第13回三木淳賞受賞作品展 添田康平「Not yet refugees」(ニコンサロンbis新宿)



タボサンは唐辛子の瓶を丸ごと口の中に入れる。それを見る度に僕は大きく笑う。
タボサンは汗をかき、涙を浮かべる。きっと、タボサンにとってもそれは大変な事なのだろう。ただ、僕を楽しませてくれているのかもしれない。
ある日、タボサンと連絡が取れなくなった。僕はタボサンの立場を知っているから不安になった。
僕とタボサンがあったのは二年前。ミャンマー人の友達のゾウが紹介してくれた。タボサンさん。ゾウはそう言って少し笑った。
タボサンは難民だ。正確には難民の申請中だ。でも、僕とタボサンの間柄にはあまり重要なことではない。ただ一緒にいたいだけなのだ。
タボサンは僕と会う少し前まで入管の収容所に8ヶ月収容されていた。僕達はその時出来た友達の所を訪ねに行く。神奈川や山梨、栃木に群馬。皆、仮放免という一時的な保釈状況にいる。何年も申請し続ける者も少なくない。そして、いつまた収容されるかわからない。
ガラスに仕切られた部屋にタボサンが来る。
「スリランカの家族に電話してる?」と聞くと、「してる」と答えた。「でも、収容所に入ったことは秘密にしてて普段と変わらない」と、答えた。タボサンは母親が心配するからから、と?をついた。
タボサンが写っている写真を毎回差し入れた。タボサンはゆっくり写真を見て、ニコニコしている。「ありがとう」タボサンは僕に言う。
その内、家に入管から手紙が届くようになった。封筒の中には手紙の他に絵も添えられている。ヘンテコな絵だけど、毎回僕を楽しませてくれる。モノクロ30点。(写真展情報より)

  • 名称:第13回三木淳賞受賞作品展 添田康平「Not yet refugees」
  • 会場:ニコンサロンbis新宿
  • 住所:東京都新宿区西新宿1-6-1新宿エルタワー28階
  • 会期:2011年11月29日〜2011年12月5日
  • 時間:10時30分〜18時30分(最終日は15時まで)
  • 休館:会期中無休


(本誌:折本幸治)

2011/11/15 00:00