ニコン、2D画像を3Dにして共有できる「my Picturetown 3D」を発表

〜裸眼立体視対応のフォトフレームを貸与。Android OS搭載

 ニコンは26日、ユーザーが撮影した2D画像から生成した3D静止画や3Dコンテンツを裸眼立体視可能な専用フォトフレームに配信する会員制サービス「my Picturetown 3D」の受付を開始した。サービス開始はフォトフレームが会員の手元に届く2010年12月上旬から。

 3Dデジタルフォトフレーム「NF-300i」の貸し出し、my Picturetown上での静止画の3D画像変換、my Picturetownの機能を利用した3D画像の表示・共有および3Dコンテンツ(静止画、動画)の配信を行なう有料サービス。同社の画像共有・保存サービス「my Picturetown」で展開する。

 会員費は、年額1万9,950円、月額1,995円。会員費には毎月3枚までの3D変換サービスも含まれる。4枚目からは1枚あたり300円の追加料金となる。

1枚の2D画像から奥行きを擬似生成

 都内で行なわれた発表会では、同社映像カンパニー プロジェクトリーダーの大槻正氏が登壇。既存のmy Picturetownにおける「いつでもどこでも画像を楽しめる」というコンセプトを3Dでもできないか、という発想に基づき、my Picturetown 3Dにインターネット上で2D画像を3D画像に変換するシステムを用意したと説明した。

 インターネット上に変換システムを用意した理由は「3Dコンテンツは世の中に多くは存在せず、自分で撮影した映像を3Dにしてみたいと思っても実現できないのが実情」(大槻氏)という。

映像カンパニー プロジェクトリーダーの大槻正氏my Picturetown 3Dのキーワードは「3D」、「ネットワーク」、「Android」

 3D画像変換の仕組みは、一般に3D画像を生成する際に必要な「Z値」(奥行き)を擬似的に1枚の2D画像から生成するというもの。変換は基本的に自動で行なうが、変換が難しい画像で人間の手による調整が必要な場合は人間が行なう。所要時間は自動変換の場合で1-2分、人間の手による調整で、かつ混み合っている場合には数時間かかる場合もあるそうだ。

my Picturetown 3Dの概要

 my Picturetown 3Dの3D画像変換サービスで生成した3D画像は、my Picturetown内のユーザーフォルダに保存。インターネット経由で家庭のNF-300iに配信する。変換した画像はmy Picturetown 3Dの退会後もmy Picturetownに残るほか、ダウンロードすれば同じ3D画像フォーマットの対応機器(今後の3Dテレビなどを想定)で見ることもできるのではとしていた。

 料金については、「3Dフォトフレームが使えて、月に3枚の画像を3D変換できるのであれば『いいお値段』ではないかと思う」としていた。

 会員には3Dデジタルフォトフレーム「NF-300i」を貸与する。NF-300iは7.2型800×600ピクセルの液晶ディスプレイを搭載。3D表示はレンチキュラー方式。レンチキュラーレンズのサイズを半分とした「水平方向倍密度パネル」を採用することで、2D時、3D時ともに800×600ピクセルの解像度を実現する。

NF-300iをお披露目NF-300iの主な仕様
NF-300iが採用する液晶ディスプレイの構造NF-300iのメインメニュー画面
保存データとmy Picturetown上のデータのどちらを表示するか選択する保存データを選んだ場合のメニュー表示

 レンチキュラー方式を採用した理由は「写真を明るく美しく見せるため」。できるだけ明るい表示を目指し、約400cd/平方mの輝度を実現した。3D表示時のクロストークも少ないといい、視認性の高さをアピールしていた。

 NF-300iはOSにAndroid 2.1を採用。「将来的にいろんなアプリが搭載できる可能性を秘める」、「新しいサービスも載せられる可能性がある」(大槻氏)としていた。NF-300iを販売でなく貸与での提供とした理由も、拡張性の高いシステムを考えているためだという。会場に展示していたデモ機には、RSSリーダーや天気予報の表示機能を確認できた。

本体上部のボタン類側面にUSB端子を搭載。「将来の可能性として備えている」という
付属のリモコン起動画面も3D表示
発表会の開始と同時に受付をスタートしたNF-300i

 主な3Dの配信コンテンツとしては、プロカメラマンが撮影した3Dコンテンツを鑑賞したりフォトフレームの壁紙にできる「Nikon 3D Gallery」を用意。撮影画像を3Dにする際の参考にも利用できるとしていた。

 また、スペシャルコンテンツ「マグナムが見たTOKYO」を2010年12月から2011年2月末まで提供。写真家集団「マグナム・フォト」の写真家が撮影した「TOKYO」を3D化するもの。約半世紀前の写真など、撮り直しのきかない特別な瞬間の感動が3Dで蘇るという。

 3D動画コンテンツは「3D紀行 江ノ電で巡る 湘南・鎌倉 〜江ノ電全線開通100周年〜」、「3D紀行II 立体的台湾旅情」、「3D紀行III 南の楽園沖縄」などを用意するという。

 アプリケーションのプラットフォーム開放について大槻氏は「SDKのようなものの公開も検討している」とし、時期は未定ながら「近い将来」としていた。

発表会開始前の様子。何のための撮影かは来場者に知らされていなかった発表会終了後、3D画像に変換された画像を見ることができた

これから撮ることのできない写真を3Dに

 サービス紹介後は、コンセプターの坂井直樹氏が登壇。NF-300iおよび3Dにまつわるトークを行なった。まず坂井氏はNF-300iを使った感想として「メガネなしで見られる自由度」を挙げ、自身で撮影した写真を例として紹介。「改めて3Dにすると懐かしい」と感想を述べ、これから撮ることのできない写真を3Dにできる点を強調した。

坂井直樹氏坂井氏の撮影した写真も交えてトークを行なった

 3D対応カメラを用いるのではなく、2D静止画から3D画像を生成するコンセプトについては「機材に関係なく3D化できて嬉しい。(ユーザーにとって)ハードは少ない方が良い」としていた。既存のデジタルフォトフレームは「コンテンツの交換が面倒」(坂井氏)とし、PCから遠隔操作ができるメリットについても評価した。

 Android OSの良いところは、「多くのメーカーがハードウェアを作っている」点という坂井氏。優れたアプリをメーカーが共有すれば「生産の生態系」が生まれ、メーカーの思いもよらない使い方やアプリが登場することを一番の面白さとした。

 3Dにはかつてより関心があったという坂井氏は、立体表示したボタンを操作することでタッチパネルを汚さない「空中のUI」の構想についても説明。今後の可能性として、カーナビにおける「空間の表示」などのアイデアも挙げ、3D技術の今後に対する期待を述べてトークショーを締めくくった。

(本誌:鈴木誠)

2010/10/26 16:47