディスプレイ固有の色域が広がる事は期待できないが、要はディスプレイの白色点をきちんと調整するだけでも、自然な発色に近づくわけだ。
ColorMunki Displayの測色器はRGBフィルター式。回転する乳白色の拡散板が付いており、これを付けると環境光の輝度測定ができるようになっている。さらに、ディスプレイ表面の反射を測定してキャリブレーションに反映する「フレア補正」も備えている。なお底面に三脚穴があり、三脚と組み合わせるとプロジェクターのキャリブレーションもできる。
ColorMunki Displayの測色器 |
乳白色の拡散板は環境光の輝度を測定するためのもの | 底面には三脚穴もある |
拡散板を反転させるとディスプレイの測色レンズが出てくる | USBケーブルには重りが付いており、測色器をディスプレイに置いたときにバランスが取れるようになっている |
■ウィザード形式で作業は簡単
ColorMunki Displayのパッケージは、測色器、ソフトのCD-ROM、説明書からなる。キャリブレーションの作業自体はウィザード形式。インストールするソフトは、Webサイトからダウンロードした方が最新版の可能性が高いので、事前にチェックしておこう。
ディスプレイの表示モードはsRGBに設定しておく |
さて、実際のキャリブレーションに入る前に、ディスプレイやグラフィックカードで色調整をしている場合はニュートラルに戻しておこう。ディスプレイ自体の表示モードはAdobe RGB対応モデルでなければ「sRGB」にしておくと良いだろう。後はソフトを立ち上げて画面に従って進めていくだけだ。キャリブレーションの完了までは10分も掛からない。今回は「詳細モード」で試してみた。
ソフトを起動したところ | 「ファイル」から環境設定を選ぶ。光源タイプを間違えずに選んでおく |
デュアルディスプレイの場合は、キャリブレーションするディスプレイを選ぶ | 輝度はプリントに合わせることもできるが、今回はデフォルトの120cd/平方mを選んだ。環境によってはもう少し輝度を上げても良いかも知れない |
環境光とフレア補正もチェックを入れておく | 環境光の測定画面 |
続いて拡散板を反転するよう指示が出る |
すると、ディスプレイに測色器をセットするガイドがでる | 測色器をセットしたところ |
測色が始まるとディスプレイ自体の輝度調節を使って輝度を合わせるとの指示が出るので、グラフを見ながら近くなるように合わせる |
測定中はさまざまな明るさの色パターンが表示される |
測色が終わるとフレアの測定に移る。ウィザードを参考にセンサーを画面に向けて測定する |
フレアの測定が終わるとプロファイルが完成する。リマインダーの設定も可能 | いくつかの画像で適用前と適用後の表示を比較できる |
測色器をパソコンに繋いだままにしておけば、環境光を監視してプロファイルを自動的に修正することもできる |
■キャリブレーション前後で大きな違い
今回は、普段使っているデスクトップパソコンとノートパソコンの2つでキャリブレーションを行なってみたが、筆者的にはなかなか満足できるものだった。
さて、筆者が使っているデスクトップパソコン(Windows XP)のディスプレイは、三菱電機の「RDT261WH」(25.5型、ノングレア)。いささか年季の入ったモデルだが、視野角の広いIPSパネルを採用している。OSに入っているsRGBのカラープロファイル「sRGB Color Space Profile」では全体的に赤みが強かったが、キャリブレーション後は赤みが幾分取れてより自然になった。
デスクトップパソコンのカラープロファイル。この2つを切替えて画面を撮影した。選択されているのが今回作成したプロファイル |
ノートパソコンはASUSTeK Computerの「ZENBOOK」(13.3型、グレア、Windows 7)。こちらは、視野角が比較的狭いことからパネルはTNと思われる。購入当初から画面青っぽくて気になっていたが、今回のキャリブレーションでかなり自然な発色になった。
ZENBOOKのカラープロファイル。既定になっているのが今回作成したプロファイル |
なおWindowsでは、起動時に読み込まれたプロファイルがすぐに元に戻ってしまうことがある。実際に筆者のZENBOOKでこの現象が発生した。
ZENBOOK(13.3型) |
この解決策としては、キャリブレーションを行なうとスタートアップに登録されるプロファイル適用ソフト「XRGamma」を起動から少し時間を空けて起動させる方法がある。サードパーティー製の「Startup Delayer」というソフトを使うとこれを実現でき、筆者のZENBOOKでの問題は解決した。詳細はこちらを参照されたい。
■まとめ
ColorMunki Displayは2万円を切る価格ながらディスプレイとプロジェクターに対応するうえ、環境光輝度やフレアを測定してプロファイル作成に反映させることができるなど、このクラスとしては多機能と言えるだろう。これからキャリブレーションを考えている人は一考してみてはどうだろうか。
2011/11/30 00:00