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「AFの時代に、何を撮るか」…アジア競技大会で若手育成キャンプが開催
指導はアフロ青木紘二氏 プロサポートの見学も
2026年10月2日 12:00
キヤノンとキヤノンマーケティングジャパンは、20代・30代を中心とした若手フォトグラファーの育成を目指す「キヤノン ユースフォトグラファーズキャンプ 2026」を、「第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)」の陸上競技を舞台に実施した。
8月にバスケットボール大会「BLACK SAMURAI」を舞台に開かれた前回に続く取り組みで、参加者10名のうち6名が前回からの継続組だ。今回は国際総合大会の撮影現場に入り、最新のフラッグシップ機材を手に、撮影から講評までの2日間を過ごした。
今回集まったのは、前回のBLACK SAMURAIを経験した6名と、新たに加わった4名の計10名だ。プロ野球、プロレス、ラクロス、バスケットボール、ライブなど、ふだん撮っている被写体は前回同様バラバラで、陸上競技を本格的に撮るのは初めてという参加者も多かった。
100-600mmまでを1本で
貸し出された機材は、キヤノンのフラッグシップ機「EOS R1」と「RF100-300mm F2.8 L IS USM」、そしてエクステンダー「RF1.4x」「RF2x」の組み合わせだ。
エクステンダーを装着すれば、1.4倍で140-420mm、2倍で200-600mmとなり、レンズ1本で100mmから600mmまでをカバーできる。スタンドから選手全体を入れた引きの構図を撮り、そのままゴール直前の選手のアップまで狙える構成だ。
会場のサポートブースを運営するキヤノンのスタッフによると、このレンズは今大会のプロカメラマンの間でも人気だという。今大会は既存の会場を活用しているため競技会場が各地に分散し、撮影ポジションも環境も会場ごとにまったく違う。400mm F2.8を1本担いで行っても、合うかどうかは賭けになる。ズームで対応できる100-300mmとエクステンダーの組み合わせなら、どの会場でも対応できるというわけだ。
ボディにEOS R1を選んだのは、夜の撮影を見据えてのことだ。EOS R1の有効画素数は約2,400万画素。高画素機に比べて高感度でのノイズを抑えつつ、十分な解像感を保てる。さらにカメラ内のアップスケーリング機能を使えば、画素数を4倍にできる。遠くの選手をトリミングしたときでも、納品に耐える画像に仕上げられるという。
AFの時代だからこそ、顔を見る余裕がある
講師を務めたのは、株式会社アフロ 代表取締役の青木紘二氏だ。
青木氏がプロになった1976年当時、カメラにAFはなかった。高速道路を走る車のナンバーを読み取る訓練で目を鍛え、時速140kmで滑り降りるアルペンスキーの選手も、あらかじめピントを置いて一発のシャッターで仕留める「置きピン」で撮ってきたという。
では、カメラの性能が高まった今、撮り方はどう変わったのか。青木氏によれば、ピントをカメラに任せられるようになった分、撮影者には選手の顔や表情をじっくり見る余裕が生まれたという。
一方で、カメラに任せきりにすると誰もが同じ写真になってしまう。露出も適正になり、思い切って暗くしたり明るくしたり、あえてピントを外したりすることを忘れてしまうと指摘する。
1998年の長野五輪では、AFのピントに飽きて、ジャンプの船木和喜選手を手動であえてピントをずらして撮ったこともあるという。
目の前に来たものをただ撮るのではなく、見えているもののどこを切り取るか。それが写真の基本中の基本だと青木氏は強調する。
先読みと、1日1枚の自分の写真
青木氏が陸上競技の撮影で強調したのが「先読み」だ。ゴールの瞬間を撮ったら終わりではない。ゴールした後に選手がどう動くのかまで予測して、カメラを向け続ける。
その例として挙げたのが、日本が銀メダルを獲得したリオ五輪の男子4×100mリレーだ。青木氏はレース後も「何が起きるか」と待ち続けた。そして、ウイニングランの後、ボルト選手が日本チームのもとに自ら歩み寄って敬意を示した瞬間を捉えた。
プロとしての心構えについても、話は具体的だった。撮るべきは「自分が良いと思う写真」ではなく「お客さんが欲しい写真」だという。そのうえで、「1日に1枚、自分はこれでいいという写真を撮ることを大事にしてほしい」と語った。
夕方、トラックで競技が始まると、参加者たちの表情が一変した。レンズの向こうの選手を無言で追い続け、エクステンダーを付け替えながら、種目ごとに画角を探っていく。
複数の種目が同時に進む陸上競技では、何をどこから撮るかの判断が欠かせない。講義で聞いた「先読み」を早速試していた参加者は、「公式大会はスケジュール通りに進むので、次の種目を見て『次はここかな』と動いていました」と語る。
機材についても、EOS R1への手応えを語る声が多く聞かれた。照明に頼る夜間の撮影でもAFが被写体を見失う不安はなく、安心して使えたという。ピントをカメラに任せられる分、自分が撮りたいカットに思い切って挑戦できた、と振り返る参加者もいた。
ただ、100-600mmまでをカバーできるズームならではの難しさもあったようだ。どの画角でも撮れてしまうからこそ、どこを切り取るのかを自分で決めなければならない。青木氏が説いた「どう切り取るか」という問いに、参加者たちは現場で向き合うことになった。
MPCで知った「ゼロダウンタイム」
2日目には、大会のメインプレスセンター(MPC)を見学した。MPCは、世界各国の報道カメラマンが集まる取材拠点だ。その中に、キヤノンのプロ向けサポート「キヤノンプロフェッショナルサービス(CPS)」のブースが設けられている。
CPSが掲げるのは「ゼロダウンタイム」。撮影できない時間をゼロにするという目標だ。修理センターをそのまま移設するように技術者、調整用の工具、部品を持ち込み、機材をぶつけて壊しても24時間以内に元通りにする。修理中も撮影が止まらないよう、同じ機材を代替機として貸し出す。機材のチェックや清掃の場合は1時間以内で実施するという。
機材は日本だけでは足りず、韓国、中国、シンガポール、オーストラリア、ドイツ、アメリカなど各国から集めた。スタッフも5カ国から集まり、利用者の9割以上が海外のカメラマンのため、英語での対応が基本だという。
修理担当のスタッフによると、今大会はぶつけて外装が割れた機材も持ち込まれ、途中で部品が足りなくなって取り寄せたほどだった。激しい雨に見舞われた日もあったが、「EOS R1は、雨濡れで故障したものは全然なかった」という。
講評会、そして「アマチュアリズムを忘れるな」
撮影を終えた参加者たちは、それぞれ3枚を選んで持ち寄り、青木氏の講評に臨んだ。
レース後にタイムを確認する選手の真剣な眼差しを狙った参加者には、「本人の個性が一番出る瞬間。いい狙いだと思います」。棒高跳びで、こちらを向いた一瞬の表情を捉えた参加者には、トリミングで目を中心に持ってくれば「目が生きてくる」と、その場で画面を使って示した。
海外選手を前ボケ越しに捉えたローアングルの1枚には、プロの現実を交えてこう評した。「日本のカメラマンは日本の選手を撮らなければいけないので、この写真は撮れないんですよ。長年仕事をしていると、こういう写真が撮れなくなる」。
最優秀作品に選ばれたのは、金野恵理氏の作品だ。青木氏は「光の取り方と、背景にカメラマンがいること。それを分かって撮っているのが、もうプロなんですよね」と評価した。「陸上で8ページ組もうと思ったら、これが表紙になりますよね」。
選考にあたっては、参加者のキャリアを考慮すべきかどうか悩んだという。だが最終的には、「皆さんのキャリアは全く無視して、プロの目で見てこれが1番という写真に決めました」と話した。
2日間を締めくくる総評で、青木氏が何度も繰り返したのが「アマチュアリズム」という言葉だった。
仕事になると、自分の作品を撮る機会は本当になくなってしまう。だからこそ、アフロに入ってくるカメラマンには「私たちはプロだけど、アマチュアリズムを絶対に忘れるな」と常に伝えているという。
そして、カメラの性能が飛躍的に高まった今だからこそ問われることがあると、参加者に投げかけた。「今はカメラが勝手に撮ってくれる。その上で、自分に何ができるかを考えなければいけない時代になってきています」。
キヤノンマーケティングジャパン プロフェッショナルカメラマーケティング部部長の市川寛明氏は、同じ夢を志す仲間として、今回のキャンプを通じて、同じ夢を志す仲間のつながりも作ってほしいと参加者に呼びかけていた。前回から続く6名と、新たに加わった4名。国際大会の現場を共にした10人のつながりが、次の現場でどう生きるのか楽しみだ。




















