銀座ニコンサロン、糸井潤写真展「Cantos Familia」


 銀座ニコンサロンは、糸井潤写真展「Cantos Familia」を2月16日から開催する。


昨年、作者の父親が死んだ。家の近所にある森の木にザイルをかけて。
長いあいだ糖尿を煩っていたが、直前の鬱に、家族は気付いていなかった。準備しておいたメモ書きを、財布に差し込んで置き去り、行方をなくした。近所の森で見つけるまで、皆で五晩、四日と捜した。
この経験から、森、の存在が作者にとって大きなものとなった。
フィンランドの光には独特の資質がある。日本の霞がかかった光や、アメリカで見られる硬質な光とも異なる。その地の森にて、地面に落ちた光を見ては、光の筋を、現世とあの世を分ける三途の川のように「隔てるもの」と重ね合わせる。それらをフィルムに焼き付けるために森の中をさまよい、地面に落ちている光を拾い歩く。
デジタル、銀塩の別なく、光と影は「写真」の要素として存在する。光と影、または生と死との狭間に存在する「何か」が、撮影という行為の中、強烈な視覚言語となって現れ、訴えかけてくる。
太陽光が月光に見えることもある森の深い中、場所によって変わる光と影の比率のせいで、昼間なのか、夜なのかという感覚が、時に交錯する。このような経験が、こちら側である現世においての、自身の存在に対する問いかけへとつながる。
「森の概念」は、自分の記憶へと通ずる。記憶への熟考は、常に制作への土台となってきた。そして今、父親の急な死によって、自身と家族との記憶が堰を切って溢れ出てくる。
作者にとって、写真とは詩である。一枚の写真は、ひとつの言葉となりうる。これらの写真は、父と作者、そして家族との対話の中にある言葉でもある。カラー12点。

(写真展情報より)

  • 名称:糸井潤写真展「Cantos Familia」
  • 会場:銀座ニコンサロン
  • 住所:東京都中央区銀座7-10-1 STRATA GINZA (ストラータ ギンザ) 1階・2階「ニコンプラザ銀座内」
  • 会期:2011年2月16日〜2011年3月1日
  • 時間:10時30分〜18時30分(最終日は15時まで)
  • 休館:会期中無休

 2月26日にギャラリートークを行なう。時間は15時〜16時。

(本誌:折本幸治)

2011/2/2 00:00