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大塚広幸写真展「Hello World」
(大阪ニコンサロン)
(2013/3/6 13:52)
作者は東京や都市という対象に特別な思い入れはない。しかし、たまたま写った写真はすごく輝きのある街になっていて驚いた。同時に浮遊感のある今の社会で、高度成長の惰性のようなエネルギーに齟齬感があるこの官庁や企業本社が集まる街は、つるりとした四角い建物が次々と建設されていて、その足元は洗練された商業施設や美しいエクステリアが広がり、すぐ隣にはバブルの時代に建てられた格調高い遺跡のような建物が入り交じる。
こういうハイブリッドな構成の街で、同じような箱に、同じような人々が吸い込まれ、吐き出されてくる様子に、このまま時代を謳歌して切り抜けていくような、緩やかな速度を感じるが、これは先ゆく国が見せる今日であり、強固な日常は突然あったのでなはなく、歴史の上にあるのだ。
作者の世代は、戦後の歴史を教科書でしか知り得ず、バブルの時代は知らない間に終わり、贅沢をしなければ適度に生きていけるシステムの恩恵を受けている。また、自由奔放に各々の世界観を作り、他者とのコミュニケーションも仮想空間へ移行して、共有する現実もどこかゲームのような世界で、次々に顕在化する社会の歪みに直面しても希薄感があり、具体的な敵もよく見えない。
こんなふうに、この街で働きながら生活をしているこの世代の多くは、社会の舵取りを担っていながら、何が正しくて何が悪なのか分からない中で右往左往している。
成り行き任せの今の社会に適合する表現とは何かと考えると、行き詰まりを行き詰まりとして見せるしかなく、写真を普通に撮るしかない。
本展のテーマは、こうした日常の現実をどこまでも引きずる宿命にある写真という閉塞的なメディアが、飛躍や越境に憧れて夢を見るものの、基本的なスペックは現実を捏造する事しかできないので、袋小路に入り込んでも捏造を過剰にくり返すという構造を露出することにある。
モノクロ40点。
(写真展情報より)
大塚広幸写真展「Hello World」
- 会場:大阪ニコンサロン
- 住所:大阪市北区梅田2-2-2 ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階
- 開催日:2013年3月21日(木)~2013年3月27日(水)
- 時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
- 休館:会期中無休