栂本彌一郎写真展「猫と女と男 -滞留する街-」(新宿ニコンサロン)



昼下がり、路地を駆け抜ける猫を追う。

振り返ると、若い頃の話を楽しげに話す声がする。

自らの軌跡を肴にカップ酒を呷りながら、

腐葉土のような居心地の良さに身をゆだねる男たちがいる。

ぼんやり漂いながら、相槌を打つ女たちがいる。

こんな景色をこの街で、今まで何度見かけたことだろう。

時が経ち、住む人は変わっても、この街だけは変わらない。

 

ここ数年、この街の通りで、広場で、酒場で、

たくさんの人たちと知り合い、記憶とフィルムに定着させてきた。

澱んだ時間の中、偶然出会った人たちと温もりを確かめ合っていると、

どこか懐かしい空気を感じることがある。

ふと気がつけば黄昏。妙に切なく人恋しくさせるこの街の黄昏は、

過去への帰り道なのかもしれない。

戦前戦後を駆け抜けてきた私は、今も共感できるこの街が限りなく好きだ。

 

そしてまた、私はシャッターを切る。

ファインダーの向こうには、今日も、猫と女と男。

 

カラー40点。

(写真展情報より)

  • 名称:栂本彌一郎写真展「猫と女と男 -滞留する街-」
  • 会場:新宿ニコンサロン
  • 住所:東京都新宿区西新宿1-6-1新宿エルタワー28階
  • 会期:2012年10月2日〜2012年10月15日
  • 時間:10時30分〜18時30分(最終日は15時まで)
  • 休館:会期中無休

(本誌:折本幸治)

2012/9/14 00:00