デジカメ Watch

【伊達淳一のデジタルでいこう!】

実売25,000円以下! エントリーモデルの実力(後編)
Reported by 伊達 淳一

 前回に引き続き、実売25,000円以下で買えるエントリーモデル6機種について検証していくが、今回は、もっとも気になる“写り”を比較していこう。とはいっても、コンパクトデジカメの大半は、撮像素子サイズが1/2.5型以下になってしまっていて、わずかな画質の優劣を比べてもむなしいだけ。

 それよりも、あれこれカメラを操作したり設定を変えなくても、単にカメラを被写体に向けてシャッターボタンを押すだけで、どれだけキレイに写るか? という観点で実写テストを行なってみた。


オリンパス CAMEDIA FE-150 キヤノン PowerShot A430 キヤノン PowerShot A530

ニコン COOLPIX L3 松下電器 LUMIX DMC-LS2 富士フイルム FinePix A500

風景(定点撮影)

 風景の実写比較をするなら、“実写速報”の定点撮影場所がいいだろうということで、編集部に撮影ポイントを教えてもらったのだが、樹木の葉が生い茂ってきたのを避けるため、通常よりもやや右寄りのポイントから撮影している。撮影モードはフルオート、もしくはプログラムオートで、露出補正やホワイトバランスによる補正は行なっていない。

 晴天順光、標準的な反射率のシーンということで、どの機種も露出レベルは問題なし。ズームワイド端もテレ端も、ほぼ適正露出が得られている。


CAMEDIA FE-150

PowerShot A430

PowerShot A530

COOLPIX L3

LUMIX DMC-LS2

FinePix A500

 廉価モデルにもかかわらず、レンズ性能はかなりまともで、ワイド端ではごく周辺部を除けば像の乱れもなく、1/2.5型機としてはなかなか優秀な写りだと思う。テレ端にズームすると、どの機種も多少コントラストが低下しキレが悪くなるが、PowerShot A430とA530は光学4倍ズームにもかかわらず、画質の低下が少ないのは見事。一方、FE-150はちょっと甘めの描写になってしまう。

 もっとも違いが出たのは、青空の発色だ。COOLPIX L3は、彩度が高めでシアンが強く、松下電器 LUMIX DMC-LS2はマゼンタが強めの青空だ。また、コントラストが低下するテレ端では、PowerShotの2機種は、青空がグレーに濁ってしまっている。撮影日時は4月20日午後3時過ぎで、正午の光に比べれば少し色温度が低めだが、冬の光に比べればまだまだ黄色みは少なく、肉眼では澄み切った青空に見えた。

 ちなみに、データをメモリカードにコピーして、エプソン Calario PM-A890でダイレクトプリント(オートフォトファインEX)してみたところ、どの機種で撮影した写真も青空の彩度が高めになり、PCのディスプレイで見るよりも差異が少なくなった。


ポートレート

 コンパクトカメラで外せない被写体が、記念写真やファミリースナップなどの“人物”。フィルム時代から“肌がキレイに写る”というのは写真にとって重要なポイントだ。

 しかしデジカメにとって、“肌色”は再現がむずかしい色だ。肌の色は彩度が低く、それをそのまま再現したのではくすんで見える。といって、肌の彩度が高く再現されるように味付けすると、チューリップなど彩度の高い赤が飽和して絵が破綻してしまう。しかも、AWB(オートホワイトバランス)にとっても、肌色は精度を狂わす紛らわしい被写体で、白がほとんどないシーンに肌色があると、肌を無彩色だと勘違いして色補正をかけてしまい、肌が青っぽく写ってしまうこともある。

 今回は、基本的な肌色再現をチェックするために、やや顔を大きめに撮影してみた。露出補正やホワイトバランスなどの手動補正は行なわず、フルオートもしくはプログラムAEで撮影している。肌色だけでなく、背景の芝生の緑、ピンクや黄色のチューリップ、紫色の花の発色の違いも着目すべきポイントだ。


CAMEDIA FE-150 PowerShot A430

PowerShot A530 COOLPIX L3

LUMIX DMC-LS2 FinePix A500

 6機種で撮影した写真を並べてみると、COOLPIX L3だけはグリーンが強めで、芝生の緑はもっともみずみずしく再現されてはいるが、肌の色が濁って見える。L3の写真1枚だけ見ればそれほど不自然ではないものの、他機種と並べると肌の色が渋く見える。

 LUMIX DMC-LS2は、肌の色が少し赤っぽいものの、記憶色的には好まれる発色だ。また、FE-150は、シャープネスが低めでカリッと感には欠けるものの、その分、肌の荒れが他機種よりも目立ちにくい。肌も明るめに写っているので、女性からしてみれば好ましい再現だ。ただ、芝生や葉っぱの緑が少々くすみがちで、枯れかけたように見える。緑のみずみずしさに欠けるという点では、LUMIX DMC-LS2もFE-150と似た傾向だ。

 ちなみに、シーンモードのひとつに“ポートレート”モードを搭載している機種も多いが、シーンを選ぶのにメニューを操作しなければならない機種では、せっかくの機能も埋もれがちだ。そもそも、このクラスのコンパクトカメラは手軽さが命だ。ミノルタ DiMAGE F100のように、カメラが撮影シーンを自動判別して、適切な撮影モードに切り換えてくれるのが理想だし、せめてメニューではなくダイアルで撮影モードを切り換えられなければ、よほどのことがない限り使おうとは思わない。使われない機能は“ない”のと同じだ。

 PowerShot A530は、モードダイヤル上に“ポートレート”、“風景”、“夜景(ポートレート)”の3つのポジションが単独で設けられている。また、LUMIX DMC-LS2は、ダイヤルにシーン1とシーン2があり、自分が使いたいシーンプログラムをそれぞれ設定しておける。ちなみに、Exif Printで規定されている撮影シーンタグは、“標準”、“風景”、“ポートレート”、“夜景”の4種類。

 こうした情報がExifに記録されることで、プリンタ側の自動処理も多少変わってくる可能性がある。そのため、シーンモードで撮影すると、見た目の画質は変わらなくてもプリント結果が変わってくることもある。Exif Printの恩恵を受けるためにも、主要なシーンモードは簡単に切り換えられるようにするか、カメラが自動判別するようにしてほしいものだ。

 さて、シーンモードが簡単に選べるPowerShot A530とLUMIX DMC-LS2の2機種で、ポートレートモードの効果を試してみたところ、いずれも露出が明るめになり、顔が明るく再現された。また、LUMIX DMC-LS2には、人物モードのほかに、美肌モードというシーンモードもあるが、これは肌色部分のシャープネスを低めにすることで、肌の荒れを必要以上に目立たせないようにするモードだ。女性を写すときには、こうしたモードを利用する心遣いも必要だろう。


PowerShot A530 ポートレートモード LUMIX DMC-LS2 ポートレートモード

LUMIX DMC-LS2 美肌モード

半逆光シーン

 写真の失敗でもっとも多いのは“露出不足”。撮りたい被写体(主被写体)に比べ背景が明るかったり(逆光)、主被写体自身の反射率が高く、明るい服などを着ていたりすると、カメラの露出計がそれらの明るさに惑わされて、露出がアンダーになってしまうのだ。カラーネガなら多少露出レベルが違っても、プリント時にキレイにプリントできるが、デジカメはリバーサルフィルム並にシビアな露出精度が求められる。

 こうした失敗を防ぐには、露出補正を使って露出レベルを明るめにしたり、内蔵ストロボを発光させて、主被写体と背景の輝度差を補うのが基本。とはいえ、誰もがこうしたカメラの機能を使いこなせるわけではないし、お手軽カンタンのコンパクトカメラなら、撮影シーンを自動的に判断し、こうした失敗を未然に防げるのが当然。百歩譲って手動で操作しなければならないとしても、せめてカメラ本体に“逆光補正ボタン”くらいは備えていてほしいものだ(昔のコンパクトカメラには、ちゃんと逆光補正ボタンが備わっていたものだ)。

 逆光補正ボタンを押しながら写すと、ストロボ発光がオンなら“デーライトシンクロ”、ストロボ発光禁止なら、単にプラスの露出補正を行なうだけでなくガンマ特性も変えて、できるだけ背景を白飛びさせずに中間調からシャドー部を持ち上げる、といった“デジタルならではの逆光補正”があって然るべきだ(特にエントリーモデルには必須の機能と思う)。


CAMEDIA FE-150 ストロボ発光

PowerShot A430 ストロボ発光

PowerShot A530 ストロボ発光

COOLPIX L3 ストロボ発光

LUMIX DMC-LS2 ストロボ発光

FinePix A500 ストロボ発光

 今回、ピックアップした6機種で“逆光補正”機能を備えているのは、LUMIX DMC-LS2だけ。背面の十字キーを上方向に操作すると、通常は“露出補正”になるのだが、ハートマークのフルオートモード時だけ“逆光補正”になる。LS2以外の機種は、露出補正を活用するか、シーンモードの“逆光”などを選ぶ必要がある。

 さて今回は、背景が少しだけ明るい“弱い逆光シーン”で比較テストを行なってみたが、内蔵ストロボを自動発光にしていても、ストロボが発光した機種は1台もなく、すべて露出アンダー気味に写ってしまった。背景との輝度差がさほど大きくはないので、レタッチすればなんとか救済できるレベルだが、それでもこうしたシチュエーションで内蔵ストロボが自動発光しないのでは、なんのための内蔵ストロボかと思ってしまう。

 ライブビューを行なっているのだから、主被写体と背景の輝度差くらいは見極めようと思えば見極められるはず。主被写体が暗めに写ってしまう可能性があり、被写体までの距離が内蔵ストロボ照射範囲にあるなら、もっと積極的にストロボを自動発光させて、デーライトシンクロをしてほしいものだ。

 仕方がないので、内蔵ストロボを強制発光に手動で切り換えて、デーライトシンクロをしてみたところ、どの機種もまずまずの結果が得られたが、FE-150は内蔵ストロボがやや強めで、顔が白飛びギリギリだ。COOLPIX L3は内蔵ストロボは控えめで、少し逆光の雰囲気を残しているが、肌の色がちょっとくすんで見える。これ以外の機種は、コンパクトカメラのデーライトシンクロとしては上出来だ。手動で強制発光に切り換えなくても、自動発光でちゃんとデーライトシンクロして、失敗なくキレイに撮れるのが、フルオートモード本来の姿ではないだろうか?


暗所でのストロボ、ノーストロボ撮影

 屋外の順光ではどのデジカメもそこそこキレイに写るが、性能の差が問われるのが、光量が不足する室内での撮影だ。そこで、電灯光照明の室内で、ストロボとノーストロボ撮影での写りをチェックしてみた。


CAMEDIA FE-150 オート ブレ低減モード 夜景ポートレート

PowerShot A430 オート スローシンクロ

PowerShot A530 オート 夜景ポートレートモード

COOLPIX L3 オート スローシンクロ 夜景ポートレート

LUMIX DMC-LS2 オート スローシンクロ 夜景ポートレート

FinePix A500 オート スローシンクロ 夜景ポートレートモード

 フルオートモードでは、(当然のことながら)どの機種もストロボが自動発光するが、ストロボ特有の青みも少なく、なかなかキレイな写りだ。ただ、電灯光の暖かみはほとんど消し飛んでしまっていて、テレビの画面も暗めに写っている。Exifをチェックしてみると、LUMIX DMC-LS2とFinePix A500、FE-150はシャッタースピードが1/30秒で、PowerShot A530とA430、COOLPIX L3は1/60秒で撮影されている。

 シャッタースピードが低めのほうが定常光(この場合は電灯光)も拾いやすく、背景の落ち込みは少なくて済むが、手ブレや被写体ブレの危険は増大する。どちらの仕様が好ましいかは撮影状況次第だろう。なお、FE-150は、感度やホワイトバランスはすべてオート固定で、感度を手動で変えることができないが、ブレ低減モードにすると感度が高めになり、通常のプログラムAE時にはISO125なのに対し、ブレ低減モードではISO250になり、シャッタースピードも1段速い1/60秒にアップしている。

 ちなみにストロボの発光モードを“スローシンクロ”にすれば、シャッタースピードが遅くなり、定常光の明るさを積極的に活かすことができる。ただ、スローシンクロにするとシャッタースピードはかなり遅くなり、ストロボ光で撮影された像はピタリと止まるが、定常光で写った部分がブレてしまい、「部分的に止まり、部分的にブレた」写真になりやすいので、撮る側も撮られる側もブレないようにしっかりと静止して撮影する必要がある。

 LUMIX DMC-LS2は1/2秒と手ブレ限界を超えたスローシャッターになっているが、光学式手ブレ補正の恩恵でビックリするほどピタッと止まっている。また、FinePix A500は、感度がISO200と高く、1/15秒としっかり構えればなんとか手ブレしにくいシャッタースピードなので、スローシンクロでもブレにくいのが特長だ。

 機種によっては“フルオート”ではスローシンクロに設定できない機種も多く、プログラムAE、もしくは夜景ポートレートモードに設定する必要がある。PowerShot A430はプログラムAE時にスローシンクロを選択できるが、PowerShot A530は夜景ポートレートモードにしないとスローシンクロにできない。同じメーカーのほぼ同じクラスのカメラなのに、ちょっと不思議な仕様だ。


 さて撮影シーンによっては、ストロボ撮影が禁止されている、もしくははばかられるシーンもある。こういうときには、ストロボ発光モードを“発光禁止”にして撮影するが、当然、シャッタースピードは極端に遅くなる。こうした状況でできるだけ速いシャッタースピードを切るには、開放F値が明るいワイド側にズームし、感度もできるだけ高めに設定するのが基本だ。しかし、しつこいようだが手軽さが命のコンパクトカメラで、いちいち手動で感度を設定し直すのは面倒だ(もしくはそういった操作を知らないユーザーも多い)し、高感度に設定したまま元に戻すのを忘れ、明るいシーンでも高感度で撮影し、ノイズが多くなってしまうという危険性もある。

 そういう意味では、感度オートでストロボ発光禁止にしている場合は、積極的に感度アップし、手ブレを防ぐべきだ。最近になって、ようやく感度オートで積極的に感度アップする機種が増えてきているが、まだまだ感度アップが控えめな機種が多い。とはいっても、高感度では見るに堪えないほど盛大にノイズが出まくる、というのも考え物で、あくまで実用に耐える高感度画質を確保した上で積極的に感度アップしてくれないと困る。

 そこで、ストロボ発光禁止にして感度オートでどこまで感度アップするかをチェックすると同時に、手動で感度設定できる機種に関しては、ISO400でも撮影してみた。ほとんどの機種は、感度オート時の最高感度はISO200どまりで、FE-150だけが通常のプログラムAE時にISO250まで、ブレ低減モードにするとISO320までアップする。

 確かに、ノイズによる画質劣化を考えるとISO200というのは妥当な線ではあるが、ノイズはそこそこで手ブレした写真と、ノイズが目立っても手ブレが少ない写真と、どちらがユーザーにとって望ましいのだろう? そう考えると、少なくともフルオートモード時にはISO400まで感度アップしてもいいのではないだろうか? 特に、PowerShot A530やFinePix A500は、ISO400でもそれほど酷い画質ではない(あくまで1/2.5型クラスのデジカメとしてだが……)ので、感度オートでISO400まで感度アップしてもいいのではないかと思う。


CAMEDIA FE-150 ISO400 AUTO ブレ低減モード

PowerShot A430 ISO400 ISO AUTO

PowerShot A530 ISO400 ISO800 ISO AUTO

COOLPIX L3 ISO AUTO

LUMIX DMC-LS2 ISO400 ISO AUTO

FinePix A500 ISO400 ISO AUTO

夜景

 フィルムだと、フィルム代や現像料、プリント代が気になって、うまく写らないかもしれない写真はあまり撮らなかったが、デジカメは撮影のためのランニングコストがかからないので、とりあえずダメもとで気楽にシャッターを切れるし、撮影結果も液晶モニターですぐわかる。これまで銀塩コンパクトでは撮らなかったようなシーンも、デジカメでは積極的に撮ることが多くなってきた。

 夜景もそのひとつ。銀塩コンパクトでも夜景は撮れないことはないのだが、やはりデジカメのように、液晶モニターで写りが確認できるのとできないのとでは大違い。しかも、デジカメにはAWBがあって人工光源の色カブリを自動的に補正してくれるので、結構見た目に近く撮れるのもイイ点だ。

 今回、被写体に選んだのは、東京・浅草の雷門。夜になるとライトアップされて、昼間以上に見映えがする。今回は小型三脚を使って撮影しているが、これくらいライトアップされていれば、ワイド側にズームしてしっかり構えれば1/15秒前後のシャッタースピードは確保できるので、なんとか手持ちでも撮影可能だ。


CAMEDIA FE-150 夜景モード

PowerShot A430 夜景モード

PowerShot A530 夜景モード

COOLPIX L3 夜景モード

LUMIX DMC-LS2 夜景モード

FinePix A500 夜景モード

 また、夜景(ポートレート)モードで写りがどう変わるのかもチェックしてみた。PowerShot A430は、露出も感度もまったく変化がなく、Exifの撮影シーンに“NIGHT”と記録されているのが唯一の違い。同じPowerShotでもA530は、夜景ポートレートモードでは感度が低くなり、シャッタースピードが1/15秒から1/5秒へと遅くなっている。

 一方、ちょっと変わっているのがCOOLPIX L3で、夜景モードにすると露出レベルがかなり低めになる。夜景は暗めに、という設計思想なのだろう。夜景モードで暗めに写るのは、富士写真フイルムFinePix A500も同様だ。

 LUMIX DMC-LS2とFE-150は、通常のプログラムAEでは電灯光の赤みを積極的に補正するのに対し、夜景ポートレートモードでは電灯光の赤みを残していて、露出レベルではなくホワイトバランスを変えている。


マクロ(最大撮影倍率)

 コンパクトデジカメはマクロ撮影にめっぽう強い。銀塩コンパクトの光学ファインダーは近距離撮影になるほどパララックス(視差)が大きくなるので、ファインダーで被写体をど真ん中に入れて撮影しても、実際に写った写真は狙った被写体が画面中心から大きく外れ、全然別の構図で撮影されてしまうし、ピントもなかなか合わなかった。

 しかし、コンパクトデジカメは、撮影レンズで捉えた像をそのまま液晶モニターに表示しているので、近距離の撮影でもパララックスがなく、一眼レフ以上に正確な構図で撮影できるのが魅力。おまけに、最大撮影倍率も高く、名刺を画面いっぱいに撮れるのは当たり前で、最近の機種はCFを画面いっぱいに撮れる機種も珍しくはない。

 今回、ピックアップした6機種も例外ではなく、どの機種もCFをほぼ画面いっぱいに撮れる能力を持っている。もっとも撮影倍率が高かったのは、意外にももっとも実売価格が安いキヤノンPowerShot A430だ。A430には、通常のマクロモードのほかに“スーパーマクロ”モードがあり、撮影モードがMポジション時にFUNCボタンで切り換えることができる。このスーパーマクロモードではレンズがワイド端に固定され、ズームはデジタルズームのみ、ストロボも発光禁止となるが、デジタルズームなしでも驚くほどアップで撮影できる。画面周辺ではそれなりにレンズ性能が落ちているが、それでもここまでマクロに強いとはちょっと意外だった。


PowerShot A430 スーパーマクロ

PowerShot A530 CAMEDIA FE-150

COOLPIX L3 LUMIX DMC-LS2

FinePix A500

 また、ほとんどの機種はズームのテレ端よりもワイド端のほうが、最短撮影距離での撮影倍率が高かったが、ニコンCOOLPIX L3だけはズームテレ端で最大撮影倍率が得られるようだ。テレ側にズームした方が撮影距離が離れるので、カメラや撮影者の影が被写体に入りにくくなるが、カメラブレや手ブレしやすくなる。お手軽にマクロ撮影が楽しめるのは、ワイドで寄れる機種だ。

 ほとんどの機種は、通常モードとマクロモードを切り換えるようになっていて、マクロモードにしないと近距離の被写体にピントが合わないし、マクロモードにすると遠景にピントが合わない、という機種も多い。

 しかし、使う側にしてみれば、これは不親切な仕様だ。メーカーからしてみれば、通常モードとマクロモードを分けることで、AFの迷走や合焦スピードの高速化を図ることができるというメリットがあるのだろう。確かに、その意味はわかる。しかし、あらかじめ設定された範囲内にピントが合う被写体がなければ、融通を利かせて、ピントを合わせられる範囲全体を再スキャンするくらいの配慮があってもいいのではないだろうか?(確かカシオのデジカメがそんな仕様だったと記憶しているが……)。

 少なくともフルオートモードでは、マクロモードを意識せず使えるシームレスマクロが望ましいと思う。実際、公園などで撮影していると、デジカメで花を撮ろうとして四苦八苦している人を見かけることがある。実際、うちの父親や母親にもデジカメを渡して、マクロモードの説明もしているのだが、いざ撮影となるとマクロモードのことなど忘れ、花にピントが合わず、ピンぼけの写真を量産していたりする。

 ちなみに、COOLPIX L3はマクロモードのままでも無限遠の被写体にピントを合わせることが可能だ。また、LUMIX DMC-LS2は、撮影モードダイヤルにマクロポジションがあるが、フルオートモードでも最短撮影距離はマクロモードと同じだ。


総論

 実売25,000円未満の6機種で、代表的なシーンを撮り比べてみたが、想像以上にまともに写るのに驚かされた。廉価なモデルとはいえ、レンズ性能に手抜きはなく、ごく四隅を除けば像の乱れも少なく、夜景やマクロ撮影もそつなくこなす。コストパフォーマンス的には、かつての銀塩コンパクトになんとか追いついてきたのではないだろうか?

 ただ、最大の不満は液晶モニターだ。FE-150を除き、画面サイズは小さいし、液晶の解像度も低すぎる。いくら廉価モデルとはいえ、最低でも11.5万ピクセルは確保してほしいところだ。画面サイズもできれば2型よりも2.5型のほうがメニューやステータス表示が見やすくてイイ。

 液晶モニターはコストがかかる部分なので、この価格帯のデジカメにこうしたことを望むのは酷だが、FE-150が2.5型で23万ピクセルという液晶モニターを搭載して、2万円前後の実売価格を実現しているのだから、決して夢物語ではないはずだ。

 また、写りについては、1/2.5型クラスのコンパクトデジカメとしては水準を満たしていると思うが、露出の精度についてはまだまだ改善の余地がある。特に、逆光、半逆光時のストロボ自動発光(フィルイン・ストロボ)や、逆光補正の手軽さなどは、エントリークラスのデジカメだからこそ、もっと工夫・改善してほしい部分だし、感度オート時の感度アップの度合いや感度の上限も“確実に写る”ことを優先して設計してほしいと思う。

 本来、コンパクトデジカメは、銀塩コンパクトと同様、シンプルな操作で失敗せず撮れるのが“いいカメラ”だ。しかし、現在のコンパクトデジカメは実に多機能で、さまざまな機能が搭載されているが、その一方で、逆光補正やマクロ、セルフタイマーなど、コンパクトカメラとして、ごく基本的な操作性がおろそかになってはいないだろうか?

 確かに、デジタル一眼レフが数百万円していたデジカメの黎明期には、コンパクトデジカメに一眼レフの代替品としての機能や性能を求め続けてきたし、メーカーもこうした要望に応え、ニコンCOOLPIX950やオリンパスC-2000ZOOM以降、充実した撮影機能を搭載したコンパクトデジカメが続々と登場してきた。

 しかし、デジタル一眼レフの低価格化により、デジタル一眼レフの代替品としてのコンパクトデジカメの役割は終わった。ならば、コンパクトデジカメは、コンパクトカメラ本来の姿に立ち戻り、シャッターボタンを押すだけでどれだけキレイに失敗なく写せるかを競い合う時期に来ていると思う。


一口コメント

●キヤノンPowerShot A430
 有名ブランドのデジカメとしてはもっとも実売価格が安い。ズームは光学4倍で、光学ファインダーも備えているが、ボディが厚めでボテッとした印象は否めない。正面から見たデザインは悪くないので、せめてボディ厚があと1cm薄ければ、と思う。

 撮像素子は1/3型400万画素で、今回ピックアップした6機種のなかではスペックは控えめだが、レンズ性能も良く、高感度撮影時のノイズが少し多めなこと以外は、A530と写りに大きな差は見られない。PowerShotシリーズではあるが、操作系はIXY DIGITALシリーズに近く、メニューでの切り替えが多い。

 Mモードのスーパーマクロは他機種を圧倒する撮影倍率を誇り、もっともマクロ撮影に強い。低価格ではあるが、音声付き動画撮影も可能だ。


●キヤノンPowerShot A530
 最近のコンパクトデジカメとしては、グリップがある分ボディが厚めで、ポケットに入れるのにはちょっとかさばるが、ホールディング性は抜群。光学ファインダーも装備している。撮影モードの切り替えはダイヤル式で、主要なシーンモードをダイヤルで選べる点がイイ。ズームも光学4倍で、ワイド端からテレ端まで安定した描写を誇る。

 最高感度はISO800まであり、ノイズは目立ってくるが、強引にノイズをつぶしていないので、不自然に解像感が低下しない点は好感が持てる。単独の露出補正ボタンもあり、操作性も悪くはないが、セルフタイマーがメニューで設定する必要があるのは残念。十字キーの左右キーが余っているので、どちらかに割り当てて欲しかったところだ。

 写りは安定していて、不自然な写りになることはほとんどないが、地平線近くの青空がグレーっぽく写るのだけはちょっと不満だ。上位機種とほとんど同じ機能を装備しており、カメラの腕が上達すればより高度な撮影もできるカメラだ。


●オリンパス CAMEDIA FE-150
 スリムなメタルボディに2.5型23万画素高精細液晶モニターを搭載。電源は小型のリチウムイオンバッテリーで、デザインは平凡だが、人気のスリムコンパクト並に携帯性に優れている。オリンパス機としては珍しく、ズームワイド端が32mmと広角寄りなのもイイ。

 ただ、機能はきわめてシンプルで、感度だけでなくホワイトバランスもすべてカメラまかせのオート。これでオート精度が高ければ文句はないのだが、シーンによっては少し不自然な色調になるケースもあり、こうした場合はシーンモードを変えてみるくらいしか対処法がない。起動やズーム、記録スピードも上位機種に比べるとのんびりとしている。


●ニコン COOLPIX L3
 単3電池駆動でプラスチックボディながら、なかなかキュートでコンパクトにまとまっている。フェースクリアー機能を搭載していて、ポートレートモード時に顔が正面を向いていれば、画面のどこに顔があっても、自動的に顔にピントを合わせてくれるのが特徴だ。このほか、15種類のシーンモードも搭載していて、シーンを選ぶ手間を惜しまなければ、シーンに応じた最適設定で撮影が可能だ。

 他機種に比べ彩度が高めで、特に青空や緑が濃く再現されるが、肌の色が少し沈んだ感じに写るのが残念。全体にシアン・グリーン系が強めに出るようだ。感度はオートのみでカメラまかせだ。


●松下電器 DMC-LS2
 廉価モデルにもかかわらず、光学式手ブレ補正を搭載しているのが特徴。電源は単3型電池2本で、正式にオキシライド電池にも対応している。撮影モードの切り替えはダイヤル式で、シーンポジションが2つあるので、お気に入りのシーンモードをそれぞれ登録しておけるのは便利。ポートレートや美肌モードは肌色再現に効果あるので、ぜひ活用したい。また、かんたん撮影モードでは上方向キーで逆光補正になるのもイイ。

 ライカ認証レンズではないが安定した描写、発色は少しマゼンタが強めの傾向だ。ボディはコンパクトというほどではないが、スティックスタイルなのでスタイリッシュに見える。ただ、動画撮影は音声なしで、動画撮影中のデジタルズームも不可なので、動画撮影を重視する人にはあまりお勧めできない。


●富士フイルム FinePix A500
 人気のスリムコンパクトに比べれば多少ボディは厚めだが、光学ファインダーも装備している割にはコンパクト。カメラとしてオーソドックスなデザインで、プラスティックボディとしてはそれなりに質感もある。撮像素子は、富士写真フイルム独自のスーパーCCDハニカムで、ISO200でも常用に耐える画質を実現。ただ、細部が一部溶けたような描写になるのが残念だが、L判~ポストカード程度のプリントではさほど気にならないかも。

 フィルムメーカーのデジカメということで、彩度が高めの描写を期待していたが、意外とあっさりとした発色。プリンタの自動補正機能とのマッチングはよく、プリントすると見映えする仕上がりが得られる。撮影モードの切り替えや露出補正、セルフタイマー等はメニューで行なう仕様で、ハッキリ言って操作は面倒。機能はあっても、電源を入れてシャッターボタンを押すだけ、という使い方になりがちだ。



URL
  製品情報(CAMEDIA FE-150)
  http://olympus-imaging.jp/digitalcamera/fe150/
  製品情報(PowerShot A430)
  http://cweb.canon.jp/camera/powershot/a430/
  製品情報(PowerShot A530)
  http://cweb.canon.jp/camera/powershot/a540530/
  製品情報(COOLPIX L3)
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/digital/coolpix/l3/
  製品情報(LUMIX DMC-LS2)
  http://panasonic.jp/dc/ls2/
  製品情報(FinePix A500)
  http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/finepixa500/

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伊達 淳一
1962年生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒業。写真、ビデオカメラ、パソコン誌でカメラマンとして活動する一方、その専門知識を活かし、ライターとしても活躍。黎明期からデジタルカメラを専門にし、カメラマンよりもライター業が多くなる。自らも身銭を切ってデジカメを数多く購入しているヒトバシラーだ。

2006/05/31 08:56
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