写真展
写真展「GOCHO SHIGEO 牛腸茂雄という写真家がいた。1946-1983」
(フジフイルムスクエア)
2016年9月21日 15:00
新しい写真表現の豊穣期であった1970年代、その一翼を担う写真家として注目を浴びながら、36歳という若さでこの世を去った牛腸 茂雄という写真家がいました。
1946年、新潟県に生まれた牛腸 茂雄は3歳で胸椎カリエスを患い、長期間にわたって下半身をギプスで固定される生活を余儀なくされたことから成長が止まり、生涯、身体的ハンディとともに生きていくことになりました。10代からデザインの分野で非凡な才能を見せた牛腸の大きな転機となったのが、高校卒業後、デザイナーを志し進学した桑沢デザイン研究所での大辻清司との出会いでした。戦後美術史に重要な足跡を残した写真家・大辻は、新しい世代の礎となる才能を数多く見出した優れた教育者でもありました。「もしこれを育てないで放って置くならば、教師の犯罪である、とさえ思った」。その回想にある言葉通りの大辻の熱心な説得は、牛腸の心を動かし本格的に写真の道を歩む決意を固めます。
レンズを通して見つめる新たな世界を獲得した牛腸 茂雄は、憑かれるように創造の世界に没頭し、カメラ雑誌などに発表した作品が次第に評判を呼び、若い世代の写真家として注目されるようになっていきました。何気ない日常で出会った子どもたち、家族、友人... 静逸で淡々とした作品の奥からこちらを見つめる被写体のまなざしは、写真を通して「自分と世界との関わり」を探求し続けた牛腸 茂雄のポートレイトでもあります。その身体的ハンディゆえに「見ること」と「見られること」、「自己」と「他者」との関係性を意識することを強いられていた牛腸が世界を見るまなざしには、常に初めて世界をみたような初々しさと深い洞察が共存しています。
本展は、<日々><幼年の「時間(とき)」><SELF AND OTHERS>などモノクロ作品のシリーズから精選した約30点により「夭折の写真家」牛腸 茂雄の足跡をたどります。近年、再評価の新たな機運が高まる牛腸 茂雄が提示する世界は、見るものそれぞれの奥に眠る記憶を呼び起こし、静かで深い感動を呼ぶものと確信します。
FUJIFILM SQUARE 写真歴史博物館企画写真展 GOCHO SHIGEO 牛腸茂雄という写真家がいた。 1946-1983 開催のお知らせ : ニュースリリース|富士フイルム
会場・スケジュールなど
- ・会場:フジフイルムスクエア(写真歴史博物館)
- ・住所:東京都港区赤坂9-7-3東京ミッドタウン・ウェスト
- ・会期:2016年10月1日(土)〜12月28日(水)
- ・時間:10時〜19時
- ・休館:会期中無休
- ・入場:無料
「SELF AND OTHERS」上映会&飯沢耕太郎氏(写真評論家)講演会
・日時:2016年11月5日(土)13時30分~15時30分
・会場:フジフイルム スクエア 2F 特設会場
・料金:無料
・定員:150名(事前申込制)
申込は、電話、もしくはフジフイルム スクエア受付にて10月5日(水)10時から先着順で受付。
本展監修協力・三浦和人氏(桑沢デザイン研究所以来の友人、本展出品作品プリンター)によるギャラリートーク
・日時:2016年11月26日(土)14時~、16時~(各回約30分)
・会場:フジフイルム スクエア 写真歴史博物館
・料金:無料
事前申し込み不要。
作者プロフィール
1946年11月2日、新潟県南蒲原郡加茂町(現・加茂市)で金物屋を営む家に次男として生まれる。3歳で胸椎カリエスを患いほぼ1年間を寝たきりで送る。10代から数々の美術展、ポスター展などに入選。1965年、新潟県立三条実業高等学校を卒業後、桑沢デザイン研究所リビングデザイン科入学、その後、リビングデザイン研究科写真専攻に進む。1968年、同校卒業。デザインの仕事と並行して写真を撮り続ける。1977年、『SELF AND OTHERS』(白亜館)を自費出版。1978年、本写真集と展覧会により日本写真協会賞新人賞受賞。1983年、体調不良のため実家に戻り静養を続けるが、6月2日、心不全のため死去。享年36歳。2004年には回顧展「牛腸 茂雄 1946-1983」(新潟市立美術館、山形美術館、三鷹市民ギャラリー)が開催され、2000年には佐藤真監督によるドキュメンタリー映画「SELF AND OTHERS」が製作され大きな反響を呼ぶ。2013年、『こども』(白水社)、新装版『見慣れた街の中で』(山羊舎)が相次いで刊行された。